神様のヒトミ

さとう

5・オババ



 「さ、ここがオババの家だ」


 集落は狭く、ログハウスのような家が10軒ほど
 その中で一番古く、年季の入った建物がオババの家だった


 「オババ、入るぞ!!」


 ガモンがドアをノックすると、そのままドアを開けて中へ
 アイトも着いていき中へ入る


 オババの自宅は1階建ての平屋で、中はとても広かった
 大きなテーブルに年季の入ったイス、部屋は暖かく、暖炉でパチパチと薪が燃えている


 イスの上には1人の老婆がいる
 老婆の肌は浅黒く、目は黒く白目がなかった
 頭には帽子を被っているが、見える髪の毛は真っ白だった
 アイトを見ると、オババはニヤリと笑う


 「オババ、さっそくだが色々教えてやってくれ、話は昨日言った通りだ」
 「やれやれ、ガモン坊やはせっかちだねぇ」


 ガモンは椅子に座り、アイトにもイスを勧める
 アイトが椅子に座ると、そのまま話を始めた


 「まずは初めまして。アタシはゼオ、まぁみんなは物知りオババと呼ぶけどね」
 「こ、こんにちは。俺は藍斗です」
 「アイトね……人間族が来るのは久し振りさね」


 オババは品定めするようにアイトを見る


 「ふふ、【救世主】なんて300年ぶりだ。懐かしいねぇ、魔帝族と人間族の戦争のおかげで、デューク王国が40人の異世界人を呼び出したんだ。くくく、みーんな死んじまったけどね」
 「し、死んだ……?」
 「あぁそうさ、そもそもアンタ、魔帝族が何か知らないだろう?」
 「は、はい」
 「じゃあ説明してやるよ、ちゃーんと頭に叩き込みな」




 オババは、魔帝族について語り出した




 ***********




 この【生物世界ラーミナス】には、大きく分けて2つの種族が存在する


 人間族と魔帝族


 人間族は、聖都である〔デューク王国〕を主要都市として、この【生物世界ラーミナス】の東側を支配している
 魔帝族は、魔都である〔魔王都市サリヴァン〕を中心として、西側を支配してる


 人間族と魔帝族は、昔から小競り合いが多発していた
 今でこそ大きな争いはないが、昔はいくつも大きな戦争があった


 「アタシもね、何度も戦ったさ。こう見えて昔は強かったのさ」
 「は、はぁ……」
 「なんだい、信じてないのかね」
 「いえ、信じます。はい」
 「ふん、続けるよ」


 魔帝族とは、人間ではない種族
 幾つもの【異能アビリティ】をその身に宿し、獣や異形の姿をした種族
 その種族数は100を越え、正確な数は魔帝族ですら把握できていない


 「アタシは鬼人なのさ、ホレ」


 オババは帽子を取ると、見事な一本角があった


 「アタシのアビリティは《鬼人の怒り》さ。メッチャクチャに暴れるアビリティで、敵も味方も恐れたもんさね」
 「は、はは、は……」
 「はは、は……」
 「なんだいその笑いは……続きだ」


 争いは。魔帝族が圧倒的有利だった
 人間族はアビリティこそ持つが、戦闘に適したアビリティを持つ者はわずか
 無数の死者を出し、人間族は降伏にまで追い込まれた


 そんなときだった




 「人間族の前に【神】が現れて、【救世主】を呼び出したのさ」




 ***********




 【救世主】は、圧倒的な強さだった


 降伏寸前だった人間族は、一気に互角まで戦況を立て直した
 しかし、魔帝族も負けてはいない
 〔魔王首都サリヴァン〕にいる最強の魔帝族である【魔王】
 その部下である【魔帝十二真将】


 決死の戦いは、互角のまま終わる
 【救世主】が死に絶え、【魔王】も滅びた
 残ったのは僅かな【救世主】と、【魔帝十二神将】
 戦争は終わり、双方は立て直しの時間が必要となった




 こうして、人間族と魔帝族の戦争は、ひとまずの休戦となった




 ***********




 「つまり、戦争は終わっていない。アンタみたいな【救世主】が呼ばれたって事は、デューク王国では戦争の準備が進んでるだろうねぇ」
 「そ、それって……」
 「ああ、アンタの同胞だね」


 アイトは愕然とした
 アイトたちが呼ばれたのは、戦争の道具にするため
 殺しの道具として使われるため


 「例外なく、【救世主】ってのはトンでもないアビリティを備えてる。昔のアタシですら【救世主】の1人に殺されかけた。アンタはどうなんだい?」
 「お、俺は……」


 アイトは、自分のアビリティである《森羅万象》について聞く


 「ふぅん、聞いたコトないねぇ……アタシは500年生きてるし、魔帝族や人間族のアビリティはだいたい知ってるんだが……」
 「そうですか……でも、どうしようもない。こんなポンコツアビリティじゃ……」


 片目を失った今、まともにアビリティを使えない


 「さて、昔の話はこんなモンさ。こんなコトは言いたかないが、アンタ達【救世主】は戦争の道具さね。まともにアビリティを使えないアンタは一般人と変わらないねぇ」
 「………はい」


 戦争の道具
 そんなことのために生き返ったのか
 もしかして、あのままバス事故で死んでいたほうが良かったのでは
 そんなことを考えていると、疑問に思った


 「あの、今の話だと人間族と魔帝族は今も争ってるんですよね?」
 「そうさね、戦争ほどじゃないが、小さな小競り合いは起きてるね」
 「それじゃ……どうして、俺を助けたんですか」


 この質問は、ガロンに向けての言葉
 ガロンは少し面食らっているようだった


 「ふん。簡単だ、お前が怪我をして倒れていたからだ」
 「……え」
 「オレ個人としては人間に恨みはない。ボロボロで死にかけていたお前を助けるのに、イチイチ理由なんて考えてなかった」


 アイトは、驚きの眼差しでガロンを見た


 「人間族は徹底して魔帝族を迫害するように教育を受けている、それこそ魔獣と同じようにね。でもね、アタシたち魔帝族はそこまで人間を嫌っちゃいない。同じ物を見て感じる心は同じだと思ってるさね」
 「で、でも……」
 「この集落は魔帝族と人間族の領地の中間にある。もしお前のように倒れてる人間がいたら、オレたちは迷わず手をさしのべるさ」


 アイトは、ガロンとオババの優しさに触れた
 戦争なんて馬鹿らしい、魔帝族はこんなにも優しいと感じた


 「さて、話はここまでにしよう。次はグリスの元へ行って、アイトの同胞の情報を聞こう」


 ガロンは立ち上がり、アイトも立ち上がる
 オババに礼を言って外へ出る、するとオババが言った


 「アイト、お前の目……《森羅万象》は、きっとまだ閉じていないよ」
 「え……」
 「ま、そんな気がするさね」




 オババは明るくニカッと笑った



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