神様のヒトミ

さとう

1・とある世界で



 ここはとある空間


 アイトたちがバス事故で死亡し、神様たちによって生き返り連れて来られた謎の空間
 どこまでも暗く、まるで昼間のない夜の世界


 そんな空間に、鱗粉のような物が漂っていた


 「おい『虚無インビジブル』よぉ、なかなか面白い事をするじゃねぇか」


 漂う鱗粉が形を作り、まるで人間のような姿になる
 鱗粉の顔は真っ白で目も口もない、しかし口の部分が三ヶ月のように割れ、甲高い声が聞こえてきた


 『ヤダなぁ『暴虐デッドワイルド』ちゃん、ちょっとしたお遊びじゃないか』


 両手を挙げ、おちゃらける
 『暴虐デッドワイルド』と呼ばれた存在は、特に興味も示さずに言う


 「ふん、別にお前が何しようがどうでもいい。肝心なのはその遊びがオレたちを楽しませるかどうかだ」


 『暴虐デッドワイルド』は笑う
 どう見てもその姿は人間ではない
 全身が灰色の体毛に覆われ、姿はまるで獅子ライオンだった


 『もちろん楽しくなるさ、〔デューク王国〕へ渡った19人の救世主と、未だに敗北を知らない魔帝族。さぁさぁ人間族の救世主たちよ、魔帝族を倒し平和を勝ち取れ!!……なーんて』
 「くっくっく……違うだろ?」
 『んん?』


 デッドワイルドは獅子の顔を歪め、おかしそうに笑う


 「オレが言ってるのは、どうして1人だけ別の場所に転移させたかだっての」




 『虚無インビジブル』の動きが止まった




 ***********




 『さぁて、なんのことやら? ボクにはわかんないなぁ?』
 「とぼけんなよ、あの人間……面白い【異能アビリティ】を持ってたな」
 『へぇ?』


 ザワリと鱗粉が揺れる


 「『森羅万象しんらばんしょう』……アイツ・・・のアビリティだ」


 鱗粉が、揺れる


 「くっくっく、まさかアイツのアビリティを発現させるとは。すでに種は消え去ったはずだが……確かに、お前の言う通り面白くなりそうだ」
 『………』


 鱗粉が、空間を包み込む


 「これで『慈愛ミストラル』と『天魔てんま』も動く、それ以外のヤツもな。お前が直接手を出せないから秘密裏に処理をしようとしたようだが……遅かったな」
 『……』
 「お前の遊びに無関心だった連中は、すでに動き始めてる。この【虚空世界ヴァニタス】から【生物世界ラーミナス】に干渉することは出来ないが……くくく、楽しみだ」


 鱗粉が、意思を持つ


 「さて、オレは見物させて貰うとしよう。お前はあの少年を殺したつもりだろうが……異世界の人間を甘く見るなよ?」
 『うるさいよ、『暴虐デッドワイルド』」




 鱗粉が、爆発した




 ***********




 『暴虐デッドワイルド』の予想は外れ、アイトは死にかけていた


 「はぁ……はぁ……くそ、ちくしょ……」


 かれこれ2日、禄に食事や水分も取らずに山を彷徨ってる


 この森は毒物で囲まれていたので、葉っぱや木などは触れることも厳しく、たまたま降った雨で乾きを癒やし、ひたすら森を彷徨っていた
 得体の知れない怪物とも遭遇しかけ、藪の中に潜りやり過ごすこともあった
 新品の制服は泥で汚れ、足下もおぼつかない


 視界が霞み、疲労から来る眠気に襲われていた
 アイトにも自覚があったが、得体の知れない森で寝るのが怖く、有るかどうかも分からない出口を必死になって探していた


 「あぁ……眠い、腹減った……」


 15歳の少年には、余りにも過酷だった
 助けなどない、ここがどこかも分からない
 あの鱗粉が言うには、アイトたちは既に死亡し、異世界につれて来られた【救世主】と呼ばれる存在になったこと


 「じゃあ何で俺は……こんな森で……」


 考えるのも辛く、足を止めて座り込む
 紫の葉っぱ、青い木の幹、ヘドロのような川
 これが現実だとしたら、笑えるわけがない


 「……え?」


 突如、アイトの耳に何かが聞こえてきた


 「いたぞ、アイト!!」
 「アイトーッ!!」
 「全く、心配かけて……もうっ!!」


 目の前に、アイトが望んだ光景が見える
 洋二、アイヒ、ミレイが、心配そうに駆け寄ってきた


 「あ、あはは……あはははははッ!! おーいっ!!」


 アイトは立ち上がり、疲れも忘れて駆けだした
 やっと会えた、助かったと思いながら。そして




 ブチュリ、と……視界が急に半分になった




 「……へ?」




 焼けるような熱が、右目に広がった



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