ホントウの勇者

さとう

王都グレーバシレム⑦/授業開始・訓練開始

 翌日。俺は朝食を済ませて第二教室にやって来た。
 今日はスプリフォの座学があり、俺はその間にみんなを鍛えるための準備をする。まぁ好きにやらせて貰えるみたいだし、俺好みにみんなを育ててやろうと思う。
 とりあえず全員に挨拶をして、後は準備のために買い物に行くか。
 俺は第二教室のドアを開けると、全員が揃っていた。俺が入ってきたのを見て立ち上がり、騎士団の敬礼で出迎えてくれる。かっこいいけどなんか恥ずかしいな。


 「「「「おはようございます、先生!!」」」」
 「お、おはよう」


 ちょっと照れる。そしてくすぐったい。
 俺は全員に席を促すと、四人は一礼して座った。


 「あー……今日はスプリフォの座学だ。俺は戦闘訓練の準備があるから、今日は座学が終わったら自由にして良い。じゃあがんばれよ」
 「じ、自由ですか?」
 「ああ、自主練でも良いし、帰って休んでも良い」


 ちなみに、明日から訓練は始まる。
 午前は座学で午後は訓練といったスタイルで行おうと思う。たまに休みでも挟みながらやれば不満も出ないだろう。


 「その代わり、明日から訓練だ。楽しみにしとけよ」
 「は、はいっ!!」


 フィオはなぜか嬉しそうだ。フィンテッドの妹っていうから大人しいヤツなのかと思ったけど、そうでもなさそうだ。
 とりあえず町に買い物に行こう。必要な道具もあるしな。


 「おーっす。授業の時間よー」
 「お、来たか」


 相変わらずのスプリフォが教室に入ってきた。よく見ると教卓の下にスプリフォ専用台が置いてある。


 「あら、もしかしてアンタ、私の授業を聞きたいのかしら?」
 「ちげーよ。俺の生徒でもあるから朝の挨拶に来たんだよ。それより、しっかり授業を頼むぞ」
 「はぁ? アンタ誰に言ってるのよ。このスプリフォ・リプツェン魔教授にちゃんと頼むですって?」
 「はいはい、お前は可愛くて偉いよ。じゃあ頼んだぜ」
 「お、こら!!」




 長くなりそうだったので、俺はさっさと教室を出た。




 **********************




 町に出た俺は買い物を済ませて散歩していた。
 お目当ての品はちゃんとあった。いやはや良かったぜ、さすが8大陸で最も栄えてる都市。俺の知らない物や見たこと無い物もたくさんあった。


 《にゃあ》
 「お、クロ」


 町を歩いてると、クロが俺の足下にいた。こいつはいつの間にか居なくなっていつの間にか現れるな。可愛いからいいけど。


 《お買い物してたノ?》
 「ああ。明日の訓練で使おうと思ってな。それより、毎度毎度どこに行ってるんだよ。お前といいシロといい自由過ぎだろ」
 《アラ……心配してくれるノ?》
 「当たり前だろ。全く」
 《フフ……ごめんなさいネ》
 「やれやれ……せっかくだし買い食いでもするか?」
 《アラ、いいワネ。お魚が食べたいワ》
 「はいよ。じゃあ行こうぜ」




 クロと一緒に散歩しながら、町を堪能した。




 **********************




 翌日。修練場に四人は整列し、俺の言葉を待っていた。
 全員が動きやすそうな訓練用の騎士服を着て俺を真っ直ぐ見てる。この視線はどうにも慣れない、キラキラしたような、待ちに待ったような………何とも言えん。
 ちなみに、俺の傍にはクロとシロが並んでおすわりしてる。


 「じゃあ始めるか。ええと……今日はみんなの強さを知りたいから、一人ずつ俺と模擬戦をしてもらう」


 そう言った途端、全員の顔が嬉しそうに輝いた。
 うーん、みんな騎士だしな。やっぱ強者との先頭には血湧き肉躍るところがあるのかね。


 「ええと、最初は」
 「はいっ!! 私から行きます!!」
 「フィオか。じゃあ最初はフィオからでいいか?」


 残りの三人も異存は無いようだ。
 三人とクロとシロは少し距離を取り、俺とフィオは向かい合う。
 フィオはレイピアを抜き構え、その瞳には強い意志が込められていた。気のせいだろうか、やはりフィンテッドに似てるなと思ってしまう。


 「全力で行かせていただきます!!」
 「当然だ。じゃなきゃ実力は測れないからな」


 俺は右手にナイフを構えて左手は開けておく。
 目で合図をすると、フィオは一直線に向かってきた。


 「はぁぁぁっ!!」
 「へぇ」


 真っ直ぐ。真っ直ぐ過ぎる。
 教科書みたいな動きだ。なかなか洗練されてるけど動きが単調で読みやすい。申し訳ないがこれじゃダメだな。隙を突くのは容易いし、前しか見てないから横や後ろから仕掛けられたらその場でアウトだ。
 暫く動きを観察し、俺は終わらせることにした。


 「よし、終わり」
 「え、きゃぁっ!?」


 突き出されたレイピアを躱し懐に潜る。そして左手の[カティルブレード]を喉元に突き付けて模擬戦を終了させた。


 「まだまだ教科書のお手本だな。学ぶことはたくさんありそうだ」
 「あ……ありがとうございました」
 「ああ、ほら」
 「え、あ」


 俺は尻餅をついたフィオに手を伸ばし立たせると、その頭をポンポンなでる。
 なんかフィオは妹みたいで可愛い。リリとは違うタイプの妹って感じだ。


 「あ、あぅぅ……」
 「よし、休んでろ。次はブッタマンだ」
 「はい。お相手願います」


 顔が赤いフィオを下がらせ、大きな斧を持つブッタマンが前に出た。
 ブッタマンは見たまんまのパワーファイター。これは面白そうだ。




 「では、参ります!!」




 **********************






 「………参りました」


 まぁ強かった。だけどやっぱ甘い。
 思った通り、パワーがあるけどスピードがない。一撃の威力は大したモンだが、当たらなければ意味が無い。なのでそこを突かせてもらい勝利した。
 ブッタマンも鍛えれば強くなる。次はガリヒョロの番だ。


 「おぉぉ、お願いしまっすぅぅぅっ!!」
 「あ、ああ……」


 なんか調子狂うな。ワザとじゃないんだろうけど。
 この喋り方は独特だ。ビクビクしてるのかわからんな。
 ガリヒョロの武器はハルバート。斧と槍が合わさったような武器だ。


 「おっほぉぉぉぉっ!!」
 「ぶふっ」


 かけ声で笑ってしまった。なんだよおっほぉぉぉぉって。
 とはいえ、こいつの動きも悪くない。だけど、接近されると一気に手数が減る。まぁ長物だから仕方ないとはいえ、全体的に接近戦に弱い。
 それはキティも同じだった。


 「はぁ、はぁ、う……」
 「ここまで。おつかれさん」
 「は……はい」


 キティは一般的なロングソードを地面に落とすと、そのまま膝を付いた。
 どうやら俺と戦うプレッシャーに身体が押しつぶされてしまったようだ。うーん、まだまだだね。
 みんなの実力はわかった。やるべき事はたくさんあるし、上手く育てればどんどん伸びる。


 「よし。みんな、おつかれさん」


 四人を整列させ、個々に気になった点を述べる。
 その中でも全員に共通することがあった。


 「みんな、接近戦に弱い。まぁ接近戦というか搦め手だな。一方向だけじゃなくて多方向に対応できるようにならないと、格上相手だとすぐにやられるぞ」


 そう言うと。全員が俯く。
 おいおい、このくらいで落ち込むなよ。もちろんフォローはする。


 「なのでまずは接近戦の訓練だ。もちろん、個々の武器にあった戦闘法を模索してモノにしてもらう。そして、みんなにはこれを装備して戦闘をして貰う」


 俺が合図をすると、大きな袋を咥えて引きずるシロが現れた。
 袋を受け取り、中に入ってる装備を一人ずつ渡す。


 「あの、これは?」
 「ふむ……籠手、ですかな?」
 「ふぉぉ……かっこいいですねぇぇ」
 「これって、まさか……」


 キティは気が付いたようだ。
 そう、それは《マルチウェポン》だ。


 「それはマルチウェポン。接近戦でも使えるし、短弓にもなる。籠手だから相手の剣もガードできるし、使いこなせれば最高の武器だ。ほれ」


 俺は右手を逸らし刃を出す。そして手首を逸らし短弓モードに変形させる。
 それを見た4人はさっそく装備した。


 「わぁ……天鎖狼さまと同じ……」
 「ふむ。これは中々……」
 「ほぉぉ……」
 「か、かっこいい……」


 四人も気に入ってくれたようだ。
 それにしても、武器屋で扱ってて助かったぜ。


 さぁて、これから忙しくなりそうだ。

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コメント

  • ノベルバユーザー341378

    ホントウの勇者にどハマりしました!
    早く続きが出ないか毎日確認してます。これからも応援してます!

    0
  • 読書好きTT

    面白かったです、続きが気になるのでこれからも頑張ってください!

    3
  • 水野真紀

    とても面白いです
    僕は恋愛小説と異世界どちらも書いてるので良かったら見に来てください

    2
  • bloodkyo

    ちょくちょく思うけど諦めなくなったのにその後直ぐに諦めるのどうにかならない?

    0
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