ホントウの勇者

さとう

王都グレーバシレム⑤/選抜・魔術講師



 う〜ん、どうしよう


 演習場には騎士見習いの制服を着た男女が並んでる
 横に20人並び、その後ろに10人ずつ一定感覚で整列し、全員が直立不動で前を見ていた
 騎士見習いの制服は白を基調とした学ランみたいな服で、随所に紋章が型取られてる。腰には男女共通のベルトが巻かれ、剣を差せるホルダーが付いていた
 女子は何故かミニスカート、この制服を考えた人は分かってる。尊敬します


 「ジュート殿、この中から4名をお選び下さい。ジュート殿の質問には嘘偽りなく答えるように言ってありますし、使用武器や家柄、属性や戦闘スタイルなどもご質問下さい」
 「は、はぁ······」


 ギムレットさんは「それではどうぞ‼」みたいな感じで手を前に出す
 こういうのって普通は書類選考とか、実技試験とかあるんじゃないだろうか
 そこまでの手間は掛けられないのかな? 実験部隊って言ってたし


 「まぁ取りあえず······行くかシロ」
 《うん。今更だけど、キミといるとホントに退屈しないね》


 そりゃどうも。俺にも分からんよ、ホント
 取りあえず生徒の隙間を縫うように歩いてみる


 この際、適当に選ぼうか?
 それとも女の子だけのハーレムを作ろうか? 
 男女の比率は7:3くらいで男子が多いな
 みんな緊張してるのか、前を向いたまま微動だにしない




 取りあえず、適当な生徒に質問してみるか




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 取りあえず、イケメン一歩手前くらいの主人公みたいな少年に話しかけてみた


 「え〜っと、キミの名前は?」
 「はッ‼ 自分は王都出身の平民、ライアンでございます‼」
 「ライアンくんね。歳はいくつ?」
 「はッ‼ 16でございます‼」
 「ふむ、得意なことは?」
 「はッ‼ 自分は平民なので剣は自己流ですが、家事全般は得意とし、体力には自信があります‼」


 声がデカい、やる気はある
 う〜ん、取りあえず保留かな


 お次はメガネをかけた、騎士というよりは魔術師みたいな女の子。ショートカットでちょっと華奢な感じだな


 「こんにちは、キミの名前は?」
 「はい、私は平民のキティと申します」
 「ふむ、趣味は?」
 「はい、趣味は読書です。それと······執筆も少々」
 「読書‼ いいね、最近は何を読んだ?」
 「最近はブルクマン伯爵の連載小説、〔追憶のセレナーデ〕です」
 「いいねいいね、俺も読んだよ。特に主人公の叔父が実は父親だったって言う心理描写がよかったよな」
 「はい‼ 実は父親だったと言う伏線は、前作の〔忘却のノスタルジア〕から張られていたんです」
 「やっぱりそうか、あの叔父と叔母のシーンが」
 《ちょっとジュート、落ち着いて》


 シロに言われ、ここでようやく我に帰る
 それはキティも同じだったようで、顔を赤くしてた
 マズい、周囲の視線が突き刺さる
 でも、こんなに話が合うのは久しぶりだ


 取りあえずキティは保留
 まぁ実力は置いといて、ほぼ決定だけどね


 そして次、こいつはかなりの逸材だった


 「えっと······キミの名前は?」
 「は、それがしはブッタマン・ピッグマン。ピッグマン家の3男でございます」


 話しかけたのは、肉ダンゴみたいな少年だった
 でっぷりとした肉体は、バランスボールに手足が生えてるような感じで、騎士というよりは商人のドラ息子のイメージが強かった


 「ぶ、ブッタマンくんね。趣味や特技は?」
 「は、趣味は座禅という精神統一で、特技は木彫りの彫刻です」
 「ほ、ほぉ。えっと······今日の朝ごはんは?」
 「朝ごはんですか、今日はコメと焼き魚、汁物で済ませました」
 「そ、それだけ?」
 「はい。某は少食なもので」


 バランスボール少年は合掌して微笑む
 あまりのギャップに吹き出しそうになった
 こいつはいい、最高のキャラだ
 2人目はブッタマンで決まりだな


 それから何人かを見回り、3人目に出会った
 第一印象はモヤシ、それか爪楊枝
 細長くてヒョロい、ガリガリの少年だった


 「えー、キミの名前は?」
 「は、はぃぃ。ボクは、えっと私は、ガリヒョロと申しますぅぅ」


 ガリヒョロって、マジで本名なのか?
 顔色は悪く頬も痩けてる。まるで病人だな


 「と、得意なことはあるか?」
 「はいぃ、特技は大食いですぅぅ。王都の早食い大会で、5年連続優勝したこともありますぅぅ」
 「ま、マジで⁉」
 「はいぃ、圧倒的すぎて、大会に出入り禁止になっちゃってぇぇ、残念ですぅぅ」


 おいおい、コイツも逸材だな
 ブッタマンとコンビを組ませれば面白そうだ
 つーか喋り方がちょっとキモいな


 ここまで来て、俺の中でチームが固まりつつあった
 キティ、ブッタマン、ガリヒョロ。そして最後の1人はどうしようか悩み、ライアンくんにしようと思った頃だった


 《ジュート、あの子、見覚えあるよ》
 「ん?」


 シロが見つけたのは、1人の少女
 俺をジッと見つめる視線は、何かを期待するようだった
 俺の肩にシロは前足をかけて飛び乗る


 「······どこだっけ?」
 《ホラ、〔龍の渓谷〕に向かう途中で盗賊から子どもたちを助けたじゃないか。そのときに襲われてた少女だよ》
 「······あぁ〜、そう言えば」


 思い出した
 あのとき強姦寸前だった、金髪ロングの女の子だ
 でも今日は金髪をツインテールにしてる。これはよく似合ってるな


 せっかくだし、話しかけてみるか


 「やあ、久しぶり······覚えてる、よね?」
 「は、はい‼ 今日という日まで、忘れたことはありませんでした‼」


 ごめん、俺は忘れてた
 女の子は興奮してる。どうどう


 「えっと、名前を聞いていいかな?」


 俺は女の子の名前を聞いて、ホントに驚いた




 「はい‼ 私はブラスター家三女、フィオルーン・ブラスターです。どうぞフィオとお呼び下さい」




 ブラスター家って、まさか


 「あ、あの······お兄さんっている?」
 「はい、兄が2人。フェングスお兄様とフィンテッドお兄様がおります」




 まさかのまさか、フィンテッドの妹だった




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 それから1時間、なんとか全員から話を聞いた


 「ジュート殿、お決まりでしょうか」
 「はい、なんとか」


 肩にシロを乗せたまま、ギムレットさんに報告する


 ちなみに、ここで選ばれなかった生徒は、別の指導員によりチームに分けられる
 今日までは各クラスごとに座学と実技を共にしたが、今日からは各指導員の元で勉強を学ぶそうだ
 俺は最初にチームを選ぶ権利をもらっただけみたいだな


 「それでは、名前を呼ばれた者は前へ‼」


 魔導マイクを手渡された
 どうやら俺が発表するらしいね


 「えー、キティ、ブッタマン・ピッグマン、ガリヒョロ、フィオルーン・ブラスターの4人は前にどうぞ」


 4人は特に感動もなく前に
 俺の前に整列すると、お馴染みの騎士団ポーズをした
 取りあえず、俺もマネしておこう


 「それではジュート殿、後はお任せします」
 「え」
 「今日は自由にして構いません、明日からは魔術の座学がありますので、チームで魔術講師に挨拶するのもいいでしょう」


 おいおい、アンタが案内するんじゃないのかよ


 「申し訳ありません、これから騎士たちとチーム編成を行うので」


 すると、入口から兵士がゾロゾロやって来た
 どうやらアレが講師となる騎士たちらしい


 取りあえず邪魔になりそうだったので、4人を引き連れて外へ


 「えーと······じゃあ、魔術の講師に挨拶に行くか」
 「「「「はッ‼」」」」


 一糸乱れぬ敬礼、これぞ騎士団って感じだ
 ギムレットさんに聞いた場所によると、この学園の会議室に魔術講師はいるらしい




 取りあえず挨拶して、今後は後で考えよう




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 4人は無言で俺の後へ着いてくる
 もうちょいフレンドリーだと助かるんだけど


 そして、会議室に到着
 ドアをノックすると、中から声がしてドアが開いた


 「すみません、特別講師のジュートなんですけど、魔術講師に挨拶を······ん?」


 ドアを開けたのは同い年くらいの女子
 どっかで見たことあるな······?


 「······あ、あれ? もしかして······ジュート、さん。ですか?」
 「は、はい。えっと······どこかで?」


 俺と女子がにらめっこしてると、部屋の後ろから声が聞こえてきた


 「ねぇファノン、ジュース入れて〜、あとドーナツ買って来て〜」


 めっちゃ聞き覚えある声
 俺は部屋を覗いて驚いた


 「す、スプリフォ⁉ なんでお前が⁉」
 「は······な、ちょ、じゅ、ジュート⁉」


 スプリフォは俺を見て仰天してる


 「まさか、魔術講師ってお前なのか⁉」
 「まさか、特別講師ってアンタなの⁉」




 俺たちは、しばらく呆然としていた



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