ホントウの勇者

さとう

王都グレーバシレム④/講師就任・騎士学園



 「······えっと、何ですって?」


 俺はワケが分からず聞き直す
 指導員がどうこう聞こえたけど


 「うむ、貴殿には騎士学園で指導員を勤めて頂きたいのだ」
 「いやいやいやいや、ちょっと待てよ」


 思わず敬語を忘れていた
 しかし王様は特に気にしていないようだ


 指導員って先生だよな
 それを俺が? 補助や護衛じゃなくて?


 「もちろん報酬は支払おう。それと相応の勲章や地位も授けよう。なんなら領地をくれてやってもいい」
 「······あの、理解出来ないんですけど、何で俺? それに俺はやることがあるんですけど」
 「もちろん臨時で構わない。まぁ貴殿がこの地に根を張ってくれるのが理想だが、貴殿の事情とやらは【時の大陸】であろう? それが済んだらで構わないので、前向きに検討してくれ。まずは一月、指導員と講師として教鞭を振るって欲しい」
 「いやいや、俺に何を教えろと⁉」


 おいおい、この王様もしかして暴走してんのか?
 すると王様は語りだした


 「実は騎士学園の生徒が年々増え続けて、講師の数が足りないのだ。騎士学園の講師は騎士団な兵士で、任務もあるためこれ以上の人員は割けん。それと実験的に冒険者からの視点で騎士を育ててみる案もあったから、ここで1つ取り入れてみようと思ってな、そこでS級冒険者であり、最強の冒険者の1人【天鎖狼てんさろう】であるジュート殿に依頼することにしたのだ。しかも貴殿はブルグレートで講師補佐の経験もあるしな」


 なるほど、要は実験か
 俺が育成した騎士が使えるか試し、上手く行けば外部から雇った傭兵や冒険者を講師にする
 面白そうだけど、不安だな。どうしよう


 「う、う〜ん······」


 腕を組んで悩んでいると、ベルがそっと腕を掴んだ


 「······」
 「ん? どうした?」
 「······やって」


 ベルが俺を見てポツリと言う


 「一月もあれば一緒に遊べる。お願い」


 王様も驚いてるけど俺も驚いた
 まぁ騎士学園うんぬんじゃなかったけど、仕方ないか


 「わかりました、お受けします」


 俺はベルの頭をなでて苦笑する
 ベルもニッコリと笑ってくれた




 まさかの先生かよ、スプリフォの手伝いしててよかったぜ




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 王様はパンパンと手を叩く
 すると、扉が開いてギムレットさんが入ってきた


 「失礼いたします」


 ギムレットさんは騎士団ポーズをする


 「ギムレットよ、ジュート殿の了承は得られた。後の説明は任せる」
 「はッ!!」


 おい、このやりとり……ギムレットさんは知ってたな?
 俺はジト目でギムレットさんを見たが、特に効果はなかった


 「では参りましょうジュート殿、騎士学園へ案内させて頂きます」
 「わかった、行くぞシロ」


 ベルにモフられてたシロは、立ち上がり俺の側へ。ベルも一緒に立ち上がり、どうやら着いてくる気満々だった


 「ベル、お前は今朝の脱走のバツだ。これから一緒にお勉強だ」
 「……」


 ありゃ、シュンとしちゃった
 でも悪い事をしたならしょうがない、これも教育だ
 仕方ない、ムチだけだと可哀想だし、ここでアメをあげるか


 「ほらベル、あとで食べるといい」
 「……!!」


 俺はカバンからグミの袋とゼリーの袋を取り出す
 ダンジョンでのドロップアイテムはいくらでもある


 「ははは、すまんなジュート殿。ベル、お勉強が終わったらおやつにしようか」
 「……うん♪」


 ま、これで安心だな




 俺は優しい王様になでられるベルが、ちょっとだけ羨ましかった




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 城から出て歩くこと15分、ギムレットさんにいろいろ聞いてみた


 「つまり、学園の生徒たちは騎士の候補生なのです。ジュート殿の仕事は騎士の育成……戦闘、戦術などの指導ですね。座学などは専門の講師が担当しますし、魔術の知識もブルグレートの特別講師が担当しますので」
 「なるほどね、でも……騎士団のことなんて分かんないし、俺の戦術は自己流だから、どうしても荒くなると思うけど」
 「構いません。ジュート殿にお任せする部隊は実験部隊でもありますので、ジュート殿の流儀で育てて頂いて構いませんので」
 「でも、生徒たちは真剣に騎士を目指してるんなら、俺の流儀は合わないんじゃ……」
 「いえ、大丈夫です。ここだけの話ですが、ジュート殿の部隊は、結果次第で特別騎士として扱われます。要は特殊部隊ですので、騎士よりもいい待遇で迎えられるようになってます。もちろん結果が悪ければこの話は消えますが」


 そりゃ大変。っていうかプレッシャーだな


 ギムレットさんの話によると、騎士学園の候補生は4人チームに1人の指導者が付き、専属で戦闘技術を学ぶ
 指導者は基本的に講師でもあり、戦闘と戦術、魔術の基礎を1人で教えるが、俺は魔術の基礎や座学などさっぱりなので、学園が別に講師を手配してくれた
 戦いを教えるだけなら【青の大陸】やフレイミュラを指導したことがあるから平気だろう


 「ジュート殿は〔冒険者四強〕の1人、どんな指導をしてどのように育てるか、興味が尽きませんな」


 おい、またヘンな単語が出てきたぞ
 なんだよその後付設定みたいな名称は?


 「あの、〔冒険者四強〕ってなんですか……?」
 「おや、ご存じないのですか?」


 知らねーよ、知りたくもねーよ
 でも聞かなきゃいけないから聞いてるんだよ


 「〔冒険者四強〕とは、その名の通り最強の冒険者4人を差す言葉です。ジュート殿の【天鎖狼てんさろう】と言う異名は、ここ最近追加された物で、かつての四強の1人が亡くなったことで追加された名前ですね」
 「はぁ……」


 ギムレットさんは何故か興奮して話してくれた
 もしかして冒険者に憧れでもあるのだろうか


 〔冒険者四強〕とは、高レートのモンスターを退治したり、単独でも高い戦闘力を誇る4人の冒険者で、この8大陸では英雄に近い存在らしい


 【天鎖狼てんさろう】ジュート
 【瞬塵剣しゅんじんけん】フィンテッド
 【蛮王ばんおう】デカロプス
 【麗冷美零れいれいびれい】アイリーン


 どれも破格の強さを誇り、全ての冒険者の目標でもある


 「なるほど、フィンテッドも四強の1人なのか……」
 「はい、〔勇者フィンテッド〕はこの王都出身の貴族、ブラスター家の次男でもありますね」


 そういえば、アイツらまだダンジョンにいるのかな


 「さて、そろそろ到着しますね。ジュート殿が担当する生徒を集めておくように指示しましたので、到着次第すぐに選抜をお願いします」
 「はい…………え!? 俺が選ぶの!?」
 「勿論です」




 おいおい、頭が痛くなってきた……はぁ




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 〔ウォールデン騎士学園〕は、まるでお城みたいな学校だった
 全体的な雰囲気は純白で、大理石みたいな門に立派な格子の門で守られていた


 「ジュート殿。今日からここの講師専用個室にお泊まり下さい。それと授業は3日後から、それまでは座学を優先させるので、指導方法などを考えるのもよいでしょう。ジュート殿の部隊の魔術講師は到着されてますので、後ほど挨拶に伺わせます」
 「は、はい」
 「それではこちらへ、選抜を始めます」


 ギムレットさんは敷地内へ入って行く
 俺も後を追い、立派な廊下を抜けて行くと大きな引き戸の前に来た
 引き戸のプレートには「第一演習場」と書いてあった


 ギムレットさんは迷いなく引き戸を開き中へ進む


 「ぶっ!?」


 俺は噴き出した。なんじゃこりゃ!?


 「敬礼!!」


 演習場は円形で、観客用の席もある
 ギムレットさんの敬礼に、ざっと見ても200人が同じポーズをした


 「それでは以前から話していた〔天狼騎士〕の選抜を始める!! これより〔天狼騎士部隊〕特別講師であり指導者のジュート殿が回るので、ジュート殿の質問には的確に、簡潔に答えること、いいな!!」
 「「「「「はッ!!」」」」」


 200人の「はっ」はメッチャ響いた
 つーかいきなり過ぎて着いて行けん。なんだよ〔天狼騎士部隊〕って


 「ではジュート殿、お願いします」




 「何を?」とは聞けなかった
 

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