ホントウの勇者

さとう

王都グレーバシレム③/ベルと一緒・顔見知りの王様



 長い黒髪、感情が読めない無表情
 部屋のドアの前に立つのはベルダンディことベル
 昨日知ったことだけど、この国のお姫様らしい


 「えっと······?」
 「······」


 何も言わず、俺をジッと見上げる
 とりあえず部屋に入れてあげると、ベルはクロとシロをジッと見ていた


 「危なくないし、触っていいぞ」


 するとクロとシロはムクリと起き上がる


 《ふぁぁ、おはよう》
 《朝から何ヨ······?》


 ベルはおっかなびっくりシロに手を伸ばすと、フワフワの頭をなで始めた


 「······♪」


 心なしか機嫌がよさそうに見える
 ベルはベッドに座り、クロを太ももに乗せてシロをなでる
 とりあえず、聞いておかないとな


 何から聞こうか迷っていると、荒々しくドアがノックされた
 イヤな予感がしてドアを開けると、血走った目をしたギムレットさんだった


 「ジュート殿、一大事でございます‼ ベルダンディ様が行方不明に‼」


 うわっちゃー、こりゃヤバいだろ
 ここにいるし、もしかして俺って誘拐犯?


 「あ、あの······」
 「申し訳ありませんが、ジュート殿にも捜索のご協力を······を?」


 あ、バレたなこりゃ


 「べべべ、ベルダンディ様⁉ ジュート殿、一体これは⁉」
 「えーっと、実は」


 俺も聞きたいよ
 朝、着替えてたら部屋の前にいたとしか言えないけどね




 俺はありのままを伝えた




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 「そ、そうでしたか。昨日のうちにベルダンディ様にはジュート殿のことを伝えておいたのですが、まさかここまで自力で来られるとは」


 とりあえずギムレットさんも部屋に入れ、事情を説明
 ベルは変わらずにシロとクロをなでていた


 「それではジュート殿、城へご足労願えませんか」
 「あの、朝飯まだなんですけど······」
 「そうでしたか。ではダイニングへ」


 ちなみにベルもまだらしい
 せっかくなので一緒に食べることにした
 あと、ベルがここにいることは、ギムレットさんの部下が報告に走って行ったから問題ないらしい


 「あぁ、腹減った。ベルはどうだ?」
 「······」


 コクリ、と頷く。無口なのかね
 朝はバイキング形式で、好きなものを取り放題食べ放題みたいだな。いいね
 ちなみにギムレットさんは外で待ってるそうだ
 ベルの食事は俺に任せるらしい


 「さて、何食べる? 好きなのを取ってやるよ」
 「······」


 再び頷く
 もうちょい喋ってくれると助かるんだが


 ベルが指差す料理を皿に取り、ついでに自分の分も取る
 席に座ると、ピッタリとくっつくベルだった


 「どうした?」


 ベルは無言でスプーンを差し出す
 どうやら食べさせて欲しいらしい


 「やれやれ。ほら、あーん」
 「······」


 小鳥のヒナみたいにパクリと食べる 
 これはこれでかわいいな




 こうして、穏やかに食事は終わった




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 ベルと手を繋いで外へ


 クロは散歩に出かけ、シロはベルの近くを歩いてる
 このまま城へ向かうようだ


 「それでは参りますが······ベルダンディ様、本当に徒歩で宜しいのですか?」


 ベルはコクリと頷く
 ホントは魔導車を手配したのだが、俺が歩くと言ったら一緒に歩くとポツリと言った
 聞き逃しそうになるくらい小さな声だった


 と言うワケで王城へ
 のんびりと歩きながら、町を伺う


 「ジュート殿、宜しければ町のご説明をさせて頂きます」
 「はい、お願いします」


 気が利く副隊長、ギムレットさん
 年下の俺にこうも丁寧な対応をしてくれる


 「この町は8大陸で最も栄えてる王都はと言われ、全体的な面積だけでも〔魔術師の町ブルグレート〕の3倍ほどあります」
 「さ、3倍⁉」


 でも、この王都より〔真龍王国ガウェズリドラ〕の方が大きいんだよな。なんかスケールが大きくて理解出来ん


 「中でも1番の特徴は、8大陸最強と呼ばれる騎士団、〔グレーバシレム聖騎士団〕があることですな」
 「へぇ、そう言えば、騎士団の学校がどうとか·······」
 「はい。未来の騎士たちを養成する学園である〔ウォールデン騎士学園〕のことですね。毎年、各大陸から希望者が殺到しておりまして」


 学校か、魔術師の学校は行ったけど、騎士の学校ってどんな場所だろう


 しばらく町の説明を受けながら歩く
 そして、クッソデカい王城へ到着した


 「それではジュート殿、こちらへ」


 ベルと手を繋いだまま歩き、到着したのは豪華な装飾が施された質のいい扉だった
 扉の前には護衛と思しき兵士が2人。ギムレットさんが騎士団の挨拶ポーズをすると、同じように返した
 兵士2人はノックして扉を開け、俺とギムレットさんは中へ入る


 立派な机に本棚、床の敷物も豪華で踏むのに躊躇う
 シャンデリアのようなランプ、飾り物など高級感溢れる調度品
 魔道具ではなく暖炉で部屋を温めているのが、更に高級感を出していた


 そんな部屋の主は、執務机で書類整理をしていた


 「失礼致します、グレーバシレム聖騎士団・13番隊副隊長ギムレットです」


 ギムレットさんの挨拶に顔を上げる
 俺はこの顔を知ってる。話したことはないけど
 40代くらいの、メガネをかけた男性だ


 「おぉ来たか。ベル······全く、おてんば娘め」


 ベルは俺の手を離し、男性の元へ
 ニコニコしながら男性の太ももに座る


 「初めまして、いや······久しぶりかな。【紫の大陸】では命を救われた」




 ここは、王様の執務室らしかった




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 ギムレットさんは下がり、俺と王様とベルの3人だけとなった。あ、シロもいたわ


 「まぁ座れ、茶でも入れよう」
 「お、王様が自ら⁉」
 「ハッハッハ、気にするな、私の数少ない趣味でもある。こう見えて茶にはうるさい、専用の畑で茶葉も栽培してるからな」


 王様とは思えないほどフレンドリーだ
 柔らかいソファに座ると、ベルが隣に来た
 シロに合図すると、シロはベルの膝の上でじゃれつく


 「······♪」


 う〜ん、機嫌がよくなったかな
 すると、王様が高級そうなティーポットとカップを用意し、お茶を入れてくれた


 「さ、どうぞ飲んでくれ」
 「いただきます」


 さっそく一口


 「······ほぉぉ」


 なんかほっこりする
 紅茶だろうか、ストレートティか
 熱すぎずぬる過ぎず、絶妙な温度と味加減だ


 しばらくお茶を堪能してると、王様が頭を下げた


 「改めてキミには礼を言おう。私の命だけでなく、このベルダンディの命まで救って頂いた。王として、父として、1人の人間として、感謝してもしきれない」
 「いやいや、頭を上げてくださいよ。俺は当然のことをしただけで······でも、ベルはどうしてあんな街道に?」


 王様は頭を上げると苦笑する


 「ベルは好奇心旺盛でな、騎士学園の生徒が乗る魔導車に乗り込んでしまったのだ」
 「そりゃ災難で······」
 「それと、キミの秘密を知るのは私だけだ。そこは安心してくれたまえ」


 そう言えば【紫の大陸】にいた護衛は全員〔龍神族〕だったな


 「何か礼が出来ればいいのだが、何か望みはあるかね?」
 「う〜ん······」


 マジで別にない······あ、そうだ


 「あの、実はこれから近い将来、俺は国を造るつもりなんです。そのときになったら力を借りるかもしれません」 
 「く、国を作る?」
 「はい。そのときは宜しくお願いします」


 よくわかってないみたいだけど、今はこの程度でいいか
 しばらく雑談をしてると、ようやく本題が来た


 「ジュート殿、実は貴殿に頼みがあるのだ」


 王様の願いか。まぁ借りを作っておくのもいいかもな


 「なんでしょうか?」
 「うむ、貴殿の強さを見込んで頼むのだが······」


 俺の強さねぇ
 まぁ強さには自信があります


 「貴殿に、〔ウォールデン騎士学園〕で指導員を勤めて頂きたい」




 この一言が、波乱の幕開けだった



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