ホントウの勇者

さとう

BOSS BATTLE①/【銃神ヴォルフガング】VS【灰の特級魔術師シェラヘルツ】/強く・鉄灰武装



 〔デーボ溶岩道〕から戻り、その場で解散した


 「シュン兄ぃ、これから稽古を付けてくれ。アタシはまだまだ強くなれる」
 「わかってる。ジュート君との戦いまで、オレが全力でお前を強くしてやろう」


 兄妹は完全に和解し、シェラは上を目指し鍛錬するようだ


 「あ!! ウチも一緒にやるで、ウチだってまだまだシェラには負けへんで!!」
 「ほほう、面白いことを言うな……」
 「ははは、じゃあ道場へ行っててくれ、オレはガウェズリドラ様に報告してから向かうから」
 「はーい。ジュートはミコを送ってやり、ついでに牛も店に届けといてな」


 カグヤは期待するように俺を見る
 結局、狂牛はミコの店に寄付することにした
 討伐したシュンガイトさんが、ミコへの迷惑料として全部ミコに渡したからだ
 カグヤは渋っていたが、シェラとシュンガイトさん、ついでに俺の説得で折れた。その代わり、今日の夜はミコの家で焼き肉をすると言う条件だったけど


 「ゴメンねジュートくん。道場へ行きたいんじゃ……」
 「いや、いいよ。ちょっと考えたい事もあるし」
 「そう? じゃあ行こうか」




 こうして、ミコを送るため中華料理店へ向かった




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 「それにしても、スゴい体験しちゃった」
 「·········」


 ミコはニコニコしながら俺に言う
 普段〔賢母〕は戦闘に関わることがなく、今日のような出来事は本当に稀らしい


 「あのさ······」
 「ん?」


 俺はミコに言うべきか迷った
 俺にミコを送らせるということは、俺がミコに全てを話すかもとわかっているはずだ


 「ミコ、あのさ」
 「どうしたの? さっきから様子が変だよ?」
 「……実は、さっきのことなんだけど……」


 俺は事情を説明した
 シェラのためにミコを助けなかったこと、近くにいたのに何もしなかったこと、シェラの成長のためにミコを利用したことを


 「そっか、そうだったんだ」
 「……ごめん」


 俺は道のど真ん中で頭を下げる
 謝っても許される問題じゃない。一歩間違えれば死んでいた
 しかしミコは、笑って言った


 「気にしないで、私もガウェズリドラ様の眷属だし、命の覚悟はしてる。それに……シェラちゃんが助けてくれるって、信じてたから」
 「……でも」
 「ウソじゃないよ? あの時のシェラちゃんは、きっと誰よりも強かった。だから、どんな思惑があっても関係ない。シェラちゃんは私を助けてくれたから」


 あぁ、俺ってヤツは……どこまで愚かなんだ
 どんな結果で、どんな思惑が絡もうと、シェラがミコを救ったことは間違いない
 ヘタな責任を感じて、何を求めていたんだ


 「さ、この話はおしまい。早く帰って晩ご飯の下ごしらえをしなきゃ。よかったらジュートくんも手伝ってくれない?」
 「……ああ、何でもやってやるよ」




 なんだか恥ずかしくなり、俺は誤魔化すように笑った




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 その日の夜、ミコの家の中庭を貸し切り、盛大なバーベキューを行った


 シェラとシュンガイトさんは中睦まじく食事をし、カグヤもシュンガイトさんにじゃれついていた。ミコは食事しながら給仕をし、シェラに誘われたリュカロも顔を出した
 俺も細かいことを考えずバーベキューを楽しみ、久し振りに酒も飲んだ


 食事も終わり、俺とシュンガイトさんは帰路へ着く


 「ジュート君、キミとシェラの戦いは1週間後で構わないかな?」
 「はい、俺はいつでも平気です」
 「ありがとう。それまでは自由にしてくれて構わない。カグヤはキミの鍛錬に付き合うように言っておいたから、道場も自由に使ってくれ」
 「はい、ありがとうございます」


 シュンガイトさんの微笑みはいつもと変わらない


 「シェラはまだまだ強くなる。この1週間でどれだけ伸びるか、オレでも想像が付かない……ジュート君、心して掛かるんだね」
 「はい、シェラが本気なら、俺も本気でやるだけです」


 シェラとの戦いが、ここまで大事になるとは思わなかった
 俺の神器は知られてるし、最初から使うつもりだ




 俺は俺の戦いをする、それだけだ




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 それから1週間はアッという間だった


 カグヤと鍛錬し、リュカロの頼み事を引き受け、ミコの家でご飯を食べる
 アグニが全く帰ってこなかったので様子を見に行くと、大漁の酒樽を積み上げてガウェズリドラと酒盛りしてたりで、クロがめっちゃ怒ったりもした


 ガウェズリドラとサシで話したが、以外と気のいいドラゴンだった
 こんなにデカくてカッコいいドラゴンが、幼児退行してミコのおっぱいを吸ってたなんて、ホントに信じられん。ガウェズリドラを造った【龍神】は、なんでこんな感情をインストールしたんだ?


 そして、戦いの当日
 場所は〔ガウェズリドラ龍帝城〕の敷地内の広場
 広大な円形で石畳の地面、広場の端に玉座があり、豪華なイスの上には小さくなった〔真龍王ガウェズリドラ〕が座り、その脇には〔五龍ウーロン〕が並び、さらに近くには〔龍人族〕の戦士たちがフル装備で並んでいた


 シュンガイトさんやカグヤ、ミコとリュカロも正装している
 ちなみにシュンガイトさんの手首に、カグヤから送られた腕輪が付けられていた


 俺はすでに広場にいる
 シェラはまだ来ていない、気分はまるで佐々木小次郎だ
 すると、上空から灰色のドラゴンが飛んでくるのが見えた


 「……来たか」


 俺はポツリと呟く。なんかカッコいいだろ?
 ドラゴンの背には、戦闘用の正装をしたシェラがいた
 シェラは俺から少し距離を取って降り立ち、ドラゴンから降りてひとなですると、再びドラゴンは大空へ舞い上がった


 「待たせたな」
 「いや、気にすんな」
 「そうか、それにしても……ついにこの日がやって来たな」
 「ああ、【紫の大陸】で約束してから結構経ったよな」
 「うむ。でも……あの時のアタシじゃ、ジュートには絶対に勝てなかった」
 「へぇ、じゃあ今は?」
 「勝てる。アタシは強くなった」


 シェラは背中の槍を抜き、クルクルと回転させて構える
 俺は迷わず〔神化形態〕へ変身する


 「いい、いいぞジュート。お前の全てをアタシにぶつけてくれ」
 「シェラ、お前の本気の想い……俺も本気で返すよ」


 俺は『錬鉄の神銃アイゼン・ブラスター』を抜き、照準をシェラに向ける
 するとここで、ガウェズリドラが話し始めた


 『双方、いい目をしてる……シェラヘルツよ、我が〔舞姫〕よ、最高の戦いを。冒険者ジュート、【銃神ヴォルフガング】の〔神の器〕よ、その力を見せてみよ』




 俺とシェラはニヤリと笑い、2人同時に飛び出した




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 俺は一切の遠慮を捨て、『錬鉄の神銃アイゼン・ブラスター』を連射する
 狙いは全身、当たればどこでも構わない……が


 「チッ」


 シェラは全ての弾丸を躱し弾く
 驚いたのは俺より速く、最小限の動きで弾丸を回避したことだ
 弾丸は10発以上発砲した、しかしシェラは〔龍人族〕の身体能力を駆使
 身体を僅かにひねり、槍を縦に構えて弾丸を弾き、回避動作と合わせて攻撃モーションに移った


 「はぁッ!!」
 「ふッ!!」


 横凪の一閃
 俺も最小限のモーションで回避
 右手に『錬鉄の神銃アイゼン・ブラスター』を持ち、左手に【永遠の死の輝きエターナル・シャイニング・デッド】を装備
 弾丸と斬撃のコンビネーション攻撃を繰り出す


 「見える、見えるぞジュート!!」
 「へっ、やるじゃねぇかッ!!」


 俺の攻撃を躱し、いなし、弾き、受け止め、流す
 ここまでの攻防を生身で行うヤツは今までいなかった
 はっきり言って、クラスの誰よりも強い
 夜刀でも手こずるレベルだろう


 シェラの槍を受け止め、弾くことで距離を取る


 「認めるよシェラ、お前は最強の【特級魔術師】だ」


 恐らく、8大陸全ての【特級魔術師】が束になっても勝てない
 シェラはオニキスより遙かに強い


 「そうか、なら……アタシの必殺技、まぁ人間族が言う【特級魔術】を見せてやる」




 次の瞬間、シェラを中心に【灰】の紋章が広がった 




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 シェラが行った魔術は【灰】【灰】【灰】の融合ブレンド、即ち『固有属性エンチャントスキル


 〔龍人族〕秘奥の魔術・『鉄灰武装カルシュタイン・パイオン


 それは、灰銀の武具
 紋章から湧き上がるように、いくつもの武器が現れる
 剣・槍・根・双剣・大剣・鈍器。その全てが灰銀色の武具
 数は無数、広場全体を埋め尽くす武具の庭


 「な、なんだコリャ!?」


 まるで武器庫みたいな光景だ
 思わず近くの剣に手を伸ばし抜こうとしたが、抜けることはなかった


 「ムダだ、この武具はアタシしか使えない。この【灰】属性の武具は全てアタシが作り出した、アタシだけの「力」だ」


 シェラは〔龍天牙撃〕を背に納め、双剣を抜き手に取る


 「行くぞジュート、一騎当千の武芸を見せてやる」




 ここからが本番、やってやるよ



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