ホントウの勇者

さとう

真龍王国ガウェズリドラ⑯/デーボ溶岩道にて・深慮



 〔デーボ溶岩道〕は、〔ガウェズリドラ龍帝城〕の真裏から行ける溶岩洞窟で、この国で1番の危険地帯でもあるため、普段は立入が禁止されているらしい


 中は洞窟になっていて、暫く進むと溶岩が流れてる場所に着くらしい
 この国に来たときは気付かなかったけど、どうやら火山があるみたいだ


 「さて、頼むよミコちゃん」
 「はい、シュンガイト様」


 城の真裏に到着する
 入口は完全な洞窟だが、結界なのか、複雑な幾何学模様の見えない壁があるようだ。どうやらこの封印はミコにしか解けないようだ


 「………はい、解けました」


 ミコが見えない壁に手を触れると、壁がスゥッと消える


 「くふふ、シュンガイトさまと一緒~♪」
 「おい、カグヤ」
 「なんやジュート?」


 俺はこっそりとカグヤに聞く


 「お守りはどうなったんだよ?」
 「ふふ、明日には完成するで。よかったら見に来いや」
 「まぁ、気が向いたらな」




 そんな話しをしながら、洞窟内へ踏み込んだ




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 「お、〔グレーヤモリ〕やん。ほりゃっ!!」


 中に入った途端に、30センチくらいのヤモリがブワッと群がった
 その中の1匹に向かってカグヤは釵を投げる


 「よっしゃ、コイツは今日のおやつにするで。頼むでミコ」
 「はいはい」


 カグヤはヤモリを掴むと、ヤモリの頭に刺さった釵を抜く
 そしてそのまま頭を掴み、ミコに手渡した


 「お、おい……」
 「あれは〔グレーヤモリ〕って言う、この辺りでは高級な肉なんだ。内臓を抜いて、串焼きにすると絶品なんだ」
 「うん、アタシも食べたいな。ジュート、見つけたら捕まえてくれ」


 シュンガイトさんが解説し、シェラは便乗した
 正直キモい。俺は食べたくないけど……
 ミコは普通に持参した袋に入れてる。さすが中華料理店の娘


 「さて、進もうか。〔グレーデッドバイソン〕の住処は最深部。溶岩が流れる危険地帯だ」




 ヤモリの串焼きか……食いたいような、そうでないような




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 モンスターを退治しつつ進む


 ミコには戦闘能力がないことが分かり、前衛はシェラとカグヤ、後衛はシュンガイトさん、俺はミコの護衛というポジションで進む
 ミコは入口を開けてさよならではなく、最深部にも封印があるのでそこまで同行しなくてはならない
 モンスターを蹴散らしながら進むと、さすがにカグヤも気が付いた


 「……ふん」
 「カグヤ、どうした? アタシの顔に何か付いてるのか?」
 「……何でもないわ」


 シェラの顔を知らずに見つめていたらしい
 カグヤはぷいっとそっぽ向く
 俺には、カグヤが何を気にしてるのかわかった


 シェラは、恐ろしく強くなっている


 1つ1つの動きが精錬され、俺から見てもムダのあった動きが消えている
 戦法を変えたのか、槍だけではなく体術も変わった
 獣のような荒々しさは形を潜め、達人のような佇まいで冷静な動きを見せる
 この短期間にここまで変わるとは……やはり、才能と努力か
 シュンガイトさんのしごきは並ではない。シェラは気付いていないのか、ちゃんとシェラの「力」になっている
 はっきり言って、今のシェラはカグヤより強い


 「不味いな……」
 「どうしたんですか、ジュートくん?」
 「いや、何でもない」




 神器を使わなきゃ、今のシェラのは勝てないかもしれない




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 しばらく進むと、再び見えない壁が現れた


 「この奥が最深部。〔グレーデッドバイソン〕の住処だ……ミコちゃん」
 「はい」


 ミコは再び見えない壁に魔力を注ぎ、壁を解除する
 そして奥へ進むと、さすがに驚いた


 「おぉ……あ、暑い……」
 「なんや、これくらいで。情けないわ」
 「アタシ達には涼しいくらいだぞ?」
 「仕方ないよ。〔龍人族〕は熱さや寒さに強いから、人間族のジュートくんにはキツい暑さじゃないかなぁ?」
 「そうかもね。平気かい、ジュート君?」
 「な、なんとか……うへぇ」


 中はもの凄く広く、あちこちに溶岩が流れてる
 広さもそうだが、高さもある。50メートル以上はあるぞ
 あちこち岩場があり、高低差もかなりある。マグマの滝なんて初めて見た


 「手分けしてモンスターを探す。カグヤとオレ、ミコちゃんとシェラ、ジュート君は1人で平気かい?」
 「はい。平気です」
 「やった!! シュンガイトさまと一緒や♪」
 「よろしくね、シェラちゃん」
 「あ、ああ……シュン兄ぃ、なんで……」




 こうして、俺たちは別れてモンスター捜索することに




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 「シェラちゃん、どうしたの?」
 「……なんでもない」


 シェラは、なぜ自分がミコと組まされるのか分からなかった
 ミコと一緒に居るべきは、先ほどまでミコを守っていたジュートが適任だと思ったし、自分が1人でモンスタ-を狩るつもりだったので、正直なところ、戦闘能力が皆無なミコは邪魔だった


 だから、シェラは隠さずに言う


 「ミコ、お前は入口に戻れ。ここまで来たらあとはアタシ1人でも平気だ」
 「で、でも……シュンガイト様の言いつけだし」
 「ふん、戦闘になればお前に構ってやれないからな。悪いけど足手まといだ」
 「う……そ、そうだよね。ゴメン……」
 「悪いな、ここはアタシ達に任せて、入口で待ってろ」


 ミコは悲しそうに目を伏せ、ゆっくりと踵を返す


 「気を付けてね、シェラちゃん」
 「ああ」


 ミコはシェラを気遣い、その場から去った


 「……1人、か」


 シェラは、自分の判断は間違っていないと感じた
 実際にミコは戦う力がない
 〔賢母〕はガウェズリドラの世話係。戦闘には〔剣龍〕と〔龍炎〕がいる
 扉の封印があるから一緒に居るが、それは入口で待機してればいい話だ


 それなのに、なぜこんなに胸が疼くのか


 かつて、シュンガイトが言った言葉
 「戦って勝たなくてもいい、守れればそれでいい。その意味が分かるか?」


 勝たなくては意味がない
 どんなに強くても、相手を打ち負かせなければ意味がない
 勝たなくてもいいと言うことは、結果としては守れないと言うことだ


 「でも……アタシの求める「力」は、あんなに禍々しいモノだ……」


 シュンガイトと手合わせしてシェラは分かった
 徹底的にシェラを打ちのめす、血の通った兄
 慈悲など与えず、勝つために全力を出す。それはシェラが最も強く求めたモノ
 でも、それがあんなに恐ろしく写るとは思わなかった


 「もしかして、アタシが今まで戦って来た相手も……」


 闘技場で戦った相手は、シェラがどう見えていたのか
 少なくとも、シェラが見たジュートは、そんな風に見えなかった


 「ジュートは……強くて、かっこよかった……シュン兄ぃみたいに、怖くなかった……」


 それは、決意の違い
 打ちのめすことと、守ることの違い
 シェラの足は、いつの間にか止まっていた


 「…………え」


 集中しすぎていた、だからこそ聞き逃していた




 後ろから、ミコの叫び声が聞こえて来た




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 「ミコッ!!」


 シェラは全速力で来た道を引き返す
 するとそこに居たのは、あり得ないモノだった


 「な……〔グレーデッドバイソン〕だと……!? で、でも……この大きさは……!?」


 そこに居たのは、10メートル以上の大きさの狂牛
 全身が深い灰色、天を突く5本のツノ、足は6本、ギョロついた瞳
 本来の大きさの2倍はある、それはまさに変異種だった


 「ミコッ!!」
 「しぇ、シェラちゃん……た、たすけて……」


 ミコは足を怪我したのか、血が出てる
 全身を震わせて尻餅をつき、恐怖から失禁していた
 狂牛との距離は数メートル、このままではやられるのは目に見えていた


 「コイツ……!! ミコから離れろッ!!」




 シェラは〔龍天牙撃りゅうてんがげき〕を構え、狂牛に飛びかかった



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