ホントウの勇者

さとう

真龍王国ガウェズリドラ⑮/中華料理店にて(2)・シェラの悩み



 夕方。〔魔術修練場〕の前で、リュカロが見送りに来てくれた


 「お疲れ様ジュート、今日は本当にありがとう」
 「いいよ、気にすんな」
 「そうはいかないよ、はい、お礼」


 リュカロは俺に1枚のゴルドカードを渡してくる
 これはお礼だし、受け取っておこう


 「この時間帯ならシェラもそろそろ終わるはず、城の前で待っていれば来るはずだよ」
 「ああ。お前はどうするんだ?」
 「今日のデータを纏めないとね。今日1日だけでボクたちの魔術知識は10年進歩したといえる。研究員たちもやる気になってるし、しばらく研究に打ち込むよ」
 「ははは、ムリすんなよ? ミコが心配するからな」
 「なななっ!? みみみ、ミコは関係ないだろっ!?」


 分かりやすいリュカロと別れ、城を目指す
 すると、隣を歩いていたシロとクロが言う
 《ボクたちは先に帰るよ。シェラヘルツと話すんだろう?》
 「まぁな。一緒に来ないのか?」


 《2人きりのほうが話しやすいコトもあるワ、ちゃんと話なさいネ》


 そういって2匹は並んで歩き去った
 気を遣ってるのか、そうでないのか分からんな




 ま、話すことで楽になることもきっとあるよな




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 「……む、ジュートか」
 「よう、お疲れさん」


 シェラは疲れ切っていた
 「舞」とやらが、どこまで疲れるのかわからないけど、今のシェラは喋るのも辛そうなくらい憔悴しているのが分かった。これは身体だけじゃなくて、心も疲れてる


 「よかったらメシでもどうだ? 俺の奢りだ」
 「……そうだな、せっかくだし」
 「場所はミコの家でいいか? 昨日も行ったけど、あそこが1番美味いんだよな」
 「いいぞ。その代わり、アタシはたくさん食べるからな」
 「ははは、昨日のカグヤもいっぱい食べてたけど、シェラも同じくらい食うのか?」


 するとシェラの空気が変わった。なんで?


 「……ジュート、カグヤとご飯を食べたのか?」
 「え、ああ……うん」
 「……なんでだ?」
 「え~っと、SSレートのモンスターを討伐して……」


 簡単に事情説明
 シュンガイトさん云々は省いて説明した


 「な、なんだと!? だ、SSレート……しかも〔龍神満漢全席〕も……アタシだって食べたことないのに……」
 「えっと……」
 「よし行くぞ。アタシも〔龍神満漢全席〕を食べる。早く行くぞ」
 「ちょ、待てっての!?」


 シェラは俺の裾を掴んで引っ張り、歩き始めた




 よくわからんけど、カグヤに対して対抗心があるな




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 「あ、ジュートくんにシェラちゃん、いらっしゃい」


 ミコの家は今日も盛況だ
 時間が時間だからか、1階はすごく混雑してた


 「ミコ、〔龍神満漢全席〕を頼む。カグヤに食えてアタシに食えないはずがない」
 「え、い、良いけど······」


 ミコは俺を見た
 俺は苦笑して頷くことしか出来ない


 「で、では2階にご案内しまーす」


 まさか2日連チャンで来るとは思わなかった
 悪いけど俺はそんなに食えないからな


 「ふふふ、今日は食べるぞ」
 「ま、遠慮すんな」




 シェラと一緒にご飯なんて久しぶりだな




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 「うぅ〜ん、おいひぃ〜♪」


 回鍋肉を口いっぱいに詰め込み、愉悦の表情を浮かべてる 
 俺は昨日と同じ、すぐに腹一杯になった


 「ありがとなジュート、こんなに美味しいご飯」
 「気にすんな、元気出たか?」
 「······ああ」


 ウソだな、わかってたけど
 俺の中ではシェラは元気の塊だ。ここまで落ち込むのはかなり珍しい


 食事が終わり、ミコがお茶を入れてくれた
 昨日と同じく忙しいのか、お茶を入れたら直ぐに階下の手伝いに行ってしまい、ふと無言になる


 「······」
 「······」


 俺は何も言わない
 ここで俺から聞くのは違う。シェラが言えば聞くけどな
 するとシェラはポツリと言う


 「······聞かないのか?」
 「聞いて欲しいのか?」
 「······」
 「シュンガイトさんは妹を導くのは兄の役目って言ってた。だから俺から言うことはない。けど、お前が吐き出したいなら聞くし、俺の意見も言う」
 「······そうか」


 お茶の飲み終え、後は帰るだけ
 ここでようやくシェラは語りだした


 「なぁジュート、アタシは間違ってたのか?」




 縋るような、確認するような問だった




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 「ジュートと別れた後、アタシはひたすらモンスターと戦った。Sレートを狩りまくり、SSレートも1人で倒した。結果、やはり強さとは「力」という結論にたどり着いた」


 シェラは真剣に言う
 強さとは「力」……それも1つの答えだろう


 「ジュートと出会った頃よりアタシは強くなった。でも……どうしてもジュートに勝つイメージが沸かない。ジュートの言う「力」が理解出来ないから、アタシは限界を感じてるのかも知れない」


 テイマードで何かを感じていたシェラは、それを理解することが出来ずに悩んでる。そしてそのまま強くなり、答えを出さないまま別な答えにたどり着いた……ように感じる


 「この国に戻ってきて、ひたすら「力」を模索した。山に登ってモンスターを狩りながら、ジュートが来るのを待った。でも……わからない」


 シェラは辿り着きかけている。でもあと少しが分からないんだ
 だから戦い続けることで紛らわせている


 「シュン兄ぃと戦って分かった……今のシュン兄ぃは、未来のアタシだ。アタシが目指してる強さは、あんなに醜いモノなんだ。でも……アタシにはそれ以外、目指す強さが分からない」


 俺は思う。シェラはいずれ辿り着く
 あとは……きっかけさえあれば


 「ジュート、アタシはどうすればいい?」
 「……その答えをくれるのは、シュンガイトさんだ」
 「……そう、だな」




 シェラの悩みはわかった。シュンガイトさんに伝えてみるか




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 「……シェラがそんなことを」
 「はい。かなり悩んでました」


 帰宅後、シュンガイトさんと話す
 今日の出来事、シェラの悩みを話し、どういう対応を取るのか気になったのだ


 「……そこまでわかっているなら、シェラは必ず気づくだろう」
 「はい、でも……いつになるやら」
 「大丈夫、そこを気づかせるのはオレの仕事だ」
 「考えがあるんですか?」
 「……1つ、ある」


 シュンガイトさんは悩んでるようだ。なんだろう?


 「ジュートくん、キミにも協力してほしい」
 「え、俺がですか……?」
 「ああ、不測の事態に備えてね」


 俺はシュンガイトさんから作戦を聞く
 1つ1つ丁寧に、俺は聞き漏らさないようにする


 「……マジ、ですか?」
 「……ああ。危険だが……これしかない」
 「……わかりました」
 「ありがとう、キミならそう言ってくれると思ったよ」




 正直、あまり気乗りはしなかった




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 「今日は〔デーボ溶岩道〕へ行く」


 シュンガイトさんとシェラ、俺とミコとカグヤは演習場にいた
 俺はシュンガイトさんに頼まれて同行する


 「シュン兄ぃ、あそこはアタシたちでも立入禁止だぞ。ガウェズリドラ様のお許しがなければ近づくことすら許されないんじゃ……」
 「だからこうして行くんだよ。許しはすでに貰ってる」
 「あの、シュンガイトさま。〔デーボ溶岩道〕は〔剣竜〕の試練が……」
 「ああ。今日はそれとは別、ガウェズリドラ様の命令で、〔グレーデッドバイソン〕の肉を取りに行くんだ」


 シュンガイトさん曰く、溶岩洞窟の中に生息する狂牛で、エサの代わりに岩石を食べ、飲み水の変わりにマグマを啜るモンスターだ


 「冒険者ギルドのレートだと、S+~レートってところかな。油断は禁物だけどな」
 「ふん、1人でSSレートを仕留めたこともあるアタシには関係ないけどな」


 シェラは胸を張るが、気になることがあった


 「あの、カグヤや俺は分かるんですけど、ミコはどうして……?」
 「簡単さ。〔デーボ溶岩道〕の入口は、〔賢母〕にしか開けられないからだよ」
 「うん、この術式はおばあちゃんから教わったの」


 なるへそ。そういうことね


 「では行こうか。決して油断するなよ」




 こうして、俺たちは〔デーボ溶岩道〕へ向かう





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