ホントウの勇者

さとう

真龍王国ガウェズリドラ⑭/魔術修練場にて・リュカロと一緒



 「りゅ、リュカロ……平気か?」
 「も、もう食べれない……うっぷ」


 俺とリュカロは円卓に突っ伏していた
 「龍神満漢全席」は最後のデザート50皿まで来た
 しかし、俺とリュカロはダウン。目の前に並べられるデザートに手を付けることが出来ず、嬉しそうにがっつくカグヤを眺めることしか出来なかった


 カグヤの食欲は凄まじ……恐ろしい
 俺やリュカロよりちっこいくせに、手当たり次第ガツガツと料理を貪る


 「う~んしあわせや~、こ~んなに食えるのはジュートのおかげや~」
 「ど、どうも……」


 デザートのフルーツを食べながらカグヤが言う
 嬉しそうで何よりだけど、口に詰め込みながら喋るなよ




 円卓の上は、すぐにカラッポになった




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 食事が終わりのほほんとしてると、ミコがお茶を持ってきた


 「はい、お茶だよ」
 「あんがとな、ミコ。美味しかったで」
 「よかったぁ、満足して貰えて」


 ミコは聖母のような笑みを浮かべ、俺たちにお茶を出す
 こんなにいい子が、真龍王におっぱいあげてたんだよな……なんか変な感じだ。〔賢母〕というか乳母というか


 「はい、ジュートくん」
 「お、おう、サンキュ」
 「〔龍人族〕の料理はお口にあったかな? 人間族とは違う、辛い味付けが多いから、ちょっと心配だったけど……」
 「いや、美味かった。むしろこれくらいの味付けが好みだぜ」
 「そっか、よかったぁ」


 うーん。賢母、乳母、聖母……全てを兼ね備えた笑顔だな
 そのままリュカロの元へお茶を運ぶ


 「はいリュカロくん」
 「あ、ありがとう……」
 「そういえば、お店に来てくれるの久し振りだね。ふふ、嬉しい」
 「そ、そう!? あはは……」
 「うん。嬉しいよ」
 「ぼ、ボクも……その、うん」
 「?」


 なんか噛み合ってないな。どうした?
 カグヤはなんかニヤニヤしてるし
 すると、1階からミコを呼ぶ声が聞こえた


 「あ、お母さんが呼んでる。じゃあ行くから、ゆっくりしてってね」


 そう言ってミコは行ってしまった


 「残念やなぁリュカロ、ミコが行ってもうた」
 「ううう、うるさいぞカグヤ。ボクは別に……」
 「くっくっく、そう照れるなや。ウチやシェラにはバレバレやで?」
 「そ、そういうお前はどうなんだ!! シュンガイト様に気があることだってバレバレなんだぞ!!」
 「んな!? んなアホな!?」


 あぁうるさい。個室だからって騒ぐなよ
 まぁリュカロがミコに惚れてるのはわかった


 「おいおい、ケンカすんな。それよりリュカロ、そろそろ用件を言えよ」
 「むむ……そうだね」


 リュカロはようやく俺に向き直った
 幼なじみ同士、気が合うんだろうけどな。ちょっと羨ましい


 「キミにお願いしたいのは、魔術研究の手伝いなんだ」
 「魔術……研究?」
 「うん。〔神の器〕も複数属性持ちと聞く、だからキミには実際に魔術を使って、なぜ詠唱が不必要なのか、なぜ複数属性を操れるのか、その特性を調べさせて欲しいんだ」
 「なるほど。それって……痛いのか?」
 「そんなことはない。1番の目的は観察さ。魔力の流れを詳しく調べたりする」
 「うーん……いいけど、痛いのはイヤだぞ」
 「もちろんさ。少ないけど報酬も出す」


 研究者らしいな。まぁ痛くなければ別にいいか


 「カグヤ、そういうわけだから、明日は……」
 「構わへんよ。ウチも用事があるさかい」


 というわけで、明日の用事はリュカロの手伝い


 「そう言えば、明日はシェラが「舞」の奉納をするんだっけ」
 「ああ、そーいえばそうやな。まぁウチらには関係ないわ」
 「舞の奉納?」
 「うん。シェラは〔舞姫〕だからね。月に一度、ガウェズリドラ様を楽しませるために舞を踊る。そのために心技体全てを兼ね備えた女性が代々選ばれるんだ。でもこの数世代、ずっとシェラの家が選ばれてるけどね」
 「へぇ。ん?……それならカグヤは?」
 「………」
 「ちょ、ジュート!?」


 なにやら踏んではいけないスイッチらしい
 カグヤの顔色が悪くなった


 「心技「体」……ウチだって、もっと胸があれば……」




 あ、そういうことね。なんかゴメン




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 翌朝、起きたらすでにシュンガイトさんはいなかった


 「さて、今日はリュカロと一緒か」
 《おはよ、ジュート》
 《おはヨ》


 ベッドの上にはクロとシロ
 昨日は居なかったが、家に帰るとベッドの上で寝てたので、起こさないように2匹を抱きしめて寝た
 フカフカであったかい、最高の暖房器具だね


 朝食を簡単に済ませ外へ出ると、ちょうどリュカロが迎えに来た


 「おはようジュート、それと……【九創世獣ナインス・ビスト】の皆様」
 「おはようリュカロ」
 《普通でいいよ、ボクたちは偉くもなんともない、ただの【神獣】だからね》
 《ま、そういうことネ》


 クロとシロはのんびりしてる
 クロを俺の肩に、シロは俺の足下へ。いつのも場所だ


 「さ、行こうぜ。場所はどこだ?」
 「うん、場所は〔ガウェズリドラ龍帝城〕の敷地内にある、魔導修練場さ。そこが研究室でもあり、この国の魔術の全てでもある。まぁボクの家みたいな場所さ」




 昨日は狩り、今日は魔術か……忙しいね




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 「あ……」
 「お」


 〔ガウェズリドラ龍帝城〕の前で、シェラと遭遇した


 「ようシェラ、修行は捗ってるか?」
 「……まぁ、な」
 「シェラ、これから舞の奉納かい? がんばってね」
 「ああ、じゃあなジュート、リュカロ」


 シェラは笑うことなく去って行った
 淋しそうな、悲しそうな……哀愁を感じる背中だった


 「やれやれ、シュンガイト様にしごかれてるって聞いたけど、相当参ってるようだね」
 「ああ……大丈夫かな」
 「あと数日でキミと戦うんだろう? あんな状態で万全と言えるのかな……」
 「………」


 確かに、あんな状態のシェラと戦っても意味はない
 何かを悩むような、苦しむような……迷ってるような


 「舞の奉納は1日かかる。キミさえ良ければシェラの話を聞いてやるといい。シェラの仕事が終わる頃にこっちも切り上げるから」
 「いいのか?」
 「うん。シェラがしょげてる所なんて見たくないからね。シェラが連れてきたキミになら、話せないことも話せるかもしれない」
 「……そうかもな」
 「うん。ではこちらの仕事も始めようか」




 そう言って、研究所までゆっくり歩き出した




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 〔魔術修練場〕は、まるで五重塔にたいな建物だった


 木製の扉を開けると、様々な蔵書が積まれた部屋があり、魔術師みたいなローブを着用した利発そうな〔龍人族〕がたくさん居た
 中に入ると〔龍人族〕の研究者たちが迎えてくれる


 「リュカロ所長、こちらが例の……?」
 「ああ。〔神の器〕だ。さっそく準備を」
 「はい。わかりました」


 研究者が数人、奥の扉へ消えていく
 すると近くに居た1人が、リュカロに何かを手渡す


 「ジュート、さっそくだけどキミの属性を確認するよ。これを」
 「……コイツは」


 見覚えがある
 リュカロの手にあるのは掌サイズの水晶玉


 「これは〔属性水晶〕っていうんだ。これを触れると、触れた人間の属性の色に輝く。ボクだったら……ほら」


 リュカロの手にある水晶は、【灰】色に輝いていた
 間違いない。これはこの世界に来たときに〔クローノス城〕で触った水晶だ
 もの凄く懐かしい……もう半年も前だ


 「さ、どうぞ」


 俺は懐かしさを感じつつ水晶を受け取る


 「……やっぱな」
 「これは……黒? それにしては鮮やかな……いや、う~ん」


 水晶は真っ黒ではなく、青や緑、紫などの光沢を帯びていた
 今となってはおなじみの、俺にとっては安心感がある色だ


 「濡羽色だよ、こいつは……【無】属性の色だ」
 「【無】属性? なんだいそれは? この世界には【時】属性を入れた9属性しか存在しない。キミは鎖を操るって聞いたから、【灰】と【時】属性じゃないのか?」
 「違う。俺は9属性全てを操れるんだ」


 リュカロは驚きつつ、真偽を確認しようと質問する


 「そ、それはホントウかい!? バカな……9属性全てだと、ありえない……そんなのは〔勇者ヴォルフガング〕くらいかと思っていたが……」
 「ウソじゃないぜ、それを確認するんだろ?」
 「あ、ああ。それじゃ演習場に、順に魔術を使って欲しい。キミの魔力の流れを観測させてくれ」


 演習場へ移動し、全属性の上級魔術を見せる
 【時】属性は〔セーフルーム〕を発動、空間を作る魔術を見せてやった


 よくわからないが、研究者やリュカロに取っては収穫があったらしい
 俺にはさっぱり分からないが、これからの研究に役立てて欲しいと思う




 気が付くと、夕方近くになっていた
 

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