ホントウの勇者

さとう

真龍帝国ガウェズリドラ⑫/フォクス山にて・怒りの左手



 〔フォクス山〕に到着した俺とカグヤ


 「くふふ、モンスターを狩るのは久しぶりや」
 「そうなのか?」
 「うん。ウチは町から出られへんかったから、戦う相手は〔龍人族〕しかおらんのや。〔龍炎〕に任命される2年前には、シェラと狩り勝負なんてしとったんやけどな」
 「へぇぇ、勝敗は?」
 「もちろん、ウチの連勝や‼」
 「······ふーん」
 「······ま、まぁちょっとはシェラも勝ってたさかい」


 さて、どこまでホントなんだろうか


 「とにかく行くで。道中のモンスターはウチにお任せや」
 「わかったよ。クロ、〔オレンジヨミキュウビ〕の場所は?」
 《……近くには居ないワ。やはり山の頂上ネ》




 そんなわけで、カグヤと共に山登りだ




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 「はっはーっ!! 終わりやっ!!」


 カグヤの投げた「釵」が、この山に生息する灰色の狐、〔グレーフォックス〕の脳天を貫いた
 なんかテンションが高いんですけど……なんで?


 「んっふっふ~、久し振りのモンスター退治……心が躍るわぁ~」
 「おい、油断すんなよ?」
 「わかっとるわ」


 浮かれるカグヤを宥めつつ山登り
 俺は一切戦闘してない。カグヤに言われたので雑魚は任せてる


 「おいカグヤ、〔龍の石〕ってのは見て分かるのか?」
 「もちろんや、まぁ石っていうか鉱石やけどな。キラキラ輝くキレーな石やから、アンタでも直ぐに
分かると思うで」
 「ふ~ん」


 分かりやすいなら安心だ


 「〔龍の石〕は、加工が難しいけど武器になるねん。シェラやシュンガイトさまの武器も、〔龍の石〕から作られてるらしいで」
 「へぇ、じゃあどうやってお守りなんて作るんだ?」
 「ウチは知らん。とりあえず持って帰って、バニキスに作ってもらお」




 そんな話をしつつ登山は続く。帰りはアウトブラッキーだな




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 《気配が強い……それに、血のニオイ》
 《近いワ……》


 頂上に近づくにつれ、クロとシロが唸る
 カグヤも感じるのだろう、口数が少なくなっていく


 「カグヤ、SSレートと戦ったコトは?」
 「……知らんわ。なんやその……ダブル? レート、っちゅうのは?」
 「お前、ギルドの格付けを知らないのかよ?」
 「うっさいわ、そんなん知らんでも狩ればええ話や」


 なんでやねん
 まぁ、この感じなら心配なさそうだ


 《………このニオイ、まさか》




 シロがポツリと言うが、俺は特に気にしなかった




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 頂上近くに到着し、茂みの中に俺とカグヤは潜む


 「………」
 「な、なんや……アレ、は。バ、バケモノ……」


 目の前に居たのは、オレンジ色の毛並みを持つ何かだった


 体軀は人間に近く、全身が深いオレンジ色の毛で覆われている
 大きさは5メートルはあるだろうか、頭部は狐のような顔で、その表情は愉悦に歪んでいる
 1番の特徴はしっぽ
 太く長く、ふさふさしたしっぽが9本伸びていた


 そしてなにより、〔オレンジヨミキュウビ〕は、食事中だった


 「あれは……〔グレーラビット〕やな」


 既に事切れた〔グレーラビット〕の生体
 そして近くには子虎ほどの大きさのウサギが横たわっていた


 〔オレンジヨミキュウビ〕は成体のウサギを解体し、すでに腹部は骨のみとなっている
 内臓をグチャグチャ貪る姿は空腹ではなく愉悦に満ちている
 そして子供はまだ動いている。恐らくはデザートだろう


 「……惨いわ、胸糞悪い光景………じゅ、ジュー……ト!?」
 《ちょ、ジュート!?》
 《……やっぱりネ》


 俺はいつの間にか、『第二神化形態だいにしんかけいたい』を纏っていた
 あのウサギ親子に、ハミィが重なっていた




 「………ブッ殺す!!」




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 『ギ!? ギャァァァァァッ!?』
 「………」


 俺は『魂喰いの左腕ソウルイーター・アルマイト』で、キツネの顔面を鷲づかみした
 逃げることなんて許さない。コイツは始末する


 「胸糞悪ぃモン見せやがって……」
 『ギ、ガァァッ!?』


 キツネは俺の左腕を掴み暴れるが、そんな程度で外れるわけがない
 そもそも離すつもりもないけどな


 生きるために食べることは必要だ。弱肉強食を否定するつもりはない
 しかしコイツは【神獣】だ。食べる必要はなく、あるのは愉悦による殺し。そんな快楽を俺の前で、しかも〔グレーラビット〕の親子を殺しやがった


 親は死んでいるが、子供はまだ動いてる
 治療をすれば助かるだろう、けど……まだ子供のコイツは、すぐに他のモンスターのエサになるのは間違いない


 「………」
 『ブピュッ!?』


 俺はキツネの顔面を握りつぶして始末した
 ドサリと身体が地面に落ちて、そのまま死亡する


 「……よし、まだこれなら」


 俺はキツネを放置し、横たわる子ウサギに魔術を使う
 身体は治り、ムクリと起き上がる……そして、親の元へ


 『キュウ、キュウ』


 親は答えない
 悲しそうに泣き、ボロボロの頭部に身体を擦りつけてる
 〔神化形態〕を解除すると、近くにカグヤが来た


 「可哀想やけど……ウチらにはどうすることも出来へん」
 「……いや、俺が連れてくよ」


 俺はウサギの頭をなでると、ウサギは俺に身体を擦りつける
 それはまるで、縋るような……治して欲しいと言ってるようだった


 「ごめん、ゴメンな……」
 『キュゥゥ……』


 俺はウサギを抱きしめてなでる
 ハミィより耳が短く、身体は灰色だが濃淡があり、どことなく斑模様があった
 このウサギは親の死を理解してる。生まれたばかりのハミィと違い、キチンと死を理解してる


 「埋葬してやり、このままじゃ他のモンスターにも食われるで」
 「ああ」


 頂上は見晴らしがよかったので、そのままの場所に大穴を開けて埋め、墓石変わりに大きな石を作る
 何度もやった埋葬だ。この間、カグヤが花を摘んでくれた
 花を供え、俺は離れようとしないウサギに言う


 「行こう、お前の友達に会わせてやるよ」


 ウサギの名前か、どうすっかな


 「名前……そうやな、コイツは雄みたいやし、カッコええ名前がええな」
 「雄? わかるのか?」
 「ほれ、耳が短いやろ? 長いのがメス、短いのがオスや」
 「へぇ~、詳しいな」


 じゃあコイツはハミィのお婿さんにぴったりだ
 名前は……斑模様だから、マダラでいいか


 「よし、今日からお前はマダラだ。新しい家族を紹介するぜ」
 『キュ?』


 首をかしげてる。可愛いな
 俺は右手のバンドを起動してマフィに事情を説明する


 「……と、言うわけだ」
 『別に構わんが、毎回こういうことをするつもりか? お前が望まない理不尽な死は、この世界ではいくらでも起きてるぞ』
 「わかってるよ、でも……目の前でこんなコトが起きたんだ。手を伸ばしてもいいだろ?」
 『……やれやれ、とにかく送れ。くくく……ハミィといい、ウサギに縁があるな』
 「そりゃ俺も思うぜ」


 マダラをモフモフしてからマフィの所へ送る


 「……ようわからへんけど、あのウサギは平気なんか?」
 「ああ。もう大丈夫」
 「そっか、ほんならキツネをバラして素材回収、んで〔龍の石〕を探そか」
 《その必要はないよ》
 《そうネ……ハイ》


 すると、クロとシロがトコトコ歩いてきた
 2匹とも何かを咥えている


 「こ、これって……〔龍の石〕やん!?」


 キラキラした輝きの石。まるで夜空と星みたいな煌めきだ
 クロとシロが咥えられる大きさで、そう大きくはなかった
 俺はキツネを異空間に収納してから石を見る


 「いつの間に……」
 《キミがウサギに構ってる間に探したのさ》
 「おぉぉ~……おおきになぁ~」
 《ニャア……》


 カグヤはクロをなで、シロをモフる
 とにかく、これで依頼は完了だな


 「じゃあ帰るか。帰りは飛んで行くか……ほいっと」
 「な、なんや!?」
 「ほら乗れよ、コイツなら10分で帰れるぜ」


 アウトブラッキーにカグヤを押し込み空へ向かって発進する
 窓越しに、マダラの親の墓を見た


 「マダラは立派に育てるから……」




 そう決意し、町へ向かって発進した



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