ホントウの勇者

さとう

真龍王国ガウェズリドラ⑪/ギルドにて・龍の石



 「ありゃ、カグヤ様?」
 「バニキス、ちょっとええか?」


 入ってきたのは50代ほどの〔龍人族〕の男性だった
 白い伸びっぱなしの髪に、口元を覆う立派なヒゲ、細長い白いツノ
 何より……この人は強い。鍛えあげられた肉体に、傷だらけの拳。間違いなく歴戦の戦士だ


 「どうしたんです? 珍しい」
 「聞きたいことあんねん」
 「はぁ……いいっすけど、まずはそちらを紹介してくれないすかね。久し振りのお客さんだ」


 男性の視線は俺に向く
 カグヤは面倒くさそうに俺を紹介した


 「ほっほぉ~、冒険者ですかい。しかもS級……」
 「そうや、もうええか?」
 「いやいや、オレの紹介が済んでないでしょ。初めまして【天鎖狼てんさろう】くん、オレはこの〔ガウェズリドラ・冒険者ギルド〕のマスター、バニキスだ」
 「は、はい。俺はジュートです」
 「巷で噂の「鎖」使いがこの国に来たってコトは聞いてたが、実際に見ると……うん、こりゃ強えぇな」


 バニキスさんは俺をジロジロ見てニヤリと笑う


 「あーもうバニキス!! ウチの話が先や!!」
 「おっと、スンマセンねカグヤ様。それで何用ですかね?」
 「うん、実は……」


 カグヤの説明。ちょっと恥ずかしそうに言う


 「なーるほどねぇ、お守り……それなら丁度いいのがありますぜ」
 「ホントか!? なんや?」


 バニキスさんはギルドの依頼掲示板へ向かい、1枚の羊皮紙を剥がす
 その羊皮紙を俺に手渡してきた


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 〔オレンジヨミキュウビ〕・SSダブルレート【神獣】
 生息地・〔フォクス山〕最深部
 依頼内容・生態系を荒らす凶悪な【神獣】の討伐
 報酬金・1億1500万ゴルド
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 「………なんすかこれ?」
 「見りゃわかるだろ、討伐依頼だよ」


 いや、それは分かるけど
 こいつがお守りとどう言う関係があるんだよ
 カグヤが俺の手の依頼書をのぞき込み、バニキスさんに質問した


 「なんやこれ、〔フォクス山〕ゆーたら直ぐそこやないか」
 「そうなんすよ。最近モンスターの死骸があちこちにありましてね、この町の冒険者がデカい尻尾が9つのバケモノを見たんですよ、それで王都に問い合わせ文献を確認したところ、SSレートの〔オレンジヨミキュウビ〕だってわかったんでさぁ」
 「ふーん、それでお守りと何の関係があるんや?」
 「ああ、どうやらコイツは〔フォクス山〕の山頂をねぐらにしてるようで。その山頂にある〔龍の石〕を使って作った腕輪が、安全と幸運のお守りになるんですよ」
 「ふーん……安全と幸運か、ええな」


 あ、こりゃ決まりだわ


 「よーしジュート、その依頼を受けるんや」
 「いいけど……」
 「よっしゃ決まり!! 〔神の器〕ならSSレートもお茶の子さいさいだろ。せっかくだし素材も頼むぜぇ~!! SSレートの素材なんて滅多にお目にかかれねぇからな!!」




 おい、それが本音かよ




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 依頼を受諾してギルドの外へ出ると、カグヤが言う


 「じゃあ頼むでジュート、ウチは待ってるさかい」
 「は? お前も来いよ」
 「ムリや……ウチはこの国から出られんのや」
 「え、なんで?」
 「ウチはガウェズリドラ様の〔龍炎〕や。すなわちガウェズリドラ様をお守りするのが役目、この国から出たら誰がガウェズリドラ様を守るんや?」


 そりゃそうだ……けど、なんか可哀想だな
 う~ん、こんなときは


 「なぁ、真龍王がいいって言えば、行けるか?」
 「は? そんなこと出来るワケないやろ」
 「ま、モノは試しだ……聞こえるか、アグニ」


 俺は頭の中でアグニを呼ぶ
 ちなみにアグニは真龍王の所にいて、昨夜は帰ってこなかった
 どうやらミニサイズになった真龍王と、なぜかナハトと飲んでるらしい
 3匹でずいぶん盛り上がってた。この国の自慢の酒を出されてご機嫌だったしな


 すると、上機嫌な声が聞こえてきた


 《な~んだよジュート? 緊急の用事か~……へっへっへ、おいヴァーミリオン!! もっと酒持って来いや!! がっはっは!!》


 こ、こいつ……酔っ払ってやがる


 《あ~ん? なんか用事か~?》


 ああ、ちょっとカグヤと出かけたいから、カグヤの外出許可を真龍王から貰ってくれないか?


 《ほぉほぉ……テメェ~、ま~た新しい女にツバ付けたのかよ。節操なしだねぇ~》


 ちげーよ。いいから聞いてくれよ


 《わ~ったよ。おいヴァーミリオン、カグヤの嬢ちゃんの外出許可をよこせってよ、ああ、おう……おいジュート、いいってよ》


 ホントかよ……大丈夫なのか?


 《ああ、長期はダメだけど、近場ならいいってよ。ヴァーミリオンも酔っ払ってるから、行くならさっさと行きな。正気に戻ったら何か言うかもしれねーからよ》


 わかった、サンキュな。それと……飲み過ぎるとクロに怒られるぞ


 《がっはっはっは!! そりゃそうだ、気ぃ付けるわ》




 ったく、上機嫌すぎる。まぁいいけどな




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 「いいってさ。アグニが許可を貰ってくれた」
 「ほ、ホンマか!? ウチも行ってええのか?」
 「ああ。SSレートだし、危険だから来なくてもいいけど……」
 「行く行く!! 絶対に行くで!!」


 カグヤは外出が嬉しいのかピョンピョン跳ねる


 「町の外へ出るなんて2年ぶりや······へへへ」
 「2年ぶりって、お前いくつなんだ?」
 「ウチは18や」
 「ウッソ⁉」


 マジかよ、13歳くらいかと思ってた
 だってちっこいし、ペッタンコだし


 「······なんや、文句あるんか?」
 「いいいや、べべべつに」


 なんか怖いオーラを纏い始めたので誤魔化しておく




 結局、足を踏んづけられた




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 〔フォクス山〕は、町から数時間ほどの距離にある大きな山で、〔真龍王国ガウェズリドラ〕の人たちはよく狩りなどで入る山だ


 狩りを行うのは狩人と冒険者
 冒険者は薬草詰みも行い、若いなりたて冒険者は弱いモンスターを狩りながら下積みを行う場所でもある
 薬草、モンスター討伐を始めて数年で、国から出て外で依頼を受ける。それが〔龍人族〕の冒険者たちが通る道だ


 そんな〔フォクス山〕に現れた1匹の【神獣】


 《【神】たちも無関係ではなさそうネ······》
 《【女神】の復活が近いのかも、それで【神獣】が活発になってるのかな》


 クロとシロが言う
 こいつらの分析は頼りになるし、間違いない
 〔龍の石〕も匂いで分からないかな?


 「いいぞジュート、もっと飛ばせーっ‼」
 「わかったから落ち着けっての‼」


 【流星黒天ミーティア・フィンスター】の後部座席に立ち上がり、俺の肩に掴まるカグヤ
 俺の目の前、ちょうど燃料タンクの位置に座るクロ
 俺とカグヤの間に挟まるようにシロが乗ってる
 正直なところ、重量オーバー気味だ


 カグヤはずっとはしゃいでる。久しぶりの外出が嬉しくてたまらないみたいだ
 〔フォクス山〕までの道は整備されてるので順路は問題ない。天気もいいし、上手く行けば夜には帰ってこれる


 「クロ、シロ、モンスターの居場所の探知は任せたぜ」
 《エエ、相手が【神獣】なら、ここで倒しておかないと町に被害がでるワ。任せてネ》
 《うん、ある意味ラッキーだね。キミがこの町に来てるときに知れてよかった》


 そりゃそうか。普通の【神獣】でも、冒険者や傭兵に手は負えない
 でもここにはシュンガイトさんもシェラもカグヤもいるし、案外平気かもな




 さて、モンスター退治と〔龍の石〕採取、頑張りますか



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