ホントウの勇者

さとう

真龍帝国ガウェズリドラ⑩/下宿にて・カグヤと一緒



 カグヤとやって来たのはミコの店ではなく、飲茶を飲める喫茶店のような場所だった


 俺たちはそこで少し早い昼食を済ませた
 挙動不審なカグヤの様子が気になったので、俺は聞いてみた


 「おい、どうしたんだよ?」
 「·········」


 カグヤは湯呑みを持ったまま俺を見る
 顔は赤く、上目遣いで睨むように。そして意を決して話し始めた


 「あ、あんな······しゅ、シュンガイトさまのことなんやけど」


 カグヤは俺と目を合わせようとしない。モニュモニュと恥ずかしそうに言い出した


 「同じ男として聞きたいねん。その······男の人って、どうすれば喜んでくれるん? ウチ······シュンガイトさまに喜んで欲しいねん」
 「喜ぶって······?」
 「ウチ、シュンガイトさまのこと······好きやねん。年下の、妹みたいな女の子じゃなくて、1人の女として見て欲しいねん。だから、シュンガイトさまを振り向かせるために、何かしてあげたいねん」


 真摯な思いは、痛いほど伝わって来た
 どうすればわからず、悩んで居たんだろう


 「なんで俺なんだ? リュカロじゃなくて」
 「ふん、リュカロは知識だけの石頭や。アンタは冒険者やし、外の世界を知っとるから経験豊富やろ?」
 「まぁ······うん? お前は外に出たことないのか?」
 「当然や。ウチは〔龍炎〕やで。ガウェズリドラ様の炎のウチが、この国から離れるワケにいかんやろ」


 シェラとは随分違うな


 「ウチ······どうしていいか、全然わからへん。なぁジュート、教えてくれや、男の人が喜ぶこと」


 この言い方は不味い、勘違いするぞ
 普通の男だったらエロいことが浮かぶけど、カグヤはきっとそうじゃない。純粋に、好きだから喜んで欲しい。それだけだ
 だったら俺も答えよう、考えよう


 「そうだな······例えば、プレゼントとかは?」
 「プレゼント? お祝いでもないのに?」
 「建前なんてどうでもいいんだよ。「普段からお世話になってます」とか、「いつもありがとうございます、そのお礼です」とか、ようは気持ちが伝わればいいんだ。プレゼントを貰って喜ばないヤツはいない‼」


 おっと、つい力強く言ってしまった


 「プレゼント······で、でも、シュンガイトさまはお金持ちや。欲しい物なんて好きなだけ手に入れられるで」
 「アホたれ、別に買うことはねーだろ」
 「はい······?」
 「既製品じゃなくて、お前が手作りするんだよ。そうすれば店には売ってない、世界に一つだけのカグヤからのプレゼントだ」


 カグヤは考えこみ、ニヤリと笑う


 「なるほどな······いい考えや」
 「だろ?」
 「で、でも······シュンガイトさまが欲しい物なんて、ウチにはわからんわ」
 「そこは俺がリサーチしてやる。任せとけ」




 今日の夜、それとなく話題にしてみよう


 
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 その後、カグヤの買い物に付き合わされ帰宅


 すると既にシュンガイトさんは帰宅してた
 シェラのことも気になるけど、まずはカグヤとの約束を果たそう


 「おかえり、ジュート君。夕食は食べて来たかい?」
 「いえ、まだですけど。それにしても今日は早いですね」
 「ははは、シェラが気を失ってね。今日は戦えないから、早めに切り上げて来たんだ」


 とんでもないことをサラリと言うな、この人


 「さて、夕食の支度をするよ。待っててくれ」
 「あ、俺も手伝います」


 こうして男二人で台所へ
 シュンガイトさんは炒め物を創り、俺は土鍋でご飯を炊く
 せっかくなので炊き込みご飯にする


 「シェラのこと······聞かないのかい?」


 あ、そっちね
 まぁ気になるけど、シュンガイトさんのやり方に口を出すつもりはない
 それに、シュンガイトさんがやってることも分かる


 「シュンガイトさんは、シェラがどういう「力」を求めているか、身を持って教えてるんですよね?」 
 「······やはり、キミには分かったのか」


 シェラが求めてるのは圧倒的な力
 シュンガイトさんが振るうのは、守るための力
 決して相容れない、だからシュンガイトさんはシェラに伝えてるのだ
 慈悲のない力、相手を叩き潰す力、全てを蹂躙する力が、どれほど恐ろしいかを


 「シェラは強くなってきてる。けど、力を振るう理由がまだ分かっていない。このままだと必ず身を滅ぼす、だから······」


 シュンガイトさんは苦悩してる


 「シェラはオレの力に魅せられた。だからシェラがああなった責任はオレにある」
 「シュンガイトさん······」
 「シェラの兄として、あの子を導くのはオレの役目だ」




 この人ならなんとかなる。そんな気がした




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 あ、カグヤの頼みも聞かなきゃな


 「うん、ジュート君は料理も上手いんだね」
 「いやぁ、ははは」


 う〜ん、どうやって切り出そう
 いきなり趣味の話をするのもなぁ


 「ところで、カグヤと上手くやれてるかい?」
 「え⁉ あ、はい‼」


 ビビった。いきなりすぎる
 でも、チャンスかも


 「シュンガイトさん、カグヤってどんな子なんですか?」
 「そうだね······カグヤは才能だけならこの国でもトップレベルの器だ。オレの教えを瞬く間に吸収し、「釵」の扱いならオレより上手い。道場では間違いなく最強の存在だ」


 いや、そういうことじゃなくて


 「カグヤはシェラよりも強い。あの子はガウェズリドラ様を守るという決意があるからね」
 「えーっと、つまり?」
 「オレより強くなる日もそう遠くない。成長が楽しみだよ」


 うわー······こりゃ脈なしかも


 「は、はは。それにちっこくて可愛いですよね。なーんかネコみたいな」
 「はは、そうだね。シェラとは違う、もう一人の妹みたいな感じかな」


 い、妹······こりゃヤバい
 まどろっこしいな、もう勢いで聞いちまえ‼


 「シュンガイトさんは、欲しい物とかないんですか? 話を聞くと、自分のことは全部後回しなんじゃ?」
 「欲しい物······そうだなぁ、畑を耕す時間かな。両親が残した畑があるから、いつか本格的に農業をやりたいんだ」


 だ、ダメだこりゃ。かなりの強敵だ
 物欲がほとんどない。なんかおじいちゃんみたいだ




 どうしよう、カグヤになんて言おう




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 「と、言うわけだ······」
 「い、妹······」


 翌日、中華風カフェでカグヤと会い、昨夜のシュンガイトさんとの話をする
 カグヤはがっくりしてたが、俺は言う


 「シュンガイトさんは物欲がほとんどない。だから路線変更だ」
 「ろせん?」


 あぁ、よくわかってないみたい。でも続ける


 「欲しい物がないなら、貰っても苦にならない物をやるんだよ。例えば······お守りとか」
 「おぉ⁉ その手があったわ」
 「ああ。しかも既製品じゃなくてお前の手作りだ。愛情込めて作ったお守りを、シュンガイトさんが着ける······どうよ?」
 「いい‼ いいぞジュート‼ 素晴らしい案や‼」


 お褒め頂き光栄です


 「よし‼ バニキスのところへ行くで‼」
 「は? 誰?」
 「この町のギルドの責任者や、あいつは物知りだから、シュンガイトさまにピッタリのお守りを選んでくれるで‼」
 「お、おう······え、俺も行くの?」
 「当然や、さっさと行くで‼」


 てっきりここで終わりかと思ったのに




 仕方ない、もう少し付き合うか  、




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 ギルドは石造りの建築物で、中華を彷彿させる建物から見ると、かなり浮いていた
 まぁおかげで分かりやすいけどね


 いろいろと喋りながらギルドへ
 俺とカグヤの組み合わせは異色なのか、かなり注目を浴びた
 カグヤは近くにいた女性冒険者に聞く


 「なぁ、冒険者ならではのお守りってない?」
 「お守り、ですか? カグヤ様」
 「うん。できれば手作りがええねん」


 おっと、俺もサボってられないな
 俺も近くの冒険者から話を聞くが、目ぼしい情報はなかった




 するとここで、奥から誰かが出てきた



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