ホントウの勇者

さとう

真龍王国ガウェズリドラ⑨/謁見の間にて・秘密



 《おうおう、しばらく見ねー間に随分デカくなったじゃねぇか》
 『あ、アグニードラ……様。何故ここへ、いや、何故生きて……!?』


 俺やシュンガイトさんたちはワケが分からなかった


 「お、おいアグニ、知り合いなのか?」
 《まーな。オレがヴォルに出会うず~っと前からの知り合いさ。なぁヴァーミリオン》
 『そ、その名前は捨てた。今の我は〔真龍王ガウェズリドラ〕だ!!』
 《ふーん、喋り方も変わっちまって。あの生意気なガキだったお前がねぇ……》
 『ぐ……う、うるさい!! 貴様……』
 《おいおい、数千年ぶりに会う育ての親・・・・に向かってそりゃねーだろ。オレは久しぶりに会えて嬉しいぜ?》
 『あ、アグニードラ……様』


 ワケ分からん、なんだよこれ


 「おいアグニ、どういうことだよ」
 《ん? あぁ言った通りのままさ。コイツは昔、生まれて間もない頃、オレにケンカを売ってきたんだよ。まぁ当然ながら瞬殺してな、見込みがあったからそのまま育ててやったのさ。なぁヴァーミリオン》
 『む、むぅ……』


 アグニは懐かしそうに言う


 《当時のコイツは泣き虫でなぁ……ちょっと小突いてやると直ぐ泣きやがった。しかも妙な趣味まで持ってなぁ……》
 『ままま待て!? 待った!!』


 真龍王ガウェズリドラは、慌てたように大声を出す


 『アグニードラ、その話は待ってくれ!!』
 《別にいーけどよ。それより今日は飲もうや、久し振りの再会だ》
 『わ、わかった……全く、寿命が縮んだぞ』
 《ぎゃっはっは、オレらに寿命なんてねーだろ》


 うーん、何なんだよ一体
 するとハッとしたように真龍王が告げる


 『う、【五龍ウーロン】たちよ、下がってよろしい。その前にミコよ、いつもの勤めを頼む』
 「は、はい……」


 こんな真龍王は見たことが無いのだろう、少し困惑してる
 それはシュンガイトさんも、シェラもカグヤもリュカロも同じだった




 ミコを残し、俺たちは部屋の外へ出た




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 部屋の外に出た俺たちは、改めてアグニに聞いた


 シュンガイトさんたちも興味があるのか、アグニの話を聞く


 《さっきも言ったが、アイツはオレが育てたようなモンだ。力の使い方や戦い方なんかを教えたんだ。まぁアイツの尊厳に関わるから、お前たちにはこれ以上言わねーよ》
 「そ、そうですか……気にならないと言えばウソになりますけど。〔法翁〕としてガウェズリドラ様のことを知りたい気持ちはあります」
 「う、ウチもや……」
 「アタシは別に……う、うん」


 それはそうだけど、気になることが


 「あの、シュンガイトさん。ミコは中で何を?」
 「ん? ああ、〔賢母〕としての勤めさ。内容は知らないけどね」
 「え?」
 「〔賢母〕の勤めは極秘で、オレたちもも知らないのさ。仕事内容は他者に知られてはいけないと、ガウェズリドラ様に言われてるんだ」
 「ウチも聞いたけど、ミコは教えてくれんかったで」
 「ボクも知りたかったけどダメだった。歴代の〔賢母〕も、決して話そうとはしなかったから分からないんだ」


 へぇ、よっぽど重要な勤めなんだな
 するとそれを聞いたアグニが面白そうに言った


 《なーるほどな。あいつ……まーだ治ってないのか》
 「は? どういう意味だよ?」
 《見りゃわかる。おいシロフィーネンス、協力しろ》
 《……何をするんだい?》
 《決まってんだろ、〔神化形態〕だよ》


 アグニの中では答えが分かってるらしい
 でも、俺は秘密を暴く気なんてないぞ


 《ったく、アイツのクセも治ってねーな。まぁアレは病気みてーなモンだ、昔オレが渇を入れたら一時的に良くなったからよ、今回も治してやりてーんだ》
 「いや、う~ん……」


 俺はシュンガイトさんたちを見る
 全員話は聞いていたが、詳しい内容は話さないようだ


 「えっと、ガウェズリドラ様は重い病なのかい……?」
 《まぁそんなモンだ。あのミコって嬢ちゃんの力で一時的に良くなってるがな》
 「それって……命に関わるん?」
 《そこまでじゃねーが、まぁ苦しいだろうな……》
 「むむむ……き、気になる。〔法翁〕として、いやしかし……」
 《アイツの尊厳に関わるから内容は言えねーけどよ、頼むぜ》
 「アタシはいいと思うぞ、行ってこいジュート」
 「……わーったよ、行くぞシロ」
 《はいはい、アグニードラは優しいねぇ》


 俺は〔神化形態〕になり、【白犬神化ソウルオブシロフィーネンス】を纏う


 「おお……これが【神器】か。興味深いね」
 「こうやって見ると不思議やな。怖い言うより温かいで」
 「さすがジュートだ。う~ん? なんか薄くなったか?」
 「うん、強いね。さすがジュート君だ」


 マジかよ、視認するのも難しいこの形態を、全員はっきり認識してる
 盗賊たちなんて、真横にいても気が付かなかったのに


 《そりゃ目の前で変身すればね……》


 そりゃそうか。当然だよな


 《じゃ、行くぞ。わりーがジュート、中で見たモノは決して口外すんなよ》
 「わかってるよ」




 ガウェズリドラの秘密……なんだろう?




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 「…………」


 俺は我が目を疑った


 《やっぱな、アイツは【龍神】に生み出された最強クラスの【神獣】なんだが……妙なところでねじ曲がってんだ》


 あれは何だ? 重く低い、威厳の塊のような真龍王が
 真紅の瞳を覗いただけで、身体が一瞬竦んだ。それくらい強い真龍王が




 「ふふふ、いい子いい子……」
 『うぅ~ん、もっとぉ~♪』




 真龍王は、まるで赤ん坊のような大きさになっていた
 30センチ、40センチくらいだろうか。全身の体軀は灰と赤が入り交じった斑模様、翼には爪が生え、両手両足には金色の爪が生えている




 そんなドラゴンの赤ちゃんは、ミコの乳房を吸っていた




 「これは………夢か?」
 《しっかりしろジュート、コイツは現実だ》


 いや、だってさ……おかしいだろ?
 ミコの生乳は大ボリューム、ドラゴンの赤ちゃんはホントの赤ちゃんみたいに先端にむしゃぶりついてる
 ミコも聖母のような微笑みを浮かべ、真龍王を受け入れていた
 もしかして、これが〔賢母〕のお勤め……?


 《ヴァーミリオンのヤツは強いんだが……時々、幼児退行を起こすんだよ、それこそ発作のようにな。その度にオレは苦労したぜ。泣き止ませたら元に戻るから、ひたすら鍛えて発作を起こさないようにして、心を強く持つように育てた。でもよ、あの巨乳の嬢ちゃんを見てピンと来たぜ。どうやらまだ発作に悩まされてるってな》
 「見たくなかった……聞きたくなかった……」


 いやマジで
 ミコの巨乳が見れたのは嬉しいけど、真龍王の痴態は見たくなかった
 ああもう、後はアグニに任せるわ


 《ったく、マジで手のかかるガキだぜ》


 アグニは悪態をつきながらミコと真龍王の元へ
 俺は今見た光景を記憶の奥底へ封印し、来た道を引き返す


 《ジュート、ボクも見たくなかったよ……》
 「うん。今日は飲もうぜ」




 シロの呟きは、俺の心に染み渡った




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 謁見の間から出ると、カグヤがいた


 「おかえり、行くで」


 カグヤはスタスタ歩き出す


 「ちょ、どこへ?」
 「決まっとるやろ、〔剣龍館〕や。ウチがアンタを鍛えてやるって言うたやろ」
 「ああ、そう言えば……」
 「ふん、シュンガイトさまとの約束やさかい、さっさと行くで」
 「はいはい。ったく、シュンガイトさんが好きならさっさと告ればいいのに」


 するとカグヤはバッと振り返り、顔を真っ赤にして詰め寄って来た


 「ななな……何で知っとるんや!? 誰から聞いた!? シェラか、ミコか!?」
 「お、落ち着けって!?」


 つーかバレてないとでも思ってるのか?


 「うぅぅ~……」
 「わ、悪かった。もう言わねーよ」
 「な、なら……メシを奢りや。それで許したる」
 「は? なんで?」
 「うっさい!! さっさと行くで、今日は稽古なし!! ウチに付き合えや!!」


 ワケ分からん、なんだコイツは




 仕方ない、とにかくカグヤに付き合うか



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