ホントウの勇者

さとう

真龍王国ガウェズリドラ⑧/城にて・法翁リュカロ



 「さて、今日はここまでだ」
 「………」


 ボッロボロになったシェラは、気絶寸前で突っ伏していた
 俺は慌てて駆け寄り、魔術で傷を癒やす


 「明日は午後からだ。いいか……逃げるなよ」


 殺気すら籠もってるような目付きでシェラを睨む
 シェラはビクリと身体を震わせてた
 俺にはシュンガイトさんが何をしたいのかわかったが、俺の腕で怯えるシェラに耐えられるだろうか


 「しゅ、シュン兄ぃ……あ、アタシを、本気で……」
 「シェラ……」




 ガタガタ震えるシェラは、普通の女の子にしか見えなかった




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 シュンガイトさんと一緒に帰宅
 シロはエサはいらないと言って、部屋に戻った


 「さて、食事にしよう。夜も遅いし、簡単な物でいいかい?」
 「はい、俺も手伝います」


 男二人でキッチンに立つ
 運動もして腹も減ったが、ガツガツ食べる気分ではない
 肉や野菜を使った雑炊を作り、一人用の土鍋によそう


 「ジュート君は料理も上手いんだね」
 「いやぁ、冒険者ですし」


 よくわからん理由になってしまった
 シュンガイトさんは特に気にしてない


 「明日は1番に謁見がある。オレや他の眷属も同席するから、リラックスして望むといい」
 「は、はい。緊張しますけど······」


 確か、リヒテル魔教授の話だと、伝説のSSSトリプルレートモンスターなんだよな


 「大丈夫。ガウェズリドラ様は気さくなお方だ。キミに会いたいと言ったのも、単純に興味があるからさ」


 そうは言うけど······ねぇ?
 俺が【銃神ヴォルフガング】の〔神の器〕だなんて知ったら、どんな反応するかなぁ




 少し不安を抱えたまま、今日は早めに寝た




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 「おはようございます、シュンガイトさま」
 「おはようカグヤ······シェラは?」
 「さぁ? 先行くゆうて飛んで行きはりましたわ」
 「······そうか」


 まぁ昨日の今日じゃな
 それに、今日も午後から稽古付けるみたいだし
 っていうかカグヤ、俺は無視かよ


 「シュンガイトさまぁ、今日もウチと稽古して······」
 「そのことだけどカグヤ、今日からしばらくジュート君と稽古をしてくれ。オレはシェラを鍛えなくちゃいけないからね」
 「·········」


 なぜ俺を見る、カグヤ


 「ジュート君がこの国に来たのは、シェラと戦うためだからね。正式な戦いとは言えないけど、〔龍水晶〕を持って戦いに来たのは間違いない。その決意に答えるのも〔龍人族〕の使命だ」
 「わかっとりますシュンガイトさま。ジュートはウチが鍛えますわ」
 「頼むよカグヤ、キミには世話をかける」
 「そ、その代わり······お、お願いがあるんですけど」
 「なんだい? オレに出来ることなら」


 お、これはもしかして
 カグヤは赤くなり、モジモジしながら俯く


 「う、ウチと······」
 「カグヤちゃ〜ん、ジュートく〜ん、シュンガイトさま〜っ」


 なんと、ミコが手を振りながら走ってきた
 大きな2つの肉塊を豪快に揺らし、パタパタとやって来る


 「お、ミコちゃんか。おはよう」
 「おはようございます、シュンガイト様。カグヤちゃんとジュートくんもおはよう」
 「お、おはよう」
 「·········」


 こ、今度はミコを睨んでる


 「さ、行こうか。ミコちゃん、シェラのことは?」
 「いえ、お家に行っても居なかったので、ここかなと思ったんですけど······」


 シュンガイトさんとミコは話しながら歩きだす
 ミコにその気はないようだが、タイミングが最悪すぎる
 俺は未だに動かないカグヤに言った


 「い、行こうぜ」
 「······ふんッ‼」
 「いでぇッ⁉」




 なぜか足を踏んづけられた。痛い




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 「さぁ、ここが〔ガウェズリドラ龍帝城〕だよ」


 シュンガイトさんたちと来たのは、この国で1番巨大な城
 立派な石造りの地盤に、まるで映画のセットみたいな中国風の建築物。ホントにすげぇな


 シュンガイトさんの案内で、俺たちは城へ入る
 カグヤとミコは普通だが、俺はキョロキョロしながら歩いていた
 長い廊下を歩いていると、つい独り言が出てしまう


 「すっげぇな。こりゃ世界遺産モノだわ」
 《なんだいそれ?》
 「おっと、シロか」


 シロが俺の肩に前足をかけるように現れた


 「な、なんや急に⁉ なんでワンコが⁉」
 「び、ビックリしたぁ〜」
 《驚かせてゴメンね、龍の一族たち》
 「「しゃ、しゃべった⁉」」


 ありゃ、カグヤもミコも驚いてる
 シェラもシュンガイトさんも驚かなかったから、大したことないと思ってた


 「喋る【神獣】か······いや、伝説の存在である【九創世獣ナインス・ビスト】と呼ぶべきだね」


 すると突然、前から声がした
 俺とタメくらいの青年だ。灰色のローブを纏い、メガネをかけている
 シュンガイトさんは、にこやかに挨拶した


 「おはようリュカロ、早いね」
 「おはようございますシュンガイト様。残念ながらボクは2番手ですよ」
 「そうなんか? じゃあ」
 「そうだよカグヤ、1番はシェラさ。すでに謁見の間で待ってるよ」
 「う〜ん、どうしたんだろうね、シェラちゃん」
 「いいじゃないか。遅刻するよりよっぽどいいさ」


 ここまで話し、リュカロはようやく俺に向かう


 「初めまして。ボクは〔法翁ほうおう〕リュカロ。最近話題の冒険者、【天鎖狼てんさろう】ジュートとはキミのことだね?」
 「またそれか······」


 いつの間にか、よくわからん異名が付いている


 「この国にもギルドはあるからね。〔龍人族〕の冒険者たちはキミガこの国に来たことに驚いてるよ」
 「そ、そっか······」
 「あぁ、安心してくれ。キミが〔神の器〕であることは、外部には一切漏らさない。冒険者たちも承知している」
 「おぉ、そりゃどうも」


 うーん、このリュカロは頼りになる
 魔術師だって話だけど


 「良かったら今度、キミの魔術を見せてくれないか? ボクも魔術師の端くれでね」
 「いいぜ、参考になるかわからんけど」


 固そうなイメージとは裏腹に、リュカロはフレンドリーに接してくる
 歳も同じだし、タメ語でいいか


 「さて、【五龍ウーロン】も揃ったことだし、ガウェズリドラ様のところへ行こうか」




 シュンガイトさんに言われ、俺たちは歩きだした




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 歩くことなんと30分。あり得ねぇ広すぎる
 到着したのは、恐ろしく立派な造りの門だった


 門番であろう、筋骨隆々の〔龍人族〕が2人いる
 門の一部一部が美しい装飾で、黄金もふんだんに使われている
 かなりの重量もありそうだ


 門番はシュンガイトさんに気が付くと、胸の前で拳を握り、もう片方の手で包み込む動作をする
 その動作は挨拶なのか、俺以外の全員がやった


 俺は慌ててマネをする


 「ジュート君は少し待っててくれ。行くよ」


 シュンガイトさんは門の脇の出入り口から入り、ミコとカグヤ、リュカロも行ってしまう
 俺とシロは取り残された


 「や、ヤベェ······緊張してきた」
 《大丈夫だって。悪意は感じないよ》
 「いや、でもよ······」


 俺は小市民なので、王様の謁見なんて慣れてない
 そして待つこと5分、ついに来た


 門番が突然、門を開け始めた
 門は両開きの引き戸で、ゴゴゴゴと力任せに引っ張っていく


 完全に開いた門に戸惑っていると、門番が挨拶のポーズを俺にする。どうやら進んでいいらしい




 俺はゆっくりと歩きだした


 
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 謁見の間はかなり広い


 横幅だけでも50メートルはある
 しかも奥行きもハンパじゃないし、とりあえず一直線に伸びるレッドカーペットの上を歩く
 壁には彫刻が施され、着色もされているので、まるで壁そのものが絵画のような物語になっている


 そして1番奥、シュンガイトさんたちがいた


 奥は行き止まりで、高さ20メートルはありそうな灰色の壁がある
 ここだけはなんの彫刻もされておらず、少しだけ残念だった


 壁の手前にシュンガイトさんたちが並ぶ
 並びは3列で、右側にシェラとカグヤ、左側にミコとリュカロ、そして中心にシュンガイトさんの並びだ


 肝心の真龍王がいない
 すると、シュンガイトさんたちが壁に向かって跪いた


 「ガウェズリドラ様、ジュート殿がお越しです」


 壁に向かって言うシュンガイトさん
 俺はワケがわからず首を捻り、驚いた


 『うむ。久方振りの客人だ』


 壁から声がした
 そして、あり得ない光景が広がる


 「う、ウッソ······?」
 《これは驚いた······》


 ここでようやく理解した
 「壁」なんてなかった
 俺が「壁」と思ってたのは、真龍王の皮膚
 壁一面が振動し、亀裂が入り上下に割れる


 そこから現れたのは、真紅の瞳


 美しく燃える真紅の瞳
 その瞳は真っ直ぐに俺を射抜いていた


 『初にお目にかかる。我は〔真龍王ガウェズリドラ〕 偉大なる龍の帝王である』


 重く、低い声
 眼球でこの大きさなら、全長は100メートルはありそうだ
 間違いなく【神獣】だ


 『〔神の器〕か。そして反逆神ヴォルフガングを宿し者、間違いないな?』
 「そう、です」
 『安心しろ、危害を加えるつもりはない。我はすでに【神】と決別した身だ』


 そうなんだ。良かった······のか?
 眼球は俺を射抜いたままだが、真意は読めない


 『汝の目的は、我が舞姫シェラヘルツとの戦いであったな。最高の状態、最高の場所での戦いを期待する。よいなシュンガイトよ』
 「は、お任せ下さい」
 『うむ。それまでは汝は客人だ。旅の疲れを癒やすも良し、戦いに向けて励むもよし、好きにするがいい』
 「ど、どうも」


 話は終わりだろうか
 どうしようか迷い、シュンガイトさんを見た直後だった


 「ん?······お、おいアグニ⁉」


 俺の真横に赤い紋章が輝き、アグニが現れた
 この展開にシュンガイトさんたちは眉根を寄せる


 そして真龍王の瞳が、あり得ないくらい見開かれた


 『なっ······何故ここに、貴方が⁉』


 重く低い声は驚愕に染まっていた
 アグニは軽く、楽しそうに言った




 《久しぶりだな、ヴァーミリオン》





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