ホントウの勇者

さとう

真龍帝国ガウェズリドラ⑥/道場にて・グミ



 道場、と聞いてイメージするのはなんだろう


 俺は板張りの床に広さは教室くらい、暖房などは付いてない薄ら寒いイメージだ


 「さて、シェラは身体をほぐして演習場へ向かってくれ、カグヤは「釵」教室へ行っててくれ、後で様子を見に行くから」
 「わかった」
 「はい、シュンガイト様」
 「ジュート君、簡単にだけど案内するよ」
 「·········」


 俺は目の前の光景に圧倒されていた
 これは余りにも予想外だった




 「で、デカすぎだろ······」




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 こんな光景を、映画で見た記憶がある


 中国の城のような巨大な建物の前は広大な石畳の地面
 超規則正しい動きで、武術の型をなぞる門下生
 その数、数千はいるだろう


 敷地の広さだけで、小さな村くらいはありそうだ
 門下生も、おそらく数千、下手すりゃ万単位
 大きさはバラバラだが、教室となる城は幾つか見える


 「ジュート君? 大丈夫かい?」


 今更ながら、シュンガイトさんってとんでもない人なのかもしれない


 「あ、あの。予想外過ぎて言葉を失ってました」
 「あはは、そうなのかい?」
 「いやだって、道場って聞いてたから······」
 「そうだけど?」


 うーん、この人にとってはこれが道場なのか
 俺の想像力が貧困なだけみたいだ。なんか悲しい


 「簡単に説明しながら案内するよ」
 「お、押忍」




 何故か自然と言葉が出てきた




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 この道場は〔剣龍館けんりゅうかん〕と呼ばれ、シュンガイトさんが〔剣龍〕の権力を使って作らせたらしい


 作らせたと言っても、シュンガイトさんはここまでの規模の建築は望んでおらず、本来は一軒家程度の大きさだったらしい
 しかし、シュンガイトさんを慕う町の人たちが総出で建築に乗り出したのだ


 この町のヒーローであり、子供や大人の憧れの〔剣龍〕
 気さくな人柄で誰からも好かれ、強く優しく頼りになるシュンガイトさんのために、ここまでの大きさになったそうだ


 門下生を募ったところ、申込者が殺到
 現在の門下生は1万2000ほど、小さい子は2歳から、大人は90歳くらいまで幅広くいる


 当然ながら、シュンガイトさん1人では回せない
 なので、過去にシュンガイトさんに挑んだ〔龍人族〕の戦士を雇い、それぞれの分野の師範として教えているそうだ


 おおまかに分けてクラスは「武器術」と「武術」の2つ
 シュンガイトさんはどちらにも精通し、全ての分野で師範を努め、毎日必ず全ての教室で教えているそうだ。そりゃ疲れるわ


 「あ、あの······シュンガイトさんって何歳ですか?」
 「ん? 26だけど」


 すげぇ。俺と8つしか違わないのにこの人望
 この人は生まれ付いてのカリスマだな


 「いつか必ず、オレより強い〔剣龍〕は現れる。この道場が、次世代の子供たちに役立てば嬉しいんだ。それに〔剣龍〕以外はもう世代交代したからね」
 「真龍王の眷属、ですか?」
 「うん。眷属と言っても〔龍ノ理リュウノコトワリ〕を使えないから、まだ正式な眷属とは言えないけどね」
 「龍の······ことわり?」
 「ああ。〔龍人族〕の力の1つかな」


 そういえば、シェラがそんなことを言ってたな


 「さて、道場についてはこんなところかな。あとは好きに見回ってくれて構わない。オレはカグヤの様子を見てからシェラのところへ行くから、何かあったらあそこの演習場へ来てくれ」


 シュンガイトさんは遠くに見える建物を指差す
 どんだけ広い敷地なんだよ


 「よかったらお昼も一緒に食べよう。ごちそうするよ」
 「やった、いただきます」


 シュンガイトさんは微笑むと、そのまま行ってしまった


 《せっかくだし歩こうか。ジュートの武術に取り入れるには丁度いい機会だね》
 「だな。せっかくだし身体を動かしたいな」




 俺とシロは、広場の門下生を眺めながら歩きだした




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 明確に、どこかを見学したいわけじゃない
 なので、声が聞こえる場所をのんびりと眺めていた


 最初に入った道場の中は、武術の稽古をしてる
 年代別なのか、強さによって組み分けしてるのかはわからないが、年代的には同世代のクラスだ
 道場の中には入らず、外からこっそりとのぞき込む


 「スゴいな……」
 《うん。さすが〔龍人族〕だね、戦闘資質は計り知れない。個人個人の実力は相当な物だ》


 組み手を見るだけで分かる
 洗練された動きはA~S級冒険者レベル。傭兵に志願すれば、間違いなく引っ張りだこだな
 さらに驚いたのはその集中力
 俺の姿を見ても誰も気にしていない。むしろ集中力がすごく、誰も気が付いていない


 暫く眺め、隣の道場へ
 隣はもっと若い。というか幼年クラスだろう
 小さな3歳くらいの幼児たちが、受け身の練習をしていた
 自ら転び、身体を地面に転がして受け身を身体に染みこませる練習。幼児たちは楽しそうに道場の中を転がっている。なんか和むな
 すると、1人の幼児が俺の存在に気が付いた


 「あ!! 「にんげんぞく」だ!!」


 その言葉に幼児たちは転がるのを止め、おもちゃを見た子供のような笑みを浮かべて俺の所へ殺到する
 師範代の女性は困惑し、やれやれと苦笑した


 「わぁ、まっくろだね」
 「あ、わんこ!!」
 「かわいい、ふっかふかぁ」
 「まっくろいのは「にんげんぞく」だからかな?」
 「ちがうよ、「かみのうつわ」だよ」


 う、動けん
 わちゃわちゃと子供が群がり、ベタベタと触ってくる
 シロもなでられ、引っ張られ、抱っこされてる


 「こらこら、お兄さんが困ってるでしょ?」


 師範代の女性が子供を引きはがす。助かった


 「キミが例の……」
 「ど、どうも」


 当然ながら、全員が龍人族
 灰色や白い髪に、細長い角が生えている


 「シュンガイト様のお客さんね。ゆっくりしてってね」
 「あ、ありがとうございます」


 お、意外にも好印象だ
 すると、1人の少女が俺をじっと見上げてる


 「ん、どうした?」
 「……あまいにおいがするの」


 その言葉につられ、20人ほどの幼児が俺を見る
 たぶん、ポケットに入れておいたグミだろうな
 食べやすいし、超大量にあるので、おやつには丁度いいのだ
 ま、せっかくだしいいか


 「よしよし、食べるか……あ」


 俺は金色の袋を取り出すが、師範代の女性と目が合う
 練習中なのに、お菓子をあげてもいいのだろうか


 「まぁ……少しなら」
 「す、すみません」


 苦笑
 まぁ言質は取れた


 「なにこれ?」
 「いいにおい」
 「へんないろだね」


 子供たちはグミをジロジロ見て首をかしげてる


 「美味いぞ、ほら」


 俺は赤いグミをつまみ自分の口へ
 リンゴの甘酸っぱい味が広がり、プルプルした感触が広がる


 「ほれ、あーん」
 「あーん」


 俺は女の子の口に、同じグミを入れる
 女の子はもにゅもにゅとグミを食べ、目を輝かせた


 「おいしー!!」
 「ほんと!? わたしもー」
 「ぼくも!!」
 「はいはい、ちゃんとやるから並んでな」


 1人1袋は多いので、師範代に数袋渡す
 1人1粒だけ食べて、残りは今日のおやつにするらしい


 「ありがとー」
 「ありがとー!!」


 子供たちにお礼を言われ、この場を後にする
 いつの時代も子供はかわいい。世の中の宝だね




 せっかくだし、カグヤの様子でも見に行くか



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