ホントウの勇者

さとう

真龍王国ガウェズリドラ④/買い物にて・龍炎カグヤ



 「ねぇねぇシェラちゃん、これはどうかな?」
 「うーん……ダメだな。見てみろ、脇の下の縫い目が甘い。少し動いただけで破れそうだ」
 「いや、そういうことを聞いてんじゃねーぞ?」


 町の服屋にて、シェラとミコリッテさんは買い物
 シェラのズレた感想に悩みつつ、流行の服を選んでいた


 「あの、ミコリッテさん」
 「あ、ミコでいいですよ。みんなそう呼びますし」
 「じゃあミコさん」
 「あはは、呼び捨てで構いませんって。歳も近いですし」
 「じゃあミコ」
 「はい」


 うーん、癒やされる笑顔だ
 この人は例えるなら、小川のせせらぎだな
 シェラとは全くの正反対の人種だ


 「………おい、何を考えてる」
 「い、いや別に」


 シェラに睨まれた。サーセン
 ミコはいくつか気に入った服を購入し、荷物は俺が持つ
 気に入った服はけっこうあったそうだが、サイズがキツいので諦めたそうだ。まぁどこがキツいのかは俺には全く理解出来なかった。うん


 その後も何件か店を回り、気が付くと夕方になっていた


 「腹減ったなぁ。なぁシェラ、どこか美味い飯屋はないか? シュンガイトさんは遅いから、外で食事を済ませてくれって言われてるんだ」
 「そうか。なら今日はアタシ達とご飯だな。いいかミコ?」
 「いいけど……カグヤちゃんとも約束してるでしょ? いきなり連れてって大丈夫かな?」
 「平気だ。それより心配なのは、カグヤのヤツがジュートに絡むことだ。アイツはアタシと同じくらいケンカっ早いヤツだしな」
 「お前、自覚はあったのか……」


 カグヤ
 一体誰だか知らんが、どうやら危険人物らしい




 なんとなくイヤな予感を感じ、なぜか装備を確認してた




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 歩くこと10分。到着したのは1軒の中華料理屋だった


 立派な造りの門を抜けると、奥には観音開きの扉が見える
 まるで映画のロケでも使えそうな、歴史を感じさせる建築物だった


 「ここはミコの両親が経営してる、町でも有数の飲食店だ」


 シェラが紹介すると、ミコは嬉しそうにしつつも照れている


 「今日はシェラちゃんとカグヤちゃんを誘って、久し振りにお話ししたくなったの」
 「まぁ小さい頃からの付き合いだしな」
 「うん。リュカロくんも来れればよかったんだけど……」
 「アイツは石頭だし、勉強してる方が好きなんじゃないか?」


 門の先は広場になっていて、休日やイベントの日にはこの広場にイステーブルを出したり、簡易キッチンを持ち込んで調理したりするそうだ
 普段は奥の本館で、高級料理を提供してる


 「それにしてもスゴいな………あ?」


 俺は建物を見上げて気が付いた
 屋根のてっぺんに、何かいる


 夕日を浴び、柔らかな風になびく長い灰銀の髪
 その光景は、初めてシェラと出会った日を彷彿とさせる


 「腹減った……今日は好きなだけ食べていいんだろ?」
 「もちろん。お父さんもお母さんも張り切ってたよ」


 シェラとミコは気付いてない
 その人物は明らかに……俺を見ていた・・・・・・
 唇がニヤリと歪む




 そして屋根から飛び降りた何かは、一直線に飛んできた




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 俺は瞬間的にナイフを抜き、両手を交差させて受け止める


 「ッ!!」


 ギィン、と鈍い金属の音が響く
 シェラとミコはここでようやく振り返った


 「な!?」
 「えっ!?」


 襲撃者は灰銀の髪を振り上げ、攻撃的な瞳で俺を見る
 両手に持っているのは「サイ
 武器屋で見た、細長い銛のような武器だ


 「誰だ、テメェ……ッ!!」
 「……」


 キチキチと押される
 見た目は同年代くらいの少女なのに、もの凄い力だ


 「……」
 「ぐッ!!」


 離れた少女は身体をひねり一回転、距離を取る
 しかし、もの凄い直線ダッシュで俺に迫る


 両手の釵を自由自在に操り、猛烈な攻撃を仕掛けてくる
 手首の回転を操り軌道を変え、猛烈な速度で突きを繰り出し、俺の攻撃を釵で引っかけ体勢を崩す
 身体の使い方も抜群に上手い


 「このッ!!」
 「……」


 鎖を生み出し襲撃者を包囲する
 上下左右からの鎖は、シェラですら避けるのは不可能だ


 「………」
 「なっ!?」


 しかし襲撃者は、鎖を全て躱した
 身体能力、動体視力を駆使し、全ての鎖の軌道を読み切った
 それだけじゃない。鎖を躱しながら俺に近づき、釵を一本投げつけてきた


 俺は釵を弾き落とし、襲撃者に向かって特攻する


 「な……はッ!?」


 釵に気を取られた隙に、襲撃者は消えていた
 いや、俺の真上にいた
 釵を投げたと同時に飛び上がり、俺の注意が釵に向いた隙を伺っていた
 襲撃者の右手には釵、左腕には……細い鎖が握られている


 「……」


 襲撃者は細い鎖を投げ、俺の左腕を拘束する
 俺の右腕は釵を弾いたことにより開かれ、左腕は拘束されてる


 後は簡単
 剝き出しの胸元へ、釵を突き立てれば襲撃者の勝利だ


 「……ふふ」


 俺は見た
 襲撃者が微笑んだ瞬間を


 昔、とある囲碁漫画で読んだ言葉が蘇る


 「……なッ!?」


 俺は神器を纏い、その衝撃で鎖を切断
 衝撃波で体勢が崩れた襲撃者を地面に叩きおとし、首筋に【永遠の死の輝きエターナル・シャイニング・デッド】を突きつける




 「勝負ってのは、決着が付くまで笑っちゃダメなんだよ」




 襲撃から40秒ほど、これで決着だ
 すると背後から、怒りのシェラが叫んだ




 「いい加減にしろカグヤ!! ジュートはアタシのだ!!」




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 いや、お前のでもねーよ


 「カグヤお前……!!」


 襲撃者の少女は立ち上がり、長い髪を払う


 「うっさいわ。アンタばっかりズルいんや、ウチだって〔神の器〕の強さを確かめたかったんや」
 「なんだとお前っ!!」
 「ふん、ヤルんか? ウチより弱いくせに」
 「……いいだろう。そのケンカ買った」


 シェラが槍を構え、襲撃者の少女は釵を構える
 チリチリとした空気が流れ、ここでミコが爆発した


 「いい加減にしなさーいッ!!」


 その声に、シェラと襲撃者の少女はビクリとする
 〔神化形態〕なのに俺もビビった。それくらい怖かった


 「カグヤちゃん!! お店の前で暴れるなんて何考えてるの!!」
 「い、いや……ウチだって〔神の器〕と……」
 「それなら然るべき場で、然るべき場所で戦いを挑めばいいでしょ!! こんな夕食時に、お客さんがこれから入るって時に……ガウェズリドラ様の〔龍炎〕が営業妨害するの!?」
 「う、ウチはその……」
 「このことはシュンガイト様に報告するからね!!」


 ミコはめっちゃ怒ってる
 シュンガイトさんに報告、のあたりで襲撃者の少女は狼狽えた


 「しゅ、シュンガイト様に報告!? それだけは堪忍して!!」
 「じゃあジュートくんに謝りなさい!!」
 「ぷくく、怒られてやんの」


 シェラがクスクス笑ってる
 それを見た襲撃者の少女は、ピキリと眉を寄せた


 「シェラ、お前」
 「カグヤちゃん!!」
 「ぐむむ……」


 襲撃者の少女は俺に向き直り、ぺこりと頭を下げた


 「ごめんな。堪忍してや」
 「あー……うん」


 なんだろう、急に素直になった


 「ウチはカグヤ。〔龍炎〕をやっとる。よかったらウチとも戦ってや」
 「あ、ああ。いつかな」


 もう戦ったやんけ
 カグヤはシェラと同じ灰銀の髪で、長さは膝下まである
 シェラと似たような改造浴衣だが、腰にはベルトみたいな帯を巻き、そこに釵を差し込んでいる
 胸元が少し緩そうだが、見た感じペッタンコだ


 「……なんや、不快な視線を感じるで」
 「い、いや。よーしメシだ、ミコ、メシにしようぜ!!」
 「そうだね。カグヤちゃん、シュンガイト様には報告しないけど、もうこんなことしちゃダメだからね!!」
 「へいへい」
 「おいカグヤ、後で覚えてろよ」
 「ふん。ウチがアンタに負けるはずないわ」


 シェラとカグヤは睨み合い、ミコはため息をつく
 俺はミコの隣に並び、こっそりと聞いてみた


 「あの2人、仲悪いのか?」
 「う~ん、そうじゃないんだけどね」




 複雑な関係なのね。まぁ腹減ったし、メシが先かな





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