ホントウの勇者

さとう

真龍王国ガウェズリドラ③/町中にて・賢母ミコリッテ



 「さ、汚い場所で申し訳ないが、寛いでくれ」
 「き、汚い……これで?」


 汚いなんてあり得ない
 シュンガイトさんの家は、めっちゃキレイに整頓されていた


 住宅街の外れの一角に立つ、中国風の立派な建物
 大きさもさることながら、シュンガイトさんの性格だろうか、1室1室が丁寧に整頓されていた
 玄関を抜けて、ちょうど居間に当たる部分でシュンガイトさんが言う


 「ジュート君、この家にある物は好きに使って構わない。風呂はそっち、トイレはそっち、2階にも空き部屋があるし、1階部分も空いてるから」
 「あ、ありがとうございます」
 「遠慮することはない。客人なんて久し振りだし、オレも少し興奮してるのかな。ははは、シェラのことを悪く言えないな」


 シュンガイトさんはお茶を入れ、俺は椅子に座る


 「さ、ここで採れるプアの葉を煎じたお茶だ。苦いけど疲労回復にはうってつけだよ」
 「おぉ、いい香り……苦っ!?」
 「ははは。ゆっくりのむといい」


 お茶を啜りながら、これからのことを話す


 「オレはこれから用事があって、帰りは遅くなる。悪いけど夕食は外で済ませてくれ、通貨は共通だから問題なく使えるから」
 「はい。せっかくだし町を見てみようと思います」
 「そうだね。ギルドもあるし、武器屋なんかも覗いてみるといい」
 「はい。でもなんでギルドが……?」
 「まぁ、〔龍人族〕は人間族とも交流があるからね。ここに人間が来ることはないけど、外にいる冒険者の〔龍人族〕が、人間のマネをして作ったのがきっかけらしいよ」
 「そうなんですか……って、いきなり俺が行って大丈夫ですかね?」
 「大丈夫さ。キミの存在は町中……国中に知れ渡ってるから」
 「………頭痛くなってきた」


 シュンガイトさんは笑い、俺は苦笑する


 「さて、オレは行くよ。案内出来なくて悪いけど、町を楽しんでくれ」
 「はい。ホントにありがとうございます」


 そう言ってシュンガイトさんは出て行った。ホントいい人だ
 俺は1階の空き部屋に入り、拠点を決める
 六畳一間の部屋にはベッドと机、それとタンスが置いておる。簡単なビジネスホテルみたいで、清掃はキチンとされていた


 《町へ行くんでしょ?》
 「ああ。って……いつの間に」
 《まぁいいじゃないか。ちなみにクロシェットブルムは散歩してくるってさ》
 「はいはい。アイツも気ままなヤツだよ」
 《あはは。町へ出るならボクも付き合うよ》


 ま、連れはいたほうがいい




 俺とシロは、さっそく町へ繰り出した




───────────────


───────────


───────




 俺とシロが向かったのは城下町


 人通りは100パーセント〔龍人族〕
 ジロジロ見られるのも大分慣れた


 「買い出しと、武器屋、あとはギルドかな」
 《武器屋? また装備を増やすのかい?》
 「いんや、〔龍人族〕の武器って独特だしさ、面白そうだから見てみたい」


 道行く男女の装備を見るだけでも違う
 恐らくだが、ドラゴンの骨や皮で作った鎧に、武器は青竜刀や曲刀
 まるで銛の先端みたいな刺突用の短槍に、三節根みたいな棒
 見るだけでも面白い。買う予定はないが、眺めるのも一興だろう


 「道具屋、武器防具屋、薬屋……この辺りは普通の町だな」
 《だね。住人が全員〔龍人族〕ってことぐらいかな》
 「ああ、せっかくだしシロ、何か食べるか?」
 《大丈夫。親切な人達がおやつをいっぱいくれたからね》


 なんですと。いつの間に
 ちょっと淋しいけどまぁいいや、




 とにかく、買い物を済ませよう




───────────────


───────────


───────




 食材なんかは一般的な品揃えの他に、市場で見た珍味的な物も多かった
 それとは別に香辛料や調味料が多く、念のためいくつか購入。あとで水萌にでも見せて、いろいろ作って貰うのもアリかもしれない


 宣言通り、次は武器屋へ


 「いらっしゃい。お……噂の〔神の器〕か」
 「どうも、見てもいいですか?」
 「見るだけじゃなくて買ってくれ。人間族には作れない装備だよ」


 武器屋の店主は最初は驚いたが、すぐに笑顔を浮かべる
 どうやらホントに恐れられてはいない。珍しがってるだけのようだ
 この点に関しては、シェラに感謝すべきかも知れない。もしも俺の情報が流れずに、いきなりこの国を訪れていたら、どうなっていたのか分からない


 「ウチの目玉はそこの〔マテリアルウェポン〕の、〔破龍剣ヴェガ〕さ」


 店主が指差したのは、店の中央ショーケースに飾られた美しい青竜刀
 昇り龍の装飾が施された、青白く輝く曲刀だった


 「す、げぇ……」
 「ほほう、人間族にもわかるかね」
 「はい。こんなキレイな剣、久し振りに見た……」
 「……久し振り?」


 俺の言葉に店主はピクリと反応した


 「兄さん、この〔破龍剣ヴェガ〕に匹敵する剣を見たことがあるのかい?」
 「えっと、まぁそうっすね。例えばコイツとか」


 俺はヤシャオウガを肩から外し、鞘のまま店主に渡す


 「ほう、どれどれ………お、おぉ……美しい」 
 「コイツはダンジョンで手に入れたんです。どうやら神様の作った一振りのようで」
 「す、素晴らしいな……ダンジョンとは、どこの?」
 「〔戯遊機塔メガラニカ・マグダーラ〕っていう、最近出来たばかりのダンジョンです。お宝がザックザクで、〔マテリアルウェポン〕なんかも出やすいみたいですよ」
 「うむむ。〔マテリアルウェポン〕がザックザックか……これはギルドに依頼を出すのもアリか。いやしかし、せっかく入手した〔マテリアルウェポン〕をそう簡単に手放さないか……ううむ」
 「あ、あの」


 店主はウンウン唸り出す
 どうやら〔マテリアルウェポン〕入手の依頼を出すか迷ってるようだ


 「うむむ……」
 「えっと、失礼しま~す」




 俺はこっそりと武器屋を後にした




───────────────


───────────


───────




 「むぐぐ、全くシュン兄は、あむ、アタシの戦いを邪魔して、んぐ」
 「しぇ、シェラちゃん。食べながら話すのはお行儀が悪いよ」
 「ふん。食わなきゃやってられん、ミコ、マンジュを買いに行くぞ」
 「えぇ~? もういいでしょ、それに私、そろそろ行かないと」
 「まだいいだろ、むぐ。それにガウェズリドラ様のお世話はお前の部下がこなしてる。今日はヒマだと言ってただろう? いいからアタシに付き合え」
 「うぅ~……お買い物したかったのにぃ~」


 前方からシェラともう1人やって来た
 シェラは大きな紙袋に大量のマンジュを持ち、連れの少女はガックリしてる


 「……ん? お!? ジュート!!」


 げ、見つかった


 「ようシェラ。いい食いっぷりだな」
 「ああ………」


 シェラはキョロキョロ周囲を伺う


 「シュンガイトさんはいないぞ。用事があるから遅くなるって」
 「ホ……そ、そうか。じゃない!! さっきの続きだ、アタシと戦え!!」
 「ちょ、シェラちゃん!? こんな場所で武器を抜いちゃダメだってばぁっ!?」


 シェラはマンジュを咥えたまま槍を抜こうと手を回す


 「はぁ………」
 「なんだ、そのため息は……」
 「あのさ、シュンガイトさんも言ってたけど、ホントに俺と戦いたいなら、お互い万全な状態でやろうぜ。2日後に「舞」の奉納があるって言ってたし、怪我でもしたら大変だろ?」
 「む……」
 「頼むよシェラ。俺はお前と最高の戦いがしたい」
 「………」


 シェラはじっと俺を見つめ、フンと鼻息をだす


 「わかった。そこまで言うならそうしよう。その代わり、アタシとミコに付き合え」
 「いいけど……」


 俺はここで初めてシェラの連れと目を合わせる
 すると少女は背を伸ばし、丁寧な挨拶をしてきた


 「初めまして。ガウェズリドラ様の〔賢母けんぼ〕を務めております、ミコリッテです」
 「ど、どうも。ジュートです」


 ミコリッテさんは柔らかな微笑で挨拶する
 シェラと違い、純白のウェーブヘア。浴衣みたいなシェラと対照的に、きっちりと着物を着こなしている
 さらに驚くべきはその巨乳
 きっちりした着物を強引に押し上げる、超巨大な肉の塊がそこにあった


 「おいジュート、ブチ殺すぞ」
 「な、なんだよシェラ」
 「ミコのおっぱいを凝視してただろ」
 「………し、してねぇよ」
 「え、えと、その」


 ミコリッテさんは赤くなり、その豊かな胸元を押さえる
 なんとなく恥ずかしくなり、俺も目をそらしてしまった


 「と、とにかく行こうぜ。買い物だろ?」
 「そ、そうだよシェラちゃん。私、欲しい服があるんだ~」


 むくれるシェラを宥めつつ、俺たちは歩き出した




 いつの間にか、シロはいなくなっていた



「ホントウの勇者」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く