ホントウの勇者

さとう

真龍王国ガウェズリドラ②/市場にて・剣竜シュンガイト



 〔真龍王国ガウェズリドラ〕


 そこは〔龍人族〕にとっての故郷
 偉大なる〔真龍王ガウェズリドラ〕が作り出した町で、その大きさは〔王都グレーバシレム〕の2倍ほどの面積。住人は20万を越えた【灰の大陸】最大の町である


 住人は全て〔龍人族〕であり、主な産業は農業と狩猟
 綿や麻などの生産も盛んで、〔龍人族〕が纏う服装は高級品が多い
 服装はまるで中国の漢服のような物が多く、町並みもどこか中国のような歴史的建造物が多く建ち並んでいる


 〔龍人族〕が使用する武器は独特な物が多い
 青竜刀のような曲刀、長刀や長短槍、十手のような金属棒など
 さらに、中国拳法のような武術も多く、今ではかなりの流派が存在してる


 〔龍人族〕全員に共通するのは、頭から生える細い2本のツノ
 髪の色は灰と白が多く、着てる服も白っぽい物が多い




 つまり、全身真っ黒の俺は死ぬほど目立ってた




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 黒と白、水と油、朝と夜、光と闇


 今の俺の心境は、まさにそんな感じだ
 ってゆーか帰りたい。今すぐダッシュで


 「さてジュート君、腹も減ったしメシでも食うか。この町にしかないグルメを堪能させてやるよ」
 「あ、あの……シュンガイトさん」
 「なんだい、食べたいものでもあったか?」


 シュンガイトさんは特に気にせず俺を見る


 「いや、視線が……」
 「ははは、人間が来たのは久し振りだからねぇ、珍しいんだろ」
 「は、はぁ……」


 俺とシュンガイトさんは、町の入口近くの市場を歩いてる
 見たことも無い野菜や、生きたままの家畜、よく分からないグロい昆虫などが並び、細長い蛇をそのまま焼いて囓ったり、生きたままの仔牛ををその場で解体してステーキを作ったりしてる


 しかし活気に溢れた市場も、俺が歩くと静まりかえる 
 珍しそうにジロジロ見られたり、明らかに怯えたり、なぜか笑われたり


 シュンガイトさんは全く気にせずに、1軒の露店に話しかける


 「よぉイーダ、スコピオ炒めくれよ」
 「おぉシュンガイト、よく来たな……あ?」


 シュンガイトさんが小銭を払って店主に言う、店主が笑顔で答え俺を見て硬直
 俺はやりきれなくなった


 「お、おい。まさかこの人が……」
 「ああ。シェラの言ってた〔神の器〕さ。おいイーダ、仕事しろって」
 「あ、ああ。ちょっと待ってな」


 イーダと呼ばれた筋肉質のおっさんは、大きなビンから生きたままのナニかを取り出す


 「な、なんですかアレ?」
 「ああ。あれは〔グレースコピオ〕っていう昆虫さ。身体は硬い甲殻に覆われてるが肉は絶品でな、生きたまま炒めると殻が剥けていい味が出る。慣れるとやみつきになるぜ」


 ワラワラと、掌サイズの尻尾なしサソリといった感じだ。全身灰色、ハサミも付いている
 それが10匹ほど中華鍋に放られ、酒や調味料をぶっかけて豪快に炒められる
 すると調味料の影響か、身体はバラバラになり殻も剥け、剥けた殻はシナシナになってキクラゲみたいな形になった


 「お、おぉ……いい匂い」
 「だろ?」


 辛そうだがしょっぱそうな、そんな香り
 イーダさんは皿2枚に炒めたスコピオを盛り付け箸を添える


 「はいお待ち!!」
 「さ、熱いうちに食った食った」
 「は、はい」


 立ったまま皿を受け取り箸を掴む
 見た目は普通の炒め物。尻尾なしサソリの原型はない


 「あふっ、あふっ!? うまッ!!」


 シュンガイトさんは美味そうに食べてる
 よし、俺も1口……いただきます


 「……う、うんまッ!? 熱ッ!?」


 辛く熱い
 スコピオの食感はプリップリの海老だ
 野菜とマッチしてかなり美味い
 ご飯にのせて食べたら軽く3杯はおかわりできる


 「ははは、兄ちゃん、いい食いっぷりじゃねぇか」
 「はい、すっごく美味いです!!」


 イーダさんは豪快に笑い、俺はあっという間に完食
 シュンガイトさんも完食し、次の出店に向かった


 次の出店は、蒸し器の上にいくつもの蒸籠が重なった露店だ
 おばあさんが1人で店番してる


 「よぉポレル、マンジュくれ」
 「はいよ、って……あらら、噂の人間じゃないかい?」
 「ああ、せっかくだし町を案内してんのさ。この町に人間が来るなんて久し振りだろ?」
 「そうだねぇ、アタシが子供の頃だから……もう60年ほど前かねぇ。あんときは死にかけて迷い込んだ冒険者で、結局数日で死んじまったけどね」
 「そ、そうか。それよりマンジュを2つくれ」
 「はいよ。ほれ兄ちゃん、あっついから気をつけな」
 「ど、どうも。いただきます」


 マンジュ
 どう見ても饅頭だ。臭いといい形といい、まさに饅頭
 俺はさっそくかぶり付く


 「おぉ……ほっくほく」


 柔らかく、中身は豚肉と野菜
 肉汁がジューッと染み出し、深く濃厚な味わいが広がる


 「美味いだろ? この辺はオレの庭みたいなモンだし、まだまだ美味い店はたくさんあるぜ?」
 「おぉ、そりゃ楽しみです」




 こうして、俺とシュンガイトさんは市場を堪能した




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 市場を抜けた先は住宅街。シュンガイトさんの家もここにあるようだ


 「シュンガイトさん、シェラは家ですかね?」
 「いや、アイツのことだ、ミコちゃんやカグヤの所にでも行ってるだろうな」


 誰だか知らんが家ではないらしい
 今日はこのまま帰宅するのだろうか


 「あ、ちなみにオレとシェラは一緒に暮らしてないよ」
 「え、そうなんですか?」
 「ああ。オレは〔剣竜〕だし、アイツも一応〔舞姫〕だからな。専用の住宅に1人で暮らしてる」
 「えっと……どういう意味ですか?」
 「うーん、簡単に言うと、〔龍人族〕から選ばれた5人の戦士だな。まぁ力だけの戦士じゃないけどね」


 シュンガイトさんは簡単に説明してくれる
 近くに公園があったので、そこで一休みすることにした


 「まぁ説明はしなきゃと思ってたから丁度いいや。この国の盟主であり象徴でもある〔真龍王ガウェズリドラ〕様の眷属に、【五龍ウーロン】と呼ばれる5人の戦士がいるんだ。そいつらはそれぞれ、〔舞姫まいひめ〕・〔剣竜けんりゅう〕・〔法翁ほうおう〕・〔賢母けんぼ〕・
龍炎りゅうえん〕と呼ばれ、それぞれが重要な役割を担っている」


 ようは四天王とか十二神将みたいな呼び名か


 「〔舞姫〕はガウェズリドラ様に奉納する「舞」を舞い、〔賢母〕はガウェズリドラ様のお世話、〔法翁〕は〔龍人族〕の知識を守り伝え、このオレ〔剣竜〕は〔龍人族〕の守護者、〔龍炎〕はガウェズリドラ様の炎……つまり、ガウェズリドラ様の守護が目的さ」
 「じゃ、じゃあシュンガイトさんは、〔龍人族〕で最強の戦士……ですか?」
 「う~ん、みんなはそう言うけど、オレはそうは思わない。オレより強い戦士は間違いなくいるだろうさ」


 謙虚だ。シェラとは全く違う
 シェラが荒れ狂う洪水だとしたら、この人は雄大なる山脈だ
 俺はシュンガイトさんの穏やかな佇まいに好感を覚えた


 「夕食後に話そうと思ったけど、流れで言っちゃうね」
 「え?」
 「ジュート君にお願いがあるんだ」


 シュンガイトさんは申し訳なさそうに言う


 「まず、シェラがキミに渡した〔龍水晶〕を返して欲しいんだ。それは〔龍人族〕の秘宝で、代々〔舞姫〕が継承している重要な宝なんだ」
 「やっぱそうですよね……」
 「ああ。シェラはキッチリと叱っておいたよ」


 俺はポケットから〔龍水晶〕を取り出してシュンガイトさんへ渡す


 「ありがとう。それともう1つ、ジュート君の存在が〔神の器〕であることは国中が知っている」
 「は、ははは……」
 「申し訳ない。それで、ガウェズリドラ様が君に会いたいそうなんだ」
 「え、マジすか?」
 「ああ。出来れば3日後……〔ガウェズリドラ龍帝城〕で、謁見をして欲しい」
 「えっと、構いませんけど……食べられたりしませんよね?」
 「ははは、大丈夫さ。最後にもう1つ」
 「はい」
 「ジュート君の目的はシェラとの戦闘だよね。あのバカ妹のためにここまで来て貰って申し訳ないが……その戦いは、10日ほど待って貰えないだろうか」
 「と、10日ですか?」
 「ああ。まず2日後にガウェズリドラ様へ「舞」の奉納がある。あとは……今のシェラじゃ、絶対にキミには勝てない。だからアイツを鍛えて最高の戦いをキミに送りたい。あの場で戦いを止めたのはキミのためじゃない。旅の疲れもあり、到着したばかりで準備もままならない状態のキミに負けるシェラを止めるためだったのさ」
 「やっぱそうでしたか……」
 「ああ、せめてキミに一矢報いるくらいに鍛えてから戦わせる。それがシェラと戦うためにここまで来てくれたキミに対する最高の礼儀だと思う」


 シュンガイトさんは優しく微笑む
 俺のため、シェラのため、最高のステージを作ろうとしてる


 「わかりました。それで構いません」
 「ありがとう。それまではオレの家を使っていいよ、空き部屋はいくらでもあるし」
 「はい。お世話になります」


 シュンガイトさんは立ち上がり、俺も立ち上がる


 「さて、家に案内するよ。ここからそう遠くないし、近くには各種商店やギルドもある。よかったら覗いてみるといい」
 「わかりました」


 滞在は10日、もしくはそれ以上




 せっかくだし、いろいろ見てみるか
 

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