ホントウの勇者

さとう

真龍王国ガウェズリドラ①/龍の渓谷にて・【灰の特級魔術師 シェラヘルツ】



 〔龍の渓谷〕……そこは霧に包まれた、美しい山脈だった
 しかし、俺は頭を抱えていた


 『ギャオォォォォッ!!』


 〔龍の渓谷〕に到着し、さっそく俺は踏み込んだ
 しかしそこで待っていたのは、巨大なドラゴンの咆吼だった


 霧に包まれた渓谷は神秘的で、どことなく中国の山奥を彷彿させる
 木々は風で揺れ、流れる川は清らかな清流
 そして、空を飛び、地上を蹂躙する巨大な生物




 渓谷内は、野生のドラゴンの住処だった




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 〔龍人族〕の領地内で、ドラゴンを倒していいのだろうか


 そう考えていた俺だが、直ぐにその考えは変わった
 何故なら、ポケットに入れておいた〔龍水晶〕が輝きだしたからだ


 「な、なんだ……?」
 《これは……【龍神】かな》
 《みたいネ……》


 その光に圧倒されたのか、目の前のドラゴンが頭を垂れる
 まるで、この水晶の光に怯えてるようだった


 「そう言えば、こいつは道しるべだっけ」
 《うん、その水晶から流れる力を感じる……》
 《シロフィーネンス、案内出来るワネ?》
 《任せて。こっち》


 シロはゆっくりと歩き出す
 すると、俺の脇に赤い紋章が輝いた


 「どうしたアグニ?」
 《いや、なーんか懐かしい気配がするんだよなぁ》
 「は?」
 《……まぁいいや。分かったら言うわ》
 「お、おい」


 アグニは消えてしまった
 何なんだよ一体。ワケわからん




 まぁ、とりあえずシロに着いていくか




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 歩くこと半日


 霧はますます深くなり、そろそろヤバい
 川沿いに進み、シロの案内を信じて進む


 《こっちだね》
 「こっちって······山の中か?」
 《うん、近いよ》


 〔龍水晶〕の輝きは衰えることなく、ますます光る
 まるで出口が近いことを知らせてるようだった


 なんの整備もされていない森を進むと、小さな洞窟があった
 大人が苦労して通れるレベル、普通だったら入ろうと思わないとても歪な洞窟だ
 洞窟というよりは、積み上げた岩石の隙間と言ったほうがしっくりくるな


 「······ここ?」
 《うん。間違いないよ》
 《確かに、ここから力を感じるワネ》
 《よし、行こうか》
 「あ、ちょっ⁉」


 クロとシロは隙間から潜り込み、さっさと行ってしまう


 「あぁもう、わかったよ」


 俺は覚悟を決めて四つん這いになり、岩の隙間を潜る
 なんでこんな探検隊みたいなことを




 魔術で灯りを生み出し、俺は進んで行く




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 暗い、狭い、息苦しい


 こんなところにホントにあるのか
 俺は半信半疑で這って進む


 「お〜い、クロ、シロ〜」
 《なに?》
 「まだかよ、さすがに苦しいぜ」
 《もう着くワヨ。ホラ······》


 すると、微かな光が奥に見える


 「おぉ、あれが······」
 《出口だね。お疲れ様》


 岩場を抜け、ようやく光を浴びる
 すると、俺の眼前に、物凄い光景が広がった


 「こ、これが······」
 《〔龍人族〕の首都、〔真龍王国ガウェズリドラ〕だね》


 俺は岩場の上から見下ろすように見る
 メチャクチャでかい、今まで巡った王都よりでかい
 超巨大な岩場のくぼみを塀として、巨大な町が作られてる
 上空にはドラゴンが飛び回り、岩場からは滝まで流れてる
 全体を見回すのに首の動きだけでは足りず、身体をほぼ1回転させなくてはならなかった


 「す、げ······」
 《どうやら完全な自給自足みたいだね。ほら、あそこに畑があるよ》
 《人口は数万以上はいるワ。まさに龍人族の王都ネ》


 俺は圧倒されつつ周囲を見回す


 「入口は······あそこか?」


 城下町の手前に、巨大な円形の広場がある
 畑、円形の広場、城下町、城と行った流れで進めそうだ
 それ以外にも、よくわからん広場がいくつも見える


 俺は現在地から進めそうな道を探し、広場まで降りる
 畑を経由しなくても、広場まで行けそうだ




 龍人族の町まであと少し。シェラのヤツ元気かな




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 「来たか、ジュート」




 円形の広大な広場にシェラはいた
 槍を背負い、近くには大きなドラゴンが控えていた


 「さぁ、約束通り······行くぞッ‼」
 「ちょ、ま、待てっての⁉」


 あまりにも突然で驚いた
 当たり前のようにシェラがいて、槍を構えて襲って来た


 「あーもうっ‼」


 俺は両手にナイフを構えて槍を受け止める


 「ずっと、ずっと待っていた‼ 修行に明け暮れながらお前を待っていた‼」


 槍を薙ぎ、突き
 格闘を混ぜながら俺に迫ってくる
 余りにも真摯な一撃。闘技場で見たシェラとは別人だ


 それに比べて俺の立ち上がりは遅かった


 「くっ‼」
 「はァァァァッ‼」


 洗練された槍さばきは、まだまだスピードが上がる
 ここで俺はフィンテッドに言ったことを思い出す


 シェラは、搦手に弱いかもしれない


 「喰らえッ‼」
 「むッ⁉」


 俺は地面鎖を生み出し、シェラの足に絡めようと操る
 しかしシェラは槍の先端で鎖を絡め取り、そのまま俺に向かって投げつける


 「甘い」
 「お前がな」
 「なにッ⁉」


 勝ち誇るシェラ
 俺はシェラの投げた鎖を躱し、シェラの背後に再度鎖を生む 
 地面の鎖に集中させ、槍先で鎖を絡めたと同時に背後から鎖を生み出して腕に巻きつけた


 「クッ⁉」


 シェラの動きが止まり、体制が崩れる
 俺はボディブローを喰らわせようと拳を振り被った






 「は〜い、そこまで」






 しかし、腕を掴まれて俺の動きも止まった




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 俺の腕を掴んだのは、20歳前半くらいの男性だった
 シェラに集中してたとはいえ、全く気が付かなかった


 「邪魔するなシュンぃ‼ アタシとジュートの真剣勝負だ‼」
 「あのな······これのどこが勝負だよ」
 「何だと‼」


 男性は俺の腕を離し、目配りをしてシェラに向き直る


 「ったく、ジュート君はここに来たばかりだろうが。旅の疲れもあるし、身体だって本調子じゃない。そんな状態のジュート君にお前はいきなり襲いかかったんだぞ? 準備万端で、いつでもかかって来いのお前は」
 「ぐっ······そ、それは」
 「そんなのは勝負じゃない。ただのケンカ、いや、それ以下だ」
 「むぐぐ······」


 男性はシェラを叱りつけ、再び俺に向き直る


 「すまんねジュート君。妹が失礼をした」 
 「あ、いや······」


 妹。つまりシェラの兄貴か


 「あの、俺のこと知って······?」
 「ああ。シェラのライバルっていう〔神の器〕だろ?」
 「ぶっ⁉」


 なんで〔神の器〕ってバレてんだ⁉
 俺はシェラを見る


 「そりゃアタシが町中に言ったからな。近いうちに最強の〔神の器〕がやって来るって」
 「何を言っちゃってんのお前は⁉」


 こ、この野郎。どうしてくれようか
 するとシェラの兄貴が笑って言う


 「ははは。〔神の器〕が恐怖の象徴、神の尖兵なんて呼ばれてたのは昔の話さ。今は力を持った人間程度の解釈だから心配ない。むしろ興味が尽きない存在さ」
 「は、はぁ」


 ホントにそうなのか?
 俺が今まで神経質だっただけなのかな


 「おっと、紹介が遅れたね。オレはシュンガイト、シェラの兄貴で〔剣龍けんりゅう〕だ」
 「俺はジュートです。その、剣龍?」
 「まぁ龍人族の称号みたいなモンだ。とにかく、まずは町を案内しよう」
 「ちょ、シュン兄‼」
 「シェラ、お前は〔舞姫〕としての仕事があるだろ? それに毎日舞の稽古をサボって、ばあちゃんがキレてるぞ?」
 「ぐっ、ば、ばあちゃん······」
 「ったく、こんなんじゃ何時まで経っても正式な眷属として迎えられることはないぞ?」
 「ぐむむ······」


 おお、シェラが言い負かされてる
 それに顔を真っ赤にして唸り始めた


 「いいかシェラ」
 「うっさい‼ シュン兄のバカタレ‼ ウンコたれーっ‼」
 「って、誰がウンコたれだ‼」


 シェラはドラゴンの元へダッシュすると、その背中に跨った


 「行くぞウェドルギナ‼」
 『ギャオォォーン‼』


 ドラゴンは空へ羽ばたくと、シェラを乗せて飛び去った


 「全く、ホントに子供でね」
 「あ、あはは······」


 シュンガイトさんは頭を抱えて苦笑した
 俺も釣られて笑ってしまう


 「さて、町を案内する。今日はオレの家に泊まるといい」
 「えっと、宿屋とかは?」
 「はは、この町に旅人なんて来ないから、宿屋なんてないさ」




 まぁそうだろうな。お世話になるか





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