ホントウの勇者

さとう

オド街道/天鎖狼・少年少女



 〔戯遊機塔メガラニカ・マグダーラ〕から走ること2日


 〔龍の渓谷〕まであと数日、王都まですぐの距離までやって来た
 街道の先にはうっすらと町が見える。かなり大きな町のようだ


 〔王都グレーバシレム〕は8大陸で最も栄えてる国と言われ、8大陸最強の騎士団があると言われている
 王都の面積も8大陸最高で、町を回るのに1月はかかるそうだ


 ま、今は素通りしていく
 〔龍の渓谷〕での用事が終わったら来よう


 「平気か、シロ?」
 《うん、気持ちいいよ》
 《ワタシも平気ヨ》


 1人なので、移動は【流星黒天ミーティア・フィンスター】を使う
 クロは俺のシャツの中で襟から頭を出し、シロは俺の両肩に前足をかけ、肩から頭を覗かせている


 「さて、ドライブがてら行くか」
 《そうネ、急がず行きまショ》
 《うん、安全運転でね》




 俺たちはゆっくりと走り出した


 
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 この〔オド街道〕は、比較的安全な街道と言われてる


 街道はキチンと整備されているが、モンスターはやはり出る
 しかし、この大陸の冒険者や傭兵にとっては苦にならないレベルだ


 街道の両側は林になっており、そこからモンスターが飛び出すこともある
 でも、大抵は魔導車に乗っているので難なく通過。戦うのは素材や討伐目的だけだろうな


 「しかし薄暗いな」
 《そうネ、木々が高いから日が差しにくいのネ》
 《……ジュート停まって》


 シロが言うので停まる


 「何だよシロ、トイレか?」
 《違うよ。クンクン……血のニオイがする、しかも……これは……》


 シロは言いにくそうに俺に告げる


 《これは……粘つくようなオスのニオイと、懇願するようなメスのニオイ。更に血のニオイが混じってる……》
 「……どこだ」
 《すぐ先だ、数は20人くらい、内半数くらいから血のニオイがする。それに若いニオイだ》


 俺はバイクをしまい走り出す
 クロとシロは何も言わずに並走してくれる




 俺は全力で現場に向かった




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 それは、胸糞悪い光景だった


 シロの言った通り、人数は20人ほど
 しかし内8人は少年少女だ
 歳は16歳ほどだろうか、男4女4のグループで、全員が同じ服を着てる
 まるで学校の制服みたいだ


 残りの12人は盗賊だろうか
 腰に剣を差し、下卑た笑いを浮かべてる


 男子は拘束され、上半身裸にされて殴る蹴るの暴行を受けている
 殴られた顔は歪み腫れ上がり、痛みで涙を零している
 盗賊は笑い声を上げながら変形した顔を指さして笑ってる


 女子はもっと悲惨だ
 着衣は乱れ、強姦される寸前だ
 下半身のスカートとショーツは脱がされ、上半身は既に露わになっている
 盗賊たちは女子の身体をたっぷりと視姦、これからまさに本番を楽しむつもりだ
 女子たちの顔は恐怖に歪み、顔は涙で濡れている
 何人かの少女は激しく抵抗し、盗賊をイラつかせていた


 「やめなさい!! 離しなさい無礼者!!」
 「うるせぇガキ!!」
 「あうっ!?」


 金髪ロングの少女が頬を張られ、涙で顔を歪める


 「わ、私は……」
 「ぎゃははっ!! お前が誰だろうと関係ねーよバーカ、精々オレたちを楽しませろ!!」


 金髪少女は顔を歪め、屈辱に身体を震わせる
 剝き出しの乳房を握りしめられ、露わになった下半身を無理矢理開脚させられる


 「い、いや……やめて、助けて」


 その声は届かない
 盗賊をさらに楽しませるだけ


 「助けて……お兄様……」


 少女は目を瞑り、これから襲われる恐怖と屈辱に震える


 「へっへっへ、最初はオレが頂くぜぇ……」


 盗賊は12人、少女は4人
 交代でたっぷり楽しんだ後は娼館に売って金に換える
 男はサンドバッグにして袋だたきし、飽きたら殺す


 たまたま通りかかった魔導車に、こんな上玉の女が4人も乗っているのが幸運だった
 この〔オド街道〕は比較的安全だが、決して安全というワケではない


 この辺りを縄張りにする盗賊は、マヌケな少年少女たちを歓迎した
 金髪少女に襲いかかった盗賊は、いざ挿入しようと腰を動かした




 が、突如としてもの凄い力で背中を蹴られた




 余りの威力に背骨が砕け、逆「く」の字となり吹き飛ぶ
 近くの樹に激突し、血の泡を吹いて絶命した


 「誰だてめぇッ!!」


 その光景の一部始終を見ていた盗賊が叫び、11人の盗賊と少年少女がその光景を見た
 黒い服の上下、腰に装備した2対のナイフ、背中に背負った剣、そして近くには黒猫と白犬


 少女と少年たちを見回し、額に青筋を浮かべていた


 「こ、このガキッ!!」


 1人の盗賊が少年に殴りかかるが、盗賊の身体はあっさりと「鎖」に拘束される
 両足と右腕に巻き付いた鎖は、容赦なく手足をへし折る
 盗賊の絶叫が響き渡り、金髪の少女が呟いた




 「て……【天鎖狼てんさろう】」




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 「こ、こいつは【天鎖狼てんさろう】です!! 黒衣に黒猫、それにこの「鎖」は……」
 「ちくしょう、最近有名なS級冒険者だ!!」
 「天をも束縛する鎖使いの一匹狼……ちくしょう」


 何言ってるかわからんが、とにかく全員死刑だ
 せっかくだし、【鬼刃刀ヤシャオウガ】の切れ味を試してやる


 「ええい!! 相手は1人だ、全員でかかれ!!」


 盗賊のリーダーらしきヤツが命令し、10人が飛びかかってくる
 しかし、俺には何の意味もない


 「ぎゃあッ!?」
 「いでぇぇぇッ!?」
 「ぐがぁぁッ!?」


 10人全員、仲良く鎖で拘束
 両足と片腕をへし折り地面に転がした


 「雑魚が。おい、お前は直接始末してやるよ」
 「が、ガキが……なめんじゃねぇッ!!」


 俺はヤシャオウガを抜き、切っ先をリーダーに突きつける
 するとリーダーは激高し、腰のロングソードを抜いて襲ってきた


 「死ねぇぇぇッ!!」


 リーダーは俺に斬りかかるが、俺は難なく回避する
 腕の動き、足捌き、剣の流れ……集中して見れば避けられる
 すると頭の中で声が聞こえた


 《ジュート、剣をよく見ろ。今のお前なら見えるだろ》


 アグニの言うとおり剣を見る
 振り下ろされる剣はけっこう使い込まれ、刀身に刃こぼれが見える


 《剣の使い方は教えただろ。刃こぼれに剣を合わせて振り抜け》


 俺は大ぶりの振り下ろしに集中し、ヤシャオウガの刀身をリーダーのロングソードの刃こぼれに合わせる


 「なッ!?」


 するとリーダーのロングソードはポッキリと切断された


 《今のお前ならこんな芸当も出来る。相手を無力化するには利き手を切断するか、武器を無力化するのが一番いい》


 アグニの講釈も久し振りだ


 「く、くっそ……」
 「終わりだな」


 俺はリーダーも鎖で拘束し、両足と腕を砕く
 絶叫が響き渡り、盗賊を全員無力化した




 さて、後始末をしますかね




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 「クロ、シロ、頼む」
 《任せなサイ》
 《うん》


 クロにおしぼり、シロにシーツや着替えを持たせて4人の女子の元へ向かわせ、俺は男子の拘束を解く


 「動けるか?」
 「ふぁ、ふぁい……」


 男子4人はなんとか無事だ
 全員が立ち上がり、俺に頭を下げた


 「あ、ありが……」
 「気にすんな。それより……」


 俺は拘束した12人を引きずり、4人の前に並べた
 外傷は骨折のみで、意識もはっきりしている


 「好きにしな」


 その言葉に盗賊は怯え、4人の瞳に怒りの炎が灯る
 フラフラの身体はシャンと立ち、拳は硬く握られた


 「ぐがぁぁぁッ!!」
 「この……クッソがぁぁぁッ!!」
 「死ねッ死ねッ死ねぇぇぇぇっ!!」
 「うおぉぉぉッ!!」


 4人の少年は盗賊に馬乗りになり、たこ殴りしてる
 俺は盗賊の処理を任せ、少女達の元へ向かう


 「ありがとう、ワンちゃん」
 「猫ちゃんも……」


 少女達は着替え、身体にシーツを巻き抱き合っていた
 シロとクロに安心し、2匹をなでたり抱きしめてる
 こういう場合、俺が行くより動物に任せた方が安心するだろう


 「あ、あの……」
 「ん?」


 金髪の女の子が俺に向かってきた


 「貴方は……【天鎖狼てんさろう】ですか?」
 「……はい?」


 盗賊も言ってたけど、なんだそりゃ?


 「最近話題のS級冒険者、最強の「鎖」使いで【灰の伝道者】とも呼ばれてる……その鎖は天をも拘束する、黒猫を連れた一匹狼。貴方で間違いないでしょうか……?」
 「………」


 なんだそりゃ、カッコ……いいのか?
 俺はなんと答えていいのか分からず、とりあえずごまかした


 「あー……とにかく、大丈夫ならいい。ほら、他の子たちを」
 「えっと、はい」
 「あれはキミ達の魔導車か?」
 「はい、その……盗賊たちに壊されて……」
 「まぁ俺が見てみるよ」


 俺は近くにあった魔導車に近づき、故障箇所を確認する
 シャロアイトと旅をした経緯もあるし、フォーミュライドで整備の経験もしたので、簡単な故障程度なら直す自身があった


 「えっと……魔力供給のチューブが何本か切断されてる、これなら」


 俺は魔術でチューブを繋げる
 【灰】魔術で切断されたチューブ同士をくっつけて修理を完了させる


 「……ん?」
 「………」


 すると、魔導車の影に誰かいた


 「えっと……キミは?」
 「………」


 小さな少女だった
 年齢は7歳くらいだろうか、長い黒髪にドレスを纏った、かなり身なりの良さそうな少女だ
 少年少女たちは、この少女を護衛していたのだろうか


 「怖かったか? もう大丈夫だからな」
 「………」


 少女の頭をポンポンなで、俺はカバンから金色の袋を取り出す


 「ほれ、うまいぞ」
 「………?」


 こういう少女はお菓子に弱い
 俺はダンジョンのドロップアイテムである〔レインボーグミ〕を渡す
 グミは山ほどあるし、あげても全く問題ない


 「グミだ、うまいぞ?」
 「………」
 「う~ん、ほれ、こうやって……あむ」


 俺は袋を開けて赤いグミを取り出し、自分の口へ
 少女はマネしてグミを掴み、自分の口へ入れた


 「……!!」


 少女は目を見開いて、俺を見る
 俺はにっこり頷き、残りのグミを少女に渡す
 ちなみに、イカスミ味は全て取り除いた


 「さて、俺はもう行く。あっちのお兄さんとお姉さんに、魔導車は直ったって伝えてくれるか?」
 「………」


 少女はコクンと頷く
 俺はもう1袋グミを取り出し少女に握らせる
 チラリと少年少女たちを見ると、集合して話し合いをしていた


 「じゃあな」 
 「………」


 俺は立ち去ろうと歩き出すと、裾をちょこんと掴まれる


 「ん?」
 「………」


 少女はポツリと呟いた


 「ありがと」
 「ああ、気を付けろよ」
 「わたし、ベルダンディー……ベル」
 「ベルか。俺はジュートだ」


 ベルはにっこり笑い、俺も微笑んだ




 少年少女たちは、俺が居なくなったのに気が付かなかった




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 「やれやれ、とんだ寄り道だったぜ」
 《まぁね。とにかく〔龍の渓谷〕へ向かおう》
 《そうネ。シェラヘルツが待ってるワヨ》


 クロ達を乗せて、バイクですっ飛ばす




 シェラ……遅くなったの、怒ってないよな



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