ホントウの勇者

さとう

戯遊機塔メガラニカ・マグダーラ⑭/意地・赤騎士



 〔カマクラハウス〕は、このダンジョンにある、時間が流れない特殊な場所、といって誤魔化した


 さすがに〔神の器〕の秘密をバラすわけにはいかないしな
 それに、フレイミュラを鍛えるのにこれほど適した場所はない


 「ここなら何年修行しても年は取らないし、経験だけが積み重ねられて行く。ここでお前を最強に育ててやる」
 「·········」
 「ただし、弱音を吐いた時点で終わりだ。いいな」


 俺は鬼になる
 フレイミュラの覚悟に報いるために


 「······私は、絶対に諦めない」
 「当然だ。ほら、これを使え」


 俺はフレイミュラに〔灼熱剣ブレイズブレイド〕を渡す
 今の剣は折れてしまったので、その代わりだ


 「·········」
 「まずは身体を鍛えるか」
 「はい」


 フレイミュラは静かに頷く
 剣を鞘にしまい、俺に向き直る
 ここからが本番。真の修行開始だ




 が、フレイミュラの腹が大きな音を立てた




 「·········」
 「·········ッ」


 フレイミュラは真っ赤になる
 そういえば、こいつは何も食べてないんだっけ
 さっき食べたホットサンドも吐き出したしな




 仕方ない、まずは腹ごしらえ。リンゴでも食べるか




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 リンゴで腹を満たし、まずは身体を鍛える


 「身体を使うために、最低限の筋力をつけよう。まずはそこからだ」
 「はい」


 まずは基礎的な筋トレをこなし、素振りなどで剣を使う身体を作る
 フレイミュラはパワーよりもスピードをつけたほうがいい  
 レオパールみたいな筋肉質の身体ではなく、エルルやクルルみたいなしなやかな身体を目指す


 それが終わったら、次はひたすら俺と戦う
 実戦さながらの緊張感を持ち、常に殺す殺される感覚で戦う
 俺ばかりと戦うと、変なクセがつくかもしれないので、俺もスタイルを変えながら戦うことにする
 剣や槍、拳や鈍器、はてには魔術を使い、パワーやスピードも変えながら、とにかく実戦をこなして戦いに慣れる


 ある程度実力が付いたら、今度は武器の特性を使った戦いを覚える
 フレイミュラは【赤】属性。しかも武器も炎属性だし、炎を使った戦い方を、自分なりに作り上げる
 これは大変だが、フレイミュラならやり遂げるだろう


 あとはひたすら自分のスタイルを煮詰めていく
 俺はひたすらフレイミュラにキツく当たる。満足させないように、まだまだ行けると言わんばかりに




 こうして、〔カマクラハウス〕で半年が過ぎた




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 「よし、そろそろ出るか」


 きっかけは、俺の一言
 フレイミュラを打ちのめし、今日もゲロをぶち撒ける
 毎日ゲロをぶち撒けてるフレイミュラは、ゆっくりと立ち上がった


 「出る、とは?」
 「言葉の通り、ここから出て帰るんだよ。そろそろフィンテッドに会いたいだろ、それにお前もそこそこ強くなったし」
 「しかし、私はまだ」
 「いいから行くぞ、ここから出たら卒業試験だ」


 俺はフレイミュラを引っ張り〔カマクラハウス〕から出る
 実に半年ぶりだが、俺はちょこちょこ〔セーフルーム〕でクロたちと会ってアドバイスを貰ったりしてたからそうでもない


 現在地は、ダンジョンの6階層
 現実時間では時間経過していない。フィンテッドの試験まであと2日のまま
 しかし本人には言わないが、フレイミュラはかなり強くなった


 最初の頃はヒドかった
 ゲロはぶち撒けるわ、ウンコは漏らすわ、ションベンは垂れ流すわ、かなり臭かった
 服をムリヤリ脱がして川に放り込んだり、寝てる間にこっそり魔術で治療したりもしたっけな


 でも、今ではかなり強くなった
 執事やメイドに負けないくらい、それこそS級の強さを身に付けているはずだ


 俺はここで腕輪を確認する


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 【フレイミュラ・ブレス】 冒険者 貴族
 【レベル59】
  体力B 4850
  攻撃力B 580(+70)
  防御力B 560(+40)
  俊敏性S 860
  魔力A 2100
  属性【赤】


 【装備】
  武器 【灼熱剣ブレイズブレイド】+70
  防具 【レッドベスト】+40
  アクセサリ 【フィンテッドの婚姻届】


 【特殊】
  1・『【赤】魔術』
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 なかなかのステータスだけど、武器が弱い
 ちょっと見てみるか


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 【灼熱剣ブレイズブレイド】
 攻撃力 70
 能力 魔力を込めると炎を吹き出す
 破損あり 攻撃力ダウン
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 あ、破損してるから攻撃力が下がってるのか。防具もだ
 こりゃ新しいのが必要だな


 ま、それは後にして、まずはこの階層だ
 俺はクリア条件の項目を確認する


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 〔戯遊機塔メガラニカ・マグダーラ〕6階層・【強敵の討伐】
 クリア条件・ボスを倒せ
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 「ちょうどいい、コイツをお前の卒業試験にする」
 「ぼ、ボスモンスターを、私が1人で⁉」
 「ああ。やれ」
 「で、ですが······」
 「平気だって。ただし、ウンコとションベンは漏らすなよ?」
 「なっ⁉」


 フレイミュラは赤くなり、俺は笑う
 なんだかんだで半年も居ると、そこそこ情も移るな  
 おれとフレイミュラは扉の前に立つと、大きな扉が開いていく
 部屋は円形のドームで、ドームの中央には赤い鎧の騎士みたいなモンスターがいた
 フレイミュラはゆっくりと前に進む、すると赤騎士は剣を抜き構える
 フレイミュラもひび割れた剣を抜き、スキのない構えで相対する
 俺はここでフレイミュラに言う




 「さぁ、今までの全てを見せてみろ」




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 俺はさっそくステータスを確認する。この作業にもだいぶ慣れてきた


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 【レッドナイト】
 【レベル62】
  体力 12300
  攻撃力 990(+300)
  防御力 930(+300)
  俊敏性 800
  魔力 1000
  属性【赤】


 【装備】
  武器 赤騎士の剣+300
  防具 赤騎士の鎧+300
  アクセサリ なし


 【特殊】
  1〔炎剣〕
  2〔炎弾〕


 【ドロップアイテム】
  標準 赤鉄の剣
  レア 煉獄蒼剣れんごくそうけんグレンアズュール
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 コイツは前に戦った【ブラックナイト】の亜種だ
 ステータスといい姿といい似通い過ぎてる


 フレイミュラとレッドナイトは、まるでお互いの実力を測るように弧を描く
 ステータスでは全てフレイミュラが負けている
 勝ち目があるとするなら、頭脳戦だろうな




 がんばれよ、フレイミュラ




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 赤騎士とフレイミュラでは、赤騎士のほうが圧倒的にステータスが高い
 だからフレイミュラは、足りない部分を頭脳で補う


 「………」


 ブツブツとフレイミュラは詠唱を唱える
 この半年の修行で、初級魔術師ほどの魔術は使えるようになった


 まともに攻撃しても、フレイミュラの攻撃ではダメージは通らない
 武器も破損してる今、狙うとすれば……


 「……鎧のスキマ、関節……」


 フレイミュラは剣に魔力を流し、燃えさかる剣を作り出す
 同時に、赤騎士も同じく剣に火を灯す
 壊れかけの剣と、赤騎士の大剣では、熱量も規模も適わない
 だけど、どれほど強大な炎でも、フレイミュラには関係がなかった


 「攻撃は全て躱す、こちらの攻撃を当てればいい……!!」


 フレイミュラは赤騎士の正面に飛び出す
 同時に赤騎士も剣を構えて飛び出した


 「お、おォォォォォッ!!」
 「グォォォォォッ!!」


 赤騎士は圧倒的速度でフレイミュラを縦に両断しようと振りかぶる
 しかしフレイミュラは、右手を地面に向けて叫んだ


 「【炎壁ファイアウォール】!!」


 地面に向けて炎の壁を作り、一時的に姿を隠す
 赤騎士の大剣はそのまま振り下ろされ、炎の壁を両断する


 「グ、オォォォッ!?」
 「が、アァァァッ!!」


 大剣が振り下ろされた位置から僅かに左、フレイミュラは身体をずらしてギリギリで剣を回避
 そして、振り下ろしに合わせて自らの剣を赤騎士の手首に向かって全力で振り上げる


 「落ちろォォォォォッ!!」


 炎の剣が赤騎士の手首をカウンター気味に両断し、赤騎士の両手首が剣を握ったまま宙を舞った
 それと同時に〔灼熱剣ブレイズブレイド〕は砕け散り、双方丸腰となった


 「グゥ、オ、オォォォ……」
 「は、はぁ、はぁ、はぁ……」


 赤騎士は痛みにもがき、フレイミュラは真っ青で震えてる
 一瞬でも判断を間違えば、フレイミュラは両断されていた。その恐怖がフレイミュラの全身を襲い、下半身は濡れ、臀部からは生暖かい塊が噴き出す
 だが、そんなものは関係ない


 「あ、あ、あがァァァァッ!!」


 18歳の少女とは思えない雄叫びを上げ、赤騎士の剣を拾って走り出す
 武器のない赤騎士が反応したが時既に遅し


 「ぐっがぁ、おっげぇぇぇ、ぐぎぉぉぉぉッ!!」


 滅多打ち、剣の型も何もない
 まるで、攻撃を止めれば待つのは死、と言わんばかりの乱舞


 「うぷ、う、げぼぉぉぉ……」


 吐瀉物をまき散らし、フレイミュラは剣を振り上げる


 「もういい、お前の勝ちだ」


 が、振り上げた腕はガッチリと掴まれた


 「は、は、は、はぁ……」
 「終わりだ、もういい」




 赤騎士は、既に消滅していた




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 「……くさっ」


 フレイミュラは、凄まじい悪臭を放っていた
 顔はゲロまみれ、下半身はションベンとウンコまみれ
 格上との戦いに勝利したはいいが、あまりにも女を捨てていた


 「わ、私……」
 「お疲れさん、まずは服を脱げ」
 「は、はい。すみません……」


 フレイミュラは服を全部脱ぎ丸裸に
 最初は恥ずかしがっていたが、俺にその気がないのと、フレイミュラの慣れですぐに気にならなくなり、フレイミュラは生活魔術を駆使して身体と服をキレイにした


 俺は水のボトルをフレイミュラに渡して一言


 「お前の勝ちだ。これで卒業だな……ほら」
 「あ、これは……」
 「お前の倒した赤騎士のドロップアイテムだ、まるでお前の為の武器だぞ」


 赤騎士が落としたのはレアドロップ
 【煉獄蒼剣れんごくそうけんグレンアズュール】という、透き通るような刀身の赤と青が入り交じった、美しい剣だった


 「これでお前はフィンテッドたちと肩を並べられるくらい強くなった。これで文句は言わないだろ」
 「ま、まだ実感が沸きませんが……」
 「大丈夫だ。俺が保証する」


 はっきり言って、フレイミュラはかなり強い
 まともにぶつかれば、フィンテッドも苦戦するかも知れない


 「さ、帰ろうぜ」
 「……」


 俺は転送装置へ向かって歩き出す
 するとフレイミュラが、俺に言う


 「あの、ありがとうございました」
 「いいよ、俺も散々ヒドいこと言ったし、これでおあいこだ」
 「ですが……」
 「気にすんなっての。そこまで言うんだったら、フィンテッドをアッと言わせてやれ」
 「……はい」


 俺はフレイミュラに笑いかける
 フレイミュラも俺に笑いかけ、一緒に出口へ向かった




 ああ、これでようやくリリとコノハに会えるぜ



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