ホントウの勇者

さとう

戯遊機塔メガラニカ・マグダーラ⑬/フレイミュラと一緒・吐露



 よく考えたら今日はダンジョンに入らない
 フィンテッドとの約束の日まで1日しかない
 仕方ない。やると決めた以上、ここは鬼になる


 「えっと、フレイミュラでいいか?」
 「はい。構いません」
 「よし、じゃあ早速やるか。ダンジョンに行くぞ」
 「え、こ、これからですか?」


 フレイミュラは驚いてる 
 そりゃそうだ。時間は昼過ぎ、フレイミュラはダンジョンから出たばかりだからな
 しかし、俺は遠慮しない


 「時間もないしな、今日はダンジョンに泊まりこみだ」
 「ホントに⁉ 面白そ〜‼」
 「リリはダメ。コノハと一緒に魔導車で大人しくしてること」
 「えぇ〜······私に魔術を教えるって言ったのにぃ〜」
 「リリ、ちゃんとジュート殿の言うことを聞きなさい」
 「うぅ〜、は〜い」


 俺はホットサンドをひと切れ、フレイミュラに渡す


 「行くぞ。行くのは俺とお前だけ、執事さんたちは留守番だ」
 「え⁉ な、何故ですか⁉」
 「そりゃお前を鍛えるんだ。頼れるのは自分だけってわからないとダメだ」
 「そ、そんな······」


 俺は執事とメイドに言う


 「言うまでもないと思うけど、フレイミュラの強さはあんた達がいてこその強さだ。S級の昇進試験でそれがはっきりわかった、だから敢えてフレイミュラを単独で鍛える。たった2日でどうにかなるとは思わないけどな」
 「······はい。わかっております」
 「お嬢様を、よろしいお願い致します」
 「ヴォルダン、メイヤ⁉」


 俺は立ち上がり、手にホットサンドを持ったままのフレイミュラに言う


 「行くぞ、遅れるなよ」
 「······くっ」




 フレイミュラも立ち上がり、俺の後に付いた




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 〔戯遊機塔メガラニカ・マグダーラ〕5階層・【強敵との戦闘】
 クリア条件・モンスターを倒しゴールへ進め


 「ほぅ、いいな」
 「強敵······」


 俺とフレイミュラは、5階層へ来ていた
 クリア条件はモンスター退治。フレイミュラの修行にうってつけだ
 5階層の入口の部屋には大きな扉がある。この先にモンスターがいるのは間違いないな


 まずはフレイミュラのステータスを確認する


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 【フレイミュラ・ブレス】 冒険者 貴族
 【レベル41】
  体力D 2350
  攻撃力D 380(+250)
  防御力E 250(+150)
  俊敏性E 230
  魔力D 890
  属性【赤】


 【装備】
  武器 【蒼蓮剣デュルグレム】+250
  防具 【レッドベスト】+150
  アクセサリ 【フィンテッドの婚姻届】


 【特殊】
  1・『ブレイズソード』
  2・『アズールソード』
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 う、うわぁ······レベル41でこれかよ
 しかも何だよ、【フィンテッドの婚姻届】って


 【フィンテッドの婚姻届】
 小さい頃、フィンテッドが書いた婚姻届
 フレイミュラの大事なお守り


 うーん、フレイミュラって重い女かも
 というか、今も婚姻届を持ってるってことだよな


 「·········何か?」
 「い、いや別に」


 ヤバい、ちょっと見すぎた


 「修行の方針はシンプル、とにかく戦闘をこなす。悪い点は俺が指摘するから、ひたすら戦いまくるぞ」
 「は、はい······」
 「危なくなったら助けるけど、死なないような怪我なら助けないから。まぁ怪我してもリリに治してもらえばいいしな」
 「う······」
 「さ、行くぞ」


 何故かフレイミュラは青くなるが俺は無視
 最初の扉に近づくと、ゴゴゴと音を立てて扉が開いていく




 さぁて、どこまでやれるかな




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 「ハァ、ハァ、ハァ······うっぷ、ぐげぇぇぇッ‼ ぼぇぇっ⁉」
 「······うーん」


 フレイミュラは、盛大にゲロを吐く
 出てきたモンスターは【レッドタイタン】というレベル58の強敵。フレイミュラの攻撃は全くない効かず、ボディに強烈なパンチを食らって吹き飛んだ
 俺はモンスターを瞬殺し、考えた


 フレイミュラは、めちゃくちゃ弱かった


 はっきり言って、冒険者に向いてない
 強いという噂も、腕利きの冒険者という噂も、全てがあの執事とメイドによるものなのだろう
 武器を振るう手は素人で、身体の使い方もまるでなっていない
 このままだと、フィンテッドたちに着いていくのは自殺行為
 遠からず、強敵と戦闘になりそのまま命を失う。フィンテッドは悲しむだろうな


 さて、どうするか


 1日2日でどうにかなるワケがない
 10年20年レベルでの修行が必要だ


 残酷だが、俺は嘘を付かない


 「フレイミュラ、諦めろ」
 「······ふぇ?」


 口元を吐瀉物で汚し、涙目で俺を見る
 その姿は、あまりにも悲しく見えた


 「フィンテッドの言った通り、冒険者を廃業して王都へ帰れ。お前じゃ無理だ」


 諦めさせるように、冷たく真顔で言う
 下手な優しさはいらない。フレイミュラのためにならない


 「わ、わたし······は、フィン、テッド」
 「無理だ」


 フィンテッドに着いて行きたい気持ちは分かる
 愛してる、婚約者だから、側に居たいから
 だけど、二度と会えなくなるワケじゃない。フィンテッドはきっと、フレイミュラのために王都へ会いに来ることだってあるはずだ


 「お前が死ねばフィンテッドは悲しむ。あいつのことを想うなら、素直に家に帰った方がいい」
 「い、イヤ······」
 「あの執事とメイドだって分かってるはずだ。お前じゃどうにもならないってこと」
 「イヤ、イヤ······」
 「家を捨てて、フィンテッドを追いかけて······1番迷惑なのはフィンテッドと執事とメイドだ。弱いお前のお守りなんて、やってられないだろうな」
 「う、ぅう······」
 「家を捨ててまでフィンテッドを追いかけた根性は認める。でもな、強さが伴ってない。仮にこれから先、フィンテッドたちに着いて行ったとしても、必ずどこかで死ぬ」
 「·········」
 「お前がフィンテッドを想うように、フィンテッドもお前を想ってる。間違いなくフィンテッドは、2日後の試験でお前を落とす。わかってないのはお前くらいだぞ? 執事とメイドも、ようやくお前を連れて帰れるって喜んでるだろうな」
 「······な」


 俺はフレイミュラを打ちのめす
 もし、それでも覚悟があるなら
 フィンテッドのことを想う気持ちが強いなら


 「諦めろ、お前じゃ不可能だ」


 俯き、震えるフレイミュラ
 彼女は、なんと言うだろうか


 「ふざ、ける······な」


 フレイミュラは立ち上がり、俺を睨みつける


 「ここまで、来たんだ。ようやく来たんだ······」


 力強い眼差し
 折れた剣を握りしめ、それでも剣を構える


 「執事とメイドが着いて来るのも、家が私を諦めていない証拠。彼らが私を守るのも、きっと父母が私を連れ戻すため。私が諦めて帰るのを待ってるから」


 「でも、会いたかったの。フィンテッドは優しいから、婚約を破棄して居なくなるのも、全部私のため。危険な仕事をしてるから、自分が死んでも私が待ち続けると思ってるから」


 「だから側にいるの、私がフィンテッドを守りたいから、強くなって、フィンテッドを守れば、死なないから、愛してるから、側に居たいから」


 フレイミュラは、泣きながら言う
 痛みのせいで支離滅裂だが伝わって来る
 大事な人の側に居たい気持ち


 「私は、絶対に諦めない‼」


 フレイミュラの心は、決して折れない


 「······わかった」


 この強さは、誰よりも尊敬出来る
 だから俺も、この強さに報いる


 「行くぞ、次の6階層へ」
 「······はい‼」


 俺とフレイミュラは並んで歩き出す
 そして、6階層の扉を開けた


 「······え⁉」
 「よし、ここで修行する」


 そこは穏やかな光が降り注ぐ、まるで箱庭
 小さな川が流れ、木の蔦で出来たカマクラのような家がある
 川のそばにはリンゴの木が生えていた


 「ここは〔カマクラハウス〕だ。ここは時間が流れないから、何年修行しても問題ない」
 「こんな、場所が······」




 フレイミュラを、ここで最強に育ててやる



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