ホントウの勇者

さとう

戯遊機塔メガラニカ・マグダーラ⑪/浮遊石の庭・コノハの弱点



 アウトブラッキーに戻ると、リリはベッドで眠っていた
 ベッドの側をにはハミィが丸まり、心なしか心配そうにリリを見てる
 コノハは、テーブルに座ったまま俯き、テーブルの上には冷めた食事が並んでいた


 「ただいま、コノハ」
 「あ······ジュート殿、おかえりなさい」


 部屋の中に壊子はいない。するとコノハが説明してくれた


 「カイコさんは一度あちらへ戻られました。マフィ様と何やらお話があるそうで」
 「そっか」


 なんて声を掛ければいいのやら
 ルノー家は使用人も含めて全滅。なら、そこにコノハの知り合いが居たのは間違いない
 リリと同じく、コノハも大事な物を失った


 「······あ、すみません。食事を」
 「コノハ······」


 コノハは強い
 強いから、リリの前では泣かないのかもしれない
 こんなときでも、俺のために食事を準備しようと立ち上がる
 震えた手つきで、壊子の作った電子レンジを操作しようと
 魔導コンロに魔力を流し、汁物を温めようと


 その姿が、あまりにも悲しかった


 「······コノハッ、もう、いい」
 「······あ」


 俺はコノハを抱きしめていた
 背後から抱え込むように、コノハの悲しみを包み込むように
 耐え忍び、弱さを隠すコノハを温めるように


 「リリの側にお前が居るように、お前の側には俺が居る。だから······泣いていい」
 「······」


 コノハは震え、ポツリと語る


 「······辛いこともあった、悲しいこともあった。でも······楽しいことも、たくさんあった」
 「······うん」
 「庭師のおじさんが、私とリリをこっそり町へ連れ出してくれた。乳母のコレルさんは、毎日焼き菓子を作ってくれた。武術の先生は、私の頭を撫でてくれた······」
 「······うん」
 「ルノー家は、私とリリの「家」でした······‼」


 コノハは振り返り、俺の胸に顔を埋めて嗚咽を漏らす
 俺はコノハを抱きしめて、その悲しみを共有した




 こんな事しか出来ない。でも、どうしようもない




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 暫く泣いたコノハは顔を上げる


 「もう、平気です」
 「でも、その······」
 「いつまでも泣いていられません。私はリリの姉ですから」


 コノハは微笑む
 涙と一緒に悲しみも洗い流し、心に区切りを付けたような、そんな微笑だった
 だったら俺はそれ以上言わない。コノハのため、いつも通りに振る舞うだけだ


 「じゃあメシにしようぜ。リリは······」
 「大丈夫です。起きたらきっと、いつものリリですから」
 「······そっか」


 今度こそコノハは料理を準備する
 すると、コノハの側へピョンピョンとハミィがやって来た
 その大きな身体を擦り付け、何かをアピールしてる


 「はいはい、直ぐに支度しますから」
 『キュッ‼』


 どうやら食事の催促らしい
 ホントに大きくなったよな、こいつは


 「にいさーん、いいニオイ······」
 「おわっ、リリ⁉」


 リリが俺の背中に抱き付いてきた
 俺の背中に顔を埋めると、ゆっくりと離れる


 「······うん、もう大丈夫。コノハ、ご飯にしよ」
 「はい。直ぐに準備しますから」


 忘れようとしてるワケじゃない
 悲しみを乗り越え、今を生きようとしてる


 「······すげぇな」




 この2人は、俺よりも強かった




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 翌日。俺とコノハはダンジョンへ


 コノハが身体を動かしたい、と言うので来たけど、ちょっと困ったことになる


 「なぁリリ、ダンジョンは危険だから、お留守番を······」
 「いや。私も行く」
 『キュッ‼』


 リリとハミィが着いてきたのだ 
 しかもリリはハミィにライドオン。周囲の注目を浴びてる
 壊子は帰って来ないし、どうしたもんか


 「ハミィが付いてますので、リリは問題ないでしょう」
 「え、いや」
 「ハミィも強くなっています。マフィ様特製の装備品もありますので、命を失うようなことにはならないはずです」


 装備品って、首にかけてある宝玉か
 確かに、マフィが作ったんなら安心だけど


 ハミィはウサギだから、どうしてもピョンピョンと跳びながらの移動になる。リリの身体も上下に揺れるが、乗りにくくないのだろうか


 「······わかった。ただし、絶対にハミィから降りないこと」
 「やった‼ 頑張ろうね、ハミィ‼」
 『キューっ‼』


 ふかふかのハミィにしがみつくようにリリは抱きつく
 いいな、かなり気持ちよさそうだ




 そんなわけで、3人と1匹でダンジョンへ




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 〔戯遊機塔メガラニカ・マグダーラ〕3階層・【浮遊石の庭】
 クリア条件・ゴールまでたどり着け


 腕輪の表示を見るとそう書いてある
 それもそのはず。俺たちは今、空の上にいた


 「わぁ〜っ、すっごくキレイ」
 「········」


 リリははしゃぎ、コノハは無表情だ
 俺たちがいるのはドアの先の地面。ドアから先は青空が広がり、空中には石で出来た足場が浮遊してる
 さらに上を見上げると、大きな岩石が浮いてる。どうやらあそこがゴールらしい
 浮遊石を足場にしつつ、ゴールを目指すのがクリア条件みたいだな


 「ハミィはジャンプが得意だもんね、楽勝だよ‼」
 『キュウッ‼』
 「ちょっと待った」


 今にも飛び出しそうなリリを抑え、まずは腕輪のステータスを確認することにした


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 【リリティアラ】 歌姫
 【レベル4】
  体力E 60
  攻撃力E 25(+20)
  防御力E 5
  俊敏性E 3
  魔力S 56800
  属性【白】


 【装備】
  武器 【スタンロッド】+20
  防具 なし
  アクセサリ 【青花の髪留め】


 【特殊】
  1・〔歌〕
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 【ハミィ】 神のウサギ
 【レベル60】
  体力S 8900
  攻撃力D 400
  防御力S 1400(+1000)
  俊敏性S 2800
  魔力C 1300
  属性【灰】


 【装備】
  武器 なし
  防具 【神の鞍】+1000
  アクセサリ 【神の宝玉】


 【特殊】
  1・〔ジャンプ〕
  2・〔ジャンプキック〕
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 「ブッ⁉」


 思わず吹き出した
 リリのステータスはまぁいい。しかし魔力がとんでもない
 【白】属性ってのも驚いたが、素質だけで言えばブランより高い
 それにハミィ、なんだよこのステータス
 まだ子供なのに軒並み高い。何だよ神のウサギって
 それに装備品、神の鞍ってマフィが作ったヤツだよな。それなら理解出来るけど


 【神の宝玉】・効果
 【戯神マレフィキウム】が作った宝玉
 ダンジョン内のモンスターの攻撃を全て無効化する
 これを装備したハミィに跨がるリリにも効果は及ぶ


 とんでもないチートアイテムだった
 でも、これでハミィとリリを気にしないで進める


 「兄さん、もういい?」
 「ああ、行こうか」
 「はーい。よーし、行くよハミィ‼」
 『キューン‼』


 リリの号令で、ハミィはピョンピョンと浮遊石を跳んでる
 まぁ心配ないか。モンスターもいないし


 「よし、行こうぜコノハ」
 「·········」
 「······コノハ?」


 コノハは無表情で前を見つめてる。どうしたんだ?


 「······ジュート殿、先にどうぞ」
 「え、なんで?······あ」


 この時点でわかった
 コノハは真っ青で、足がプルプル震えていた




 「·······高いところ、ダメなのか?」




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 「いやァァァァっ⁉」
 「ぢょ、ゴノハ、ぐびじまっでふ······⁉」


 俺はコノハをおんぶし、身体を紐で縛り付けてジャンプしてた
 コノハは軽いし、身体を使う修行にもなるからいいが、背中のコノハはめちゃくちゃ暴れた


 「怖い怖い怖いぃぃぃぃぃぃっ、助けてリリぃぃぃっ‼」
 「ぐべぇ、ぢょ、ぐるじい······」


 コノハは無意識で俺にチョークスリーパーをくらわせてる
 俺は意識を集中しながら浮遊石を渡り、少し高い場所はアンカーショットを使いつつ進む


 「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいぃぃぃっ‼」


 うーん、こんなに取り乱すコノハは珍しい。ある意味かなり貴重なシーンだ
 リリとハミィはすでにゴールしたようだ。巨大岩石から手を降ってるのが見える


 「よーし、ラストスパートだ。飛ばして行く······」
 「あ、あぁぁぁ······」


 俺の背中側の腰から下が、生暖かくなった
 ポタポタと雫が滴り、なぜか安堵したコノハの表情
 まさか、やっちゃった?


 「······はふ」




 あ、コノハが気絶した




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 俺は魔術を使い、コノハと俺の服を乾かした
 ゴールに到着する頃にはコノハも意識を取り戻し、何ごともなかったように振る舞いつつ次の階層へ向かうことにする


 「楽しかったね〜」
 『キュウ〜』


 リリとハミィは余韻を楽しんでいた
 コノハは無表情だったが、早く次の階層へ進みたくてたまらないように感じる




 まぁコノハのために、さっさと次に進みますか





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