ホントウの勇者

さとう

戯遊機塔メガラニカ・マグダーラ⑩/状況確認・リリの悲しみ



 前回のあらすじ。突如としてフレムラが現れた


 「あぁフィンテッド……やっと、やっと会えた!!」


 フレムラは……いや、フレイミュラは美しい顔をクシャクシャに歪め、涙を流して突進してくる。もちろんフィンテッドの元へ
 フィンテッドはと言うと、何やら複雑そうな顔をしていた


 「フィンテッド……会いたかった」
 「フレイミュラ……」


 フィンテッドの胸に飛び込んだフレイミュラを、フィンテッドは優しく撫でる
 フレイミュラは猫のように目を細め、その胸に顔を埋めていた


 「お、お嬢様……くぅぅ」
 「よかった……ホントに良かったですぅぅ!!」


 あ、執事とメイドもハンカチ片手に号泣してる
 というか、俺は帰ってもいいよね?


 「フレイミュラ、どうしてブレス家を……」
 「そんなの決まってます。貴方が、貴方が私を置いて行ってしまうから……」
 「それは……ボクはこんな危険な仕事をしてる。いつ死ぬか分からない世界で生きている。キミを未亡人にしたくないから……」
 「それは……それは貴方の勝手なエゴです!! 愛する貴方がいない世界なんて何の意味もない、私は、私は……」


 やっべぇ、なんかドラマみたいだ。帰るに帰れん
 グルガンは興味なさそうに見てるし、ミュラは面白くなさそう、セレシュは微笑を携え、ユズモモはむくれてる
 成り行きを見守ってから帰ろうと思ったとき、俺を呼ぶ声がした


 「にぃーさーん、ジュートにーさーん!!」


 俺を呼ぶキレイな、ちょっと子供っぽい声
 この声はリリだ、俺が間違えるわけがない


 「おぉ、リ……リ……」


 俺は硬直した


 「えへへ、迎えに来たよ兄さん。早く帰ろ」
 『キュゥゥ』




 リリは巨大なウサギ……ハミィに乗ってやって来た




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 「あ、あの、なんで?」
 「えへへ、ハミィも連れて来ちゃった」


 ハミィはだいぶ成長し、サイズ的には雄ライオンくらいはありそうだ
 首にはネックレスみたいな宝玉を付け、リリが乗りやすいように鞍みたいなのを装備してる
 俺を見ると、ハミィは顔を擦りつけてきた


 「はは、俺を覚えてるのか?」
 『キュゥゥ……』


 俺はハミィの頭を撫でる。すっげぇフカフカして気持ちいい
 すると、視線が突き刺さる……忘れてた


 「り、リリティアラ……?」
 「あ!! フレイミュラお姉ちゃん!!……え、ウソ!? フィンテッド様!?」
 「リリティアラ、キミまで!?」


 あ、やっぱ知り合いなのね。世の中って狭い
 全くもってカオスな状況になっちまった。どうしよう


 「えと、フレイミュラにリリティアラ……行方不明の2人がなんでココに?」
 「落ち着きなさいフィンテッド、状況をキチンと整理するの」
 「あ、ああ。悪いセレシュ、ボクの頭はパンク寸前だ」


 フレイミュラだけで精一杯なのに、いきなりリリまで現れたからな。フィンテッドは少し混乱してるみたいだ


 「と、とにかく……まずは状況を整理しよう」




 こうして、状況確認が行われることになった。つーか腹減った




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 場所を変えて、フレイミュラの魔導車の中


 メンバーは、俺とリリとコノハ、〔灰燼の翼アッシュダスト・ウィングス〕と、フレイミュラと執事とメイド
 フレイミュラの魔導車は広く、ハミィが入っても問題ない。つーか入れて良かったのか?
 取りあえずお互いの状況確認


 「なるほど、そういうことか……」
 「うん、私たち、ルノー家を出たの。婚約を破談にしちゃったから家には帰れないし、ルノー家は責任を取ることになったと思うから、私が家に戻ったらもう出られない」
 「………そうか。リリティアラ、その……」
 「どうしたんだよ、フィンテッド?」


 俺は何故かフィンテッドが言いにくそうにしてるのが気になった


 「その、ルノー家は……全員、亡くなった」
 「………え?」


 その答えに、リリとコノハは硬直した。フレイミュラも固まってる
 フィンテッドは言いにくそうだったが、ここまで答えて中途半端に引くことは出来ないと踏んだのか語り出す


 「実は……少し前にルノー家で謎の奇病が蔓延して、屋敷にいた当主とその家族、使用人が全滅したんだ。実体を調べたけど、病気に関わるモノが一切見つからず、今も謎の奇病や呪いと言われてる」
 「私たちが一度、王都に帰還したときに聞いたのよ。リリティアラの姿がなかったから少しは安堵したけどね」
 「その~……王宮はルノー家を貴族連盟から除籍しました……」


 衝撃の事実が明らかとなる
 リリとコノハは呆然としつつも、事実をしっかり受け止めていた


 「そ、そっか……み、みんな……死んじゃったんだ。あ、あはは……」
 「リリ……!!」


 コノハはリリを強く抱きしめると、リリはコノハの胸で嗚咽を漏らす
 どんな形でも家族は家族。最後にキチンとお別れできなかったのはツライ


 「すみません。私たちはここで……行きましょう、ハミィ」
 『キュゥゥ……』


 コノハはリリとハミィを連れて外へ
 俺も後を追うために立ち上がると、フィンテッドに呼び止められる


 「すまないジュート、少しだけ付き合ってくれ」
 「………少しな」


 何故か止められたが、なんとなく言いたいことは分かった
 フィンテッドはフレイミュラに視線を移すと語りかける


 「フレイミュラ、キミはブレス家を勘当され、そのまま冒険者となった。間違いないね?」
 「はい。私は貴方を追ってここまで来ました。私の場所は貴方の隣、どうか……私も一緒に」
 「……フレイミュラ、キミはどうしてそこまで……」
 「決まってます、貴方を愛してるからです」


 余りにもストレートな告白に、フィンテッドだけでなくグルガンを除いた全員が驚いた
 こりゃ本物だ。フィンテッドに勝ち目はないな


 「で、どうするのかしら? フレイミュラを連れてくの?」
 「そ、そーよ!! おじょー様のフレイミュラを連れて冒険なんて出来ないでしょ!? ダメダメ!!」
 「う~……複雑ですぅ」


 セレシュはフィンテッドに判断を委ね、ミュラは反対、ユズモモは悩んでる
 フィンテッドはグルガンに視線を移す


 「グルガン、キミは?」
 「へ、俺たちは〔特務冒険者〕だ。危険なモンスターの討伐やらがメインだぜ? フレイミュラが使えるなら連れて行けばいいし、使えなきゃ置いてけばいい」


 んまー、なんて男らしい
 キツい言い方だが正論だ。フィンテッドの昔からの付き合いならフレイミュラの事も知ってるんだろうな


 「……フレイミュラ、キミは何級だ?」
 「……A、です」
 「………」


 どうするんだろう。ぶっちゃけ戦闘では執事とメイドの方が役に立つけど


 「……わかった」
 「そ、それじゃあ一緒に!?」
 「いや。3日後、一緒にダンジョンへ行こう。そこで最終的に判断する。いいね」
 「は、はい!! 私……頑張ります!!」
 「ただし、ボクは一切の手心を加えないよ。キミのために、キミの命のために鬼になる。もしダメだと判断したら、冒険者を引退して家に戻るんだ。勘当されたならボクが仲を取り持つから。これが条件だ」


 うっわ~……流石に厳しいぜ


 「わかりました。それで構いません」


 え、マジで?
 すると今度は俺に来た


 「ジュート、リリティアラのことだけど、キミはどうするつもりだい?」
 「それは……」


 詳しくは言えない。俺の秘密に関わることだし
 でも、ずっと一緒に居たいとは思ってる


 「アイツは俺が守るって約束した、リリが俺に居場所を求めてるなら、俺はリリを守るだけだ」
 「……そうか」


 こんな答えで納得したのか、それ以上は聞いてこなかった
 もういいだろう、リリの所へ行かないと


 「悪いな。リリが心配だからもう行く」
 「うん、リリティアラのこと、よろしくね」


 フィンテッドに言われたが、言われるまでもない




 いつの間にか、空腹は収まっていた



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