ホントウの勇者

さとう

戯遊機塔メガラニカ・マグダーラ⑨/実力・黒騎士



 この1階層の達成条件を調べたところ、とんでもなかった


 〔戯遊機塔メガラニカ・マグダーラ〕1階層・【大群の洗礼】
 クリア条件・モンスターを1000体討伐し、ボスを討伐せよ


 なんじゃこりゃ、ふざけんな
 もしかしてパーティのレベルや人数なんかも考慮して階層が選ばれるのかも
 俺たちは6人、つまり1人170匹くらい。さらにボス
 1階層からこれかよ……ちくしょう


 「はっはっはぁ!! こりゃ楽しくなってきたぜぇ!!」
 「ちょ、グルガン。モンスターのステータスは5割増しって話だよ!? いくら何でも1000はキツいって」
 「なんだフィン、自信がないのか? ならオレに任せて下がってろ」
 「いや、そういうわけじゃ……ねぇみんな」
 「いーんじゃない? たかが1000でしょ?」
 「ま、殲滅戦には自身があるわ」
 「お腹いっぱいですし、ガンガン行きますよ!!」


 うーん、どうやらこのパーティの苦労人はフィンテッドだな


 「ジュート、キミはボクの味方だよね……?」
 「お、おう」




 おいおい、そんな泣きそうな目で見るなって




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 会話が終わるのを見計らったように、モンスターが現れた


 森から、岩場から、池から、空から。とにかく少しずつ、たくさんのモンスターが現れる
 いちいちステータスを確認するのも面倒だし、さっさと倒そう


 「はっはぁーッ!! 来たぜ来たぜぇぇぇぇッ!!」
 「あ、グルガン!?」
 「フィン、アンタも行くわよ。ジュートはここでセレシュたちを守ってなさい」
 「ちょ、ミュラ!? ああもう、仕方ない、ここは任せるよジュート!!」
 「え、おい!?」


 グルガンは両手に剣と斧を構え走り出し、ミュラもその後を追う
 フィンテッドは呆れつつも2人のサポートに徹するように走り出す


 「じゃ、詠唱するからよろしく」
 「お、お願いします~」
 「……はい」




 なんか釈然としないが仕方ない。ここはフィンテッドたちの流儀でやらせよう




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 今さらだが、コイツらは強い


 グルガンは真正面からモンスターを相手にしてる
 大きなゴーレムタイプやゴブリンを片っ端から八つ裂きにしてる


 しかし、動きの素早いモンスターもいる
 ウルフタイプやハチみたいなモンスターが、デカいモンスターの影に隠れながらグルガンに襲いかかるが、どこからともなく矢が飛来し打ち落とす。ミュラだ


 ミュラは木の上から矢を番え、グルガンに襲いかかるモンスターや、空中を飛ぶモンスターを打ち落としてる
 それも、モンスターに自身が狙われないように、〔マルチウェポン〕のアンカーショットを使いながら、木の上を軽業師のように移動しポイントをずらしてる


 フィンテッドは自身も攻撃しながらグルガンやミュラのサポート
 以前、俺が言ったように【白】属性の魔術を使って味方をサポート。グルガンの周囲に霧を生み出し攪乱させたり、フィンテッド自身の幻影を生み出してモンスターを翻弄してる


 すると、ミュラ1人では対応しきれないほどの鳥モンスターの大群が現れる……が、上空に【紫】の紋章が輝き、爆発的な雷光が輝く。セレシュだ
 セレシュの行ったのは上級魔術の【雷電放電ライディン・スパーキング】だ
 驚いたことに、1分以上掛かる詠唱を、たったの30秒ほどに短縮した


 それに負けじとユズモモが詠唱を終え、地面に強大な【黒】の紋章が輝く
 紋章からは黒いムカデがゾワゾワと現れ、ゴブリンタイプや蛇タイプのモンスターに絡みつき捕食を始める。コイツは【黒】の上級魔術・【悪食百足ダンタリオン・センチピード】だ
 詠唱速度こそやや速い程度だが、規模が普通の3倍はある
 本来はため池程度の大きさの紋章に百足がわき出るが、コイツは学校のグラウンドくらいの大きさだ
 セレシュやユズモモは、鍛え抜けば【特級魔術師】レベルの魔術師になるだろう


 そこで俺はようやく気が付いた




 「俺……必要ないじゃん」




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 それから1時間。1000匹を討伐
 数なんて数えていなかったが、モンスターが1匹も出てこなかったからだ
 どうやら、大規模な討伐系は、ドロップアイテムがないらしい


 「へへ、楽勝、だぜ……」
 「なによ、疲れ切ってんじゃん」
 「うる、せぇ……」
 「アタシも限界。矢も尽きたし、魔力もスッカラカン」


 グルガンは肩で息をし、ミュラも平気そうだが疲れ切っている


 「いや、ボクも疲れた……」
 「ま、頑張ってたもんね」
 「わたしも限界です~……オナカ減ったぁ」


 フィンテッド、セレシュ、ユズモモも疲れ切ってる
 そりゃこれだけ身体と魔力を消耗すればな


 しかし、まだ終わりではない
 それを知らせるように地面が揺れ、草原のから大きな建物がせり上がってきた


 「な、なにアレ!?」
 「どうやら……まだ終わりじゃないようね」


 建物は横長で石造り、高さもそこそこある神殿みたいだった
 どうやらあそこがボスの根城らしい


 「よし、最後は俺がやるよ。みんなは休んでて」


 別に美味しい所を貰うつもりじゃないけど、このレベルのボスが弱いはずがない
 今のフィンテッドたちじゃちょっとキツいかもしれないからな


 「……そうだね、ここはジュートに任せるよ」
 「あぁ!? おいフィン、オレはまだ……」
 「そーね、さすがに疲れたわ」
 「じゃ、よろしくね」
 「あの~、何か食べ物ありませんか?」


 多数決でここは俺の出番となった
 っていうかユズモモ……お前は食べ過ぎだ


 「でも、危なくなったら助けるから。行くよ」


 フィンテッドたちと一緒に神殿へ向かう




 ちなみに、ユズモモにはポケットに入れておいたスライムゼリーをあげた




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 神殿の中は広く、四方がコンクリートで出来た囲いだった


 しかし、中央にモンスターがいた
 黒い甲冑を纏った騎士。素肌は見えず、剣を地面に突き立ててこちらを見てる
 大きさは3メートルくらいだろうか、全く動かない
 俺は近づく前にステータス値を確認する。恐らくだが、近づきすぎると戦闘BGMが鳴る


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 【ブラックナイト】
 【レベル60】
  体力 10500
  攻撃力 950(+300)
  防御力 900(+300)
  俊敏性 750
  魔力 3000
  属性【黒】


 【装備】
  武器 黒騎士の剣+300
  防具 黒騎士の甲冑+300
  アクセサリ なし


 【特殊】
  1〔大剣乱舞〕
  2〔一刀両断〕


 【ドロップアイテム】
  標準 黒騎士の籠手
  レア 黒大剣ノワールブレイド
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 うーん、けっこう強いな
 それにカッコいいのが癪だな


 俺は両手にナイフを構え、突撃した
 するとボスBGMが鳴り響き、黒騎士が地面の剣を抜き構える
 兜のスキマから赤い単眼が光り、一直線に突っ込む俺を両断しようと剣を振り上げる


 「甘い」


 俺は魔術でコの字型の杭を造り、アンカーショットと同時に射出
 大剣が振り下ろされると同時に飛び上がり、天井にへばりつく
 コの字型の杭が天井に突き刺さってるので、今の俺は天井の住人だ


 「スゴいな、まさか【灰】属性で杭を造るなんて」
 「ふん、あれくらいオレでも出来る」


 フィンテッドたちは何やら言ってるけど気にしない
 黒騎士が周囲を見回して警戒してる。どうやら直前で飛び上がった俺が見えておらず、消えたように見えたらしい


 もちろん、そのスキを俺が逃すはずがない
 俺は両手にナイフを構え、アンカーをハズして黒騎士の頭上へ飛び降りる


 「悪いな」
 「グォッ!?」


 両手に構えたナイフを、重力に任せて首筋に突き立てる
 鎧のスキマを通すように突き刺したので、かなりのダメージを与えたはずだ


 【ブラックナイト】
 体力 6540/10500


 いいね、一気に4000近く削れた
 しかし、以外にも立ち直りの速かった黒騎士が振り返ったのでナイフから手が離れる
 そのとき、大剣を横薙ぎに振るって来たのでしゃがみ込み回避
 俺は両手のブレードを出し、腹部のスキマに刃をねじ込んだ


 「グッガァッ!?」
 「おっと」


 まるで両手で突き飛ばすように刃をねじ込むが、暴れた黒騎士に払われる
 俺はバク転で距離を取り、トドメの一撃を食らわせた


 「終わりだ!! 【灰】のオリジナル魔術・【世界蛇ヨルムンガンド】!!」


 灰色の紋章から、神殿を覆い尽くすほどの蛇が現れ周囲を蹂躙する
 長さは取りあえず30メーターほど、その気になればいくらでも伸ばせるが今日はこのくらいにしておく


 「こ、これが……」
 「魔術師でもない冒険者が……恐ろしいな」
 「す、すっご……」
 「説明では、「上級魔術以上、特級魔術以下の能力。詠唱はほぼ必要ない」ってことだけど、これなら納得出来るわね」
 「こ、こんなの、どうやって……」


 なんか戦慄してる
 まぁいいや。これでおしまい


 「喰え、【世界蛇ヨルムンガンド】」


 俺の合図で【世界蛇ヨルムンガンド】は大口を空け、そのまま黒騎士を飲み込んだ
 黒騎士は蛇の体内で消化……ではなく、プレスのようにすり潰されるだろう




 ま、これで俺の勝利だ。少しは役に立ったかな




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 戦闘が終わるとドロップアイテムが現れた


 「お!! やったぜ、レアだ!!」


 俺の前には金色の巨大な包み
 開けるとそこには、漆黒の刀身の大剣があった


 「お、おぉ……美しい」


 フィンテッドは食い入るように眺めてるが、俺はその剣をグルガンに突き出す


 「………何のマネだ?」
 「いや、だって大剣だし。俺には使えないし、俺のパーティも使わない。だったら答えは1つだろ?」
 「………」


 グルガンは葛藤してる。手がプルプル震えてるのは間違いじゃない
 俺はここでだめ押し


 「それにこの剣……お前に使われたいとみた」
 「……ぷっ」


 フィンテッドが噴き出し、女子はポカンとしてる
 以前、グルガンがフィンテッドに言ったことをそのまま言ってやった


 「ふ、ふふふ……がっはっはっ!! いいだろう、そこまで言われて引き下がるのも男じゃない。しかしタダと言うのも気が引ける、ここは冒険者らしく、買い取らせて貰う」
 「え、でも」
 「悪いな、タダと言うのはオレのプライドが許さん。借りを作るのはイヤなんでな」


 グルガンはポケットから1枚のゴルドカードを突きだしてくる
 まぁそれがグルガンの流儀なら、俺もそれに付き合うとしよう


 「じゃ、商談成立だな」
 「ああ、実にいい取引だった」


 値段はとやかく聞かない
 俺はグルガンと大剣とカードを交換する


 「く、くくく……これで〔マテリアルウェポン〕が2つ。2刀流だ」
 「グルガン、今のカードって、キミの貯金だろ?」
 「いいんだ。それだけの価値はある」
 「ホンットにアホねぇ……」
 「ま、グルガンらしいけどね」
 「あはは、でもカッコいいです」




 次に進む階段と転送装置が現れ、俺たちは帰還することにした




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 ダンジョンの入口に戻った俺たちは、ここで解散することにした


 「今日はありがとう、ジュート」
 「いや、俺も楽しかった」


 フィンテッドたちに礼を言う
 楽しかったけど疲れた。リリも居るはずだし早く帰ろう


 「ボクたちはもう少しここで調査・・するよ。進み方も分かったしね」
 「そっか、がんばれよ」


 物は言い様だな。調査と来たか
 フィンテッドたちと別れ、俺はアウトブラッキーへと帰還する




 「フィンテッド!!」




 が、突然の大声に思わず振り返ってしまった
 声の主は、フィンテッドたちから10メートルほどの場所にいた


 赤い髪に腰に差した〔マテリアルウェポン〕
 その近くには、お供の執事とメイド
 めっちゃ見覚えのあるお嬢様が、涙目で立っていた




 「ふ、フレイミュラ?」




 フィンテッドのちょっと抜けた声が、何故か耳に残った



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