ホントウの勇者

さとう

秘境マホロバの里⑭/至福・フレイミュラ





 試験官を無事に終えた俺は、寄り道せずに屋敷へ帰宅
 ちなみにシャロアイトへの手紙はギルドで書いた。俺とシャロアイトしか知らないコトも書いたので、疑われることは多分ないだろう


 思ったより時間が経過していたようで、すでに夕方。お昼も食べずに戦ってたからかなり腹が減ってる


 「ただいまー」
 「兄さんお帰りっ、とうっ‼」
 「おっと、危ないだろリリ」


 リリは俺の胸に飛び込み、ウニャンと甘える
 エルルやクルルもここまで甘えてこなかった。ちょっぴり不安になる甘え方だな


 「ねぇ兄さん、ご飯まで時間あるし、オフロに入ろ?」
 「そーだなぁ······」


 風呂に入り、風呂上がりに冷えた麦酒をグイッと飲みたい。まるでオヤジだな


 「よし、入るか」
 「うん、行こっ」


 俺は居間に向かわず直接風呂場へ向かう
 脱衣所で服を脱ぐが、相変わらずリリは隠そうとしない。丸出しで俺に向き直り、手に持ってる丸い玉を見せつけてきた


 「じゃじゃーん。これは〔ブクブク玉〕っていう、この里にしかない入浴剤なのっ‼ 今日コノハと買ってきたんだ」
 「へぇ、入浴剤か」


 俺も負けじとさらけ出し、リリの持つ玉を見ながらリリの身体を見る
 いや、ちょっとはイヤらしい視線で見ちゃったけどね


 リリと一緒に浴場へ行き、リリは湯船に玉を投げた


 「お、おい……大丈夫なのか?」
 「うん」


 湯船はまるでお湯のようにボコボコ沸騰してる
 透明な湯は白く濁り、まるでカルピスみたいな甘い匂いがしてきた


 「う~んいい匂い。行こっ」
 「おっと、先に身体を洗ってからな」
 「は~い」


 身体を洗い、リリの頭と背中を洗い、俺の背中と頭を洗ってもらい、ようやく湯船に


 「お、おぉ~……いいね、気持ちいい……」
 「ふあ~……」


 ボコボコしてるが別に熱くない。むしろ泡風呂のようで気持ちいい
 しばし、泡風呂を堪能してると、入口の引き戸が開かれた


 「ジュート殿、リリ、差し入れをお持ちしました」
 「わぁ、さっすがコノハ!!」


 コノハが素っ裸で現れる。両手でお盆を持ってるので丸出しもいいとこだ
 お盆には透き通る水差しと3つのグラス。水差しの中にはフルーツが細かく刻まれ、氷でキンキンに冷やしてあった。どうやら手作りミックスジュースだ


 コノハはお盆を置いて身体と髪を洗い湯船に入ってきた


 「さ、冷たいうちにどうぞ」
 「サンキュ、コノハ」
 「おいしそ~」


 グラスにジュースが注がれ、俺たちは小さく乾杯。ゆっくりと飲み干す
 甘酸っぱく、小さな果肉がノドを流れ、空きっ腹を刺激する
 俺はブルリと震え、余韻に浸る


 「……美味い。美味すぎる」
 「そうですね……至福です」
 「はぁ~……」




 その後も温泉を堪能し、上がった頃には少しのぼせていた




───────────────


───────────


───────




 水萌の作った豪勢な夕食に舌鼓を打ち、これからの話をする


 「そろそろ出発しようと思うけど、いいか?」
 「そうね、だいぶ休めたし。次の目的地は?」
 「ここからですと〔ポアラノ村〕を経由するより、〔地底迷宮アンダーザホール〕のほうが近いです。そちらで補給をしてから〔龍の渓谷〕へ向かうのがいいかと」
 「く、詳しいね、コノハちゃん」
 「はい。ジュート殿のために調べました」


 淡々とコノハが言う
 うれしいけど、ちょっと気になった


 「迷宮ってダンジョンか? そこで補給なんて出来るのか?」
 「はい。地底迷宮アンダーザホールは【灰の大陸】で最も難解なダンジョンと言われ、周囲には商人や冒険者が溢れて町のようになっていますので、問題ないかと」
 「なるほどな、サンキューコノハ」
 「いえ。では出発は明日で?」
 「う~ん……」


 今日は疲れたし、明日出発っていうのもなぁ
 するとリリが言う


 「兄さんはお仕事で疲れたでしょ? 明日1日ゆっくり休んで、明後日出発がいいと思う」


 うーん、やっぱリリは優しい
 すると今度は麻止が言う


 「明日……そうね。私たちも明日には帰らなくちゃいけないしね」
 「そうだね~」
 「うん、ちょっと悲しいけどね」


 麻止、括利、水萌が、指輪を眺めながら言う。もう時間なのか


 「そっか……じゃあ、今日はみんなで一緒に寝よ?」




 リリの一言に、女子は全員一緒に寝た。淋しいぜ




───────────────


───────────


───────




 翌日。朝食後に3人は帰って行った


 まぁすぐに会えるだろうし、近いうちリリたちもマフィの所へ行って貰う予定だ。なので今回はそんなに悲しい別れではなさそうだった
 この日はノンビリし、明日には出発する予定
 しかし、最終日だからなんか勿体ない。せっかくだし散歩でもしようかな


 「リリ、コノハ、散歩でも行くか?」


 リリはクロにじゃれつき、コノハはシロと遊んでる。なんか和む
 俺の声に2人は顔を上げた


 「行きたい!! けど……いいの?」
 「今日はのんびり休むのでは?」
 「まぁ今日で最後だし、せっかくだから散歩ぐらいはな」


 俺が立ち上がると、もう2人は何も言わなかった
 リリは俺の腕に寄り添い、コノハは反対側に立つ




 さて、のんびり散歩と行きますか




───────────────


───────────


───────




 「気持ちいいね~……あ、おだんごだ」
 「よし、食べていくか」
 「リリ、あまり食べ過ぎないようにね」
 「は~い」


 町の中央通り。お店や甘味処が並ぶ通りを散歩し、たまたま見つけた団子屋で休憩
 椅子に並んで座り、お茶と団子を注文すると直ぐに来た


 「あのね、私はみたらしが好き」
 「俺は三色団子かなぁ」
 「私はゴマですね」


 3人バラバラの注文をしたので、少し交換しながら食べる
 通りを眺めながらのんびりと。こんな日も悪くない


 「……あれ」


 道行く人の中に見知った姿を見つける


 「はぁ、せっかくここまで来たのに……S級にはなれなかったし、ヴォルダンとメイヤはS級になっちゃうし。どうしよう、フィンテッドに笑われちゃうよぉ」
 「お嬢様、おいたわしや……」
 「メイヤ、こういうときこそ我らがお嬢様を支えるのだ。それが従者の務めである」


 あれってフレムラとその従者だよな
 私服のフレムラと、相変わらずも執事とメイド。それにしてもフィンテッドの知り合いなのかな


 「あ」
 「やべ」


 目が合った。反らすけど時既に遅し、フレムラの顔つきが険しくなり……驚愕に染まった
 何だ? 急にどうした? 視線の先は……リリ?


 「り、リリティアラ……!?」
 「ふ、フレイミュラお姉ちゃん!?」




 え、まさかの知り合い?




───────────────


───────────


───────




 「何で何で!? どうしてフレイミュラお姉ちゃんがここに!? お姉ちゃんは冒険者になってブレス家を勘当されたって……し、死んだって、う、うぁぁぁん!!」


 リリは立ち上がり、フレムラも胸に飛び込んだ
 俺はワケが分からずコノハを見ると、コノハも困惑しながら話してくれた


 「え、ええと……あちらのお方はフレイミュラ・ブレス様で、王都の貴族ブレス家の4女です。聞いた話では、幼なじみで冒険者のフィンテッド・ブラスター様を追って冒険者となりブレス様を勘当、そのまま事故でお亡くなりになったと聞きました」
 「えっと、知り合いなのか?」
 「は、はい。晩餐会で何度か合われ、年も近かったのでリリはすごく懐いていました。死んだと聞かされた時は何日も泣いておられました」
 「フィンテッドは……?」
 「はい、フィンテッド・ブラスター様は〔勇者ヴォルフガング〕の子孫と言われ、幼い頃から特例で冒険者となるべく育てられました。フレイミュラ様とは幼なじみで婚約者であったそうですが、フィンテッド様は一方的に婚約を解消なされたと聞きました」
 「なーるほど。それでフィンテッドを追ってきたワケか……」


 なんとなくわかった。フレムラはフィンテッドが大好きなんだな


 「リリティアラ……ステキなレディになったわね」
 「フレイミュラお姉ちゃん……私、ルノー家を出たの。今はジュート兄さんと一緒なの。もちろんコノハも」
 「ジュート兄さん?」


 フレムラはここで俺に注目。ちょっと怖い


 「お久しぶりです、フレイミュラ様」
 「久し振りねコノハ、あなたもステキになったわね」
 「あ、ありがとうございます……」


 コノハはそのまま執事とメイドの元へ、どうやら知り合いらしい


 「あなたがリリティアラの保護を?」
 「は、はい。事情がありまして……」


 俺はリリとコノハの出会いを話し、盗賊のことやポートレードのことを話す


 「なるほど。リリティアラとコノハの家族に……」
 「はい。2人は俺が守ります、心配しないで下さい」
 「そうね。アナタほどの強さなら心配ないわ。2人をよろしくね」 
 「はい」


 なんだ、いい人じゃん。ちょっと怖いと思ったけど


 「フレイミュラお姉ちゃん、これからドコ行くの?」
 「私たちはこれからポートレードへ向かって、その後は王都で依頼を受けるわ。次のS級の昇格試験に備えてもっと強くならなきゃね」
 「そっか……また会える?」
 「もちろんよ、困ったことがあったらいつでも言いなさい。あなたは私の可愛い妹なんだから」
 「お姉ちゃん……ありがと」


 フレムラはリリにキスをすると、そのまま風のように去って行った


 「よかった……お姉ちゃん、元気そうだった」
 「ああ、よかったな」




 リリはフレムラの後ろを、見えなくなるまで見送っていた




───────────────


───────────


───────




 町をぶらつき、夕食も町で済ませ帰宅


 3人で温泉に入り、最後の夜は一緒に寝た
 リリがくっついて離れなかったので、コノハとリリを挟み込むように寝る


 翌朝。屋敷の鍵を管理施設に返し、いざ出発


 「やっぱ名残惜しいな……」
 「……うん。楽しかった」
 「そうですね……」


 町の入口で振り返り、ここまでの思い出を振り返る
 しかし過去ばかり見てもしょうがない。俺たちはこれから先に進まなくちゃいけない


 「よし、行くか」


 アウトブラッキーを呼び出し乗り込み、前を見て出発する
 次は〔地底迷宮アンダーザホール〕で補給、そしていよいよ〔龍の渓谷〕だ
 しばらく進んだら、リリとコノハにはマフィの所へ行って貰おう


 「リリ、コノハ。しばらく進んだらマフィの所へ案内するよ。黎明たちもいるからゆっくりしてくれ」
 「はーい、なんか楽しみ」
 「私もです。皆さんに会いたいです」


 この2人なら大丈夫だろ。あっちでも楽しくやれる




 俺はマホロバの里に別れを告げ、アウトブラッキーを発進させた





「ホントウの勇者」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く