ホントウの勇者

さとう

秘境マホロバの里⑬/従者・試験官終了



 執事とメイドは微動だにせず、フレムラだけが前に出てくる


 「ヴォルダン、メイヤ、アナタ達は手を出さぬよう」
 「は、お嬢様」
 「畏まりました」


 執事とメイドは一礼。マジかよ、俺相手に1人か。レクス並みに強いのかな
 つーかお嬢様って、貴族なのか?
 フレムラは腰の剣を抜き、切っ先を俺に向ける


 「さて、この〔蒼蓮剣そうれんけんデュルグレム〕の力を見せてあげましょう」
 「は、はぁ……」


 うーん、なんか気取ってる
 あの剣がマフィの作ったアイテムなのかな?


 「それでは始め!!」




 ディグビートさんの合図で戦闘が始まった




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 とにかく楽しむことはせず、相手の実力を見極める


 「ふふ、行きますわ!!」


 細いレイピアのような剣を、フェンシングのような構えで突き出しながら向かってくる
 なかなか速く構えにもムダがない。教科書のお手本みたいだな


 「シッシッシッ!! シュッ!!」
 「っと、アブねっ」


 攻撃は斬撃ではなく突き。まんまフェンシング
 身体を横向きにし、的確に急所を狙ってくる。って、殺す気満々の突きじゃん
 俺は最小限の動きで躱す。反撃は出来たけどあえてしない


 「ふふん、なかなかやりますね」
 「はぁ」


 うーん。もしかして大したことないのかな?


 「では……これならどうでしょう。【ブレイズソード】!!」


 フレムラの剣から赤い炎が巻き起こり、周囲一帯を炎の壁が覆う
 まるで相撲の土俵のように炎のサークルが現れ、俺とフレムラは囲まれる


 「さぁ、逃げ場はありません。覚悟!!」
 「いや、あんたもじゃ……」


 俺の呟きなど聞こえなかったのか、フレムラは剣に蒼い炎を纏わせる


 「さぁ、超高熱の【アズールソード】を躱せるかしら!!」


 なんか盛り上がってるけど、この人の剣速じゃ俺を捕らえられない
 案の定、剣が燃えてるだけで動きは変わらない。この炎の壁も正直意味はない


 「はぁ、はぁ、はぁ……おのれ、なんてヤツなのでしょう!!」
 「えっと……」


 どうしよう、終わらせようかな


 「お嬢様、少しお休み下さい」




 すると突然、炎の壁が消え去った




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 「メイヤ!! あなた……!!」


 メイヤと呼ばれた女性が、手を突き出してコッチを見ていた
 どうやら【青】属性の魔術で、この炎を消し去ったらしい


 「お嬢様、ここは私どもにお任せし、しばしの休憩を」
 「ここは私とヴォルダンで食い止めますゆえ」
 「そ、そう? では暫くお願いね」


 フレムラは剣を納めると後ろに下がり、ヴォルダンと呼ばれた初老の男性が向かってきた


 「お相手願います」
 「なッ!?」


 恐ろしい速さだった。レクスより速い
 ヴォルダンの手にはグラブがはめられ、息を飲むような連続攻撃を仕掛けてくる


 「こ、この……ッ!!」


 速すぎる。〔翼の如くスカイウィング〕15人より速く、躱すのが困難だ
 ギョッポ老師と組み手をしなかったら、この手の格闘技に対応できなかったかも


 「憤ッ!!」
 「ぐぅッ!?」


 ズドン、とボディにいいのが入る……が、なんとかガード
 ナイフを投げ捨て両手で拳を受け止めると、手首をひねりあっけなく抜け出す
 すると今度は上空に、巨大な水球が現れた


 「す、【爆発水球スプレッド・ボンバー】だって!?」


 ヴォルダンは拳を抜いてすぐにバックして回避。俺は咄嗟に魔術を使う


 「は、【灰】の上級魔術、【鉄筋大盾アイアン・プロテクション】!!」


 上空に向けて大盾を作り受け止めると、水球は爆発、雨が降り注ぐ
 盾が消え、俺は前を向いた
 既に目の前にはヴォルダンが。初めからこれが狙いだったんだ


 「御免!!」
 「しまッ、がハァッ!?」


 正拳突き
 鳩尾にモロに喰らい吹っ飛ばされた




 俺はそのまま10メートルほど吹っ飛ばされた




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 俺はうつぶせに倒れた状態で、左腕をまさぐった
 ゆっくりとフレムラが近づき、腰の剣を抜く


 「これが私たちの実力です。思い知ったでしょう?」


 いや、アンタじゃなくて後ろの2人だよ


 「さぁ、これで終わりです!!」


 フレムラは剣を振り上げ、俺にトドメを刺そうとする


 「悪いな」


 俺は〔マルチウェポン〕の短弓ショートボウを構え、フレムラめがけて発射。矢はフレムラの右手に刺さり、剣を取りこぼした


 「あぐッ!? ひ、卑怯なッ!!」
 「いや、アンタなんにもしてないじゃん」


 俺は剣を拾い、フレムラに向かって構える


 「来いよ、もうわかった。あっちの女性は【青】属性の魔術師、あっちのおじさんは格闘家、でもギョッポ老師よりは弱い。もう負けないぜ」


 俺は短弓ショートボウに矢を番えメイドに向け、剣は牽制のためフレムラに向ける。視線はヴォルダンに固定し、動こうモノならフレムラに斬りかかると視線で脅す


 すると、ヴォルダンは構えを解いて観念した


 「お嬢様。我らの敗北です」


 フレムラはガックリ膝をつき、意味深な呟きをした




 「ごめんなさい……フィンテッド」




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 恐らくだが、真の実力者は執事とメイド。フレムラはおまけだろう


 「な、な、な……」
 「お、お嬢様。その……」
 「申し訳ありません。お嬢様」


 S級冒険者の認定を受けたのはメイドと執事だけ。フレムラは落ちた
 わなわな震え、今にも泣きそうな顔をしてる


 「申し訳ないが辞退させて頂く。従者である我々だけS級認定を受けるなど出来ない」


 執事が丁寧に礼をするが、ギョッポ老師が言った


 「大馬鹿者、実力に見合った認定をするのはギルドの仕事じゃ。そんな理由で辞退するならおぬしの冒険者資格を永遠に剥奪する。なりたくてもなれない冒険者たちに失礼だとは思わんのか、痴れ者め」
 「……」


 執事は俯き、己の言動に恥じている。しかし主の気持ちを考えると剥奪もやむなし、そんな表情だ
 すると、メイドに慰められていたフレムラが凜々しく言う


 「ヴォルダン、認定を受けなさい、メイヤも。私のことは気にせずに、いいわね」
 「……わかりました。お嬢様」
 「……わかりました」


 執事とメイドは、新しいドッグタグを貰いにディグビートさんと行ってしまった
 ギョッポ老師とサザンカさんもいつの間にかいなくなり、なぜかフレムラと2人になった


 ってゆーか帰っていいのかな。報酬は?
 とにかくギルドに戻るか


 「えっと、お疲れさまです」
 「………」




 フレムラは、俯いたまま何も言わなかった




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 ギルドの特別室に戻ると、サザンカさんとギョッポ老師がいた
 ディグビートさんは下でドッグタグの受け渡しをしてるらしい


 「ジュート君、お疲れさま」
 「お疲れさまです、ディグビートさん」


 執事とメイドにドッグタグを渡し終えたディグビートさんが戻ってきた


 「さぁて、長かった昇級試験も終わりや。お疲れさん」
 「や~れやれ。ようやく終わりじゃの」
 「ああ。今回はなかなか豊作でしたね」


 それぞれを労うと、サザンカさんが俺に言う


 「さてジュートはん、あんさんに報酬や。受け取りや」
 「あ、どうも……って、どっから出してんすか!?」


 なんとサザンカさんは胸元からゴルドカードを出し俺に渡す。うぅん、生暖かい


 「いやぁ、楽しかったわぁ。あんさん、ここに何時までおるん?」
 「えっと、そろそろ出発する予定です」
 「そうなのか。また会えるといいね」
 「ふん。せっかくわしが鍛えてやろうと思ったんじゃがのぅ」


 サザンカさん、ディグビートさん、ギョッポ老師と握手する
 なんだかんだで楽しかった。いい経験になったし、勉強にもなった


 「その、ありがとうございました。とても勉強になりました」




 こうして、俺の試験官経験は幕を閉じたのであった





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