ホントウの勇者

さとう

秘境マホロバの里⑫/快感・紹介状



 〔翼の如く(スカイウィング)〕の装備はバラバラだった。剣・斧・槍・双剣・鎚と、全て近・中距離武装で、俺の突進に合わせて全員が突っ込んでくる


 「全員、いつも通りで」
 「「「「了解」」」」


 ボソッとリーダーが呟くと全員が頷く。俺は武器を構えながら、リーダーめがけて攻撃を仕掛ける


 「はッ!!」
 「おぉッ!?」


 リーダーは店で売ってるような鉄の剣を武器にし、俺の連続攻撃についてくる
 なるほど、それなりに場数を踏んでるのはウソじゃない。それにしてもダンジョンを踏破したグループなら、マフィの作ったアイテムがあるはずだけど……この鉄の剣じゃないよな


 「やぁッ!!」
 「とりゃっ!!」


 背後や左右からも攻撃が迫る
 槍の突きを躱し、斧の一撃を避け、双剣をいなし、鎚の打撃を避ける
 ここで俺は違和感を感じた


 「……?」


 おかしい。テンポがずれてるような、不自然な「間」を感じる
 5人は確かに高水準な冒険者だ。連携も上手いし、それぞれが手練れだ。でも、決め手に欠ける
 ここぞという時にワンテンポずれ、なかなか攻めてこない


 「……何を」
 「ふふふ、どうしました?」


 俺の違和感に気が付いたのか、リーダーと鍔迫り合いをしながら思う
 まるで、準備運動してるような……そんな動きだ


 「さぁ、まだまだ行きますよ!!」
 「チッ!!」


 5人の動きは洗練されてるが、着いていけないほどじゃない
 この程度なら、悪いけど不合格だな


 「悪いな、もう分かった」
 「はい?」


 俺は終わらせようと思い、距離を取る
 すると、5人は武器を構え、再び全員で突っ込んできた


 「……」


 もうこの5人の動きは読めた。1人ずつ倒し終わらせる
 俺は横一列になって突っ込んでくる5人を見て、リーダーを仕留めようとした


 「「「「「【二分身ダブル】」」」」」




 次の瞬間、5人が10人・・・に増えた……は?




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 「ななな、なんじゃこりゃッ!?」


 俺に分かったのは、5人の装備した腕輪が発光。気が付いたら10人になっていたことだ
 1人が2人になり合計10人。同じ人間が2人いる
 驚く暇も無いまま、連続攻撃が俺に迫る


 「そ、そうかッ、このためかッ!!」


 時折ズレるように感じたのは、5人の戦闘のテンポが、本来は10人用のテンポだったから「間」が空いたように感じたんだ。これがマフィの作ったアイテムの力か


 「はっはっは、これが〔リュヘナ鍾乳洞窟〕で手に入れたお宝、〔ガジェタスの腕輪〕の力さ」


 倍以上に増えた手数の攻撃を捌きながら、リーダーが言う
 でも、いける。力量が倍になったわけじゃない、手数が増えただけ


 「「「「「【三分身トリプル】」」」」」


 うそーん。また5人増えた。15人かよ


 「「「ははは。降参しますかな?」」」


 3人のリーダーが同時に言う


 「いや、けっこう。さっさと来いよ」




 俺は負ける気は全く無かった




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 〔翼の如くスカイウィング〕は勝利を確信していた


 〔ガジェタスの腕輪〕の効果を知った時は驚いたが、分身体を含めた連携方法を生み出し、数年の修行を行うことでようやくモノにし、Sレートモンスターをいくつも葬ってきた
 分身体は一定のダメージを受けると消え去るが、実力は本体と比例して高くなる。なので彼ら5人は個々の実力を高めつつ、集団戦の実力を付けていった


 この戦法。〔嵐の如くストームアタック〕は破られたことがない必殺技
 この形が決まった瞬間、彼らの勝利は確定した


 はずだった


 「……どういう、ことだ」




 黒服の双剣士は、不敵に微笑んでいた




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 ギョッポ老師は、この光景を見て笑いが堪えきれなかった


 「くっくっく……かっかっかっ!!」
 「老師、笑ってはいけませんよ」


 ディグビートも同じ気持ちだったが、彼は少し呆れが強い
 今さらながら思った。ジュートは試験官に向いていないと


 「なーんやぁ……ずいぶん、楽しそうやないかぁ?」


 サザンカも、キセルを吹かしながらほくそ笑む


 15人の猛襲。普通に考えたら恐るべき脅威だ
 1人ではまず太刀打ち出来ない。普通なら逃走を考えるか、降参するかの2択だろう


 銃斗は、どちらも選ばなかった
 全ての攻撃を回避し、いなし、受け流し、受け止め、躱し、全身を余すことなく使い、ギリギリの状況で生き残っていた。いや


 「あの小僧……楽しんでおる!!」




 銃斗の表情は、この状況を明らかに楽しんでいた




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 俺は全ての攻撃を躱す。動きを読んで、武器を合わせ、全身を使って回避する


 「はははッ、ちっくしょう!!」


 俺は楽しかった
 ギリギリの状況なのに、楽しくて仕方なかった
 顔は笑み、汗は飛び散る。しかし楽しくて止まらない。ギリギリの状況を限界まで満喫していたい
 終わらせるのは簡単だ、でもいやだ。もっと楽しみたい


 もの凄い高揚感が全身を支配する
 すると、いきなり分身が消滅した


 「……ボクたちの、負け、です……」


 5人はガックリと項垂れ、完全に戦意が消失し、その姿を見た俺は我に返った
 やばい、試験なのに俺はめっちゃ楽しんでいた


 「あ、その~……うん、お疲れ」




 俺は気まずくなり、ディグビートさんに助けを求めた




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 5人は結局不合格だった。なんか可哀想


 「はぁ~……〔魔導航空専門学校〕は夢のままかぁ」
 「S級冒険者ならすんなり入れるのに」
 「A級じゃあ厳しい審査があるし、お金もかかるし……」
 「せめてコネでもあれば……はは、ムリか」
 「仕方ない。地道に稼ごう」


 トボトボ歩く後ろ姿はなんか可哀想。うーん、効果があるか分からんが、試して見るか


 「あ、あの……俺で良かったら、紹介状を書きますけど」


 その言葉に、5人はどんよりと振り返る


 「……紹介状? だれに?」
 「えっと、【紫の特級魔術師 シャロアイト】に、ですけど」


 その言葉に、5人の目がギラッと光り、俺の側までやってきた。こえぇ!?


 「ととと、特級魔術師と知り合いなのか!?」
 「は、はい。一緒に旅してました」
 「しゃ、シャロアイトって言ったら〔魔導航空専門学校〕の初代校長だぞ!? 初めての飛行魔導車、【アメジスト号】を作り上げた天才魔導科学少女にして特級魔術師の!!」
 「え、えっと……どうします?」


 5人は横一列に並び、同時に頭を下げた


 「「「「「お願いしますッ!!」」」」」


 すげぇ、戦った時より断然早いスピードの礼だ


 「わ、わかりました。試験が終わったらでいいですか?」
 「は、はい!! よっしゃ、これで入学出来るかも!!」
 「ああ、入学金も安くなるし、もしかしたら審査もパスになるかもな!!」
 「よ~し、希望が見えてきたぜ!!」
 「ああ、これで空に一歩近づいた!!」
 「うんうん!!」


 メッチャ喜んでる。まぁこの人たちとの戦闘は楽しかったし、シャロアイトにも手紙を出す感覚で書けばいいか。お礼も込めてな


 試験が終わったらギルドに紹介状を提出する約束をすると、5人はスキップで去って行った
 やれやれ。なんか疲れたけど最後の試合だな


 「ジュート君、準備はいいかな?」
 「はい、スミマセン」


 ディグビートさんは苦笑しながら言う
 すると、ゲートから3人の男女が現れる……炎姫フレムラだ


 「お疲れでしょうが手加減はしません。お覚悟を」
 「いや、気にしないで」




 俺はナイフを構え、フレムラに向き直った





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