ホントウの勇者

さとう

秘境マホロバの里⑪/翼の如く・不気味

 
 「ただいま~」
 「兄さんおかえりっ」
 「おっと」


 屋敷へ帰るなり、リリが飛びついてきた
 取りあえず甘えるリリの頭を撫でる。よしよし


 「えへへ」
 「どうした、いいことでもあったのか?」


 玄関から居間に移動しつつ聞くと、リリは上機嫌に話し始めた


 「あのね、今日みんなで行った甘味処にね、〔ダイフク〕っていう甘~いお菓子があったの。すっごくモチっとして中に甘酸っぱい赤い実が入ってたの。お土産買ってきたから兄さんも食べてね」
 「なるほど、イチゴ大福か。いいな」


 正直疲れたし小腹も空いた、少し摘まんでみるのもいいかも
 居間に移動すると、コノハと水萌は夕食の支度、括利はいつの間にかいたシロを抱きしめて転がり、麻止は古そうな本を読んでいた


 「あら、お帰りなさい」
 「お帰り~、ふわふわ~」
 「ただいま。って、シロお前いつの間に」


 シロは少し大きな小型犬くらいの雑種なので、括利が抱きかかえるとスッポリ収まってしまう
 シロは嫌がることなく淡々と言う


 《キミとギルドで別れた後、彼女たちと一緒にいたんだ。クロシェットブルムも一緒にね》
 「クロも?」
 《うん。今はキッチンにいるよ》


 俺はキッチンに向かうと、クロは水萌からおこぼれを貰っていた


 「はいクロちゃん。味はどうかな?」
 《フム……不思議な味ネ。でも美味しいワネ》


 クロは皿に移されたニシンの山椒漬けをモグモグ食べてる


 「それではクロ殿、こちらは如何でしょう?」
 《ニャ……柔らかいワネ。でも少ししょっぱいワ》


 今度は鯖の味噌煮、おいおい食い過ぎだろ。それにコノハと普通に喋ってるし


 「あ、ジュートくん。お帰り」
 「ただいま。美味いかクロ?」
 《絶品ネ。彼女たちは最高の料理人ヨ》
 「お褒めいただき光栄です。クロ殿」


 まぁいいか。幸せそうだし


 「あ、ご飯までもう少しかかるから、先にお風呂に入ったら?」




 そうさせて貰うか。魔術で身体はキレイになるけど、やっぱ風呂だよな




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 居間にあった大福を少し摘まみ、俺は風呂場へやって来た


 「おっフロおフロ~」


 なぜここにリリが居るんだろう。しかも服を脱ぎ始めたし


 「お、おいリリ?」
 「兄さん、早く入ろ?」
 「いや、一緒は流石に……」
 「なんで? 兄妹だしいいでしょ?」


 いやいや、そう宣言しただけで異性には違いない。そもそもリリには羞恥心が薄い
 2歳しか違わない女の子、身体の発育は年相応だし、直視できん
 よし。ここは1つ言っておこう


 「いいかリリ、兄妹は一緒にフロは入らないんだ。俺はお前の兄だけど、お前の裸を見てるとちょっとイケない気分になる。だから一緒はダメだ」
 「あなた……何を言ってるのよ」
 「うぉぉッ!? ま、麻止っ!?」


 いつの間にか後ろには麻止がいた。めっちゃあきれ顔で
 リリはいつの間にか全裸で、駆けるように浴場へ


 「全く。リリはあなたにベタ惚れなんだから、受け入れてあげなさい」
 「受け入れるって、う~ん」
 「リリはあまだよく分かってないけど、いつかあなたを「男」として見るわよ。リリの幸せを願うなら受け入れるか、突き放すかをキチンとしなさい」
 「突き放すなんてするかよ。俺は兄として……」
 「だったら兄として受け入れなさい。いつかリリがあなたを「男」として見たとき、「俺は兄だから」ってちゃんと伝えるのよ」
 「……そ、それは」
 「それとも……リリを渡したくない?」
 「………」
 「ま、ゆっくり考えなさい。リリだけじゃなくコノハのこともね」


 そう言うと麻止は服を脱ぎ始める。え、まさか


 「ホラ、背中を流してあげる」
 「あ、はい」
 「でも、リリがいるからエッチはダメよ」
 「……はーい」
 「心配しなくても、今夜あなたの部屋に行くから」
 「はい!!」


 服を脱いで風呂場へ向かい、身体を洗って湯船に
 リリがくっついて分身が大変なことになったが、とりあえず大丈夫だった




 さて、お次は夕食だ。いっぱい食べてやるぜ




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 「へぇ、それで倒したんだ」
 「ああ、レクスは結構な強さだった。〔蛇の歌コブラソング〕は欲望に塗れた女集団でさ、連係攻撃はなかなかだったし、攻撃も強かった。でも不合格だったな」
 「へぇ~」


 夕食時、今日の結果を話しながら箸を進める


 「あと5日もあるのか……」
 「ま、怪我しないように頑張ってね」


 麻止が優しく言ってくれる。俺はそれだけで癒やされるぜ


 「試験が終わるまでは滞在する。それが済んだら出発しよう」
 「はい、目的地は〔龍の渓谷〕でしたね」
 「そうだ。あとリリとコノハには悪いけど、〔龍の渓谷〕は超危険地帯らしいから俺1人で行く。それまではマフィの所で待っててくれ」
 「マフィ? 誰それ?」
 「え~っと、変人だけど可愛いヤツだ。仲良くしてやってくれ」


 リリとコノハは不思議な顔してる。まぁいいや
 そのことで思い出したことがあった


 「そう言えば、ハミィは元気か?」


 ハミィは俺が拾った〔グレーラビット〕の子供だ。親が殺されて1匹ぼっちだったからな


 「ハミィちゃんは元気だよ。マフィちゃんにすっごく懐いちゃって、マフィちゃんも大きくなったら自分専用の乗り物にするって言ってたよ」
 「それに~、もう大型犬くらいのサイズに成長してるよ~?」
 「モンスターの成長があんなに早いなんてね。流石に驚いたわ」


 なるほど。元気そうで何よりだ
 今度会いに行こう。俺のこと覚えてるといいけど




 夕食は穏やかに終わり、麻止を抱いてこの日は終わった




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 それから3日ほどギルドで戦闘試験をやったが、レクスほどの強さの戦士はいなかった
 そして最終日。この日は〔翼の如くスカイウィングス〕とフレムラとの戦いだ


 「ふむ、なかなかええ動きじゃ。初日の緊張がウソのようじゃの」
 「い、いえ……老師も、なかなかの、もので……」


 俺は肩で息をしながら目の前のバーコードヘッドのじいさんを見る
 ギョッポ老師は格闘技のプロ。プロ中のプロ、達人だ。この3日間、俺の準備運動に付き合ってくれた
 今さらだが、この人はかなり手加減してる。生身じゃまず勝ち目はない、神器を使わない限り俺に勝機は無いだろう


 「さて、今日は2組だけじゃの。フレムラと〔翼の如くスカイウィングス〕の2組、おぬしが最終日にこの2つだけを残して終わらせるとはのう」


 まぁこの2つは強そうだったから
 テンションが上がってる間に連戦で戦った方がいいと判断した


 「お、来たようじゃ。わしは向こうで見させて貰うぞい」
 「はい、ありがとうございました」




 根暗チームとお嬢様チームの登場だ。手加減はしないぜ




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 俺の目の前には〔翼の如くスカイウィングス〕が並んでいる


 メンバーは5人。全員が皮鎧と剣を装備し、どこか暗い雰囲気を漂わせてる 
 体格もバラバラで、ガリヒョロにぽっちゃり、小さいのおっきいヤツ、リーダー格は猫背の中肉中背のなんともつかみ所が無いチームだった


 「ふふふ……ボクたちの空のために、キミには踏み台になって貰うよ」
 「ああ、青い空、白い雲……美しい」
 「飛べる、ボクたちは飛べるんだ……」
 「いざゆかん、大空へ……」
 「待っててくれ、すぐに行くから……」


 結論。コイツらはヤバい、速攻で終わらせる


 「えっと、行きますね」




 俺は両手にナイフを構え、飛び出した





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