ホントウの勇者

さとう

秘境マホロバの里⑩/戦闘試験・オリジナル



 本日受ける試験参加者は4組
 そこそこの冒険者2組と、双剣士レクス、〔蛇の歌コブラソング〕の計6人の4組だ


 レクスと〔蛇の歌コブラソング〕は別にしようと思ってたが、特に理由なく一緒にしてしまった。今更だけど、俺は思う


 「······ちょっとマズいかな」


 俺は甘かった。もしかしたらレクスも〔蛇の歌コブラソング〕も俺より強いかも知れない
 老師との戦いで改めて思った


 俺は、別に最強ではない


 俺より強いヤツはまだまだいる。俺は老師の見た目に惑わされて完全に出遅れた。あれが実戦で、老師が俺を殺すつもりだったら、俺はここにはいない
 自分の認識の甘さにはほとほとイヤになる。この世には、たとえ神器を使っても勝てない相手がいるかも知れない


 「もう、油断しない」


 演習場の中央に立ち、俺は待つ
 今日戦う参加者は、ディグビートさんの話を聞いている。そして最初の1人であるレクスがやって来た


 「あの、さっきはすみませんでした」


 取り敢えず謝る。言ったことは最悪だったが、俺も大人気なかった
 するとレクスも大人しく頭を下げる


 「いや、オレも済まなかった。実は緊張し過ぎてな、その······気分を高揚させるために、軽く、な」


 レクスは人差し指と親指を合わせ、クイっと煽る
 こ、この人。酒を飲んだのか


 「あの、大丈夫なんですか? 良ければ最後に回しますけど」
 「いや大丈夫、酒はもう抜けた。先程の非礼も兼ねて、全力で相手させてもらう」
 「······はい。お願いします」


 やっぱりこの人は強い。双剣を構え、俺を睨む目つきに油断はない




 ディグビートさんの合図の元、戦闘試験が始まった




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 これまで、一対一だと先手必勝で俺は飛び出していたが、今日は試験官という立場もあるので、相手の様子を伺う


 レクスは双剣だが、普通のナイフではなく、刃がまるでブーメランのように歪曲してる。たしかククリナイフとかいうヤツだな
 しかも、ナイフの柄同士には紐が付けられている


 「さぁ行くぜっ‼」
 「おわっ⁉」


 するとレクスは突然ナイフを投げた
 形状からしても刺さるようには見えないし、軌道も真っ直ぐなので普通に避けた


 「へっ、【首刈くびかり】‼」
 「は? っおわッ⁉」


 レクスがナイフの紐を引くと、すごい勢い戻る
 軌道は同じだが、俺の首を切断する勢いで戻ってきた


 俺は体勢が崩れたままレクスに向き直ると、すでにナイフをキャッチしたレクスは眼前に。そのまま両手を広げてナイフを構え、横回転しながら突っ込んできた


 「【扇風刈せんぷうがり】っ‼」
 「お、わぁたっ⁉」


 俺は受けずにバックステップ。レクスの追撃をギリで躱す
 体勢を立て直すと、レクスも回転から着地。お互いに向き直る


 「レクスさん、強いっすね······‼」
 「そりゃどーも。オレはモンスターを狩るより強い賞金首を狩り取る方が多かったんだ。対人戦闘ならそこらの傭兵より強いぜ?」


 なるほどな。確かにレクスさんの討伐したモンスターは、Sレートだがオークやサイクロプスなどの人間型が多かった
 でも、俺は負けない。これからもっと強い【神】と戦うのに、人間相手に負けるわけにはいかない


 「······よし」
 「お、スイッチ入ったね?」
 「すみません、少し入れ込み過ぎてました。でも······終わりです」
 「へぇ、じゃあ行くぜ‼」


 俺はナイフをしまい素手で構える
 レクスさんは再び飛び出してナイフを投げる。まるでロープ投げのように頭上で回転させ、横から狩り取るような一撃だった


 「【刈凪かりなぎ】ッ‼」
 「······」


 問題ない。どんなに速くても狙いは単純だ
 冷静に対処しろ、俺なら出来る


 「はぁっ‼」
 「なっ⁉」


 俺は飛んでくるナイフの柄を掴み、紐をそのまま全力で引っ張る
 ガクン、と体勢の崩れたレクスさんは前につんのめり、俺はこのスキを逃さなかった


 「終わりだッ‼」
 「ゲハっ⁉」


 俺は強烈なボディブローを喰らわせ、悶絶し蹲ったレクスさんに〔カティルブレード〕の刃を突きつける


 「俺の勝ちですね」




 レクスさんは苦笑し、そのまま地面に寝転んだ




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 「いやはや······まさかあの速度で飛来するナイフを掴まれるとは思わなかった。オレだって飛ぶナイフを掴むのに何年もかかったのに」
 「いやぁ、正直ヤバかったです」


 レクスさんに手を差し伸べると、レクスさんは立ち上がる
 俺の評価は文句なしのS。この人はS級の強さだ
 俺はディグビートさんを見ると、ニッコリと頷いてくれた


 「えっと、ジュート君だっけ?」
 「ジュートでいいっすよ。これからは同じS級なんですし」
 「······へ?」


 まぁそういうこと。最初の印象は最悪だが嫌いではない
 緊張から酒を飲んであんな態度だったが、この人は間違いなく強い。それにちょっとお調子者なだけ


 「は、ははは······よしジュート、オレはレクスでいいぜ‼ 今日は飲みに付き合えよ、オレの奢りだ‼」
 「い、いや。俺は明日も試験あるんで······」




 肩を抱かれて騒ぐレクスに圧倒されたが、悪くなかった




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 レクスのおかげで緊張もほぐれ、いい感じで戦えた
 シングルの冒険者の戦闘を終えたが、S級冒険者に相応しいのはレクスだけ。残りは全員がA級の中堅クラスと言った実力で、俺には判断が難しかったのでディグビートさんに丸投げした
 まぁ結局は全員不合格だったんだけどね


 そして本日最後、〔蛇の歌コブラソング〕との戦闘だ
 全員が20歳くらいの女性4人チーム。1日目の最後に集団戦を選んだのは、このチームを攻略出来れば後々が楽になるからだ


 「悪いけど、遠慮しないからね!!」
 「そうよ!! 私たちのために!!」
 「エステに洋服、美味しい物にブランドバッグ!!」
 「お金がいっぱい必要なの、だから……負けない!!」


 うーん、物欲に塗れてやがる。隠さない辺りまだマシかもな
 まぁいいや。俺はただ戦うだけ


 「まぁ……よろしく」




 イマイチ気分が乗らないまま、本日最後の戦いが始まった




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 驚いたのは、4人の武器が全て「鎖」だったこと
 かなり長い鎖の先に、槍の矛先のような武器が装着され、4人がそれぞれ威嚇するように振り回す


 「さぁ、この「蛇」から逃れられるかしら?」
 「ふふふ……踊りなさい!!」


 すると4人の一斉攻撃。矛先による突き、左右からのなぎ払い、上空からの振り下ろし
 当然ながら、かなりスキのないチームだ。鎖による連携は桁違いに上手い


 「っと、アブねッ!?」
 「上手く避けるじゃない」
 「でも……これでどうかしらッ!!」


 すると、お互いの鎖が擦れあい、ギャリンギャリンと金属音を響かせる
 それは歌のように響き合い、宙を踊る鎖は蛇のように蠢いている


 「喰らいなさい、私たちの連携奥義!!」


 4人が集まり、4本の鎖は1本の太い鎖に変化する
 矛先が集まり、まるで蛇のあぎとのように開いた


 「「「「大蛇叛乱サーペント・クリーク!!」」」」


 4人の絶妙な力加減で的確に俺を追尾する。捕まれば骨まで砕けるだろう
 しかし、この4人はとんでもないミスをしてる。それは


 「俺に「鎖」で挑むなんてなッ!!」


 俺の得意魔術は【灰】属性。中でも鎖はお手の物だ
 ここで俺はエースを切る
 密かに組み上げ、クロたちに監修して貰った俺の必殺奥義




 「【灰】のオリジナル魔術・【世界蛇ヨルムンガンド】!!」




 俺のオリジナル魔術
 演習場いっぱいの大きさの鋼の大蛇が、上空に現れた紋章から現れる


 「な、なんですって!?」
 「こんな魔術……見たことない!?」


 そりゃそうだ、俺のオリジナルだもん
 俺のヨルムンガンドは、4人の操る蛇にロックオン


 「行け」


 たったそれだけで大口を開けて飛びつき、4人の蛇を飲み込んだ
 武器を根元から食いちぎられ、4人はボーゼンとしてる


 「俺の勝ち、ですね」




 さて、本日の戦闘は終了。腹減ったなぁ



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