ホントウの勇者

さとう

秘境マホロバの里⑨/フレムラ・老師



 28組も面接があると、だんだんかったるくなってくる


 「ジュート君、もうすぐ終わりだから、そろそろ身体を動かしておいた方がいいね」
 「あ、はい。じゃあ次の面接が終わったら行きます」


 すぐに出たら面倒臭がってるのがバレるかも。ここはあえて1組後に出て行く


 「わかった。次は……〔炎姫フレムラ〕だね」


 ディグビートさんは資料を捲りつつ答えた。俺も合わせて資料を確認する


 出身地不明の18歳。戦闘スタイルは剣術
 〔炎姫フレムラ〕はフリーの上級魔術師で、たった1年でA級冒険者まで上り詰めた期待の新人。チームを組むのは2人の計3人で活躍してる
 依頼は主に討伐系を好み、3人グループでSSレートを討伐した事もある
 さらに【黒の大陸】のダンジョンの1つ、〔ヤマの審判城〕を踏破。実力や判断力、冷静さなども兼ね備えたスーパーウーマンだ


 「こりゃ面接するまでもないんじゃ……」


 思わず出てしまった俺の本音。だって文句の付けようがない
 すると、ギョッポ老師が教えてくれた


 「実力・功績が素晴らしくとも、人格が破綻してればS級は務まらん。S級は冒険者にとって最上位であり憧れの位、皆の模範とならねばいかんのじゃ」
 「その通り。だからジュート君も短気には気を付けないとね」
 「うぐ……はい」


 なぜか俺が怒られた。確かに俺はちょっと短気です


 「ほな、面接を始めよか。呼んでえぇで」


 サザンカさんがドアの前に居たギルド職員に声をかける。するとドアが開き、3人の冒険者が入ってきた


 「おぉ、すっげぇ……」


 俺は思わず呟いた。何故なら




 〔炎姫フレムラ〕は、燃えるような赤い髪をなびかせた超美少女だったからだ




───────────────


───────────


───────




 「それでは面接を始めます。どうぞおかけ下さい」
 「はい、失礼します」


 透き通るような凜とした声。天は二物を与えてるね
 俺は改めてスーパーウーマン・炎姫フレムラを見る


 長くサラサラの赤髪。赤を基調としたシャツに、高級そうな胸当てと籠手を装備してる
 下半身はミニスカにスパッツ、さらに足にはグリーブを履き、腰には細長い鞘に収められた剣。恐らくあの細さはレイピアだ
 顔は言うまでもなく美少女。どうしてこういう人ってみんな美女なのかね


 フレムラの後ろに控える仲間は、初老の男性と20歳くらいの女性
 しかし、服装がおかしい。まるで執事とメイドみたいな格好だ


 「えっと……どうぞ、お座り下さい」


 フレムラは椅子に座ったが、2人は座らずにフレムラの後ろに控えてる


 「いえ、構いません。始めて下さい」


 初老の男性が言うと、ディグビートさんは仕方なく続けた


 「わかりました。ではフレムラさん、あなたはS級冒険者になって何をしたいですか?」
 「はい。私にとってS級冒険者は通過点に過ぎません。私はこのまま経験を積んで、いずれは〔特務冒険者〕として活躍したいです。そうすれば……」
 「そうすれば?」
 「い、いえ。それだけです」


 何故か最後ドモったが、フレムラはスラスラと答えた。まだホントの理由は隠してるみたいだけど、S級に上がる理由としては好感が持てる
 その後もいくつか質問をし、面接は終わった


 「じゃ、俺は行きますね」
 「ああ。終わり次第、私たちもそちらへ行く」


 フレムラが退室するのを見送り俺も立ち上がる




 さて、やっと俺の出番か。少し身体をほぐさないとな




───────────────


───────────


───────




 ギルド裏の演習場は結構広い。大規模な魔術を使っても問題なさそうだな
 周囲に人は居ない。俺1人なので体操をして身体をほぐす


 「よ……っと、よし」
 「ほっほっほ、やっと出番じゃの」
 「うおっ!?」


 真後ろにギョッポ老師がいた。全然気が付かなかった
 すると老師は俺を見て言う


 「ふむ、双剣士か。それに投げナイフに袖の隠し武器……なかなか様になっとるようじゃな」
 「あの、面接はいいんですか?」
 「うむ、どうせあと5人ほどじゃ。おぬしの準備運動に付き合ってやろうかと思っての」


 ギョッポ老師は俺に向き合い、クイクイと手招きをする


 「……?」
 「ほれ、おぬしの準備運動に付き合うと言ったんじゃ。かかってこんかい」
 「え、でも」
 「全く、椅子に座りっぱなしで鈍った身体が、そんな体操程度でほぐれるワケなかろう。わしが組み手に付き合ってやると言ってるんじゃ」
 「は、はぁ……」
 「……はぁ、仕方ないのう。こっちから行くぞい」




 次の瞬間、ギョッポ老師の姿が消えた




───────────────


───────────


───────




 分かったのは、目の前の老師が手刀を俺のアゴに突き上げている瞬間だった


 「な、ッ!?」
 「ほう、躱すか」


 俺は紙一重でのけぞり回避。避けれたのは奇跡に近い


 「ほれ、こっちじゃ」
 「は、がぁッ!?」


 俺は気配の方向に向かって腕を上げる。すると同時に衝撃
 ギョッポ老師の回し蹴りがガードした二の腕にヒットした


 「ほれほれ、行くぞい」
 「んの、やろッ!!」


 今度は正面からの連続攻撃
 まるで空手、カンフー、拳法の組み合わせ。アグニと体術の修行をしてなかったら捌けなかった


 「甘い」
 「ぎぁっ!?」


 拳が急に開き手首を掴みそのまま捻られる。合気道まで使うのか
 ギリギリと掴まれ身動きがとれない。しかも動くだけで激痛が走り、思わず膝をつく


 「ほっほっほ。まだまだ……ぬ!?」
 「おぉッ!!」


 俺は痛みをこらえ足払いをするが、老師は俺の手を離して距離を取る
 奇襲に近かったため戦いの準備が出来ていなかった。もう行ける


 「行くぞい、ちゃーんと受けるんじゃぞ」
 「……」


 俺は痛みで流れた涙を拭い前を向き、老師の動きを見る
 ここはあえて武器は使わない。素手で制圧してやる


 「ほッ!!」
 「ッ!!」


 老師の格闘による連続攻撃は、打撃を混ぜた急所狙いの突きが多い
 全ての動きを観察。弾き、落とし、相殺する
 合気道もあるので拳の開きにも注意し、反撃のチャンスを伺う


 「ほっほっほ、楽しいのぅ!!」
 「……くッ!!」


 少しずつ読めてきた。老師のコンビネーションに合わせつつ反撃の一手を狙う
 狙いはカウンター、老師の力の籠もった一撃に合わせて拳をおみまいする


 「ひょッ!!」
 「はッ!!」


 老師の右手の手刀による突き。狙いは首
 これを最小限の動きで躱し、返す刀で拳を入れる
 タイミングは完璧、避けられない、俺の勝ち


 「ほっほ、残念」
 「なッ!?」


 俺の拳は老師のボディ狙い。踏み込んだ老師に合わせたのでカウンターが決まるはず、だった
 老師は俺の動きを読んでいた。あえてコンビネーションを読ませ、カウンターの一撃狙いを誘導し、さらにカウンターを合わせてきた
 老師はなんと俺の拳を膝で受け、さらに空いた左手の親指を突き出してくる。狙いは首
 俺は激痛を覚悟して歯を食いしばり……あれ?


 「ほっほっほ、いい感じに身体はほぐれたの。なかなか筋はいいがまだまだ駆け引きは甘い。精進せい」


 親指は、首の数センチで止まっていた
 気が付くと、俺は汗びっしょりで、肩で息をしていた


 「ろ、老師……」
 「ふむ、駆け引きは甘いが型は出来ている。かなり手練れの師匠に仕込まれたんじゃろうな」
 「は、はい……」


 そりゃ500年以上の経験を持つ酒好きのトカゲです、なんて言えない


 「ちとやり過ぎたかの、試験に支障はあるか? あるならわしが変わるが」
 「いえ、平気です。むしろ火が着きましたよ」
 「ほっほっほ、頼もしいのぅ。若いのは実にいい」


 俺は立ち上がり身体を動かす。うん、いい感じにほぐれたぜ
 すると演習場の入口が騒がしくなった


 「さて、そろそろ始まりじゃな」
 「はい」




 戦闘試験の始まりだ!!
 

「ホントウの勇者」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く