ホントウの勇者

さとう

秘境マホロバの里⑧/面接試験・未熟者



 翌日。俺は再び冒険者ギルドへやって来た


 冒険者ギルドには冒険者グループが溢れ、俺の登場に目をぎらつかせる
 俺が戦闘試験の教官だとバレているらしく、どうやら戦力を測るために観察してるようだ
 すると、カウンターの向こうでサザンカさんとディグビートさんが手を振ってる


 「おはようさん」
 「おはよう、ジュート君」
 「おはようございます。サザンカさん、ディグビートさん」


 あれ、ギョッポ老師がいない。トイレかな?


 「老師なら2階でお茶を飲んでるよ。ここの殺気立つ空気が息苦しいってね」
 「あ、そうですか」


 まぁどうでもいい。むしろお茶好きそうだし、自然な感じだ


 「さて、まずは面接からだ」
 「あれ? 確か指定のモンスターの素材集めじゃ?」
 「いや、それはもう終わってる。というかこの試験を受けるための選抜試験みたいなもので、その素材を納品して初めてS級の試験資格を得られるってわけさ」
 「はぁ、なるほど……」


 知らなかった。まだまだ勉強が足りんな


 「さて、面接会場は1階の特別室だ、行こうか」




 やべ、緊張してきた。まさか俺が面接官とはな




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 面接会場は広く、学校の教室くらいの広さで、意外なことに普通の床だった
 俺たちが座るテーブルに椅子、向かいには冒険者グループ専用の椅子が8脚並んでる。どうやらこの試験の最大人数が8人だからみたいだ


 「さてジュート君、もうすぐ面接が始まるが、何か質問は?」


 ディグビートさんの体育教師スマイルは今日も輝いてる
 質問か、うーん


 「あの、俺は何もしなくていいんですよね?」
 「ああ、質問や確認は私とサザンカでする。でも気付いたことがあったら遠慮なく発言してくれて構わない」


 あれ、じゃあ老師の役割は?
 俺の視線が茶を啜るギョッポ老師にスライドする


 「ん? なんじゃ小僧」
 「あ、いえ」
 「ふん。どうせ「じゃあ老師の役割は?」とか考えておったんじゃろ」
 「ギクッ!? そんなことないですよ」
 「なんじゃその「ギクッ!?」は!!」
 「ま、まぁまぁ落ち着いて。ジュート君、前にも言ったけど、老師には総合的な判断をしてもらう。私やサザンカが見落としたことなどを指摘してもらう」


 なるほど。理解出来ました


 「ほれ、そろそろ始めるでぇ、気ぃ抜くなや」


 サザンカさんがキセルを吹かしながら言う。いやアンタこそタバコ吸うなよ




 こうして、俺の人生初の面接がスタートした




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 「どーも、失礼します」


 入ってきたのは20代前半くらい。腰には2本の双剣、身長は高く、全体的にスラッとした、少しチャラい男性だ
 手元の資料によると、この人が〔双剣士レクス〕だ
 依頼履歴はなかなかのもの。シングルの冒険者で、依頼は主に討伐系、Sレートモンスターを過去に数体討伐、複数グループと組んでSSレートの討伐もある


 双剣士レクスは椅子に座ると足を組み、どことなくナメたような顔つきで俺たちを見る
 ディグレートさんやサザンカさんは特に気にする風もなく質問した


 「ほぉ、戦歴は中々のものだ。レクスくんは強いね」
 「そうやなぁ、これは期待出来るわぁ」
 「へへっ、そりゃどうも」


 レクスも気を良くしたのか、少し饒舌になる


 「いや〜苦労したよ、S級の昇格試験の場所を見つけ当てるのも。毎回毎回止めようぜ? 昇格試験の会場をランダムにするのは。ここにいる連中以外にも昇格試験を受けたいヤツはゴマンといる。な〜んで会場探しから始めなきゃならんのよ?」


 うっぜぇなこいつ。最初に出たのが文句かよ
 っていうか、昇格試験の会場ってランダムなのか。確かに探すのは大変かもな


 「はは、一応各ギルドにヒントは隠してあるんだがね。少ない情報から推理し、ここを探り当てるのも立派な試験さ」
 「へぇへぇ、そうですか。で、オレはどうすか? S級の器っしょ?」


 なにコイツ、すっげぇチャラい。椅子に深く腰掛け両手を広げてアピールしてる


 「ふむ。この場所を探し当てた洞察力、モンスターの素材集め、さらに依頼履歴も高難易度ばかり……人格はともかく、S級に相応しい器ではある。あとは戦闘試験で直に強さを見せてもらって判断しよう」
 「は~い。相手はそっちの少年がしてくれるんでしょ? にっしっし、キミさぁ……今、噂になってる女の子たちをたくさん連れた冒険者でしょ?」


 え。なにそれ、そんな噂が広がってんの?
 俺は曖昧に頷くと、レクスはニヤリと意地悪く笑う


 「ま、せいぜい死なないように頑張ってよ。あ、キミが死んじゃったら女の子はオレが貰ってやるよ。あんなに美少女揃いなら楽しめそうだ」
 「……あ?」


 ザワリ、と、血が騒ぐ
 殺意が部屋を満たす。俺はいつの間にか立ち上がり、レクスを殺すために


 「ジュート君、落ち着くんだ」
 「黙れ、喰い殺すぞ・・・・・


 ディグビートを殺意で脅し、ガタガタ震え始めてるレクスに向かって歩き出す


 「おい、何を貰うって……?」
 「あ、いや、その……」


 顔を引きつらせ、逃げることもしないレクスに向かって進むと、後ろから声が聞こえた


 「落ち着かんかバカモノ、殺すなら試験が終わってからにせい」


 茶を啜っていた老師が俺を睨み付ける


 「小僧にとって大事なモンを侮辱されて怒る気持ちは理解出来る。だがな、頼まれたとはいえ今のおぬしは試験官じゃ。私情を挟むな未熟者め」
 「……」


 その一言は俺の頭を冷却し、俺は一息ついて席に戻る


 「……スミマセンでした。続きを」
 「あ、ああ。ではレクス君、面接は終了だ」


 レクスは逃げるように退室した
 俺は3人に向かって再度謝罪をする


 「スミマセンでした。老師の言った通り、配慮が足りませんでした」
 「いやいいさ。自分の恋人をあんな風に言われれば誰だって怒る。私だって自分の妻をけなされたら自身を押さえられないかも知れないしね」
 「ふん、おぬしたちはまだまだ未熟者じゃ。だが、そこを理解すればもう同じ過ちはせんじゃろ」


 ディグビートさんと老師はやさしい。って言うかディグビートさんって既婚だったんだ


 「ふふ、若いっていいわぁ」




 サザンカさんはキセルを吹かしながらのんびり言った




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 それからも面接は続き、俺はだんまりを決め込んだ


 「私たちはS級になって、さらに危険な地域やモンスターを倒す依頼を受けたいんです!!」
 「その通り!! 最近、SSレートの【神獣】の動きが活発になってるって聞いたし、あたしたちがやらないと!!」
 「そうね!! 危険な依頼をこなせば報酬もがっぽがっぽ、ブランドの服やバッグ、エステにも通い放題!!」
 「ええ!! 強く、優しく、美しく!! それがあたしたち〔蛇の歌コブラソング〕よ!!」


 なんだコイツらは。いいこと言ってるけど欲望丸出しじゃねぇか


 「ははは、正直でいいねぇ。うん、好感が持てる」
 「ほっほっほ、可愛いおなごたちじゃのう」




 おいおい、いいのかよ。特にじーさん




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 「ボクたち……空を飛びたいんです」
 「ああ、【紫の大陸】で発売された最新魔導車、【アイオライト号】が欲しいんです」
 「でも、【紫の大陸】にある〔魔導航空専門学校〕で勉強しなくちゃいけないし、資格を取るのはお金がかかる」
 「さらに、全員分の【アイオライト号】と、学校の入学資金、王都での生活費なんかを考えると、ここらで1発大きな依頼を受けないといけない」
 「だからS級冒険者になって、お金を稼ぎたいんです」


 〔翼の如くスカイウィング〕は、なんだか根暗の集団だった
 空を飛びたいって……イヤな予感しかしないんですけど


 「ふむ、キミ達は【灰の大陸】のダンジョンの1つ、〔リュヘナ鍾乳洞窟〕を踏破してるね。それに依頼履歴もなかなか素晴らしい」
 「へぇ、それによう見るとなかなか男前やわぁ」


 へぇ、マフィの作ったダンジョンを攻略してんのか。ちょっと質問してみるか


 「あの、ダンジョンを攻略したときのお宝って何ですか?」


 マフィ曰く、全てのダンジョンの最下層に、人間では決して作れない【神】特製の装備をお宝として置いてあるそうだ


 「キミ、戦闘試験の担当だろ? なら言えないよ」
 「くくく、楽しみにしててよ」


 何じゃそりゃ、めっちゃ気になるぞ




 はぁ、面接って思ったより疲れるぜ



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