ホントウの勇者

さとう

秘境マホロバの里⑦/特務・話し合い



 括利と屋敷へ帰宅し、待ちに待った晩ごはん


 水萌とコノハが作った料理は、有名旅館の懐石料理並みで、金を取れるレベルの美味さだった。うん、三ツ星だね
 括利と行った石碑のことを話すと、麻止と水萌は驚いた


 「そう。じゃあ明日、お参りに行かないとね」
 「そうだね。ちゃんとご挨拶しなきゃ」
 「それならあたしが案内する〜」


 ふむ、これで3人の予定は決まったな


 「あの、私たちも行っていい?」
 「お願いします」


 あらま、リリたちもか。何か思うことでもあるのだろうか


 「もちろんよ、それじゃあ明日はみんなで出掛けましょう。実はいい甘味処を見つけたの」
 「わぁ、楽しみです」
 「あたしも〜」
 「わ、私もです······」
 「ふふ、みんなでお出かけだね」




 さて、今日は1人で枕を濡らすとしよう




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 翌朝。朝食を済ませて外に出ると、クロとシロが待っていた


 「なんだよ、中にいればいいのに」
 《はは、キミのお嫁さんたちとの憩いの時間を邪魔しちゃ悪いしね》
 《ま、そう言うコト》


 なんじゃそりゃ。全く


 「まぁいいや。ギルドへ行こうぜ」
 《また途中で肉をよろしく》
 《お魚もネ》
 「はは、それが狙いかよ」


 クロは俺の肩に飛び乗り、シロは足元をトコトコ歩く
 時間も早かったし、散歩がてら歩く。すると前に来た出店に到着した


 「すみません、焼き魚を3尾下さい」
 「はいよ。焼き立てで熱いから気をつけてね」


 ちなみにクロは2尾、俺が1尾だ。シロは肉をたくさん食べたいからガマンするそうだ
 魚を食べながら隣の出店へ、すぐ近くだから助かる


 「すみません、焼き鳥を······」
 《ボクは20本食べたいなぁ》
 「25本下さい」
 「はいよ。そっちのワンちゃんは何本だい?」


 数を言うと、食べやすいように串から外してくれた。前に俺が外してるのを見てたらしい


 「ワンちゃんの食べっぷりはいいねぇ。少しサービスしといたよ」
 「おお、ありがとうございます」


 ラッキー。サービスしてもらったぜ
 まぁ俺は腹いっぱいだからシロが食べるけどね
 しばし、肉と魚のを堪能する




 おっと、そろそろギルドへ行かないとな




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 「お疲れ~っす」


 しまった。運動部みたいな挨拶になってしまった
 するとギルド内は相変わらず混雑、しかも少し殺気立ってる


 「どけ!!」
 「す、スミマセン」


 後ろから来た男だけのグループに突き飛ばされた。いてぇ
 すると、こんなギルドの真ん中でも遠慮なくキセルを吹かしながらサザンカさんが来た。この人ってかなりフリーダムだよな


 「よう来たなぁ、ささ、こっちや」
 「はい、ってかここでタバコ吸っていいんですか?」
 「あたしがマスターさかい、あたしがルールや。んふふ」


 フリーダムってか暴君だな。怖いから言えないけど
 サザンカさんに着いて行くと以前来た特別室へ。すると何人か見慣れぬ人が居た


 「お、キミがS級の戦闘試験の教官だね」
 「ふむ、なかなか強そうじゃな」


 体育教師みたいな男性と、近所に住んでる猫好きじーさんみたいな人が居た。どうやらこの人たち教官みたいだな
 すると体育教師が立ち上がり握手を求めてきた


 「初めまして。私が面接担当の特務冒険者、ディグビートだ。よろしく」
 「ど、どうも。俺はジュートです」


 特務冒険者って、フィンテッドたちと同じか
 爽やか体育教師のディグビートさんは、筋肉ムキムキの二の腕を見せつけながら言う


 「ほらギョッポ老師、挨拶しないと」
 「ふん、どうせ数日の付き合いじゃ。別にせんでもいいじゃろ」


 そう言って猫好きじーさん(予想)は茶を啜る。あらら


 「やれやれ、彼はギョッポ老師。特務の魔術師で、【灰の大陸】のA~S級の昇級試験の責任者さ」
 「は、はぁ……」


 うーん。しわくちゃの顔にバーコードヘッド、黒いローブを纏ってるけど、縁側で茶を啜りながらネコを撫でてる絵が浮かぶ。ちなみにディグビートさんはサンダルに上下ジャージ、竹刀を持って校門前で怒鳴ってるイメージ


 「さぁて、さくっと打ち合わせしよかぁ」




 あ、サザンカさんを忘れてた




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 今回のS級の昇格試験の担当は、俺たち4人


 俺ことジュート、サザンカさん、ディグビートさん、ギョッポ老師
 直接戦闘は俺が担当、サザンカさんとディグビートさんは面接、老師は総合的な判断をする。老師がダメと言えばどんなに点数が良くてもダメになる


 あれ、これって俺が1番辛くね?


 「面接にはジュート君も参加してくれ。質問は私たちでするから、ただ座ってるだけでいい」
 「分かりました」
 「それと、今回の試験参加者のリストを見てくれ」


 ここでディグビートさんは1枚の羊皮紙を見せてくれた


 「今回は冒険者グループが10組、単独の冒険者が18人の合計85人だ。つまりジュート君には28回の戦闘をして貰うわけだが、順番は君に任せる。期日は6日を予定してるから、1日4~5戦闘は覚悟してくれ」
 「え、4戦闘?」
 「そうだが?」


 マジかよ、俺は1日で28回の戦闘を繰り返すのかと思った


 「ふむ。日数が足りないのかね」
 「い、いえ。そんなことないです。大丈夫です」


 順番か。まぁ適当でいいか
 すると、老師が俺にアドバイスしてきた


 「ふむ、注目は〔翼の如くスカイウイング〕と〔蛇の歌コブラソング〕かの。単体では……双剣士レクス、炎姫フレムラくらいかの。コイツらはひと味違う、日をわけた方が得策じゃな」


 なにその呼び方、チョ-カッコいいんですけど
 俺も2つ名が欲しいなぁ、〔宵闇の暗殺者ジュート〕とか


 「わかりました……あの」


 ちょっと素朴な疑問。いちおう聞いておこう


 「これって戦うだけですよね? その、魔術を使ったり、倒してもいいんですか?」


 正直、手加減できないかもしれない。どんな相手か分からんし


 「問題ないよ。相手はキミを殺すつもりだからね、全力でやらないと死ぬかもしれないよ?」
 「大丈夫じゃ。ちゃーんと【白】の上級魔術師を手配してあるわい」
 「採点の余裕がない場合はとにかく戦ってくれればええ。あたしらも見てるさかい、判断は任しとき」


 なにコイツら、俺を何だと思ってやがる
 やべ、ちょっとイラついてきた


 「わかりました。じゃあ何人か殺しちゃうかもしれないけど、いいですかね?」


 俺の中で、好戦的な俺が出てくる
 薄暗く微笑し、3人を威圧する


 「……ふむ。キミなら大丈夫だろう、なるべくなら殺さず、余裕があるなら相手の実力を上手く引き出してくれ」
 「ふん。小僧が……」
 「へぇ、おもろくなってきたなぁ」


 おっといかん、あんまり「素」を出さない方がいいか
 とにかく、これで話し合いは終わりだ




 俺は挨拶をして退室。ギルドを後にした




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 《アナタね……もうチョット感情をコントロールしなさいネ》
 「わかってるよ、ちょっとカチンと来ただけだ」
 《ははは、まぁいいじゃないかクロシェットブルム。ジュートはまだ18歳なんだ、怒りっぽいのは子供の証拠さ》
 「うっさいな……お、ちょうどいいな。糖分でも補給するか」


 小腹も空いてきたので、ちょうど目の前にあった甘味処へ
 時代劇に出てきそうな、赤い布で覆われた竹の長椅子に和紙の傘が差してある団子屋だ
 椅子に座ると店員が注文を取りに来る


 「えっと、団子とお茶を下さい」


 まさか異世界で京都の甘味処みたいな注文をするとは思わなかった
 すると、数分でお茶と団子のセットが運ばれてくる


 「お前らも食べるか?」
 《遠慮するワ。ノドに詰まるしネ》
 《ボクもいいや》


 そう言うなら仕方ない。シロは俺の足下、クロは長椅子の空いたスペースに香箱座り
 俺は三色団子を頬張り、道行く人を眺める


 「……美味い、さすが日本人の作った町だ。完璧すぎる」


 俺の頼んだ三色団子・みたらし団子・ごま団子のセットは実に美味い。お茶も水出しの緑茶で相性も抜群だ
 すると、目の前を美少女の集団が横切った


 「あれ、リリたちじゃん」
 「わぁ、兄さん!! あ、おだんご」


 浴衣姿のリリが子犬のように駆け寄ってくる。かわいい
 リリはクロをだっこして俺の隣に座り、クロを膝にのせた
 俺はみたらし団子をリリの口に持っていくと、リリは嬉しそうにパクついた


 「う~んおいし~」
 「ほら、食べていいぞ」
 「わぁ、ありがとう!!」


 どうしてこう、癒やされるのかね




 みんなの姿に、俺は心が安らぐのを感じていた



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