ホントウの勇者

さとう

秘境マホロバの里③/リリは一緒・共に



 翌朝。時刻はだいたい7時頃


 「ジュートさんっ、行こっ‼」
 「も、もう行くのか?」


 やっと全員が起床し、コノハが朝食を作り始めた頃、リリが俺の手を引っ張り、外へ連れ出そうとした
 確かに昨日、リリとお出かけするって言ったけど、早くない?


 「コノハには朝ごはんいらないって言ってあるから、外のお店でご飯にしよっ、早く早く‼」
 「わ、わかったわかった。落ち着けって」


 俺は女子たちに視線を巡らせると、全員が温かい目で見送ってくれた




 こうして、俺とリリは朝から出かけるのだった




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 古めかしい朝の町並みを、リリと散歩しながら歩く


 「さて、どこで食べる?」
 「あのね、昨日ククリさんがいいお店を見つけたの。確か〔ウドン〕っていう細いパンを汁に浸したお料理だった」
 「うどんか。いいね、朝から食べられるとは」


 リリの案内で歩くこと数分、やって来たのはなんと立食いうどん屋だった
 引き戸は開放されのれんを潜るとカウンターがあり、椅子はない


 「あれ? 椅子はないの?」
 「ああ。立って食べるのが正しいんだ」
 「へぇ、ヘンなの」


 俺はかけうどん、リリもかけうどんを注文。すると2分たらずで注文したうどんが出て来た。はやっ


 「いただきます」
 「えと、いただきます」


 俺はアツアツのうちに麺を啜る。うん、汁は少ししょっぱいけど、俺が食べてたうどんに近い
 リリは俺の食べ方を真似してツルツルと啜り、美味しかったのか目を輝かせた


 「美味しい‼ それにツルっとしてるからお腹に優しいかも」
 「だな。朝ごはんには最適だぜ」




 まさか朝からうどんを食べるとは思わなかった。美味かった




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 「わぁ、かわいい」


 リリと土産物屋を廻っていると、キレイな髪飾りを見つけた
 華をあしらったデザインの髪飾りは、銀髪のリリによく似合いそうだ


 「ほら、どうだ?」


 俺は髪飾りを手に取り、リリの髪にそっと添える。うん、よく似合ってる


 「じゃあ、デートのプレゼントだ」
 「え、いいの?」
 「ああ。よく似合ってるし、リリにピッタリだしな」
 「えへへ、ありがとう。ジュートさん」


 会計を済ませると、リリはさっそく髪飾りを着ける
 浴衣とマッチしてけっこう大人っぽく見えるかも


 その後も、リリと一緒に町を廻り、観光しながら楽しんだ




 さて、そろそろお昼の時間だ




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 俺とリリは、昨夜に見つけた〔鍋道楽・カニ園〕へやって来た


 運よく並ぶこともなく店の中へ
 狭い個室に案内されテーブルに座り、飲み物を注文する
 この店では〔グレークラブ〕の鍋を食べれるらしい


 ちなみにポートレードで水揚げされ、生きたままこの里に運ばれ、注文を受けて初めて調理される
 〔グレークラブ〕は海に生息するモンスターだが、海の底に住んでいるため危険度は低い。しかし、繁殖能力がハンパじゃないので、網を引けば必ずかかると言われるほどポピュラーな食材でもあった


 「失礼いたします」


 リリとそんなモンスター談議をしていると、小型魔導コンロを抱え、大皿に食材を盛り付けた皿を持って従業員がやって来た
 慣れた手つきでコンロをセットし、すでに食材が盛られてる鍋をセットし火にかける
 ドリンクを受け取り、別の大皿をテーブルに置く。するとそこにはカニの脚がたくさんと、魚の切り身が盛られてる。どうやら切り身はしゃぶしゃぶにして食べるらしい


 「じゃあリリ、乾杯」
 「かんぱーい‼」


 リリとグラスを合わせて乾杯。ちなみに俺は冷茶でリリはミックスジュース


 「じゃあさっそく……おぉ、すごい」
 「ふわぁ、あっつい~っ」


 鍋の中には各種山の幸とカニの脚、なんと肉まで入ってる
 ポン酢みたいな酸っぱいタレに、ドロッとした塩だれの皿があり、お好みで好きな方を付けるみたいだ


 「ねぇジュートさん、このカニってどう食べるの?」
 「これはこうして……よっと」


 俺は素手でカニの脚の関節をぺきっと折り、そのまま身をズルッと剥く


 「ほれ、これにタレを浸けて食べてみろ」
 「ありがとう。タレに浸けて……あむ」


 リリはカニ脚をぱくっと口の中へ、すると表情がみるみる変わっていく


 「お、おいっし~っ!! 何これ、ぷるっぷる~!!」
 「ははは、じゃあ俺も」


 俺はツメの部分をいただく。パキッとポキッとパクッとな


 「う~ん、デリシャス。うまい!!」


 ぷるっぷるのカニの食感が口の中に広がる。懐かしい味だ
 さらにダシの凝縮したスープや、付け合わせの野菜も美味い。よし、今度はみんなでこよう


 「ジュートさん、今度はみんなで来ようね」
 「ああ、もちろんだ」


 リリも同じことを考えてたみたいだな




 俺たちは、カニ鍋をたっぷりと堪能した




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 鍋も食べ終わり、会計を済ませて店の外へ。少し食べ過ぎたので散歩しながら時間を潰す


 穏やかな日差しの中をリリとゆっくり歩く。リリは俺の腕に寄り添って、顔を見るとにっこり微笑んだ


 「ジュートさん、私……居場所、見つけた」
 「……え?」


 リリは人気の少ない、竹林の道で俺に言う
 その表情は真剣で、俺を掴む手は力強かった


 「私、ジュートさんと一緒に居たい。一緒に居るとポカポカして、お日様みたいに温かくて……恋じゃなくて、お兄ちゃんみたいな「好き」なの」
 「リリ……」


 俺も同じだ。リリに抱くこの気持ちは、決して恋や恋愛感情ではない
 兄が妹に抱くような、家族愛・兄妹愛だ。俺は一人っ子だから、よけいにリリが可愛いのかもしれない


 今まで出会った年下の女の子や男の子にも、そんな感情を感じた
 でも……その子たちはみんな、帰る場所がちゃんとあった


 リリには帰る場所がない、コノハだってそうだ。なら……俺が、リリたちの帰る場所になってやればいいんじゃないのか?
 俺に甘える銀髪の少女が、俺の中に帰る場所を見つけたなら、それを守り、受け入れるのがリリのために、俺のためになるんじゃないのか?


 「リリ、俺は……俺も、お前が好きだよ。一緒に居たいって思う、けど……俺はこれから、危険な戦いをしなくちゃいけない」
 「……うん。ジュートさんは〔神の器〕なんだよね?」
 「ああ。俺はもうすぐ【時の大陸】へ、神様と戦うんだ。そこで、大事な物を取り返さなくちゃいけないんだ」
 「大事な物……」
 「ああ。俺のクラスメイト、いや……友達だ」
 「お友達が捕まってるの?」
 「ああ」


 リリは真面目に俺の話を聞いている。そして、昨日の夜、麻止に話した事を話す


 「友達を取り返したら、俺たちは「町」を作る。この里が〔神の器〕によって作られたように、俺たちの帰る場所を、俺たちが作るんだ」
 「帰る、場所……」
 「リリ、そこがお前たちの帰る場所になるなら、リリとコノハが幸せになれるなら、これからも一緒に行こう。俺の戦いが終わっても、側に居て欲しい」


 リリはここで俺に抱きついた。顔は綻び、笑顔が浮かんでる


 「一緒に行く。絶対に行く!!」


 俺もリリを抱きしめ、その頭を優しく撫でる




 優しい風がフワリと巻き上がり、竹林の笹がカサカサ揺れた




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 「えへへ、ジュート兄さん。これからリリは妹だからね」
 「はいはい」


 リリは俺に甘え、腕に絡みつき離れようとしない。やれやれ
 仕方ないのでそのまま歩き、町の中央まで来た


 「あ、兄さん見て、ギルドがあるよ」
 「ギルド?……あ、ホントだ。気が付かなかった」


 リリが指さしたのは冒険者ギルド。純和風の建物なので気が付かなかった
 障子の引き戸に提灯、さらに木の看板に「冒険者ぎるど」と達筆な文字で書かれていた


 「こんなとこに依頼なんてあるのか……?」
 「じゃあ入ってみようよ、面白そうだし」
 「お、おい」


 リリは俺の腕をグイグイ引っ張っていく。いいのかな、今の装備は浴衣に茶羽織、足は素足に雪駄。武器は〔マルチウェポン〕のみ。いちおう〔セーフルーム〕に全装備はあるけど




 俺は仕方なく、リリに連れられギルドへ入るのだった





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