ホントウの勇者

さとう

秘境マホロバの里②/観光・決意の夢



 温泉でタップリと楽しんで夕食の時間になった


 「夕食は美味しい懐石料理を予約してあるわ。着替えて行きましょう」
 「着替えって······このままじゃダメなのか?」


 俺はフル装備、他のみんなは全員私服
 すると、水萌がクローゼットを開けると、そこには旅館とかにありそうな浴衣があった


 「この町の人はけっこう着てるみたい。どうやら昔の〔神の器〕が作った町って本当みたい」


 それぞれが色違いの浴衣を着込み、雪駄を履いて外に出る
 一応〔カティルブレード〕は装備していこう。浴衣の袂で隠れるし、そんなに目立たないからな


 夕暮れの町は街灯が光り、眩しいというよりは包み込むような優しい光。木造の建物は温かみで溢れ、心が安らぐ気がする


 しばらく歩くと出店がいくつか見え、なんとソースせんべいやチョコバナナ、驚いたことにたこ焼きなんてのもあった。まるで縁日に来たみたい


 「わぁ〜、美味しそう」
 「お嬢様、これから夕食です。お控え下さいね」
 「はぁ〜い。楽しみは取っておこっと」


 リリはピンク、コノハは緑の浴衣を着てる
 二人とも似合っているが、特にコノハは黒髪を結わえているのでいつもと違う感じがする。なかなか大人っぽい


 そのまま歩くこと10分。先導する水萌が止まった
 高級感あふれる和風建築の建物で、何より驚いたのは、店の看板に漢字・・で〔和王〕と書かれていた


 「ここだよ。〔和王〕はね、この町を作った初代長老がこよなく愛した〔和食〕が食べられるんだって」


 リリとコノハは首をかしげ、水萌に質問した


 「あの、ミナモさん。〔ワショク〕とは何でしょうか?」
 「初めて聞いたけど、どんなご飯?」


 その問いに、麻止と水萌が二人がかりで説明してる。分かればいいけど


 「どうやら昔の〔神の器〕が作ったというのは間違いなさそうね。私たちも、この看板を見て驚いたもの」
 「だね〜、まさかこの世界で漢字を見ることになるなんてね〜」


 確かに、漢字もだけど俺としては料理も気になる




 わくわくしながら、店の引き戸を開けて入る




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 日本を思わせる純和風の建物に入り、案内された部屋にはなんと畳が敷いてあり、高級感溢れるテーブルと座椅子があった


 「なんか、スゴいね······圧倒される」


 水萌も驚いてる。ここまでとは予想出来なかったようだ
 障子の引き戸が開放されると、ライトアップされた庭が照らされる。小さな池に、よく手入れされた植木がいい雰囲気を作り出している


 俺たちは座椅子に腰掛け、並べられた料理を見た


 「ここまでとは······ある意味、恐ろしいわね」
 「そ、そうだね。驚き〜」


 並べられたのは、前菜の皿に盛られた料理、窯には一人用の小鍋、いくつかの和物など数種類
 どうやら焼き物や温物は後出しのようだ


 「すご〜い、これが〔ワショク〕なんだね‼」
 「すごく美味しそうですね」


 リリとコノハも嬉しそうだ
 確かに、がっついて食べるような料理じゃない


 すると、着物を着た女性が飲み物のオーダーを取り配る。そして鍋に火をつけて食事が始まった
 予想通り、焼き魚や煮物は後から出され、ご飯や味噌汁までちゃんと出てきた




 こうして和食の夕食は、大満足で終わる




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 腹ごなしがてら散歩しながら帰ることにする


 「美味しかったです。ぜーんぶ初めてのごはんでした」


 リリは興奮しながらクルクル回転し、コノハが転ばないようにリリの側に控える
 俺の嫁たちも満足なのか、みんな仲良くお喋りしていた


 「確かに最高だった。今度は……お?」


 俺は町の中央から少し外れた場所で、1軒の店を見つけた


 「おい見ろよ、〔鍋道楽・カニ園〕だってよ。美味そうだ」
 「カニって何ですか? モンスターですか?」
 「カニってのは甲殻類……ってもわからんか。じゃあ明日の昼にでも行くか?」
 「行きたいですっ、ジュートさんと一緒ですっ!!」


 リリは可愛いなぁ。こんな妹が欲しい


 「みんなはどうする? 一緒に行くか?」


 俺は全員に確認すると、残念そうに言う


 「あたし~、コノハちゃんと和服を買いに行くの。ごめ~ん」
 「すみませんお嬢様……」
 「私は水萌とお社へ行くの。ごめんなさい……」


 あらら、全員が予定を入れていたか


 「じゃあ明日は2人っきりだね。えへへ、ジュートさんとデートだぁ」
 「そうだな、じゃあ朝からいろいろ回るか」
 「うん。やったぁ!!」


 なんとなく気が付いていたが、どうやらみんなは気を遣ってくれたようだ。リリと2人でまったり出来るように、リリが俺を癒やしてくれると信じて




 その優しさに感謝しつつ、俺たちは屋敷へ戻った




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 「はぁ……」


 深夜。俺は1人で豪華な露天風呂を独り占めしていた


 ポートレードとは違った癒やし。気持ちいい
 岩の縁に身体を預け、夜空を見上げて独りごちる


 「……戦いが終わったら、俺たちは……」


 この町を見て考えていた
 この町を作ったのは〔神の器〕で間違いない。これだけの日本家屋に日本ならではの料理。シロが言ってた昔の〔神の器〕は、どんな気持ちで町を興したのだろう
 ぼんやりとだが、先の事が見えてきた


 「星が綺麗ね……この空の星と、私たちの世界の星。どちらも同じ星なのかしら?」


 考えごとに熱中しすぎたのか、麻止が入ってくるのに気が付かなかった
 麻止は軽く身体を流し、俺の近くの岩の縁に腰掛ける


 「さぁな。でも……キレイだ」
 「ええ……」


 俺も麻止の隣に腰掛け、しばし星を眺める
 すると、麻止が俺に言う


 「ジュート、この戦いが終わったらどうするの?」
 「どうするって……もちろん、この世界で生きていくよ」
 「……そう」


 麻止はそれだけ言うと、俺の腕に抱きついて寄り添ってきた


 「私は……不安。これから先のビジョンが全く読めない、全てが終わったら私たちはどうなるの? 私たちの中にいる【神】は……いずれ、クイナさんやマイトさんみたいに……」
 「大丈夫、そんなことには絶対ならない」
 「……え?」
 「みんなの……クラスメイト40人の【神】は、女神を倒せば全て消える。そうすれば全員、普通の人間として生きていける」
 「……」
 「ああ、それともう1つ。この町を見て考えたんだ」


 この決意は揺るがない。何があろうと絶対に
 そして俺はもう1つ、明確ではないビジョンの思いを語る




 「全て終わってみんなを取り戻したら……俺たちの、クラスメイト40人で「町」を作ろう。みんなで協力すればきっとスゴい町を作れる」




 俺の決意に、麻止はしばしポカンとしてた


 

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 「ま、町……?」
 「おう。この町に負けないくらい、でっかい町を作るんだ。みんなが笑顔で安心して暮らせる町」
 「ど、どうやって?」
 「まだ分からん、だからみんなで考える。水萌や括利、虫菜なんかはお店を出したいって言ってたし、他にもいろいろ考えてるヤツもいるかも知れないし、いい案だろ?」


 麻止はポカンとしていたが、しだいに笑い顔をこらえず笑い出した


 「あっはっはっ!! いいわね、いいわ。みんなの町……そっか、みんなで作ればいいのね。帰る場所を」
 「ああ、そうだ」
 「さすがジュート、さっすが私の旦那様ね」
 「ふふん」


 麻止は俺にしなだれかかり、遠慮なくキスをしてくる。俺も負けじとやり返し、いつの間にか麻止の身体をまさぐっていた


 「やりましょう、私たちならきっと出来るわ」
 「当然だ」


 俺の目的は変わった
 【魔神】や【女神】なんてもはや眼中にない。そんな通過地点はさっさと終わらせ、みんなと作る俺たちの町に思いを巡らせた




 麻止との熱い夜は、こうして静かに更けていった



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