ホントウの勇者

さとう

秘境マホロバの里①/リフレッシュ・古都



 《ジュート、こっちから行こう》
 「え? こっちって……森だろ? 街道沿いに進めば〔ポアラノ村〕じゃないのか?」
 《いいから行くワヨ》
 「ちょ!? ハンドル揺らすなって、わかったよ」


 ゴドウェンを出て2日、順調に魔導車を走らせる中、シロとクロの提案でルート変更。なぜか森の中を走ることになった


 「ジュート殿、ルートを外れてますが……?」
 「あーいや、こっちでいいんだ」
 「……はぁ」


 景色が気になったのか、コノハが運転席に来た
 ちょっと苦しいが言い訳をする


 あの日から2日経過し、少しは落ち着いた
 リリもコノハも心配してるが、少し吹っ切れた俺を見て元気を取り戻し、いつも通りの対応をしてくれた
 迷うな、俺はもう心配ない。真っ直ぐ進んでいける


 「で、なんだよこのルート、危険なのか?」
 《いや、どうしようか迷ったけど、ジュートには心もリフレッシュして貰わないとね》
 《そうネ。リゾートでは身体を休めたけどネ》


 俺は不信に思いながら森を走ると、森の中に霧が出てきた
 そのまま数時間走っても霧は収まらなかったが、道が見えなくなるほどではなかった


 「ヤバいな、ゆっくり行くか」
 《平気だよ、それより……窓を開けてごらん》
 「は? 窓?」
 《いいから、開けなサイ》
 「わかったよ。何だよもう……」


 俺は少し窓を開けると、外の空気が生暖かいことに気が付き、何故か嗅ぎ慣れたニオイがすることに気が付いた


 「これって……まさか、硫黄!?」


 そして山道を抜け、広がる光景に驚いた


 《ようこそ、〔秘境マホロバの里〕へ》




 そこは、山と森に囲まれた温泉町だった




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 「お、おいリリ、コノハ、こっち来いよ!!」


 俺の声に驚いたのか、すぐに2人はやって来た


 「どうしたのジュートさ……わぁ~!!」
 「ジュート殿!!……おぉ!?」


 2人とも驚いてる
 眼下に広がる光景は美しい物だった
 昔ながらの和風建築が立ち並ぶ町並みに、石畳の地面、キレイに咲き誇る桜みたいな木
 町の入口には土産物屋が並び、京都の町並みのように歴史を感じる
 和紙と竹で作られた傘の下で、抹茶を啜りながら団子を食べてる観光客。外のテラスで和菓子を頬張る冒険者風のカップルなど、ポートレードとは違った癒しを感じる


 《ジュート、女の子たちを呼んでリフレッシュしなよ。今のキミは少し危ういから、彼女たちに癒やしてもらった方がいいよ》


 シロがそんなことを言う。まぁ確かに、ちょっと苦しいのは事実だ
 お言葉に甘えて、また休ませてもらおう


 「ここで何日か休もう。その……いいかな?」
 「だーい賛成ッ!! 行こうッ!!」
 「お、お嬢様、落ち着いて」


 リリは興奮し、今にも飛び出しそうだが、コノハが何とか押さえてる
 ここでもコテージみたいな建物を借りれないかな




 俺たちは外へ出てさっそく町中へ歩き出した




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 町の入口に観光案内所があったので、一軒家を借りれないか聞くと、ちゃんとあった
 少し外れのほうに古風な一軒家があり、そこをレンタルして拠点にする
 庭付きの豪華な一軒家。いいね、和風の豪邸だ。池には魚も泳いでるし庭もかなり広い


 俺はここで、マフィに頼んで女の子たちを呼ぶ


 「はろ~」
 「こんにちは。リリちゃんとコノハちゃん、だよね?」
 「初めまして」


 やって来たのは括利、水萌、麻止の3人。壊子はマフィと一緒にダンジョンの改良で忙しく来れなかった。非常に残念だ


 「わわ、えっと、私はリリティアラ・ルノーです。よろしくお願いします」
 「コノハと申します。リリティアラお嬢様の護衛を務めております」


 最初なのでちゃんと自己紹介。いいね


 「リリっちとコノハっちだね。あたしは括利、こっちは水萌ちゃんで、こっちは麻止ちゃんね~」
 「はい。ククリさんとミナモさん、マトメさんですね」
 「うん。よろしくね」
 「よろしくお願いします。皆様」
 「そう固くならないでいいわ。同い年でしょ? 黎明からいろいろ聞いてるわ」


 うーん、仲良くなって安心だ。女子トークでさっそく盛り上がってるし


 「ジュートくん、女の子だけでお買い物に行ってくるね」
 「ごめん~」
 「親睦を深めてくるから、今日はお留守番ね」


 あれれ、デジャヴを感じる。なぜこんなに視界が滲むんだろう?
 女子たちはキャッキャと騒いで行ってしまった。このパターンは


 《お!! やっぱいい酒があったぜ。しかも上物の米酒だぜ!!》
 《おいアグニードラ、こっちには蒸留酒があったぞい。もちろん上物じゃ!!》


 アグニとナハトはお決まりの酒盛り


 《もぐ~》
 《いや~、ここは静かでいいっすねぇ。リゾートもいいけど、おいらはこっちが好っす》


 クライブは外を飛び回り、庭に生えてる木の蜜を吸ってる
 モルは地面を掘り進んで遊んでる


 《う~ん、あたしはリゾートのほうが好みね》
 《わたしも~》


 ティエルはジュースを飲みながら外を眺め、ルーチェはティエルにくっついて同じジュースを飲んでいる。仲良しだねキミたち


 《ギギギ……ガガガ!!》


 ニュールは庭をグルグル走ってる。どうやら以外と和風の庭が気に入ったようだ


 「やっぱカオスだわ……」
 《まぁいいじゃない。ゆっくり休んでよ》
 《そうネ。ふぁぁ……》


 いつの間にかフカフカ座布団にシロが座り、その側にクロが寝てる


 「俺も少し寝るかな……いいか、シロ?」
 《どうぞ、ほらクロシェットブルムを抱いて》
 「ああ、よっと……」


 俺はクロを抱っこして寝そべり、シロを枕にして、そのまま床で目を閉じる
 すぐに睡魔が襲ってきて、俺はぐっすりと眠ってしまう


 《お休みジュート。キミに安らぎがあらんことを》




 シロのそんな言葉が聞こえた気がした




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 《この町は、大昔の〔神の器〕が作ったとされているんだ。見たこともない技術と知恵で、ここまでの発展を遂げたそうだ》


 この一軒家に併設されているのは見事な露天風呂。しかもシャワーやサウナなんかもある
 そこの湯船に浸かりながら、俺はシロの話を聞いていた


 「大昔って、何年前だよ?」
 《さぁ、千年くらい前かな? 覚えてないや》
 「1000年って、俺たちの時代じゃまだこんな技術はないぞ?」
 《ふーん。キミたちの世界とこの世界じゃ時間の流れも違うのかもね》


 俺は立派な岩風呂の縁によりかかり、頭の上に手ぬぐいをのせてくつろいでいた


 「前はリゾートで今度は温泉地か。こんなにのんびりしてていいのかねぇ······はふぅ」
 《休むのも大事さ。どうやら【魔神軍】は、キミが【時の大陸】に乗り込むのを待ち構えてる状況だ。焦らないでゆっくり行けばいい》
 「そんなことわかるのか?」
 《まぁね》


 シロは大きな岩の上に寝そべりリラックスしてた。かわいい
 すると、温泉の入口が開き、女子が入ってきた


 「あ、ジュートくん」
 「やっほ〜」
 「入るわよ」


 俺の嫁たちは裸体を隠そうともせず入ってくる。だいぶ見慣れたけど、それでも俺は興奮した


 「えっと、リリとコノハは?」
 「リリちゃんは疲れてお昼寝、コノハちゃんは添い寝してる」


 リリらしいな。かわいいからいいけど
 湯船に浸かり全員で至福の刻を味わう。すると、括利が俺に抱きついてきた。柔らかい感触が俺の理性を溶かしていく


 「ジュート、辛いコトがあったら言ってね〜?」
 「······え?」


 俺は括利に手を出そうとして思い留まる。まるで、全てを見透かされたような気がした


 「シロちゃんが言ったの。ジュートくんが辛そうだから、癒してあげて欲しいって」
 「私たちでも話を聞くくらいは出来るし、辛かったら慰めることも出来るわ」


 なんとまぁ良く出来た嫁たちだ
 俺はシロのいた大岩を見ると、既にそこに白犬の姿はなかった


 「······みんな、ありがとう」


 みんなの優しさだけで、心が癒えるような気がする




 もちろん、温泉でタップリと楽しみました。はい





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