ホントウの勇者

さとう

要塞都市ゴドウェン②/自問・自答



 〔要塞都市ゴドウェン〕は、近代的な町並みだった


 建物はコンクリで、なんとなく洋風チックな感じがする。商店などは一通り揃っており、中でも武器防具屋はかなりある。雑貨屋や八百屋はもちろん、飲食店や魔道具屋も充実してる
 町の中央には高級宿に各種ギルドがあるが、キンタローさん曰く、ギルドも汚職で染まってるから注意するように、とのこと


 町の入口には、傭兵が門番をしている
 どうやらこの町の専属傭兵で、盗人や犯罪者を捕まえるのが仕事。捕まえた犯罪者は、王都の裁判所的な場所に移送され、奴隷に落とされる
 まぁ要は警察みたいな役割だな。とにかくあの盗賊団のことを伝えておこう


 俺たちはアウトブラッキーで町中へ入り、俺は窓から顔を出して門番に伝えた


 「あの、すみません」
 「……どうした?」


 うーん、なんか無愛想。なんで傭兵ってこんなのばっか?


 「ここに来る途中で盗賊団に出くわして……」
 「ほう、それで?」
 「はい、ブチのめして鎖で吊したんで、捕まえられませんか?」
 「わかった。場所は?」


 ありゃ、以外とすんなりいった。以外と仕事熱心だな
 俺は盗賊団を吊した場所を教えると、門番は別の傭兵を呼び、そのまま数人で街道へ出て行った


 「報告、感謝する。ゆっくりしていってくれ」
 「どうも」




 俺はそのまま【アウトブラッキー】を走らせ町中へ向かった




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 「じゃ、俺は買い物に行ってくる」
 「はーい。私も行きたいなー」
 「お嬢様、ワガママはいけませんよ」


 俺は中央広場の魔導車専用駐車場にアウトブラッキーを停車させ、カギを掛けて出る
 コノハに言い聞かせたので、リリが外に出ることはないだろう


 「シロ、後は頼む」
 《わかった。彼女たちはボクが見てるよ》
 「よし、行こうぜクロ」
 《エエ、行きまショ》


 リリたちをシロに任せ、俺はクロと買い物へ
 買い物は食材・お菓子・酒かな


 「じゃあ食材から買うか」
 《任せるワ》




 クロと一緒に買い物、なんか久し振りだな




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 盗賊の主要都市なんて言うが特におかしな所はない。道行く人は普通の人や冒険者・傭兵、子供も普通に遊んでるし、別に視線を感じたり殺気を感じたりもしない


 「なぁクロ、俺の考えすぎかな?」
 《まぁそうかもネ。毎回トラブルに巻き込まれるワケじゃないのかもネ》


 確かに。いっつもおかしな事に巻き込まれるけど、今回は可能な限り予防線を張ったし、貴重品は全て〔セーフルーム〕だ。俺が捕らえられでもしない限り、どうにかなるとは思えない


 「ま、さっさと買い物して帰ろう。リリにお菓子でも買っていくか」
 《そうネ、ワタシもお魚が食べたいワ》
 「はは、それはコノハに言えよ」


 クロを肩に乗せて歩くこと1時間。買い物も一通り終えてあとは帰るだけ
 俺はクッキーやチョコなどのお菓子を買って【アウトブラッキー】に戻っていた


 「なぁクロ、盗賊ギルドって知ってるか?」
 《……さぁネ、聞いたことないワ》
 「だよなぁ、どうも一般人は知らないっぽいし」


 あの盗賊団が言っていた盗賊ギルド、まさか冒険者ギルドや傭兵ギルドなんかと同じく組織化していたとはな。それにライセンスなんかも発行してるみたいだし


 「まぁいいか。来たら潰せば……」


 そこで俺は見た


 「返してよーっ!!」
 「やなこった、バーカっ!!」
 「やーいやーい、コッチだよーっ」


 小さな5歳ほどの少年が、2人の悪ガキに虐められていた
 悪ガキの手にはオモチャの車が握られ、そのまま走って路地裏へ消えた


 「まってーっ、うわっ!?」


 あ、いじめられっ子がコケて盛大に泣き出した。仕方ない


 「おい、平気か?」
 「ひっく、うぇ……うん」
 「ほら、立って。怪我は?」
 「へーき。でも……車、取られた……」
 「ったく、やられたらやり返せよ、男だろ?」
 「ムリだよ……アイツら、強いし……ぼく、弱いし」
 「全く。父ちゃんや母ちゃんは?」
 「……いない。ぼく、孤児だから。あの車……おかあさんがくれた……う、ぅぅ」


 あーもう、なんでこうなるのか。子供って卑怯だ


 「はぁ……ほら、行くぞ」
 「……え?」
 「取り返しに行くんだよ。ついて行ってやるから、ちゃんと取り返せ」
 「で、でも……」
 「大丈夫、いいから行くぞ」
 「……うん」




 こうして俺は少年と路地裏へ。はぁ……我ながら甘いぜ




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 路地裏を歩きながら少年に聞く


 「なぁ、あの悪ガキはこの辺に住んでるのか?」
 「うん、あの子たちも孤児」


 少年の先導で路地の奥へ。路地は汚く、整備も不十分で衛生も悪そうだ
 建物の間なのに意外と広く、まるで空き地みたいな場所へ着いた


 「ここか?」
 「うん。ここがみんなのたまり場なんだ」


 そこはテニスコートくらいの広場で、建物に囲まれているので薄暗い。こんな所が子供達のたまり場なのか……表ならもっといい場所がありそうなのに


 「お兄さん、ありがとう」
 「ん?」


 少年はにっこり笑った




 「ゴメンね?」




 そして、風を切って何かが飛来してきた




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 俺はイヤな予感がしたので瞬間的に身体を反らし、何かを躱した


 「……」


 目の前の少年は驚いていたが、直ぐに笑顔を作ると声を出した


 「みんな、いいよ!!」


 すると建物の影、2階、屋根の上などから人がわらわらやってくる。20人以上はいる
 そこには、見知った顔もあった


 「おいポッケ、もっと上手くやれよ」
 「悪い悪い、でもなかなかの演技だったろ?」
 「そうか? ははは、お人好しの冒険者はよく引っかかるね」


 悪ガキが少年と肩を組み、おもちゃの車を地面に落とし踏みつける。車はバラバラになり少年たちはゲラゲラ笑った


 「よ~う、久し振り。あの時は世話になったなぁ~」
 「あ、お前」


 少年たちと並ぶのは、俺が捕まえた魔導車泥棒。確か〔フィンカーズ〕だっけ
 チンピラ3人とギャル2人、なんでここに


 「お前ら、傭兵に捕まったんじゃ……?」
 「ば~か、この町の傭兵団はオレたち盗賊団の仲間さ。お前みたいなマヌケな冒険者にいい顔して信用させて、裏ではオレたちと繋がってるのさ」
 「へぇ。じゃあコイツらは全員〔フィンカーズ〕なのか?」
 「そうよ、盗賊ギルドの注目株!! まもなくA級の新鋭、それが〔フィンカーズ〕よ!! 〔盗掘の魔林〕で皆殺しにされたS級盗賊団〔魔熊マグマ〕に変わる最強チームさ!!」
 「あ……そうなんだ」


 どうやら俺が壊滅させたのはS級だったらしい。合掌


 「テメェには借りを返さねぇとなぁ……」
 《ニャッ!?》


 すると、俺の足下にいたクロが投網に捕まった


 「ぎゃははっ!! つっかまえた~っ!!」
 「おいポッケ、おれに貸せよ」
 「待てよ、いいサンドバッグだ。おれが楽しむ!!」
 「おい止めろ……返せ」


 俺が少年に近づこうとしたとき、大柄の男が俺の行く手をふさぐ


 「お~っと、お前はオレのサンドバッグだ。くっくっく」
 「………」


 何故、こうなるのか
 あの時、コイツらを始末すればこうはならなかった
 人殺しに慣れるのが恐ろしかったはずなのに、今はちっとも怖くない


 この世界を守る。その決意は変わらない
 でも、どうしようもない悪は存在する。【創造神ジェネシック・バオファオー】が作り出した人間に、どうしてこんな悪意が存在するんだろう


 そう言えば、こんな言葉を聞いたことがある
 戦って殺されて、殺されたから戦って、ホントに最後は平和になるのか
 ならない、なるわけがない


 誰かを傷つけるのも、傷つけられるのも、苦しむのも憎むのも、それら全てをひっくるめて人間なんだ。そんなときに出る感情が……罪悪感だ


 俺は悩んだ、ウィゼライトを殺したとき、殺す以外の方法があったのではないかと。吸血鬼を皆殺しにしたとき、同胞であるバールベロやエレルギーンさんに罪悪感を抱いたこと。リヒテル魔教授を殺したとき、本当に正しかったのか悩んだこと


 罪を意識して殺人を犯した。俺はきっと間違っている
 殺した命を背負って生きるのは、正直つらく重い


 俺は、こんな感情を……罪悪感を感じるのがイヤなんだ
 だから殺しをしたくない。どんな悪人だろうと、殺したいけど罪悪感を感じたくない
 自分が悩むのがイヤだから、背負うのが、重いのがイヤだから
 相手のことではない、自分がイヤだから殺したくない


 でも、そのせいでクロは危険な目に遭っている


 あのとき、この盗賊団を殺せばこんなことにはならなかった
 自分が悩むのがイヤだから見逃した。でも、その結果がこれだ


 だったら、殺しに慣れるのではなく、悩むのに慣れればいい
 重くても慣れればいい、辛くても慣れればいい。だから殺す
 辛く苦しい気持ちから逃げず、事実を受け止めて戦えばいい




 俺は殺す。大事な物を守るために




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 「……は?」


 俺の目の前にいた大柄の男の首が転がり、血が噴水のように噴き出した


 「返せ、クソガキども……殺すぞ……!!」


 俺は容赦なしの殺気をガキ共に浴びせる。するとガキ共は腰を抜かし、小便を盛大に漏らした


 「て、てめぇッ!!」
 「黙れ」


 俺は向かってくる盗賊に【鋼糸甲線ギースエッジ・ライン】で迎撃、盗賊は細切れになり内臓が散らばった




 「さぁて……皆殺しだ」




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 血と肉片が散らばる広場で、俺はガキ共の網からクロを救出した


 「さて、お前ら……」


 俺は未だに震えるガキ共の頭を優しく撫でる
 どんな表情なのか、自分ではわからないが……俺は笑った


 「もうケンカすんなよ?」




 俺はクロを抱っこしてその場を去った




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 「ただいま……」
 「おかえりー」
 「お帰りなさい、ジュート殿」


 アウトブラッキーの中で、リリとコノハはシロと一緒に遊んでいた
 そんな光景に和みつつ、俺は直ぐに提案した


 「行こう、この町を出よう」
 「え? 出発は明日じゃないの?」
 「ああ。今すぐ出る」


 俺はキョトンとしてる2人を置いて運転席へ、すると直ぐにコノハが来た


 「何かあったのですか?」
 「……まぁ」


 俺は曖昧に答えてアウトブラッキーを発進させる
 すると俺を心配したのか、リリもやって来た


 「ジュートさん、怖くて……悲しい顔してる」


 リリの的確な言葉に、俺は何も返せなかった


 《……クロシェットブルム》
 《……後で話すワ》


 俺は情けなくて言えなかった
 殺した後で悩むのがイヤだから殺せなかった。そして見逃した相手が復讐にやって来て、仕方なく皆殺しにして事なきを得た




 俺は夜まで終始無言で走り続けた



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