ホントウの勇者

さとう

要塞都市ゴドウェン①/盗賊・慣れ



 「ジュート殿、これから開いた時間は稽古をつけて頂きたいのですが」


 ブロッケンまであと数時間の距離で日が暮れたので、今日は近くの木の下に停車し、夜が明けてから出発することにした
 そして夕食時、コノハのこの一言である


 「いいけど、俺も身体が鈍るしな。相手するよ」
 「ありがとうございます」


 コノハとの修行は近接戦闘の訓練と、ブレードを用いた戦闘法の開発である
 俺の場合、ブレードは補助武器で、どっちかと言えば暗殺用であり隠し武器だ。だけどいざというときの為に使い慣れるのは悪いことではない


 「私はまだ弱い。なので少しでもジュート殿に追いつければ、まだまだ強くなれそうです」


 そうは言うが、コノハの強さはかなりのものだ
 オニキスやシェラには遠く及ばないが、エルルやクルル、アミールやルーミアに引けは取らないと思う


 俺はパンを齧りながらコノハに言う


 「ま、コノハなら直ぐに強くなれるさ」
 「はい。ありがとうございます」




 こうして夜は老けていった




───────────────


───────────


───────




 「······ん」


 夕食が終わり、俺はソファで読書、リリとコノハは風呂に入っている頃、俺は不審な気配を感じた
 アウトブラッキーは現在、ゴドウェンの近くの街道に停車している。特にステルスは使っていない


 「······シロ」


 俺は装備を確認しシロを呼ぶと、ソファに居たシロは直ぐに反応してくれた


 《······5人、外にいる。警戒心と戦意を漲らせてるね》
 「へぇ、さっそくお出ましか」


 俺はテーブルに置いていたナイフを2本と、〔マルチウェポン〕と〔カティルブレード〕を装備する
 すると浴室のドアが開き、コノハが出てきた······裸で


 「ジュート殿、敵襲です」
 「お、おまっ、服を着ろって⁉」


 コノハはタオル1枚のみ、しかも下半身を隠してるだけで、上半身は何も着けていない。形のいい胸がプルプル揺れる
 コノハは俺の視線を物ともせず、両手に篭手を着けて戦闘態勢を取ろうとしてる  
 すると今度はリリが出てきた······裸で


 「コノハコノハ‼ おっぱい見られちゃうよっ⁉」


 リリは素っ裸。コノハよりヒドい
 お前も人のこと言えねーぞ


 「あーもう服を着ろっての‼」


 コノハとリリを浴室に叩き込み、俺は迎撃の準備をした


 「そうだ、せっかくだし【アウトブラッキー】の武装を使うか」




 俺はニヤリと笑い、運転席へ向かった




───────────────


───────────


───────




 運転席はマジックミラーなので、外から中は見えない
 俺はまだ使っていない機能を使うため、ギミックスイッチを1つ押す


 「おー、見える見える」


 まずは車全体に搭載されてる高感度カメラ
 赤外線暗視機能も付いてるので、昼間のように明かるく見え、運転席に埋め込まれてるテレビ画面に襲撃者の姿が写った


 「シロの言った通り5人。それにしても若いな?」


 襲撃者は男3人、女2人の5人グループ。全員が黒い装束を着込んで武装してる。年齢は俺と同じくらいだった
 それぞれがハンドサインでやり取りし、アウトブラッキーのドアを調べて開けようとしてる


 「残念、それは俺以外開けられないんだよな」


 ドアをカコカコ引き開けようとするが開かない。ドアは俺と俺が認めた人間にしか開けられないんだよね


 「今度は······お、こっちに来た」


 襲撃者はドアを諦め、なんと運転席の窓を破ろうとナイフの柄で叩き割ろうとしてる
 もちろん、その程度で破れるわけないが、面白いものではない


 「じゃ、おやすみ」


 俺はギミックスイッチを押す。すると、車体の下から白い煙がブシューッと噴出され、突然のことに反応出来なかった5人は煙をまともに吸い込み、バタバタと倒れた


 「催眠ガスさ、死にはしないよ」


 俺は魔術を使い、全員の首から足首まで鎖でがんじがらめにして仲良く木に吊るした




 せっかくだし、話くらい聞いてやるか




───────────────


───────────


───────




 「う······な、何が······?」


 お、どうやら襲撃者が目覚めたようだ
 1人が起きると連鎖的に全員起き、身体の自由が利かないことに驚き、俺とコノハがいることに驚いていた


 「てめぇっ、何のマネだっ‼」
 「外しやがれチクショウっ‼」
 「ぶっ殺すぞテメェッ‼」


 おーおー、口の悪い男共だ。よく見るとガラの悪いチンピラみたいな顔つきだ
 女の子も俺とコノハを睨んでる。怖い怖い


 「お前ら盗賊? なんで昨日、俺らの魔導車を囲んでいた?」


 俺の質問に、男が偉そうに言う


 「へっ、オレら〔フィンカーズ〕は魔導車専門のB級盗賊団だからさ。見たことのない高級車を見つけたら襲うだろ?」
 「B級盗賊団?」


 すると、焦ったのか女の子が言う


 「バカッ‼」
 「余計なこと言うなっ‼」
 「あ、いや······」


 ほうほう、B級盗賊団。まるで冒険者や傭兵みたいな括りだな
 するとコノハが言う


 「なるほど、盗賊団にもランクがあるのですね。この方たちはB級······かなりの手練なのでしょう」
 「あったり前だ‼ あと少し奉納金を払えば盗賊ギルドがA級のライセンスを······」


 そこまで言って、男の顔は青くなった


 「盗賊ギルド······ねぇ」
 「口ぶりからすると、どうやら一般人には知られていけない秘密のようですね」
 「だな。それにしてもバカなヤツら」


 俺の嘲笑に、盗賊団はキレた


 「テメェ‼ オレらを舐めんじゃねーぞ、ぶっ殺す‼」
 「テメェの大事なモンを奪ってやるからな‼」
 「女もだ、売り飛ばしてやる‼」
 「アンタらの顔、覚えたからね‼」
 「後悔しても遅いんだから‼」


 芋虫のように身体をくねらせて騒ぎ立てる。コイツら、どっちが上かわかってないな


 「よし、じゃあ殺すか」
 「はい、お手伝いは?」
 「いーよ別に、首を刈るだけだし」


 俺はナイフを構えて男に近づくと、急にビビり出した


 「な、何だよテメェ、こ、殺すだと?」
 「ああ。だって生かしとく理由はないだろ? それに盗賊団なんだし、殺される覚悟もあるだろ?」


 俺は真顔で言う。何を言ってるんだコイツは


 「や、やめろ······やめろ‼」
 「なんで?」
 「わ、悪かった。許してくれ······死にたくない‼」
 「やだ」
 「ご、ごめんなさい‼ ごめんなさい‼」
 「······」


 俺はため息をついてナイフを仕舞う。なんかもういいや、いちいち面倒くさい


 「行こうぜコノハ、なんかもういいや」
 「はい」


 空が明るくなって来た。どうやら朝だ




 盗賊団を放置して、アウトブラッキーを発進させた




───────────────


───────────


───────




 「ジュート殿、なぜ盗賊団を始末しなかったのですか?」


 アウトブラッキーを運転中の俺の隣にいるコノハの質問
 どうやらコノハは本気で始末するつもりだったようだ


 「う〜ん。まぁ、なんとなく」
 「はぁ······しかし、魔導車専門の盗賊と言ってましたので、これからも魔導車を襲うことは確実です。あそこで始末しておいたほうが良かったのでは?」
 「そう、だな······」


 俺は魔導車を停めてコノハに向き直る


 「コノハはさ、人を殺すのに躊躇いはあるか?」
 「それは人によります。先程の盗賊団のような連中には慈悲を与えず殺せます」
 「そう、だよな······」
 「ジュート殿?」


 ウィゼライトや吸血鬼、リヒテル魔教授には心が痛まなかった。そして、あの盗賊団に対しても心は痛まなかった
 あそこで引いたのは、別に盗賊団が哀れで見逃したワケじゃない




 殺人に慣れ始めた自分が、ただ恐ろしかった




───────────────


───────────


───────




 「お、見えて来た」
 「ゴドウェンですね」
 「わぁ、おっきな町だね」


 眠ってたリリも起きて、ようやく町の入口に到着した


 「じゃあこれ、リリも」


 俺はコノハとリリに財布を渡す。もともと持っていた財布は異空間に隠し、この町ではフェイクのもので通すことにした。いざというとき、常に最悪の想定をして動く
 俺も全財産を異空間へ、安く買った財布を持ち、ゴルドカードは5万ゴルドの物を1枚だけ、あとは現金と小銭だけ持つ


 「わぁ、ジュートさんのプレゼントだ。うれしい」
 「ありがとうございます。大事に使わせて頂きます」
 「あー……うん」


 まぁフェイク用の安い財布なんだけど……まぁいいか




 とにかく、補給を済ませてさっさと立ち去ろう



「ホントウの勇者」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く