ホントウの勇者

さとう

フォド街道/コノハと修行・リリクロシロ



 「ジュートさん、ご飯できたよ」
 「ああ、今行く」


 俺はアウトブラッキーの運転席からリリの声に反応し立ち上がった
 ポートレードの町を出て2日、旅は順調に続いてる
 リリやコノハともかなり打ち解け、リリはホントの妹に、コノハは女友達くらいの距離感になっていた


 〔要塞都市ゴドウェン〕に向かう〔フォド街道〕に魔導車を停め、運転席から居住区へ移動する
 料理担当のコノハが作る料理は絶品。俺が作る何倍も美味い


 「ジュート殿、お疲れさまです」
 「ああ。いつも悪いな、料理させて」
 「いえ、この位はさせて下さい」


 席に座り、3人でいただきます
 今日のご飯も美味しいので最高です


 「〔要塞都市ゴドウェン〕まで、あと3日くらいかな」
 「そうですね。順調です」


 俺たちは食後のお茶を啜りながら、改めて確認する


 「いいかリリ、ゴドウェンの滞在は1日だけ、寝泊まりはこの魔導車で、知らない人には着いていかない、コノハと一緒に行動する、だ。いいな?」
 「はーい。大丈夫です」
 「それとコノハは、怪しいヤツはぶっ飛ばす、絡まれたらぶっ飛ばす、触られたらぶっ飛ばす、だ。いいか?」
 「はい。でも、いいのでしょうか?」
 「もちろんだ」


 やり過ぎかも知れんが、俺としてはこれでも心配だ


 「ヘンな人に触られたら、これでビリッとやっていいんだよね?」
 「ああ。使い方は大丈夫だな?」
 「うん。コノハが教えてくれたから」


 リリはスタンロッドを構えて振り回す。うん、いい感じ
 するとリリは立ち上がり、コノハに言う


 「よーしコノハっ、お風呂入ろっ‼」
 「はい、お嬢様」
 「ジュートさんもっ‼」
 「おうっ‼ って、なんでやねん」


 コノハに連れられてリリは風呂場へ
 俺はソファに寝転ぶと、読みかけの本を手に取った


 「······ふぁ」


 本の内容は物語。この世界の勇者が旅をして、魔王を倒す典型的な冒険譚
 満腹の状態で本を読むのは以外と辛く、寝ながら読むと睡魔が襲ってくる


 《ジュート、ちょっといい?》
 「ん?······どうしたシロ?」


 いつの間にか、向かいのソファにシロがいた


 《ボクの目的地······〔グレーマウンテン〕を覚えてる?》
 「ああ。用事があるんだろ?」
 《うん。そこはね、ヴォルフガングが【時の大陸】に向かう前に、最後に寄った場所なんだ》


 俺はソファに座り直しシロに向き直る。眠気は既になくなっていた


 「そこに、何があるんだ?」
 《何もないよ。何かを残したワケじゃないし、理由があったワケじゃない。でも、ジュートも【時の大陸】へ向かうなら寄った方がいいと思ってね》


 最後に寄った場所······本当に最後の地になったんだろう。【銃神】はその後の戦いで死んじまったからな


 「そうだな、俺も行くべきだろうな」


 なんとなく納得した
 俺の戦いももうすぐ終わる。だから悔いは残さない
 クラスの仲間を救い、【神】をブッ倒す。そして、クラスの仲間を【神】から開放する




 俺はシロの隣に移動し、優しくシロの頭をなでた




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 場所はゴドウェンへ向かう途中の平原。時間は朝


 「それでは……参ります」
 「おう、いつでもいいぜ」


 俺の目の前には、半身で構えるコノハ
 装備は〔震拳ガドベンド〕で、俺を見つめる表情は厳しい


 ゴドウェンまで2日という距離で、コノハに稽古をつけて欲しいと頼まれ、断る理由もないし、コノハが強くなればリリへの危険度も減る。なので了承した
 俺の装備は〔マルチウェポン〕と〔カティルブレード〕のみ。なるべくコノハに合わせるために、あえてナイフは使わない。ちなみにリリはまだ寝てる


 「はッ!」
 「おぉっ!?」


 コノハとの距離は5メートルほどだったが、コノハのダッシュは凄まじく、一瞬でゼロになる


 「だぁッ!!」


 美しい構えからの正拳突き、そこから側頭部を狙ったハイキック、返し際の肘、そしてショートアッパー、さらにショートフック。見事なまでに美しいコンボ


 「……うーん」


 俺はそれらを全て躱し、再度ハイキックを仕掛けたコノハの足を躱し、着地間際に両足を払って転倒させた


 「ぐッ……」
 「はい、おしまい」


 俺は〔カティルブレード〕を展開し、剣先をコノハに突きつける


 「……お見事です、ジュート殿」
 「ああ、お前もなかなかだったぞ」


 コノハに手を貸して立ち上がらせ向き直る。するとコノハがさっそく聞いてきた


 「ジュート殿、率直な意見をお願いします」
 「……いいけど、遠慮しないからな?」
 「はい」


 まぁこう言うなら遠慮しない。コノハのためにもならないしな


 「まず、技のキレはいい。威力も申し分ないし、直撃すれば骨も砕けるだろうな」
 「は、はい」
 「でも……正直すぎる。まるでお手本みたいな流れで、どこに何が来るか直ぐにわかった。モンスターには効くかもしれないけど、人間相手で手練れだと一瞬でカウンターを取られるぞ?」
 「……はい」
 「例えば……コノハ、正拳突きを撃ってみろ、全力で」
 「え、は……はい」
 「遠慮すんな、どうせ当たらんし」
 「……はい、行きます」


 やべ、ちょっと怒ったかな?
 距離は1メートルもない。コノハは構え、俺の顔に全力の右正拳を放った


 俺は左手で右手首を掴み、そのまま引っ張りコノハの体勢を崩し、右手の〔カティルブレード〕をコノハの首に突きつけた


 「……っと、残念。こういうことだ」
 「あ……」


 コノハは少し青くなってる。ようやくわかったようだ


 「いいか、正直なのは悪くないけど、コノハは搦め手を覚えろ。これから先は危険な町だ、盗賊や殺し屋なんて人種に出会ったらまず殺されるぞ」
 「……はい」
 「よし、ならもう一度だ。俺で良かったらいくらでも付き合うからよ」
 「はい!! よろしくお願いします!!」




 こうして、俺とコノハの訓練は、リリが起きるまで続けられた




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 「むぅ、2人だけで楽しそう……ズルい」
 「お、お嬢様。私たちは訓練してたのであって、決して遊んでたワケでは!?」


 朝食時、むくれるリリを必死に宥めるコノハ
 やれやれ、かわいいけど子供だな


 「リリも一緒にやるか?」
 「……やめとく。怖いし」
 「お嬢様……?」


 リリはニコッと笑う。どうやらコノハをからかっただけらしい
 それに気が付いたコノハは、なんとも言えない顔でリリを見た


 「さて、今日は1日ここで修行するか」
 「それは構いません。むしろ望むところですが……よろしいですか、お嬢様?」
 「いいよ。今日は私、クロちゃんとシロちゃんと一緒に遊ぶから」


 リリはいつの間にかソファにいたクロとシロに飛びつき、クロを抱えてシロを枕にした。クロシロも特に抵抗せず、されるがままにされている


 《せっかくだし鍛えてあげなよ。ボクたちがこの子の相手をするからさ》
 《フフ、アナタが先生とはネ》


 ま、せっかくだしお願いするか


 「じゃあコノハ、今日は1日ここで修行だな」
 「はい。よろしくお願いします」




 さて、俺もコノハに負けずに頑張ろう




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 「コノハ、せっかくブレードも付いてるんだし、それを応用した戦闘をするってのは?」
 「これですか、確かに……私は徒手空拳だけですが、武器術も使えないワケではありません。是非とも応用してみたいと思います」


 コノハは右手のブレードを出したり戻したりして感触を確かめてる
 俺は両手だが、コノハは右手のみだ
 確か両手装備が許されるのはマスターのみ、って聞いた事がある


 まぁそんなのはどうでもいい


 「ジュート殿、このブレードを使った戦闘法を習いたいのですが」
 「そうだなぁ、俺もそこまで慣れてるワケじゃないし、一緒に考えながら組手しようぜ」
 「わかりました。それでは始めましょう」




 ブレードを利用した格闘技は、なかなか難航した




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 時刻は夕方。今日は終わりにして車内へ戻ると


 「ジュート殿、直ぐに夕食の支度を。んむ?」 
 「しーっ」


 俺はコノハの口に人差し指を添え、視線をソファに向けた


 「くぅ······」


 そこには、クロを抱っこしてシロを枕にしてるリリの姿
 クロとシロも気持ち良さそうに眠ってる




 コノハと視線を合わせつつ、静かにリリたちを眺めた





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