ホントウの勇者

さとう

憩いの町ポートレード⑫/休暇の終わり・新天地



 「おはよ」
 「……おは、ふぁ……よぅ」


 焼き魚パーティーの翌朝、ベッドの上で虫菜に起こされた
 約束通り、夜は2人でハッスル。疲れていたから回数も多くなった


 「朝ごはん、コノハが作ってる」
 「……そっか、じゃあ起きるか」


 俺はまだ寝ぼけていたが、着替えを済ませて居間に向かう
 虫菜も素早く着替えを済ませ、俺の後ろに続いた


 「おはよ-」
 「……おはよう」
 「おはようございます!! いい朝ですね!!」


 三者三様の挨拶に迎えられ、コノハの作った朝食を食べる
 すると、黎明がちょっと悲しそうに切り出した


 「あのさジュート、アタシたち……明日にはあっち・・・に戻らないといけないの」


 黎明は指輪を掲げながら言う。だよな、俺もそろそろだと思ってたし、次の目的地の話もしようと思っていたところだ


 「うん。俺もそろそろ次の目的地へ出発しようと思ってた」
 「そっか、じゃあ出発は明日?」
 「ああ、リリもコノハもそれでいいか?」
 「はい。この町は楽しいですが、私たちの居場所ではありませんでした」
 「うん……楽しいだけじゃダメなんだよね」


 ちょっと悲しそうなリリをコノハが慰め、俺は話を進める
 すると、いつの間にかソファの上にシロがいて、その上にクロがいた。こいつらホントに神出鬼没だよな


 《次の目的地は〔フォド街道〕を抜けた先の〔要塞都市ゴドウェン〕だね、さらにその先の〔ポアラノ村〕を抜けた先に〔龍の渓谷〕があるよ》
 《ヤレヤレ、先は長いワネ》


 するとリリはクロを見てさっそくなで始めた。そう言えばシロは何回か見たけどクロを見るのは初めてだな


 「わぁ、かわいい猫ちゃん。よしよし」
 《ニャ》


 クロをなでていたが、ついには抱っこしてなで始めた
 まぁクロはリリに任せよう。シロはソファで大人しくしてるしな


 「リリ、コノハ。明日出発して〔フォド街道〕を抜ける。その先の〔要塞都市ゴドウェン〕に向かうけど……」
 「構いません。私たちはジュート殿へ着いていきます」
 「うん。ジュートさんと一緒なら私たちの居場所がきっと見つかるよ」
 「わかった、じゃあ今日は旅に必要なものを買いに行こう。せっかくだしみんなで行かないか?」


 俺の提案に全員が賛成。食後の一服のあとに買い物に行くことになった




 最後の1日、充実した1日にしよう




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 「ジュート殿、噂で聞いたのですが……」


 町を歩きながら買い物を楽しみ、オシャレなカフェで休憩中
 買い物は主に食材だ。これから何日も移動するので食材は必須、コノハが厳選した食材を何日分も買い込んだ
 買い物の中にはアグニたちの酒、ルーチェとティエルとモルのお菓子、クロの魚、ニュールの機械油、苦労したがクライブの樹液なども入っていた
 そんな大量の買い物を終えたカフェで、コノハが俺に言う


 「〔要塞都市ゴドウェン〕では窃盗や人さらいが多発しているそうです。なぜ要塞都市と呼ばれるか、それは1度入るとなかなか抜け出せない、と言われているからだそうです」


 コノハは町を散策しながら情報も集めていた。どうやらクセみたいな物らしい。まるで忍者かスパイみたいだ


 「そうなのか。俺やコノハはともかく、リリは危ないな……護身具でも持たせるか?」
 「それがいいでしょう。では武器屋へ」


 みんなの了解を取って武器屋へ。リリはよく分かっておらず、小さくリスみたいに首をかしげていた。かわいい
 武器屋は町の中心にある大きな所で、中は冒険者や傭兵なんかで賑わっていた
 俺とコノハ以外は武器屋が初めてなのか、キョロキョロと周りを見て回っていた


 「お嬢様にはナイフや暗器より、この〔スタンバトン〕などがよろしいかと」
 「何これ? へんな棒だね」


 コノハが差し出したのは金属の棒。収納式で長さは30センチくらい、畳むと15センチくらいで携帯には最適だ。これに魔力を流すと伸びて電気を帯びる。つまりスタンロッドだ
 リリはコノハの指導でスタンバトンを伸ばし縮みさせてる。決まりだなこりゃ


 お会計を済ませてリリのポケットにはスタンバトンが収納された。リリはあんまり興味なさそうだが、まぁいざというときは使って欲しい


 「さて、食材も買ったしリリの武器も買ったし……あ、キンタローさんに挨拶していくか」
 「そうですね。お世話になりましたし」


 コノハはベルトに吊してある〔震拳ガドベンド〕を手でなぞった




 じゃあ次は冒険者ギルドへ行こう




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 「おう兄ちゃん······って、今日は随分と多所帯だな。なんかあったのか?」


 ギルドへ行き、受付のお姉さんにキンタローさんを呼んでもらう。するとご覧のお言葉を頂きました


 「いえ、明日には出発するので、ご挨拶に」
 「ははは、律儀なやつだ。次の目的地はどこだ?」
 「次はゴドウェンですね、そこからポアラノ村を経由して王都へ向かいます」
 「······ゴドウェンか」


 キンタローさんは難しい顔をして、俺を手招きして近くに呼ぶと、小声で話し始めた


 「こんなこと言いたかないが······あの町は気を付けろ。あそこはこの辺の盗賊団の主要都市でもあり、何も知らない冒険者や観光者をカモにして窃盗を繰り返してる、町民たちもグルだ」


 キンタローさんは真剣だ。きっと本当のことなんだろう


 「いいか、あそこでは誰も信じるな。ギルドの職員でさえ汚職に染まってる。どんなに誠実なヤツでも、どんなに美人のネーちゃんでも、たとえ子供でも······裏があると思え。何かあったらあのお嬢ちゃんたちを天秤に賭けろ、お前さんならお嬢ちゃんたちを優先するはずだ」


 ここまで親身になってくれてるキンタローさんは、見た目に寄らず面倒見がいい。俺はこの人を信じることにする


 「わかりました······大事なことを忘れないようにします」
 「それでいい」


 すると、リリとコノハが近づいて来た


 「キンタローさん、いろいろお世話になりました‼」
 「ありがとうございます。この御恩は忘れません」
 「お、おう······くっ、がっはっはっ‼ 照れるなこのヤロー‼」
 「いでっ⁉ ちょ、キンタローさんっ⁉」


 照れたキンタローさんに背中をバンバン叩かれた。なんで俺⁉




 キンタローさんに別れを告げ、俺たちはギルドを後にした




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 コテージに帰って来た俺たちは、旅の支度を終えて各々がリラックス。そしてコノハが作った豪勢な夕食を終えた


 「え······帰っちゃうんですか」


 リリの悲しげな呟き。それは、黎明たちが明日にはマフィの元へ帰るという知らせを聞いたからだ


 「うん。けど数日したらまた会えるから安心して、今度は違うお友達を連れてくるからさ‼」
 「······しばしの別れね」
 「また今度」


 逸れを聞いてリリは安心したようだ。コノハもこっそりと胸を撫で下ろしてる


 「あの、今日はみんなでお話しませんか?」
 「お、いいね。女子トークしよっか‼」
 「······ま、いいかもね」
 「決定」
 「あの、よろしいですかジュート殿?」


 ここで異を唱えるヤツは間違いなく勇者だろうな


 「うん、みんなで楽しくお喋りするといいよ」


 こうして俺は1人淋しくベッドへ




 最終日の夜は寒かった······泣けるぜ




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 「忘れ物はないか?」
 「はい。大丈夫です‼」


 リリとコノハに確認し、コテージのカギを閉める
 黎明たちは朝一番でマフィの元へ帰った。まぁすぐに会えるから問題ない


 コテージの管理施設にカギを返し、俺たちはアウトブラッキーに乗り込んで町の出口へ向かう


 「楽しかったです······夢みたいな時間でした」
 「はい。お嬢様」


 窓から身を乗り出して風景を眺めながら、リリは淋しそうに呟く


 「······」


 また来よう、とは言わない。来れるか分からないし、その時は俺は近くにいないかも知れない
 でも、楽しかったのは間違いなく本当だ




 俺は横目で海を眺めながら、次の町へ向け走り出す



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