ホントウの勇者

さとう

憩いの町ポートレード⑪/ゾンビ・心からの笑顔



 「冒険者はここで待機!! 姿が見えたら戦闘開始だ!!」


 俺たちは森から数百メートル離れた位置で待機していた
 冒険者グループは200以上、傭兵団も200以上の混合団。協力してモンスター退治か、【赤の大陸】で土丸たちと戦ったときもこんな感じだったっけ


 「……ふぅ」
 「大丈夫か、コノハ?」
 「はい、いい感じに身体が緊張しています。久し振りなので遠慮はしません」 
 「お、おう」


 コノハは意外と好戦的な性格のようだ
 俺もフル装備で森の奥を眺め、使う魔術を決める


 「コノハ、敵が来たら俺は魔術をぶっ放す。あとはとにかくぶっ潰すぞ」
 「はい。理想の作戦ですね」


 少し頭が悪い作戦だが、他の冒険者たちもいるし、活躍の場を残す
 すると周囲の空気が変わった……来たか


 「いいか!! 1匹も逃がすなよ、町の平和はおれたちが守るぞ!!」


 キンタローさんの声に全員が武器を掲げて気合いの雄叫びを上げる。そして、モンスターたちの姿が現れた


 「あ、あれが〔グレーデッドゾンビ〕かよ……まんまゾンビじゃねーか」


 〔グレーデッドゾンビ〕は見た目まんまのゾンビ。服などは着ておらず全裸、しかし男女の区別など無く、どうやら〔ゾンビ〕というモンスターらしい。別に人間が腐ってるワケではない
 そんなヤツらが1000以上、ヘタすりゃ2000以上いる
 森から横一列に、ヨタヨタと腕を前に突き出して歩いてくる。しかも以外と早い


 「行くぞーーっ!!」


 キンタローさんの号令で戦士たちが飛び出し、詠唱を終えていた中・上級魔術が炸裂。俺も負けじと魔術を放った


 「【灰】の上級魔術・【飛空剣閃スカイエッジ・フォール】!!」


 【灰銀烈槍シルバリオン・サリッサ】は雨のように槍が降り注ぐが、コイツは横に剣が飛んで行く
 森の奥に潜むゾンビには当たらないが、前を歩くゾンビをかなりはじき飛ばした


 「行くぞコノハッ……って、いない?」




 コノハすでに最前線に駆けだしていたことに、俺は全く気付かなかった




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 俺は遅れて飛び出したが、コノハはすでに戦っていた
 前は魔術で瞬殺だったし、今回は生身で暴れさせてもらう


 俺は商手にナイフを装備し、ゾンビの群れに突っ込む


 「さぁ行くぞッ!!」


 ゾンビは近くで見るとキモいし臭い。正直ナイフで斬るのも躊躇うが、そんなワガママ言ってられない
 俺は殺到するゾンビに飛びかかり、瞬時に首を切断した


 「あれ、もしかして弱い?」


 周りを見るとゾンビの死体……言い方はおかしいが、ゾンビが至るところで死んでいる
 すると、近くに居た冒険者が教えてくれた


 「コイツらの怖いところは数だ!! 単独ではBレート程度だが、1匹見つけると1000体はいると言われてるほど凶悪な数がいる。だからいくつもの町が滅ぼされかけたんだっ!!」


 ナルホド、親切にありがとう
 俺は周囲を見回すと……いた、コノハだ


 「はッ!!」


 コノハはゾンビの頭部を殴りつけ吹き飛ばし、ハイキックで頭部を砕き、右手のブレードで首を切断。その強さはハンパない。マジでこの強さなら盗賊団を1人で無力化出来ただろう
 俺はコノハに近づいていたゾンビに跳び蹴りを食らわせた


 「おりゃっ!! 大丈夫か!?」
 「はい、ありがとうございます!!」


 そのまま背中合わせになり、周囲の状況を確認する


 「どうやら5000体以上います。ここまでで推定2000体は討伐しました。1人50万ゴルドでは割に合わない仕事ですね」
 「だな、帰ったら報酬の上乗せがあったりしてな」


 怪我人もちらほら出てる。長期戦はマズいな
 いざとなったら隠れて神器を使うか……でも、いきなりガイコツの集団が現れたらパニックだ。この森が恐怖の森になったら観光客が減るかも


 とにかく、数を減らしまくってやる。いい運動になるしな
 俺はナイフを構え直してコノハに言う


 「さぁて、まだいけるよな? コノハ」
 「はい。ようやく身体が温まってきました」




 さぁて、どんどん倒して終わらせるぜ!!




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 それから数時間、ようやく終わりが見えてきた


 「大丈夫か、コノハ」
 「は、はい……ふぅ」


 さすがにコノハは疲れてる。まぁ仕方ない、始まってから3時間は経過したし、その間はずっと走りっぱなし、戦いっぱなしだったからな
 俺は頭の中でシロを呼ぶと、シロはすぐに来てくれた


 「シロ、ゾンビはまだいるか?」
 《……いや、もういないよ》
 「あ、シロさん」


 コノハはいきなりのシロに驚いたが、少し微笑んでシロをなでた


 「おーし終わりだぁっ!! 負傷者を魔導車へ、それ以外は周囲の最終確認だ!!」


 どこからかキンタローさんが魔導マイクで喋ってる。その声を聞いて戦士たちが雄叫びを上げた


 《うぅ、臭いなぁ……じゃあジュート、ボクは戻るよ》
 「おう、お疲れさん」


 シロはトコトコ木の裏へ、すると直ぐに消えてしまった


 「あ、シロさん……行っちゃいました」
 「まぁ後で会えるよ。それより、モンスターの死骸はこのままでいいのか?」
 「はい。このゾンビは土に還りますので」


 そりゃ便利だな。栄養になって森が豊かになるのか




 さて、周囲を確認したらギルドへ戻るか




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 ギルドに戻り、報酬を貰う


 「いやーご苦労だった。さすが兄ちゃんだな、ほれ嬢ちゃんも」
 「いえ、私は冒険者ではありませんので、報酬はいただけません」
 「あぁ!? ンな固いこと言うなっての、ギルドマスターのおれが言うんだからいいんだよ!!」


 ちょっと強引だがコノハも報酬を貰った。やっぱキンタローさんっていい人だな
 コノハと話し合った結果、今日のことはリリたちには黙ってることにした。無駄な心配をかけたくないしな。それにいい運動になったし


 「じゃ、帰ろうぜ」
 「はい」


 キンタローさんに再度挨拶し、俺とコノハはギルドを後にした


 「ジュート殿、今日はありがとうございました」
 「何だよ急に?」
 「いえ、武器といい防具といい、あなた様がいなければどうにもなりませんでした。だから感謝を」
 「律儀なヤツだな。気にしなくていいっての」
 「いえ、それでは私の気が晴れません。何かお礼を」


 お礼ねぇ……普通ならエロいことを考えるが、そんな空気ではない


 「じゃあさ、美味い晩メシを作ってくれよ。リリも黎明たちも腹減ってるだろうしさ」


 これは正直な気持ち。ハラヘって死にそうだ
 コノハも疲れてるだろうから、俺も手伝うつもりだけどな


 「……あははっ!! わかりました。腕によりをかけて作らせて頂きます!!」




 コノハの心からの笑顔を見て、俺はそれだけで癒やされた気がした




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 「ただいま~」
 「ただいま帰りました」


 俺とコノハが戻ると、いい匂いが俺たちを迎えた
 コノハと顔を見合わせコテージの居間に行くと、たくさんの魚が丸焼きされていた


 「な、なんだこりゃ」
 「大漁」


 どこから出したのか、虫菜が七輪で魚を焼いていた
 焼いてるのはアユみたいな淡泊そうな白身魚


 「おかえり~。氷寒、お塩取って~」
 「……黎明、あなた振りすぎよ」
 「う~ん、美味しいです~」


 どうやら今日の晩メシは虫菜が釣った魚で決まりだな


 「コノハ、手料理は明日だな……」
 「はい……」




 肩をがっくり落とし、俺とコノハも魚を食べ始めた



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