ホントウの勇者

さとう

憩いの町ポートレード⑩/震拳ガドベンド・試し殴り



 コノハと一緒に近くのカフェへ


 そんなに腹は減ってなかったので紅茶とサンドイッチだけ。他愛のない談笑をしつつ、これからのことを話してみた


 「なぁ、これからどうする。その……実家には帰らないんだろう?」
 「はい。いくら双方合意だったと言え、縁談を投げ出して逃げたのは事実。ルノー家は何らかの形で責任を取ることになったはずですし、家に帰れば間違いなく軟禁生活となり、逃げられない婚約が待っているでしょう。お嬢様にとっては死刑宣告のような物です」


 そりゃハードすぎる。16歳の女の子にはキツい


 「お嬢様には歌を歌い、普通の暮らし、普通に恋をして貰いたい。お嬢様を幸せにしてくれる人と結ばれて、平穏に暮らして貰いたい。それが私の望みです」
 「……そっか。じゃあ、お前は?」
 「え?」
 「お前は、その平穏な暮らしをしたくないのか? リリが結婚したらお前はどうするんだ?」
 「……わかりません。私は、今が精一杯なので」
 「リリはきっと、お前の言う「平穏な暮らし」にお前を入れてるぞ。お前が幸せにならなきゃリリも幸せになれないだろうさ」
 「……」


 これは間違いない。絶対に
 リリはコノハを親友と言ってた。親友の幸せを願うのは当然だ


 「悪いな。同い年なのに偉そうで」
 「いえ……その、ありがとうございます」


 コノハの笑顔は、少し硬かったが自然だった


 「さて、そろそろ行くか」
 「はい」




 そろそろ出来てるだろうか。モモタローさんの店に行こう


 
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 モモタローさんの店に向かう途中、1軒の防具屋を見つけた


 するとコノハは防具屋を見つめ、次に自分の服装をチェック。何やってんだ?
 今日のコノハの服装は薄手の半袖にスカートという一般的な物だった


 「ジュート殿、装備を調えてもよろしいでしょうか」
 「装備?」
 「はい。この格好ではまともに動けないので、武器の試着をしたときに違和感があるかと」
 「よくわからんけど、コノハがそう言うならいこうぜ」
 「ありがとうございます」


 そういうわけで防具屋へ


 防具屋は全身鎧はプレートメイル、盾や鎧下、何故か服まで売っていた
 コノハは軽鎧と服を見ながら選んでいる


 「これは格闘家の服です。強靱な繊維で編まれているので、動きやすさを損なわずに防具としても使えます」
 「ほぉ……いいな」


 コノハは一着の格闘服と、皮の胸当て、さらに腰に巻くベルトを選んで試着室へ
 数分で着替えが終わり、現れたコノハは別人だった


 「ふむ……これで行きます」
 「お、おお……似合ってる」


 身体を覆うのは薄い胴着のような半袖服で、その上に皮の胸当てを装備してる。下半身はスパッツで、その下に短パンを履いてる。妙に色っぽい
 腰にはベルトを巻き、何かをつり下げられるような構造をしてる。なんだろう?
 長い黒髪も纏められ、完全に女格闘服だ。オニキスを彷彿とさせる


 「ではお会計……あっ」
 「会計を、コイツで」


 俺はコノハより早くゴルドカードで会計を済ませる
 ちなみにリリとコノハのお金は盗賊の基地にあったゴルドカード。僅かな金額しか入っていなかったが、貰っておいた
 コノハの本来の装備は魔導車の中に保管してあったらしい。俺が全部吹き飛ばしたので、俺が払うのは当然の義務だ


 「あ、ありがとうございます……」
 「いいって、気にすんな」




 店を出て、今度こそモモタローさんのお店へ




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 「おう、出来てるぜ!!」


 店に入った俺たちを迎えたのは、いきなりすぎるモモタローさんの声だった
 モモタローさんはすでにカウンターにスタンバイ、俺たちを手招きしていた


 「ほれお嬢ちゃん、コイツが嬢ちゃん用に造ったマルチウェポン、いや……〔震拳ガドベンド〕だ。さっそく装備してみてくれ」
 「おぉ……?」


 俺の目の前にあったのは籠手とブーツ。形状が全然違うぞ?
 するとコノハは何も言わずに籠手を装備し、ブーツを履く


 「さて、魔力を流してみな」
 「はい」


 コノハが言われたとおり魔力を流すと、驚くべき変化が起きた


 ブーツから鉄板のような物が伸びてコノハの臑を覆い、籠手も変形して拳を覆うナックルとなる。さらに右手にはマルチウェポンのギミックナイフが装着され、見た目が完全に変形した


 「す、すげぇ……おいコノハ、平気か?」
 「はい、驚きました」


 ここでモモタローさんが解説してくれる


 「へへへ、以前から形状変化の武具を開発する構想はあったんだ。悪いがいろいろ試させて貰ったぜ、お嬢ちゃん」
 「いえ、素晴らしいです。しかし……これほどの変形機構、強度に問題は?」
 「大丈夫、接合部は魔術でコーティングしてあるし、素材は〔グレーディノレックス〕のツメとキバを使ってる。よほどのことが無い限り壊れやしねぇよ」


 確かに。一応後でクロに頼んで、こっそり時間停止魔術をかけて貰おう
 でも、Sレートモンスターの素材って高いんじゃ……?


 「あの、お値段は?」
 「あぁいらねーよ。キンタローのヤツから貰ってるしな」


 衝撃の事実。なんだそりゃ!?


 「ま、受け取っとけ。アイツなりの感謝の印だろうよ。Sレートモンスターの素材に町を挙げてのバーベキュー、SSレートのモンスターの討伐に上等な肉……だいぶ稼がせてもらったようだしな」
 「そ、そうですか……」
 「ジュート殿、後ほどお礼に伺いましょう」
 「それもやめとけ、アイツは照れ屋だからな。お嬢ちゃんみたいなべっぴんさんに礼なんざ言われたら恥ずかしくて死んじまうぞ?」


 そこまでなのか。まぁせっかくだし気持ちは貰っておこう
 するとコノハは腰のベルトに籠手を吊した。なるほど、そのためのベルトか


 「じゃあせめてギルドでお披露目と行こうぜ。見て貰うくらいならいいだろ」
 「はい。行きましょう」
 「じゃあキンタローによろしくな。また来いよ!!」




 モモタローさんと別れ、俺たちはギルドに向かった




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 ギルドへ到着し中へ入ると、もの凄く混雑していた


 「な、なんだ?」
 「何かあったんでしょうか?」


 冒険者グループで混雑する中、カウンターの近くにキンタローさんの姿が見えた
 俺たちは冒険者グループの間を縫うようにキンタローさんに近づく


 「キンタローさん、先ほどはどうも」
 「おぉ兄ちゃん、いいところへ来た!! 手ぇ貸してくれ!!」


 キンタローさんは俺の肩をがっちり掴むと、デカい声で言う


 「この近くの森に〔グレーデッドゾンビ〕の群れが出たんだ!! 数は不明、一刻も早く討伐しないと町が襲われ……滅びる!!」
 「……ま、マジですか?」
 「ああ、ヤツらは最低でも千単位の集団で動き、エサとなる生物を喰らいながら移動する。どうやら森を隠れながら進んでたみてぇで発見が遅れた。今、町中の冒険者と傭兵を招集して討伐団を結成した。準備が整い次第行くぞ!!」
 「わ、わかりました。コノハ、お前は……」
 「丁度いいですね、試し殴りをさせて頂きます」


 リリたちの元へ、と言おうとしたが言えなかった。まぁ黎明たちもいるから大丈夫か
 ちなみに報酬は1人50万ゴルド。なかなかの値段だ


 冒険者と傭兵が500人ほど集まり個々で出発した。どうやら町を不安にさせないためらしい
 キンタローさんは先陣を切って町の外へ、どうやら森の近くに冒険者たちを集めて一気に突入、殲滅させるそうだ


 集団戦なら『骸骨神化ソウルオブナハトオルクス』でいけば直ぐに終わる。『黒玄散弾銃アスワド・シェル・ショット』を使えば数で圧倒的に勝るけど、今回は使えない




 俺は【アウトブラッキー】にコノハを乗せ、町の外へ走り出した
 

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