ホントウの勇者

さとう

憩いの町ポートレード⑧/バーベキュー・声



 「ただいまー」
 「ただいまでーす!!」


 俺とリリは冒険者ギルドで報告を終え、リリのゴルドカードに入金、そのまま真っ直ぐコテージに戻ってきた
 俺とリリ以外のメンバーは戻ってきていた。どうやら俺たちが最後か


 「ただいまコノハっ、あのね、今日はギルドで依頼を受けてねっ!!」
 「お嬢様落ち着いて……ちゃんと聞きますから」


 興奮するリリを宥めるコノハは、まるで母親のようだ
 俺の視線は3人の嫁に。氷寒と虫菜はいつも通りだが、黎明は沈んでる


 「なぁ、黎明はどうしたんだよ?」
 「大負け」


 こういうときに本人に聞くと爆発する。俺はコイツの性格を知ってたので、一緒に居た虫菜に聞いてみた……大負け?


 「カジノで大負け。お小遣いスッカラカン」
 「……お前は?」
 「ふふん。大勝ち」


 ピースサインで答える虫菜。すると黎明がガバッと起き上がる


 「だぁぁ~っ!! あそこで2番が来てれば大勝ちだったのにぃぃっ!! 明日もう1回リベンジする!!」
 「お金は?」
 「ぐっ!?………虫菜、その」
 「イヤ」
 「……ひょう」
 「……イヤよ」
 「ジュート、おねが」
 「ダメ」
 「あの、レイメイさん。お金なら私が……」
 「いけませんお嬢様。そのお金はお嬢様が依頼で貰った報酬、レイメイさんには私から」
 「でも、コノハだってお金ないでしょ? なら2人で一緒に」
 「お嬢様……」
 「………」


 2人のやり取りに黎明は声を出せなかった。こりゃムリだろ
 仕方ない、俺が出すか……と、思ってたら黎明が言った


 「……もうギャンブルやんない。ぜーったいやらない」


 黎明は懲りたのか、全員の前で宣言した
 でも無一文は流石にマズい。俺はサイフから5万ゴルドほど抜いて黎明に渡す


 「ほら、ギャンブル以外でも使うだろ? 無くなったら言えよ」
 「じゅ~とぉ~っ!! 愛してるっ!! このお礼はカラダで払うからっ!!」
 「ああ、楽しみにしてる」


 黎明は俺に抱きついてディープキス。さすがに恥ずかしい
 まぁカラダで払うってんなら遠慮しないで貰う。たーっぷり貰う、ぐへへ


 何故か空気が白けたが、とにかくバーベキューの時間だ
 場所は浜辺、ここからだと5分で行ける




 さぁて、いっぱい食べてやるぜ!!




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 バーベキュー会場はまるでコンサート会場だった


 浜辺には人がひしめき、なぜかステージが作られてる
 至る所に巨大な鉄板が置かれ、すでに火が灯され熱気で満ちていた
 あとは酒の匂いと肉以外の料理、それと何故か出店まで出てる。なにこれ?


 「何これ……多すぎだろ」
 「すごい!! いっぱいです!!」


 俺のテンションとは別にリリは大騒ぎ。楽しそうだねキミ
 ステージの近くにキンタローさんの姿が見えたので、俺たちはそこに向かった


 「キンタローさん、こんばんわ」
 「おお兄ちゃん。見ての通りの大宴会だ!! ささ、こっちが兄ちゃんたちの席だ。座ってくれ」


 俺が何か言う前にキンタローさんが大きな円卓に案内してくれる。そこには大きな円盤形の鉄板に各種野菜、肉などが置かれ、さらには飲み物まで充実していた


 「いやぁ、町にバーベキューのこと言ったらよ、町中の飲食店が協力して食材を持ち込んで、さらに冒険者や傭兵だけじゃなく町民や観光客まで巻き込んじまった。おかげでこーんな有様よ、がっはっは!!」


 がっはっは!! じゃねぇよ。軽く見ても3000人はいるぞ
 浜辺はかなり広いから問題ないけど、流石に多すぎだ


 「ねぇジュートさん、お肉を焼いていい?」


 リリの質問に、キンタローさんがストップをかける


 「おーっとお嬢ちゃんストップだ。まずは……乾杯だ!!」
 「おぉー!!」


 よく見るとだれも飲食してない。肉の焼ける音もしない


 「さぁ兄ちゃん、こっちだ。これもって」
 「は?」


 俺はキンタローさんから木のグラスを受け取り、何故かステージに案内された


 「兄ちゃんが来るのをみんなで待ってたんだよ。先に始めたヤツは冒険者と傭兵の資格を取り消すって脅してな、観光客や町民は冒険者や傭兵団が見張って先に始めないようにしてる」
 「そ、そこまでしたんですか!?」
 「当然だ。発起人である兄ちゃんを差し置いて始めるなんざ出来るワケがねぇ!!」


 いや男らしく言われても……それに、まさか俺が乾杯の音頭をとるの!?


 「さぁ兄ちゃん!! 乾杯の合図を頼むぜ、豪快に激しくなぁっ!!」
 「………」


 なんでこうなるんだ。全員が期待のこもった目で見やがるし。あぁわかったよ!!


 「かぁぁぁぁんんんっ!! ぱぁぁぁぁっいぃぃっ!!」


 あらん限りの声で絶叫。マイク魔道具越しなので思いっきり響いたぜ
 すると3000人以上の絶叫が響き渡り、あちこちでバーベキューが始まった




 はぁ、やっと食える……とにかく食べよ




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 「おいし~~っ!! このお肉うんまっ!!」
 「はい~~っ!! ふわっとして肉汁はジュージュー、とろけるような美味しさです~っ!!」


 黎明とリリは肉に夢中、俺も負けじと肉をがっつく
 氷寒は慎ましく肉と野菜を交互に食べ、コノハはリリの世話をしながらモグモグ食べてる。虫菜は肉を少し食べて屋台を見に行った


 「〔グレーディノレックス〕ってこんなに美味かったんだな。さすがS+~レート、こりゃSSでもいいくらいの味だ」


 個人的にはSSレートのウミヘビよりこっちのが好みだ。すると、酔っ払ったキンタローさんがやって来た。うぐ……酒くせぇ


 「がーっはっはっはっ!! 楽しんでるか兄ちゃん!!」
 「ど、どうもキンタローさん。だいぶ出来上がってますね」
 「こんな楽しい夜は初めてだ!! 飲まずにはいられんだろーさ。ホレ、兄ちゃんも飲め飲め!!」
 「い、いただきまーす……」


 逆らわないほうがよさそうだ。大人しく酒をもらおう
 俺はキンタローさんの持ってた酒瓶から酒を注いでもらい、ちびちびと飲み始めた


 ステージではダンスや歌が始まっている。するとリリが興奮して言い出す


 「私も歌う!! 歌いた~いっ!!」
 「お、いいね嬢ちゃん。歌え歌え!!」


 キンタローさんがステージに上がり、リリも負けじとジャンプしてステージへ。キンタローさんがドラムみたいな太鼓の前に座ると、それに合わせて何人かが楽器を持ってステージに上がった
 ステージでバンドにリリが指示を出すと、ノリのいい音楽が流れ始めた


 「さぁいっくよ~~っ!!」


 ホテルで歌ったバラードのような静かな曲でなく、ノリノリのロックを歌い始めた。マジかよ、前と全然違うぞ!?


 「お嬢様の歌にジャンルはありません。その時の気分でノリが全く違うのです」
 「いや見りゃわかるよ。意外すぎだろ」


 すると、まるでアイドルのコンサートみたいな熱気に包まれ、冒険者や傭兵、住人や観光客は、全員が共通してリリの観客へと変わった
 いつの間にかスポットライトがリリに浴びせられ、軽快なステップを刻みながら歌い踊る銀髪の歌姫に、会場の盛り上がりはますますヒートアップ


 「すげぇ、ここまで人の心を掴むなんて……これじゃまるで【特級魔術】レベルの魔術だ」




 リリの歌声を聞きながら、バーベキューの夜は過ぎていった



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