ホントウの勇者

さとう

憩いの町ポートレード⑥/みんなの休日・子守の依頼





 「バーベキュー? 明日?」
 「ああ」


 今日の晩メシはコテージで
 コノハはかなりの料理上手で、黎明たちと買い物に行った帰りに食材を買い、こうして豪勢な食事がテーブルいっぱいに並んでいる
 その料理を全部キレイに平らげた後、食後のフルーツと紅茶を楽しんでいるときに俺が切り出した
 黎明が異世界リンゴをシャリシャリと囓りながら聞き返す


 「……どうして?」
 「理由は?」


 氷寒と虫菜の疑問だ。俺は今日のモンスター討伐と〔グレーディノレックス〕の肉の件を話す
 2人は紅茶をおいしそうに啜ってる


 「なるほど……と言うか、Sレートモンスターを1人で……」
 「さっすがジュートさん!! 明日はみんなでバーベキューっ!!」


 リリはご機嫌だ。リリは紅茶じゃなくてフルーツジュースを飲んでる
 コノハは別の意味で驚いてる。まぁそこは別にいいだろ


 「冒険者ギルドのキンタローさんが準備してる。まぁ明日の夕食はバーベキューってことで」


 みんなは快く承諾してくれた。よかった


 「所で······明日の予定は?」
 「······明日はビーチで泳ごうと思ったんだけど」
 「あれはちょっとねぇ······」
 「ムリ」


 俺の嫁たちは難色を示してる。なんだろう?
 リリとコノハは顔を赤くしてるし


 「なんで? みんなで行けばいいじゃん」
 「いや、だってあそこ……ヌーディストビーチよ?」
 「何だって!?」


 ヤバい、ちょっと勢いよく食い付いてしまった。少し視線が痛い
 俺は必死で弁解する。しないとヤバい


 「あー……確かに、みんなの裸を見せるわけに行かないし……うん」
 「ふぅ~ん……ホントは行きたいんじゃないの?」
 「ンなわけないだろ。俺にはお前たちがいるし」
 「……それならいいけど」
 「うん」


 よし、フォロー完了。命拾いした


 「ジュートはどうすんの?」
 「明日もギルドだな。素材の料金を受け取りに行くよ」
 「……私とコノハはスポーツクラブに行くわ」
 「はい、ヒョーカさん。「テニーシュ」を教えますので、勝負しましょう」


 氷寒曰く、この世界でのテニスみたいなスポーツらしい
 マフィのところでいろいろ調べてたみたいだし、どうやら興味があったらしい


 「あたしは遊技場、って言うかカジノだった」
 「カジノ!? なんか面白そう、アタシも行くっ!!」


 虫菜は遊技場……って、カジノだったのか
 黎明も行くって言うし、じゃあリリは……?


 「あの、ジュートさん。私も一緒にギルドに行っていいですか?」


 おずおずと言うリリ。ダメなわけがない


 「もちろんいいぞ。じゃあ明日は俺と一緒だな」
 「はいっ!! 嬉しいです、えへへ」




 うーん癒やされるな。リリの笑顔は魔術に匹敵する癒しだ




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 翌日。朝食は各自で取る、ということで、俺とリリは朝イチで町に繰り出した


 「まずは朝メシだな······何食べる?」
 「そうですね······最近、豪華な食事が続いてるので、さっぱりしたモノを食べたいです」


 確かにね。かなりいいアイデアだ
 屋台で売ってるのは基本的に焼き物が多い。こんな時はツルッとした蕎麦やうどんが食べたいんだけどな
 そんな感じでリリと町を歩くと、リリが1軒の飲食店を指差した


 「ジュートさん、時間も惜しいので、あそこのカフェでモーニングセットを頼みましょう。私、早くギルドに行きたいです‼」
 「はは、リリはギルドに興味があるんだな」


 リリが指差したオシャレなカフェに入り、軽めのモーニングセットを注文。まだ早い時間なのに、けっこうなお客がいた
 それから数分でモーニングセットが運ばれ、俺とリリは食事を始める


 「リリは歌を歌いながら旅してたんだろ? こういうところに来たことないのか?」
 「んぐ。はい、私とコノハは基本的に小さい集落や町で歌を歌ってましたので、こんなリゾートには来たことがありません。食事なんかもコノハが全て作ってくれたので」
 「へぇ〜、コノハとは古い付き合いなんだな」
 「はい、私が3歳くらいから一緒です。すっごく強いし、盗賊団のときだって、私が捕まらなければ1人で何とかなったのに······」


 そ、そうなのか。そんなに強いのか
 確かに身のこなしからして只者じゃないと思ったけど


 それから食事を終えて会計、店を出て歩き出す
 リリは俺の腕に抱きつき、ニコニコしながら歩いていた


 「えへへ······何だかお兄さんが出来たみたいで嬉しいです」
 「お兄さんって、兄妹はいるんだろ?」
 「はい。でも、兄様たちはみんな忙しくて、こんな風に構ってくれなかったから」


 貴族ってどこでもそうなのかね?
 こんなにもリリは可愛いのに。全くけしからん




 俺はリリと腕を組みながら、敢えてゆっくりと歩いた




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 「おう兄ちゃん。お? 朝から見せつけるじゃねぇか」
 「キンタローさん······リリは妹みたいなモンですよ」


 ギルドに着くと冒険者を激励してるキンタローさんに出くわした。この人も朝から元気だな
 何故か顔はボコボコに腫れ上がり、もの凄く痛々しかった。何があったんだろう?


 「昨日のうちにバーベキューの手配は終わったぜ。日が沈む頃、場所は下のビーチだ。兄ちゃんは特に何もしなくていい、楽しんでくれ」
 「はい、それと」
 「わかってるよ、素材の件だろ? じゃあこっちに来てくれ、お嬢ちゃんも一緒でいいぜ」
 「あ、ありがとうございます」


 リリは少し緊張してる。銀髪の華奢で可憐な少女は、このギルド内では異彩を放ってる。現に注目されていた
 キンタローさんの配慮に感謝しつつ別室へ移動し、ソファに座ってお茶をごちそうになる。するとキンタローさんが楽しそうに言う


 「まずは素材の買取金額だが、キバとツメと鱗で2400万ゴルドだ。内訳を確認するかい?」
 「いえ、大丈夫です」


 そう言うと俺は差し出されたカードリーダー式魔道具にゴルドカードをスキャンした


 「いやぁ〜、いい素材が入ったモンだからよ、おれも自分の戦斧バトルアックスを新調しようと思ってな、昨日さっそく注文したんだよ。そしたらカカァにバレて大目玉さ」
 「そ、それは災難でしたね······」


 この顔の怪我はそれが原因か······奥さん、ご苦労様です


 「さて、これで終わりだな。また依頼でも受けるかい?」
 「う〜ん、今日はリリがいるから、危険な依頼はちょっと」
 「なるほど······だったらよ、討伐や採取の依頼じゃなくて、町中でやれる依頼を受けたらどうだ? お嬢ちゃんにも手伝って貰えばいい。まぁ報酬は安いし大した依頼はないけどな」


 町中の依頼か、そう言えば受けたことないな。俺の受ける依頼って血生臭い討伐ばっかだし


 「ジュートさん、私······やってみたいです‼」


 そんなキラキラした瞳で言われて断れるワケない。今日の予定は決まったな


 「よし、じゃあ依頼掲示板を見てみるか」




 リリと一緒に依頼か。なんか新鮮だな




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 朝早かったので依頼掲示板は混んでいた


 高い報酬の討伐依頼は人気で、特に人気なのはAレートの討伐だ。報酬もそこそこ高く、この大陸の冒険者や傭兵なら苦にならないレベル。安定した収入を得られる
 町中の依頼を覗くと、キンタローさんの言うとおり大したことなかった


 「屋根の修理、花壇の手入れ、飲食店の手伝い······まるで日雇いのバイトだな」


 どれもこれも1日で終わるものばかり
 するとリリは1枚の依頼用紙をじっと見ていた


 赤ちゃんの子守 報酬7000ゴルド
 『この依頼は朝一番で開始。赤ちゃんの子守をお願いします』


 子守······俺には未知の領域だ。ある意味すごく手強いな


 「それにするか?」
 「はい。赤ちゃん······きっと可愛いです」


 よし。さっそく行こう
 俺たちは依頼用紙を受付へ持って行く。無事に依頼が受理されると地図をもらって依頼主の自宅へ




 さて、今日はリリとのんびり子守だな



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