ホントウの勇者

さとう

憩いの町ポートレード③/ウミヘビ・オンパレード





 「わぁ……おいしそうです」
 「だな、たっぷり食べようぜ」


 翌日の朝。俺たちは早起きをして朝市へやって来た
 どうやらこの町はリゾートでもあり、魚介が多く採れる町でもあるようだ。その証拠に毎朝リゾート地の反対側で漁を行い、取れたての魚介を売ったり出店を出したりしてた


 「さぁ、何でもいいぞ。好きなの選びな」
 「わぁい!! ありがとうジュートさん!!」
 「ありがとうございます、ジュート殿」


 リリはすっかり懐き、コノハはまだ少し固い。元々がこういう性格だからなのか?
 とにかく出店に向かい取れたての魚介を味わう


 「わぁ、これがいいです」
 「これは……〔グレームール〕か、確かに美味そうだ」


 灰色の斑模様が刻まれた巻き貝を人数分買って食べる
 味はサザエみたいだが味が濃く、クリーミーな感じだった


 「……ねぇ、スープも売ってるわ」
 「おいしそう」


 魚のブツ切りのスープを買って食べる。これもダシが利いて濃厚な味


 「ねぇねぇ、魚の網焼き!! いい匂い~」
 「あれは〔グレーサーモン〕ですね。赤身の魚で美味しいですよ」


 みんなで魚を味わい、朝の散歩がてらのんびりと町を歩いて帰路に就いた




 今日はみんなでクルージング。楽しみだぜ




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 食事を終えて、俺たちはクルージング船乗り場へやって来た


 ポートレードの町のクルージング船は、かなり大型の魔導船だった
 乗船人数は200人以上で船室も広い。デッキはかなり雄大で障害物も少なく、海を眺めるのに最適な船だ
 この大型船で沖を目指し、数時間かけて海を漂いながら陸に反って進む。そして数時間かけてゆっくり戻る。この船での~んびり1日を過ごすのが今日の予定だ


 「……最近、この近海にSレートモンスターが出ていたの。けどS級の海上専門の傭兵団が討伐して、ようやくこの遊覧船が出せるようになったそうよ」


 そんなプチ情報を氷寒が教えてくれた
 海上専門の傭兵団か。なんか海賊みたいだな


 「船……初めてです」
 「お嬢様、はしゃぎすぎて海に落ちないで下さいね?」
 「落ちないよっ、コノハのばかっ」


 リリも嬉しそうだし、コノハも笑顔で答えてる


 「ねぇねぇ、海釣りしちゃダメかな?」
 「ダメ。怒られる」


 黎明と虫菜も……ってか海釣りか、やってみたい
 あとで【灰】魔術で竿を作って、エサは虫菜に虫を出して貰って……いける


 「……ダメよ?」




 どうやらダメみたいです。残念でした




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 今さらだが、俺の服装はかなりラフ
 黎明たちが昨日の買い物でいろいろ買ってきた服である。と言っても半袖のパーカーにショートパンツ、サンダルというシンプルな服。ナイフは似合わないので外し、左腕に〔マルチウェポン〕だけ装備した


 「わぁ~……気持ちいいです」
 「ああ、いいな……」


 俺はリリと一緒にデッキで日光浴をしていた
 氷寒は船室で読書、黎明は虫菜とコノハを連れて船内探索をしてる


 「ジュートさん、いろいろありがとう」
 「気にすんな、楽しそうで何よりだ」


 リリの銀髪が風になびき、太陽の光を浴びてキラキラ光る
 その光景は美しく、俺の心を癒し温める……なーんちゃって。詩人かよ俺は


 「あの……私、ジュートさんがいなかったら、あそこで殺されてました」
 「リリ、それは……」


 言わなくていい、思い出さなくていい、とは言えなかった。リリが自分から向き合おうとしてるから、俺が邪魔してはいけない


 「コノハもヒドい状態で、死んじゃうかと思って……でも、ジュートさんが来てくれました」
 「そうだな、ありゃ危なかった」
 「はい。それも全部……私が縁談から逃げなければよかったんですよね。実家から知らせが来たのも、きっと私がフラフラしてるから。お父様やお母様は私のためを思ってしてくれたのかも知れないのに」
 「リリ、それは……」
 「いいんです。私の行動は全部が私のワガママです。でも、もう帰る場所もない。だから……私の、私とコノハの帰る場所を、私は絶対に見つけます」
 「リリ……」


 リリは力強い瞳で俺を見る
 どうやら盗賊の件はもう大丈夫だな。リリは強くなった


 「ああ。俺に出来ることはなんでも手伝うぜ」
 「はい!! 頼りにしちゃいます!!」


 俺はリリの頭を優しくなでようと手を伸ばした……が


 「おわっ!?」
 「きゃあっ!?」




 船を、もの凄い衝撃が襲った




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 「な、何だっ!?」
 「ジュートさん……!!」


 俺はリリを抱きしめ、リリは恐怖からか俺にしがみついていた
 周囲の確認をしてると、波の様子がおかしいことに気が付いた


 「何だ……これって、渦潮か!?」


 船を中心にいくつもの渦潮が見える。これは自然現象では断じてない
 すると、女子たちが全員戻ってきた


 「お嬢様っ!!」
 「コノハぁっ!!」


 コノハが近くに来ると、リリはコノハに飛びついた


 「何だよこれ、何が起きてるんだ!?」
 「聞いて、さっき傭兵の人が話してたの。これはモンスターの仕業だって」


 船体が激しく揺れ、俺たちは近くの支柱にしがみつく
 すると氷寒が叫ぶように言った


 「ジュート、さっき話したこの近海に現れたモンスターは……子供だったの!!」
 「子供ぉ!?」
 「ええ、それで怒った母親が現れた可能性が高いって、傭兵が話してたわ!!」


 なるほど、どうやらこの近海のモンスターは子供で、それを傭兵団が討伐。それに怒った母親が今、この船を襲ってるワケか。同情するけど沈められるワケにはいかない


 「みんな、リリとコノハを頼むっ!!」
 「ジュートはっ!?」
 「俺はコイツを倒すっ!! 任せとけ!!」




 俺は船の先端……モンスターの気配が強い場所へ走り出した




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 「……コイツか、やっぱデケェな……」


 目の前にいたのは、まるで巨大なウミヘビのバケモノ。全長は100メートルはあるだろう、身体は硬そうな鎧に包まれ顔はまるでドラゴンのような厳つさ


 SSダブルレートモンスター・〔コバルトグレーシーサーペント〕が、傭兵たちを蹂躙していた


 船の先端には傭兵団だろうか、屈強な戦士たちが矢や魔術で応戦していたが、硬そうな鎧の前にまるで歯が立たず、口から吐き出される砲弾のような水球が戦士たちを吹き飛ばす
 水球はデッキの床を破壊し、このまま攻撃が続けば沈没の恐れもあった


 「おい下がれ!! ここは危険だぞっ!!」


 傭兵団の戦士が俺を引き留めるが無視。このバケモノを始末してやる
 すでに傭兵団は3人も居ない、20人くらいが床に倒れていた




 「へっ、【灰】魔術のオンパレードだ、行くぜ!!」




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 「【灰】の上級魔術、【灰銀烈槍シルバリオン・サリッサ】プラス!! 【針釘乱刺ネイルギル・ソーン】!!」


 鎌首をもたげてるウミヘビに向かい魔術を放つ。使ったのは無数の槍とクギ


 「……チッ!!」


 しかし、槍とクギは全て鎧に弾かれる。傷1つ付いてない
 ウミヘビは首をさらに伸ばし、俺を威圧するように口を開けた。狙いは巨大な水球で、俺と船を潰す気だ


 「こんのっ……【鉄筋大盾アイアン・プロテクション】!!」


 俺は巨大な鉄の盾を生み出しウミヘビの顔面に展開、水球は砕け散り雨のように降り注ぐ
 刺突や斬撃が効かないなら、殺り方を変えるだけだ


 「てめぇは今日の晩メシだっ!! 【苦痛束縛バインデッド・ブロッケン】プラス【鋼糸甲線ギースエッジ・ライン】!!」


 俺の魔術の中でも究極の拘束コンボが炸裂、身をよじるだけでも苦痛のハズ
 見える部分と海中の見えない部分も完全に拘束し、頭をよじって苦しんでいた


 「ジャァァァァァッ!?」
 「悪いな……終わりだ!!」


 俺はここで最後の魔術を発動させる。狙いは……頭!!


 「【灰】の上級魔術・【鉄鎚振感アイアン・プレッシング】!!」


 ウミヘビの頭を挟み込むように紋章が現れ、巨大なハンマーがウミヘビの頭を押しつぶした
 ぐちゃっ!! と気味の悪い音が響きウミヘビの頭は潰れた。ぐへぇ……キモい




 終わった……沈没しなくてよかったぜ



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