ホントウの勇者

さとう

憩いの町ポートレード②/休暇・ファイアマッチョ



 「すっげぇ……まさにリゾート」


 ティエルと運転を交代し、町に到着
 町の入口にはヤシの木みたいな木が連なり、脇を見るとキレイな海が見える
 気候もだいぶ暑いが、湿気の少ないカラッとした熱さ。まるでハワイみたい


 「お、ここからは歩きでいくみたいだ」
 「行きましょ!! 早く早く!!」


 リリがコノハの手を引っ張り、その後に黎明たちが続く
 俺はアウトブラッキーを停車させカギを掛けて着いていった


 町はキレイな建物がズラリと並び、どれも高級感が溢れてる
 買い物してるお客もどことなく上品で、薄着だが着けてるのは高級品ばかり
 潮の匂いがするが、不快ではなくどこかワクワクする


 「ジュート殿、コテージはあちらです」
 「ああ……ってか来たコト有るのか?」
 「いえ、聞いたことがあるくらいです」


 黎明たちにじゃれつくリリと、それをあやしながら引っ張る黎明たち。どうやらかなり仲良くなったみたいだ


 「お前も、その……辛いこと忘れてのんびりしろよ」
 「……お心遣い、痛み入ります」


 コノハは冷静だが、盗賊に襲われたのは間違いない。ひょっとしたら一番傷ついてるのはコノハかもしれない


 「さ、行きましょう」
 「……ああ」




 でも、そんなこと言えるわけなかった




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 「すっごいキレ~……」
 「……確かに」
 「お風呂もある」


 水上コテージは豪邸を借りた。周囲は陸までの桟橋しかない、あとは海に囲まれていた。これなら大騒ぎしても大丈夫だろう
 黎明たちは借りたコテージを散策してる。ちなみにリリたちも同じコテージなので、かなり大きなコテージを借りた
 最初はリリとコノハは別のコテージにするといったらあっさり拒否。どうやらお金の心配からだが、俺としてはその……夜の情事がね、うん
 すると何かに気が付いたコノハが俺にこっそりと耳打ち


 「ご心配なく。邪魔は致しません……」
 「あ、はい」


 くっそ恥ずかしかった。ちくしょう


 「ジュートさん、ここスゴいですよ!!」
 「どれどれ。おお、まるでプールだな」


 コテージのバルコニーには、海の中に仕切りを入れたプールが併設されている
 ビーチチェアやパラソルなんかもあるし、至れり尽くせりだな


 「じゃあ町にいこっか。買い物しよっ!!」
 「はいレイメイさんっ!! みんなで行きましょっ!!」


 黎明とリリはハイテンション。他の3人は大人しいが、少し興奮してるのがわかった
 俺がにこやかに見守っていると、黎明がにっこり笑って言う


 「あ、今日は女の子だけで買い物行くから。ジュートは明日ね」


 そう言ってそそくさ出て行ってしまった。あれ? 視界が滲むぞ?


 《ジュート、泳ごっ!!》
 《へぇ、気持ちいいわね》
 《もぐ~》
 《うぅ……日差しがキツいっす》
 《お!? 上等な酒があるじゃねーか。おいナハトオルクス、やろうぜ!!》
 《お、いいのぅ。アグニードラ、つまみもあるぞい!!》
 《ギギギ……》


 いつのまにか全員出ていた。まぁコテージは貸し切りだし、周囲に人はいないからいいけど


 ルーチェは久し振りの水が嬉しいのか泳ぎ回り、ティエルは水着でビーチチェアに横たわる
 モルはテーブルの上で日向ぼっこ、クライブは壁にくっついて休憩
 アグニは冷蔵庫から高級そうな酒を取りだし、ナハトはどこからかつまみの乾き物を持ってきた
 ニュールは……熱いのか、暑いのか。日陰でじっとしてる


 「カオスすぎる……」
 《ま、楽しいからいいじゃないか。きっとこれが……》
 《エエ、もうすぐ大きな戦いが始まるワ。だから……》


 確かに。みんなにもリラックスして欲しいし……いっか


 《ジュート、泳ごっ!!》
 「ああ、一緒に泳ぐぞっ!!」
 《ちょっ!? ジュートっ!?》
 《ニャァっ!?》




 俺は服を脱ぎ、クロとシロを抱えて海に飛び込んだ




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 その日の夕方。買い物袋をたっぷり抱えた女性陣が帰ってきた


 「ただいまで~すジュートさん!!」
 「ただいま戻りました」


 はしゃぐリリと落ち着いてるコノハ


 「たっだいま~っ!!」
 「……ただいま」
 「ただいま」


 同じくはしゃぐ黎明、ワンテンポ遅い氷寒、いきなりの虫菜
 うん、みんないい顔してる。よっぽど楽しかったんだな


 「えっとジュートさん、いっぱいお買い物しました!! 洋服とアクセサリーと、あと靴とカバンと、あとですね……」
 「お、落ち着けリリ、ちゃんと聞くから」


 キラキラした瞳でリリが詰め寄ってくる。正直なところかなり可愛い、でもこの思いは兄貴が妹に感じるような思いだな


 「よしよし……」
 「あ……えへへ」


 近いので頭をなでてやる。サラサラで気持ちいいキレイな銀髪
 リリも気持ちよさそうだ


 「ジュート、レストランを予約してきたから、少し休んだら出かけるわよ」
 「お!! マジで!?」


 黎明の一言で俺のテンションは上がった。いよっしゃ!!




 さぁ、今日の夕食は豪華ディナーだ‼




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 結論。豪華ディナーじゃなくて業火ディナーだった


 「なにこれ?」
 「ここさ、スゴいパフォーマンスで有名なんだって」


 黎明が俺の隣で嬉しそうに言う
 俺たちは巨大な円卓型の鉄板を囲むように座ってる。鉄板は加熱しすぎなのか真っ赤になり、触ったら肉が溶けるレベルの熱さになっている。つーか暑い


 「来たっ‼」
 「は?」


 出てきたのは筋骨隆々で腰ミノを付けた男。肩には牛を担いでいる。何をするのか大体わかった


 「うおォォォォォォッ‼」


 男は牛を鉄板にぶん投げた。マジかよ
 すると専用の靴を履いた男は鉄板の上に乗り、アシストの男が投げる野菜を鉄板の上で炒める
 踊るように鉄板でリズムを刻み、牛を時折ひっくり返しながら焼いていく
 そして最後······巨大な青龍刀で牛を両断。ふっくらホクホクの牛肉を青龍刀で器用に切り裂き、俺たちの目の前にあった皿に盛っていく


 「ダァァァァァっ‼」


 調理が終わるとマッチョポーズ。大歓声に包まれた


 「スゴいでしょ、ここ〔ファイヤマッチョ〕は肉料理の専門店で、炎のマッチョがパフォーマンスしながら肉を焼いてくれるの‼」
 「へ、へぇ〜······」


 なんだよ炎のマッチョって。ツッコんだら負けか?
 とにかく料理に罪はない。食べよう


 「······うまっ」
 「美味しいですね、ジュートさん‼」


 リリもご満悦。他の女子もホクホクしてる
 こんな笑顔を見れたなら来た価値があったな。盗賊団のことを忘れて楽しい思い出を作ってほしいもんだ




 俺たちはしばし肉を堪能、ついでにマッチョも堪能した




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 コテージに戻ると、リリが虚ろだった
 どうやら疲れて眠いらしい。腹もいっぱいだしな


 「さ、お嬢様······」
 「うぅ〜ん」


 コノハは生活魔術でリリを清めるとコテージの別の部屋へ。俺たちに一礼して去って行った


 「お前たちは? 疲れてないか?」
 「うん、平気よ」
 「······それより」
 「うん」


 虫菜は俺の腕を引っ張る。なんだなんだ?


 「こっち」


 虫菜が引っ張り、氷寒と黎明が着いてくる
 そしてついた場所は


 「ふ、風呂?」
 「入ろ」




 なんとまぁ素晴らしい提案だこと。もちろん遠慮しないけどな




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 「あぁ~……生き返る」
 「だね~……ふぅぅ……」


 俺の隣に黎明と虫菜、正面には氷寒が。熱いのか風呂の縁に腰かけてる……裸で
 夜の海が見える風呂場は絶景で、中も外も最高だった


 「なんかさ、アタシたちだけ悪いよね」
 「でも、イーティアじゃ出番なかった」
 「……あっちは労働で私たちはリゾート。確かに不公平かもね」
 「う~ん、どうすんだ? 交換すんのか?」


 少しの静寂。すると黎明が言う


 「ジュート、この町にはいつまでいんの?」
 「そうだな、リリたちが落ち着くまで居るつもりだ。盗賊に襲われたばっかだし、今日は元気だったけど、まだ楽しい思い出をみんなで作ってからだな」
 「……じゃあ、まだ私たちがいた方がいいわね。いきなり別の人間に変わったら驚くでしょうし」
 「だね」


 明日はクルージングの予定らしく、しばらくはこのままでいいだろう


 「なぁ、そろそろ……」


 正直なところ限界です。話しながらも我慢してたからな


 「いいよ、やろっか」
 「……」
 「がんばってね」




 さて、明日に響かない程度にハッスルしますかね。ぐふふ





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