ホントウの勇者

さとう

盗掘の魔林②/襲撃・暗殺者の極



 「……ここか」
 《気を付けて、もう喋らないほうがいい》


 了解。ここからは脳内会話で行こう


 俺はシロの案内で盗賊たちのアジトへ来ていた
 アジトはまるで別荘みたいな木製のロッジ。2階建ての横長の建物だ、けっこうデカい
 そこの庭に、見覚えのある魔導車が2台停まっていた


 あれか……くそ、やっぱりだ
 《残念だけど……手遅れだったね》


 魔導車の脇には血まみれの遺体が並べられていた
 文字通り身ぐるみ剥がされている……数は10人ほど、体格のいい男ばかりで全員かなり鍛えられた肉体なのが見て分かった。アソコもデカい


 遺体の側には衣服と武器と……鎧? けっこういい造りだ。どことなく騎士団っぽい気もする


 《ジュート……来たよ》


 ああ、わかってる。どうやら盗賊どもは中でドンチャン騒ぎをしてる
 見張りは交代で行い、周囲には10人ほどの盗賊が周囲の見回りをしてる
 盗賊のくせに警戒心が強い。恐らく酒が入ってるが、見回る表情はスキがない。こりゃザコでもなかなかの手練れだ、生身じゃヤバいかもな


 《少しずつ減らしていこう……来たよ》


 俺の側に来たのは1人の盗賊
 ラフな服装なのは身軽さを重視してるからか、装備は腰の短剣とナイフ、歩き方からしてかなりの軽業師なのは間違いない……殺るか


 「むぐッ!? ごッ……!?」


 俺は飛び出し盗賊を草むらに引きずり込み、心臓に〔カティルブレード〕をブッ刺して殺害。まずは1人
 草むらに死体を隠して次の獲物を狙う


 《ジュート、あそこ》


 了解。ちょうどいい……ここから狙う
 俺は肩に掛けていた『灰犬弓矢砲アッシュレイズ・グリーボウ』を装備。矢を番えて狙いを定める
 狙いは……脳天


 「ひゅ?……こぇ」


 命中。見事に刺さってる
 すると刺さった矢が変化し、倒れた死体の周りに雑草が生えた


 「へ?」
 《【灰】属性だからね。偽装のために矢自身が変化したんだ》


 思わず声を出してしまった、そのくらい驚いた
 こりゃいいな。アグニたちとは別の意味で使えるぜ




 残り38人……さっさと始末してやるぜ




───────────────


───────────


───────




 《ジュート、バレたみたい》


 まぁ外にいた10人全員キレイに始末したしな。見張りが戻ってこなきゃ確認に来るよな
 俺は屋根の上から様子を眺めていた


 「おい、誰もいないぞ」
 「まさかコイツらの仲間か……クソ!!」


 盗賊の1人が死体を思いっきり蹴り飛ばす
 おい、仏は慎重に扱えよ。お前も同じ目に遭わせてやる


 「チッ、おいボスは!!」
 「女と楽しんでるよ。拷問されて死にかけてるけどな」
 「じゃあガキの女は?」
 「ピーピーわめいてるぜ。ったく五月蠅いったらありゃしねぇ」


 女、ガキの女……生存者か


 「ふん、とにかくボスに報告だ……ごっ!?」
 「わか……がっ!?」


 俺は屋根から飛び降り盗賊2人の間に着地、両手のブレードで2人の首を串刺し切り裂いた
 生存者がいる、急がないとな




 よし、少し荒っぽく行こう




───────────────


───────────


───────




 20人以上始末したことで、ようやくただ事ではないと気が付いたようだ
 15人ほどの盗賊が現れ、武器を構えて周囲を警戒し始めた


 《ジュート、落ち着いて……冷静に》


 わかってるよ。冷静に、心を強く


 俺は草むらに潜に近づく盗賊を引きずり込み、木の上で脳天をぶち抜き、背後に周り心臓を突き刺し15人全員を殺害した。残りは5人


 「くっそがぁ!! どこにいやがる、出てこいやぁぁッ!!」
 「ぼ、ボスッ!! 危険ですッ、がぶっ!!」


 2メートル以上の巨体の男が部下を引きずって現れるが、俺は冷静に部下の脳天を打ち抜いた


 「ぼ、ボス……逃げましょう、ここはヤバいです!!」
 「クソクソクソクソォォォォォッ!!」


 全身を怒りで震わせたボスと3人の部下が出てきた
 逃げるつもりだろう、荷物をたくさん持っている


 《……ジュート、あれで最後。あとはいないね》


 魔導車に荷物を積み込み、奪った魔導車2台が走り出す


 「ま、逃がさないけどな」


 俺は腰の矢筒から2本の矢を取り出し、『錬鉄の神銃アイゼン・ブラスター』に〔決戦技弾フィニッシュアーツ・ストレージ〕を装填、矢を2本番えて構える


 「【灰猟砲撃イェーガー・ブラスター】」


 灰色の光を帯びた爆弾矢が放たれ、複雑な軌道を描く
 かなりのスピードが出ていた魔導車に追いつきボディに着弾


 「地獄で反省しな」


 大爆発。爆破炎上
 魔導車は木っ端微塵になりこの世から消滅、当然ながら盗賊も消滅した




 さて、生存者の救出だ




───────────────


───────────


─────── 




 俺は神化形態を解いて盗賊のアジトへ入る
 アジトの中は飲み食いの跡と酒・タバコのニオイがキツい。長時間は居たくない


 「……どこだ?」
 《上に1人、こっちのドアに1人いるよ》


 足下のシロが教えてくれる。ホントに助かります
 じゃあ近い方から行きますか


 「大丈夫か!! 助けに来たぞ!!」


 そう言ってドアを開ける
 すると盗賊の言った通り、1人の少女が縛られていた
 泣き腫らした目で俺を見ると、ビクッと身体を震わせた


 「ヒッ!! い、イヤ……いやぁ……」
 「落ち着きなって、俺は助けに来たんだ……」
 「……え」


 俺は少女の身体を拘束していた縄を切り、安心させるように優しく言う


 「もう大丈夫、盗賊は全員やっつけたから。な?」
 「……あ、あぁぁ……うぁぁぁぁん!!」
 「おっと……よしよし」


 少女は俺に抱きついて泣き出してしまった。怖かったよな、よしよし
 しばらく泣いた少女はハッとして俺から離れる。何だどうした?


 「こ、コノハ!! コノハは!?」
 「こ、木の葉?」 
 「私の親友です!! 一緒に捕まったの、コノハは!?」
 「お。おちつけって。シロ」
 《2階だね、女の子のニオイがする……でも》
 「行くぞ」


 俺は動揺する女の子をあやし、一緒に2階へ向かう
 するとそこには……いた、でも……ヒドい


 「コノハ、コノハぁっ!!」
 「………」


 裸の女の子がいたが、ヒドい状態だった 
 殴られたのか顔は変形し、しゃべれないように喉が潰されてる。しかも身体中アザだらけでナイフで切り刻まれたような傷がいくつもある
 骨格もおかしい……まるで拷問されたようだ


 「いや、いや……死なないで、いやぁ……」
 「大丈夫、任せて」


 俺は必要以上に魔力を振り絞り、ボロボロの女の子を治療した
 くそ……あの盗賊のボス、もっと痛めつけてから殺せばよかった


 「……え、うそ……【白】の、上級魔術……!?」


 こういう反応にはもう慣れた
 白い光に包まれ、女の子の身体はキレイに治った……おっと、見ちゃマズいな
 俺はベッドのシーツを女の子の身体にかけてやった


 「もう大丈夫、あとは安静にしてれば目が覚める」


 危なかった。もう少し遅かったら死んでたぞ
 とにかくここから出よう。こんな臭い所に居たくない


 「さて、ここから出よう。俺は〔憩いの町ポートレイク〕に行くけど……どこかに送ろうか?」
 「え、あ……そ、そこでいいです」


 まだ混乱してるな……とりあえず合わせたって感じだ




 とにかく行こう。さっさとここからおさらばだ


 
───────────────


───────────


───────




 「う~ん……仕方ないか」
 「え?」


 女の子は俺がおんぶしてる。背中に柔らかい感触が……ってそんな場合じゃない
 この子たちの魔導車は俺が爆破しちまったし、盗賊に捕まった女の子を歩かせる訳にもいかない


 《ジュート、仕方ないよ》
 「だな」
 「え? え?」


 俺は魔術を使い、アウトブラッキーを呼び出した


 「え、えぇぇぇッ!?」
 「さ、乗って」


 突然現れた魔導車に驚いてるがもういい。このまま流れで押し通す


 「あ、あの……これって夢ですか?」


 しかも中は一流ホテルのスイートルーム並。まぁその気持ちも理解出来る


 「まぁくつろいで。ティエル、頼んでいいか?」
 《運転ね。ゆっくり行くから任せなさい》


 運転席から声が聞こえる。安全運転で頼むよ


 「お茶を入れるよ。キミも休んでな」
 「……はい」


 ベッドに女の子を寝かせ、少女はベッドの近くの椅子へ
 こうして見るとかなりかわいい女の子だな


 年齢は16歳くらいだろうか、かなりの美少女だ
 サラサラ銀髪のセミロングに服装はまるで貴族みたいなドレス。身なりの良さからしてやっぱり貴族だろうか?
 ベッドの少女は少し年上、恐らく18歳くらい
 長い黒髪にこちらは凜々しい顔立ち、服装は……って、シーツを巻いただけでスタイルはなかなかだ


 
 さてどうしたもんか。取りあえず女の子が起きるまで待つしかないか
 

「ホントウの勇者」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く