ホントウの勇者

さとう

盗掘の魔林①/行くつもりなかったのに・白犬神化

 
 「〔灰蛇の森〕ってこっちだよな」
 《うん。しばらく進むと分かれ道があるから、そっちを右ね》


 天気もいいのでシロの散歩がてら歩く。いや別に散歩じゃないな
 クロはルーチェに拉致された。どうやらルーチェとティエルは数日ごとにクロとシロをかわりばんこで抱っこして寝る。しかも睡眠時間は1回につき半日以上、長いときは数日なんてのもある


 「クロは悲惨だったな……」
 《言わないでよ、次はボクなんだから……》


 シロはどうやら諦めモード。あの2匹から逃れる術はないらしい
 がっくり項垂れてるシロのために話題を変えよう


 「なぁ、〔灰蛇の森〕ってどんなトコだ?」
 《……えっと、あそこは巨大な蛇たちが集まる森さ。迷い込んだ人間は丸呑みにされるから気を付けてね》
 「気を付けてって……スプリフォの野郎、危険な道を教えやがって」
 《でもしょうがないよ。〔盗掘の魔林〕はS級冒険者でも避けるルートだからね》
 「そんなにヤバいのか?」
 《さぁね。人間たちがそんなこと言ってたよ?》


 盗賊か。会ったコトないな……


 《ジュート、これだけは言っておく》
 「何だよ改まって」
 《この世界には命を摘み取るのに躊躇いのないヤツもいる……盗賊は共通してそんなのばっかりだ。キミみたいに悩んで苦悩して、ようやく決意して立ち上がるようなヤツじゃない。出会って戦闘になったら迷わないで、必ず殺すんだ》
 「……わかった」


 シロはきっと、俺がリヒテル魔教授を殺すことに悩んでいたことを言ってるんだ
 ウィゼライトや吸血鬼の時とは違う。仕方なく、でも殺した


 「俺は死ねないからな、殺られる前に……殺ってやるさ」
 《うん。そうならないのが一番だけどね》
 「ははは……そうだな」




 人殺し……重い荷物を背負って生きていく。そんな言葉が頭に響いた




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 「ここを右だな」
 《うん》


 〔盗掘の魔林〕と〔灰蛇の森〕の分かれ道に差し掛かり、俺とシロは迷わず右へ
 しかし、俺たちはここでも気になる物を見てしまう


 《……ジュート、あれ》
 「えぇ~……」


 俺とシロが見たのは1台の魔導車
 しかもけっこう大きく、キャンピングカーみたいなサイズの魔導車が2台。大きさもだが装備も高級そうな感じでタイヤも8輪の万能オフロードタイプ
 恐らく1台1000万ゴルドはしそうな、たぶん商人が運転してる魔導車




 そんな2台の魔導車が、〔盗掘の魔林〕に入っていった




 おいおい、どう見てもカモじゃねーか!?


 「なぁシロ、やばくね?」
 《う、うん。あれじゃ狙ってくれって言ってるようなものだね》


 ここで見捨てるのもアレだよなぁ……かといって盗賊が出るとも限らないし
 俺は呆れかえってる白犬に意見を聞いてみた


 「どうする?」
 《う~ん……距離的には〔盗掘の魔林〕のが近道だけど》
 「だな……それに盗賊が出るとも限らんし……仕方ない、行くか」
 《だね》




 進路変更。分かれ道を左へ進みまーす




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 〔盗掘の魔林〕は昼間なのに暗い。どうやら森の木が密集して日が差さないみたいだ
 周囲が暗いためかシロの白さが際立つね。かわいい


 「……」
 《ジュート、集中しなよ……人間のニオイだ。しかもけっこういる》
 「ああ、俺も感じてる」


 いる。かなり
 しかも手練ればかり……俺の存在は気が付かれてないけど、複数が動いてる


 《やっぱり見つかったみたいだね》
 「だな……何を考えてこの森に来たんだ?」
 《助ける?》
 「そうだな……状況を把握してからだ」


 手練れが多い盗賊に立ち向かうには、まずは相手の確認


 「シロ、距離は?」
 《……距離は500歩くらい、数は……15人。でも他にも気配は感じる、どうやら偵察隊とかじゃないかな? あれ……移動してる。恐らくアジトに向かってる》


 シロの鼻はすごい。人数もさることながら気配や行動もある程度読める
 するとシロがピタリと止まった


 《停まった……どうやらアジトに着いたみたい。距離は……2500歩くらい、人数は……まずいね40くらい、しかも何人かはかなり強い。ジュート1人じゃ相手に出来ないよ》


 やっぱりか。どうしよう
 魔術で不意打ちしてもダメなのかな


 《敵の盗賊も上級魔術師クラスが何人かいるよ。どうやら宴会でも始めるのかな?》
 「じゃあ魔導車に乗ってた人たちは……?」
 《わからない。確認するかい?》


 ここまで来て無視はしたくない
 もし殺されたなら……埋葬くらいはしてやろう


 「行こう。せめて確認と埋葬くらいはする」
 《盗賊は?》
 「……倒す。スキを見つけて1人ずつ始末する。ある程度始末して、せめて弱体化だけでもさせておこう」
 《……わかった》


 ここでシロは思わぬ提案をしてきた




 《ジュート、ボクの力を使うんだ》
 「は?」




 予想外の展開にマヌケな声が出てしまった




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 「ボクの力って……〔神化形態〕か? 神器を使うの? いいの?」
 《落ち着きなって。そうだよ、ボクの神化形態を使って倒した方がいい》


 シロは落ち着いてる。どうやら本気みたいだ


 《恥ずかしい話だけど……ボクの力はみんなと違ってね、大規模な破壊や技は苦手なんだ。どちらかというと暗殺向き、こういう隠密的な動きに向いてるんだ》
 「へぇ……意外だな」
 《ま、とにかく使ってみてよ」


 そこまで言うなら
 俺は神器を纏い灰色のマガジンをシロに向ける。するとシロはマガジンに吸い込まれ、灰色の紋章が刻まれる


 「【九創世獣ナインス・ビスト魂融ソウルエンゲージ】」


 敵地は近いので声は控えめに
 俺の身体を灰色の光が包み、神器の一部が灰色になり仮面の装飾も変化した


 「【白犬神化ソウルオブシロフィーネンス】って……隠密なのに白いぞ、森の中じゃ目立つな……」


 思わず素が出てしまった


 《大丈夫。わかるでしょ?》
 「………うん。すげぇわこれ」


 最初に気が付いたのは、その存在の希薄さ
 色は目立つが気配がない。こりゃすごい


 《人間やモンスター相手ならほぼ見えないに等しいよ。目の前で声を出さない限り存在を感知も出来ないだろうね》
 「確かに……それに、この身体能力」


 俺は軽くジャンプする……すると、軽く200メートルはジャンプした


 「うぉぉッ!? っとぉっ!?」


 着地。しかし無音
 歩いても全く音がしない。こりゃすごい、スゴすぎる


 「武器……ありゃ? これって〔カティルブレード〕と〔マルチウェポン〕だ。こいつも具現化されてるぞ」
 《きっとボクの神化に適応した武器だからさ。その代わり腰の双剣がないでしょ?》
 「あ、ホントだ」


 俺は両手首を反らすと、2本のナイフが飛び出した
 相変わらずいい武器だ。実にカッコいい
 それにコートにはフードまで付いている。こりゃ被るっきゃないでしょ


 「専用武器……『灰犬弓矢砲アッシュレイズ・グリーボウ』っと。こいつは……洋弓銃アーチェリー? かな」


 確か、コンパウンドボウとかいう映画でも見たことあるヤツだ。いつの間にか背中に矢筒がセットされていた
 俺は『錬鉄の神銃アイゼン・ブラスター』をセットし、構えてみた


 「お、腰にも矢筒がある……なんだろう? 先っぽの形が違う?」
 《それ、先端は爆弾になってるから気を付けてね》
 「うおぉっ!? 早く言えよ!?」
 《あはは、どうやらキミの記憶に影響してるみたい。心当たりは?》
 「……ある」
 《ならそういうことさ。その矢は1日8本しか打てないから気を付けてね》


 うーん、これは完全に隠密向き。シロの言った通りだ


 《ジュート、このまま盗賊を狩ろう。いいね》
 「だな、これなら負ける気がしない。作戦変更だ」




 さぁて、狩猟ハンティングの始まりだ





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