ホントウの勇者

さとう

魔術師の町ブルグレート⑭/2度目の侵入・解読



 襲撃者の騒動が終わり翌日。食堂にて


 「今日は午前中はあたし、午後は自由にしていいわ」
 「マジで。お前は?」
 「眠いから寝るわ」


 よし、午後は魔術協会総本部の下見に行こう。さすがに場所はわかるけど、中はあまり知らないからな


 「今日こそ初級魔術師の再試験よ。まぁあんなことにはもうならないでしょうけどね」


 そりゃそうだ。主犯格が改心したからな


 「よし、行くわよ」


 スプリフォは食べ終わったトレイを返却し、一服もしないまま出て行く


 「ちょ、待てよ⁉」




 俺は慌ててその後ろを追った




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 初級魔術師たちの中級教室を賭けた試験は無事に終わった


 合格者は大体20人ほど。その中にはロミュリッテも入っている
 ロミュリッテの集中力は以前とは比べ物にならず、スプリフォのアドバイスもちゃんと聞いていた
 ゴタゴタしたけど、丸く収まってよかった


 そして午後。俺は魔術協会総本部へ来ていた


 「う〜ん。デカい」


 リヒテル魔教授の自宅より大きく、まるで高層ビルみたいな高さ。さらに人通りも多く、見つからずの侵入は困難、さらにここからリヒテル魔教授の第三研究室を探すのは不可能に近い


 とりあえず中へ入って見る
 人の出入りは多く1階は受付になっている。まるで高級ホテルのロビーみたいだ


 上層階へ向かうには、魔導エレベーターに乗って行くらしい。しかし、パスカードが必要みたいだ······ここの職員だろうか、守衛の傭兵にカードを見せてる


 「こういう場所には······お、あった」


 俺が探したのは案内掲示板。やっぱあった
 上層階ごとの案内がキチンと書かれてる


 「リヒテル魔教授の第三研究室······なんと、地下かよ」


 上ばっかり見てた。こりゃ盲点だ
 でも、パスカードが必要なのは変わりない。どうしたもんかね


 「今日は帰るか······ん?」


 帰ろうとした俺の目に飛び込んできたのは情報掲示板


 「リヒテル魔教授・神話魔術の解読に成功。【特級魔術師】就任間近、近日詠唱術式公開、町を挙げての実験を開催······か」




 実験まであまり時間はない。早く何とかしないと




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 俺は少し強引な手段を使う決意をした


 「じゃ、おやすみ」
 「おやすみ······」


 スプリフォが奥の部屋に引っ込むと、朝まで絶対に出て来ない。まるで鶴の恩返しみたいだ


 「······行くか」


 俺は静かに窓を開けてフードを被る。そして以前と同じ方法で塀の上に登り、魔術協会総本部へ向けて走り出す
 作戦はシンプル。人通りの少ない夜に侵入する


 今回の侵入場所は地下なので、窓からの侵入はしない
 スキを見て入り口から入り、何とか地下階段を降りるしかなさそうだ


 「ま、当然だよな」


 塀の上から魔術協会総本部の入り口を見るが、やっぱり傭兵の守衛がいた。夜分にご苦労様です


 《ワタシが気を引くワ》
 「うおぉッ⁉ あっぶねぇっ⁉」


 人生で1番ビビった。塀の上からマジで落ちそうになった


 《何してるのヨ、死ぬ気?》
 「いきなり出てくんなっての······っ‼」
 《ニャぶぶ······⁉》


 俺はクロの顔を両手でサンドイッチ。クロの顔はまるでまんじゅうみたいにフワフワした


 《と、とにかく、ワタシが守衛の気を引くから、アナタは行きなサイ》
 「わかったよ······って、シロといいお前といい、いつの間にか居なくなりやがって」
 《フフ、アナタ1人でも平気と思ってネ。みんなで見てるワ》
 「なんじゃそりゃ······まぁいいけどよ」


 クロは塀から飛び降りる
 塀はかなりの高さだったが難なく着地。そのまま傭兵の元へ


 「ん? 何だ、腹が減ったのか?」
 《ニャ〜ン》
 「ははは、おい見ろよ、人懐こいぞ」


 クロは傭兵に甘えるように擦り寄ってる。さすがネコ
 傭兵がクロに夢中になってるスキに、俺はこっそり入り口に滑り込んだ


 チラリと後ろを見ると、クロは物陰に走って消えてしまった
 さすがだぜ。いいネコっぷりだ


 昼間とは違い、夜は全くない人がいない
 魔導ランプの明かりは最低限で、身を隠すにはもってこいだ
 しかし階段付近には傭兵がいるし、見回りの傭兵もいる


 「確か······よし」


 地下へ通じる階段には人がいない。チャンスだ
 俺は素早く隠れながら階段付近に近づいて周囲を伺う


 「そっか、トイレだ」


 どんなに屈強な傭兵も生理現象には敵わない




 俺は素早く階段を降りていった




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 地下は一本道で、どうやらリヒテル魔教授だけの為に作られたようだった
 道の先にあるのはドアが1つプレートには「第三研究室」と書かれてる


 「······いない、か?」


 俺は全力で気配を探るが、中に人がいる様子はない
 それでも用心してゆっくりドアを開けた。カギは······掛かっていない


 俺は〔カティルブレード〕を展開し、警戒度マックスで室内へ滑り込む




 これじゃアサシンってか泥棒みたいだ




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 リヒテル魔教授の〔第三研究室〕はかなり広い


 高級感溢れる横長の机には様々な書物が並び、壁には本棚がいくつも並んでいる
 来客など考えていないのかソファやテーブルはなく、研究室というよりはまるで書斎のような雰囲気だ


 「さて、さっさと調べるか」


 俺は机や本棚を調べる
 本棚はありがちな隠し通路があると思って裏まで調べたが、特に何もなかった。マンガの読み過ぎかな
 机の中にも目ぼしい物は何もない


 「参ったな、無駄足······お?」


 机の下。石造りの床に切れ込みがある
 俺はしゃがみ込んで右手バンドのライトを使って照らす


 「ほほう、アタリかな」


 ヤバい、こういうスパイみたいなのドキドキする
 俺は〔カティルブレード〕を切れ込みにねじ込み、テコの原理でゆっくりと持ち上げた


 「これは······?」


 そこにあったのは、灰色の封筒だった
 大きさはA4サイズほどで、封には蝋が垂らし固めてあるがすでに開封されている


 「どこかで······あ⁉」


 俺は中を確認し驚いた。何故ならスプリフォがリヒテル魔教授に渡した上級魔術師の試験問題だったからだ


 「ヤバいヤバい、これじゃホントに泥棒じゃねーか」


 俺は急いで問題用紙を封筒へ、しかし焦りかなかなか戻らず、一度出して揃えようとしたときだった


 「······何だよ、これ」




 そこにあったのは試験問題だけではなかった




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 「おはよ、今日の講義は午後からよ」
 「·········」


 翌朝。スプリフォの部屋に戻った俺は、すでに着替えているちっこい少女の挨拶に答えなかった


 「何よ? 無視すんなっての‼」
 「······スプリフォ、お前」
 「·····何? どーしたのよあんた?」


 俺は立ち上がり、スプリフォに向き直る


 「ホントに何よ?······ちょ、あんた‼」
 「悪いな」


 俺はスプリフォを無視し、奥の部屋へ向かう・・・・・・・・


 「やめなさい‼ 何を⁉」


 魔術のカギを破壊し、俺の服を掴むスプリフォを引きずってドアを開けた




 「······やっぱり、お前だったのか・・・・・・・
 「あ、あぁ······」




 そこは、寝室などではなかった


 広さは十二畳ほど、壁一面に本棚が埋まり、それでも足りないのか床に積み重ねるように本が溢れてる
 本の中身は様々だ。人間だけではなく、獣人・人魚・ドワーフ・翼人・エルフ・吸血鬼・龍人族などの文化や歴史、さらには古代の言語などが書かれた本だ
 机には積み重ねられた羊皮紙、どれも難解な言葉が書かれ、知識がなければ解読すら出来ないだろう


 俺は震えて立ち尽くすスプリフォに言った






 「【神話魔術】······お前が解読したんだな」







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